ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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今日は少し短めです、この雨のせいで、色々仕事が立て込んでしまったので、
明日の投稿はお休みするかもしれません、可能性としては半々くらいです、申し訳ありません。


第446話 クルスの提案

「という訳で小猫、香蓮に関しては、上手く調整してくれ」

「ああ、はいはい、あんたのお気に入りという噂の香蓮ちゃんね、

大丈夫よ、目立たないようなポジションをやってもらう事にするわ」

 

 衣装に関しては、既に決定していたようで、八幡はその中から、

香蓮に相応しいと思われる物をチョイスしていた。

これならセンス云々は関係ないし、八幡が選んだ事に変わりは無い。

当の八幡自身も正直一安心といった所であった。

 

「八幡様」

 

 そこにクルスが通りかかり、八幡に声を掛けてきた。

クルスは既にソレイユ内に入り浸っており、三日に一度は社内で姿を見かける。

 

「あの、八幡様、ちょっとご相談が……」

「おう、どうした?何かあったのか?」

「学校の方のレポート関連も終わったので、そろそろ例の約束を……」

「ああ、そういう事か、別に構わないぞ、どこか行きたい所はあるか?」

「そうですね、そろそろ暑くなってきましたし、近場の避暑地とかはどうですか?」

 

 そう言われた八幡は、そんな場所があったかなと考え込んだ。

 

「避暑地なぁ……俺は軽井沢くらいしか思いつかないが」

「遠いですかね?」

「いや、新幹線で一時間ちょっとのはずだ、

車でも高速で二時間くらいだと思うし、下手な都内に行くよりも近そうだな」

「そうなんですか」

「軽井沢ならソレイユの保養所もあるわよ、温泉つきの」

 

 その時その話を聞いていた薔薇が、横からそう言ってきた。

 

「そうなのか?」

「ええ、この時期ならまだ利用者もいないはずだし、問題なく使えるはずよ」

「でも日帰りだしな、なぁ?マックス」

 

 そう話を振られたクルスは、少し考えた後にこう言った。

 

「八幡様、ピトとシノンとの約束はどうなってます?」

「よく知ってるな、どうしてもピトと一緒に出かけてやってくれと、アイに頼まれたから、

仕方なくあいつに連絡したんだが、しばらく忙しいって事で保留になってるんだよな、

詩乃の場合は、テスト後って事になってるな、もう終わっただろうから、

そろそろ何か言ってくるんじゃないか?」

「なるほど……」

 

 クルスは再び何か考え込んだかと思うと、やがて顔を上げ、八幡に言った。

 

「八幡様、もしあの二人がオーケーしてくれるなら、

約束のお出かけを、三人同時にしてもらって、

五人で二泊くらいで軽井沢の保養所に行きませんか?

金曜の夜に出発して日曜の夜帰ってくるみたいな」

「さすがにそれは、明日奈が許すかどうか微妙なラインだな」

 

 八幡のその慎重な意見に、クルスは頷きながら言った。

 

「ええ、だから五人と言いました、明日奈も誘いましょう」

「あっと、そういえば五人って言ってたな、俺も久しぶりにゆっくりしたいし、

どうなるかは分からないが、とりあえずみんなに聞いてみるか?」

「はい!」

「いいなぁ、私も行きたかった……」

 

 話を聞いていた薔薇がそう呟き、八幡は薔薇に言った。

 

「まあそのうちな、今は忙しい時期だろうし、今回はお前は仕事を頑張れ」

「絶対よ、約束だからね!」

「分かってるって」

「ところでピトなら今丁度ここに来ているわよ」

「お、そうなのか、どこだ?」

「多分社長室ね、って、噂をすれば………」

 

 丁度そこに、パタパタと足音が聞こえ、エルザが秘書室に飛び込んできた。

 

「ここから八幡の気配がする!」

「………お前は相変わらずだよな、それに小猫も、よく足音だけでこいつだって分かったな」

「連絡無しでここに来るのはあんたかピトくらいだからね」

 

 薔薇はその八幡の質問にあっさりとそう言った。

 

「なるほど」

「八幡様、それじゃあ早速オファーを……」

「だな、おいピト、例のどこかに連れてけって話なんだが……」

 

 そして八幡はエルザに先ほどの企画の話をした。

 

「なるほど、二人でお出かけも捨て難いけど、それも楽しそうね」

 

 そしてエルザはスケジュールのチェックをしていたが、

やがて嬉しそうに顔を上げ、八幡に言った。

 

「うん、今度の週末なら大丈夫かも!」

「そうかそうか、残るは詩乃だな」

「あ、シノのんなら、さっき下で見たよ?バイトだって」

 

 エルザがそう言い、八幡は驚いた。

 

