ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第415話 薄塩たらこ、男の生き様

「ダインさん!」

「ギンロウ」

 

 二人は視線を交わしただけで、自然に一緒に行動を開始した。

目指すは獅子王リッチーの下へである。

二人は長い付き合いという事もあり、その辺りの呼吸は抜群だった。

 

「やっぱり今回ばかりはソロだとやばいよなぁ」

「っすね!」

「っていうかよ、あのシャナ相手に二人で足りるのかねぇ……」

「……っすね」

「他にもハチマンとかキリトとか、やばそうな奴が目白押しだよな」

「…………っす」

「まあ負けて元々だ、俺達の優勝に期待してる奴なんかいないだろうし、気楽に行こうぜ!」

「っすね!」

 

 二人はそう言って笑うと、途中の市街地を抜け、

獅子王リッチーがいるであろうポイントへ向けて進んでいった。

だが現地に着いた時、そこにはリッチーの姿は見当たらなかった。

 

「あれ……」

「ここだった……よな?」

「間違いないですね」

「ここってあいつの大好物な、機関銃を設置して撃ちまくれる小さな廃砦だよなぁ」

「ですね……」

「どこに移動したんだ?この付近に誰がいたっけか?」

「あ」

 

 そしてギンロウは、頑張ってタップした周辺のプレイヤー配置の中から、

ポイントになる人物の名前を思い出した。

 

「そういえば北西に、ミサキさんがいたような」

「え?でもミサキさんは、間違いなくピトフーイと合流してるんじゃないか?」

「あの馬鹿王がそんな事気にする訳無いじゃないっすか」

「それもそうだな……よし、追ってみるか。

もしミサキさん達とカチ合ったら速攻撤退だ、俺は女は撃たねえ」

「…………っす」

 

 ギンロウは、単純に勝てそうもないからじゃないのかなと思いつつも、そう返事をした。

そして二人は再び市街地を抜け、西へと向かった。

その前方に獅子王の巨体が見え、二人はしめたと思い、徐々にその距離を詰め始めた。

 

「チャンスだ、このままあいつを背後から倒しちまおう」

「分かりました!」

 

 二人は慎重に距離を詰め、ほぼ必殺といえる距離まで近付く事に成功したが、

そのせいか、前方からおかしな声が聞こえる事に気が付いた。

 

「……なぁ、何か聞こえないか?」

「ええ……」

 

 そして二人は息を潜め、その言葉を聞き取ろうとした。

 

「ミサキさ~ん、この獅子王が御身の下に今参ります、

この配置だと、俺達二人がチームを組む事のはまさに運命ですよね!待ってて下さい!」

 

「…………」

「…………」

「どうやったらそういう思考になるんだろうかな」

「ちょっとかわいそうになってきましたね……」

「どう考えても無防備で近付いた所を撃たれて終わりだろうにな」

「…………っすね」

「ここはもう、さっさと俺達が引導を渡してやろうぜ」

 

 二人は頷き合うと、その場に伏せ、獅子王リッチーの背中に慎重に狙いをつけた。

そして二人は銃弾を集中させ、あっさりと獅子王リッチーを物言わぬ死体に変えた。

 

「ぐおおおおおお、ミサキさ~~~~~~~~ん!」

「…………」

「…………」

 

 こうして獅子王リッチーは、早々に舞台から退場する事になったのだった。

 

 

 

 一方ピトフーイとミサキは、闇風と薄塩たらこの推定合流地点へと向かっていた。

 

「次のスキャン時間が近い、今なら先に敵を見つけさえすればいける」

「この時間はどうしても気が緩みますものね、マグロ男の相手はあまり気が進みませんけど」

「そうねぇ、抵抗するシャナを無理やり力でモノにするのが楽しいよね」

「私としては、拘束して動けなくなったシャナ様をネチネチと攻めるのも好みですわぁ」

「ふふっ、ふふふふふ」

「うふ、うふふふふ」

 

 二人は我が意を得たりといった様子で顔を見合わせると、そう不気味に笑い合った。

何故か固有名が、敵ではなくシャナになっている所が二人らしい。

こんな二人の相手をしなくてはいけない闇風と薄塩たらこにとっては災難だが、

二人は自分達がそういった対象にされる事は無い事を知っていた。

それが良い事なのか、残念な事なのかは二人の性癖次第であろう。

ちなみにこの二人の会話は中継カメラによってバッチリと映されており、

その映像を根拠に、シャナは後日二人の魔の手から逃れる事に成功した。

 

 

 

「そろそろスキャンの時間だな、相棒」

「だな、ピト達は多分シャナの方に行っただろうし、次のスキャン後が勝負だな」

 

 闇風と薄塩たらこは能天気にそんな会話を交わしていた。

二人が何故自分達が先に攻められる可能性をまったく考慮していなかったのか、

これは簡単である。二人は食事の時、自分の好物から先に食べるタイプだったからだ。

ちなみにピトフーイとミサキは好物を後にとっておくタイプである。

この本当にくだらない要素が、二人にとっては致命傷になった。

 

「さて、配置はどう変わったかな……」

『タンッ、タタンッ』

 

 そう闇風が呟いた瞬間に、軽い銃声が響き、横にいた薄塩たらこが蜂の巣にされた。

 

「なっ……」

 

 闇風の位置からは何が起こったのか視認出来なかったが、

薄塩たらこの位置からは、ピトフーイとミサキの姿がバッチリ見えていた。

そして薄塩たらこは闇風を突き飛ばすと、かばうようにその前に仁王立ちした。

 

「た、たらこ……」

「闇風、お前は逃げろ!相手はピトフーイとミサキさんだ、どうやらこっちに来たらしい。

お前の速さならあの二人からなんとか逃げられるはずだ!後は任せた!」

「で、でもよ……」

「いいから行け!俺達は友達だろ!俺がお前をかばうのは当然の事だ!」

「う……」

 

 そして闇風は、叫びながらその場から急速離脱した。

 

「うおおおおおおおお!すまん相棒!」

 

 そんな闇風の背中に、薄塩たらこは叫びながら言った。

 

「後は頼んだぜ、相棒!」

 

 そして薄塩たらこは、ピトフーイとミサキの方へと突っ込んだ。

そして残り少ないHPが削られるまでの間、見事に囮の役割を果たし、

ついでにピトフーイの肩に銃弾を一発ぶち込む事にも成功していた。

 

「くっ、たらおの癖に生意気な……」

「まあ私達の手でイかせてもらったんだから、きっと彼も内心では喜んでいると思いますわ」

「そ…………」

「そ?」

 

 そして動きを止めた薄塩たらこは、最後の力を振り絞って叫んだ。

 

「そういうことはリアルでお願いします!」

「ごめんなさい、無理ですわ」

「きもっ」

「ぐふっ……」

 

 それが致命傷となったのかどうか、次の瞬間に薄塩たらこは死体となった。

スキャン時間は既に過ぎており、この事実が他のプレイヤーに発覚するのは、

次のスキャンの時という事になる。

 

「さて、一人逃がしてしまいましたけどどうしましょう?」

「とりあえず私の治療待ち?」

「それじゃあ私が周囲を警戒しておきますわ」

「うん、ありがとうミサキさん、お礼にシャナを最初にイかせる権利はそっちに譲るね」

「あら、大盤振る舞いですわね、でも有難く受け取っておきますわ」

「楽しみだねぇ」

「ええ、本当に」

 

 

 

「シャナ様、という事は、スネークが死銃という事で確定なのでしょうか」

「その可能性が高いとは思うんだが、何か引っかかるんだよな……」

「何がですか?」

「悪いがもう一度、お前が見た配置を地面に書いてみてくれ」

「はい」

 

 そして銃士Xは、ストレージから弾を取り出し、地面に配置した。

 

「こんな感じでした、シャナ様」

「……多分獅子王リッチーを殺ったのは、位置的にダインとギンロウだ、これは間違いない。

だがギャレットとすてぃーぶん?は誰が殺ったんだ?」

「それは確かに……まさか相打ちでしょうか」

「もしかしたらキリトとシノンなのかもしれないが、それにしては位置が不自然だ。

さすがにここまで移動しているとなると、どうも疑問が残る」

「ですね……」

 

 ちなみにペイルライダーは慎重なのか、やや北西に動いただけで、

最初の位置とほとんど変わらない位置で様子を伺っているようだ。

 

「ペイルはどうするんだろうな、ギャレットとリッチーが殺られた以上、

他に組める相手がちょっとな……スネークくらいか?」

「まずいですね、もしスネークが死銃だったとしたら、位置がかなり近付いています」

「スネークって奴は西に向かったのか、もうすぐエンカウントするかもしれないな」

「そちらに向かいますか?」

「そうするか……」

 

 そして二人はとりあえずといった感じでペイルライダーの所へと向かう事にした。

ちなみにアチマンは迷っていた。

 

(シャナの居場所は確認出来たけど、状況が掴めない。

ここはもう少し中央寄りに向かって、そこで待機するべきかしらね)

 

 

 

「キリト君、すてぃーぶん?の姿が……」

「いなかったよな……」

 

 二人は今のスキャンの結果を受け、悩んでいた。

 

「だが近くに他のプレイヤーの姿は無かったはずだ」

「ええ、どう考えてもおかしいわね」

「もしかして、スキャンに映らなくする方法でもあるのか?」

「少し検討してみましょうか」

 

 そして二人は様々な意見を言い合い、ひとつの結論に達した。

 

「やっぱりそれかしら?」

「可能性は一番高いよな、スキャンの範囲は地表から上のみであって、

そこより低い場所、例えば川の中などは対象外になる」

「どうする?先に検証しておくべきかしらね」

「幸い周囲に敵の姿は無いんだ、川の近くまで行って先に検証しておこう。

もし次のスキャンですてぃーぶんが姿を現せば、

確実にスキャンから逃れる方法がある事になるし、

川に潜った俺の姿が映らなかったら、それでもその事が確定するしな」

「それじゃあ慎重に移動しましょうか」

「ああ、死銃が近くにいる可能性もまだ捨てきれないからな」

 

 こうして二人は検証作業を優先する事とし、大会はここでやや停滞する事となった。

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