「あいつがこっちでバイトなんて珍しいな」

「暑い中、家まで帰るのが嫌だったみたいよ」

「………まあ気持ちは分かる」

 

 そして八幡とクルスとエルザは、直接詩乃の下へと向かった。

 

「よぉ詩乃、頑張ってるか?」

「あれ、八幡?それにピトとイクスも来てたんだ」

「たまたまな、それで詩乃、お前に話があるんだが」

 

 そして八幡は詩乃に、先ほどエルザにしたのと同じ説明をした。

 

「いいわね、是非参加させてもらうわ」

「そうか、それじゃあ残りは明日奈だな」

 

 八幡はそう言い、さすがに明日奈はここにはいなかった為、直接電話を掛けた。

当然大丈夫だろうと思われたのだが、意外な事に、明日奈はその申し出を断った。

 

『ごめん、実はその日はバタバタしてるんだよね……』

「何かあるのか?」

『実は、兄さんに結婚話が持ち上がっていてね、先方の実家に泊まりで挨拶に行くの』

 

 八幡はその予想外の言葉にとても驚いた。

 

「まじかよ、ついにか」

『うん』

「でも泊まりって、遠い所なのか?」

『北海道だってさ、せっかくだし、ついでに家族でちょっと回ってみようって話になったの。

だから私の事は気にせず、そっちはそっちで行ってきちゃって、

二人っきりとかじゃないんだし、泊まりでも問題無いから』

「そうか、それじゃあ明日奈とは、そのうち二人っきりで行けばいいな」

『うん、その為にも私を案内出来るように色々見てきてね』

「おう、任せとけ」

 

 そして八幡は、三人にその事を伝えた。

 

「そうなんだ、北海道は行った事ないなぁ」

「そういえば北海道にはフカがいるわね」

「案外偶然向こうで会ったりしてな」

「そんな訳無いじゃない、広いんだから」

「まあそうだよな」

 

 そんな会話をしながらも、四人は一度秘書室へと移動し、旅行の予定を立てていった。

 

「まあこんな感じか」

「保養所の予約もとれたわよ」

「小猫、悪いな」

「問題ないわ」

「それじゃあ私は今日は帰るね、これからレコーディングなの」

「頑張れよ、エルザ」

「うん!週末楽しみだなぁ」

 

 エルザはそう言って帰っていき、続けて詩乃も言った。

 

「私もバイトに戻るわね」

「ちゃんとまめに水分はとるんだぞ」

「うん、気を付ける」

 

 こうして詩乃もバイトに戻っていき、残されたクルスは八幡に言った。

 

「八幡様、たまには軽く飲みにでもいきませんか?」

 

 八幡は、まさかクルスがそんな事を言い出すとは思わなかった為、少し驚いた。

 

「お前がそんな事を言うのは初めてじゃないか?」

「かもしれません」

「どこか行きたい店でもあるのか?」

「いえ、特には」

「そうか、まあたまにはいいか」

「せっかくだし、室長も行きますか?」

 

 クルスは薔薇にそう声を掛け、薔薇は驚いた顔で頷いた。

 

「わ、私も誘ってくれるの?」

「お前、その答え方、いかにも友達がいない奴の返事だからな」

「なっ……そ、そうですが何か?」

「開き直るんじゃねえよ」

「今日はもう少しで仕事が終わるから、あと一時間くらい待ってて」

「オーケーだ、おいマックス、それまでどこかで時間を潰すか?」

「それじゃあ少し近場をぶらぶらしましょう」

「たまにはそういうのもいいかもな」

 

 八幡はその提案をオーケーし、クルスと共にソレイユ本社ビルの外に出た。

 

「そういえば、この辺りにどんな店があるかとか、全然知らないな」

「そういえば私もあまり……」

「まあとりあえず適当に歩いてみるか」

「はい」

 

 こうして二人は歩き出したのだが、その時ちょうど正面のマンションから、

優里奈が出てくるのを発見した。

 

「お?」

「あっ、八幡さんにクルスさん、どこかにお出かけですか?」

「おう、一時間後に小猫と三人で飲みに行くんだが、

それまでの時間潰しにこの辺りをブラブラしようと思ってな。優里奈はどこに行くんだ?」

「特に何も決めてませんでした、この辺りの事をあまり知らないので、

ちょっと周辺を回ってみようかなって」

「それなら優里奈ちゃんも一緒に行く?」

 

 クルスがそう提案し、優里奈はその申し出を嬉しそうに受けた。

 

「いいんですか?是非お願いします!」

「俺達もこの周辺には詳しくないから、近場を回ってみようって思ってたんだよ」

「あ、一緒ですね、ふふっ」

 

 こうして三人は、ソレイユ周辺の探索に出かける事になった。




この雨のせいで、色々仕事が立て込んでしまったので、
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