いつもよりおかしな内容が多いのは気のせいです!胸絡みのネタも今日でひと段落です!
「優里奈ちゃん、テストはどうだった?」
「それが……」
優里奈はそう言って下を向き、八幡とクルスは、もしや成績が思わしくなかったのかと、
心配そうな顔をして優里奈の言葉を待った。
「私、あんないい点数をとったのは初めてです!」
優里奈は突然明るい顔でそう言い、二人はホッと胸をなでおろした。
「雪乃さんとクルスさんに教わった教科は平均を遥かに超えました、
それだけでも常に平均をうろうろしていた私にとっては本当に凄いんですけど、
問題は紅莉栖さんに教わった物理ですね、私、物理とか本当に弱かったんですけど、
今回物理が学年一位だったんですよ……それで先生も驚いちゃって、
こっそり理由を聞かれて、紅莉栖さんに教わったって言ったらサインをねだられました……
何なんですか学年一位とか、あの人は神の使いか何かですか?
暇そうな時に、ノートに『ヽ(*゚д゚)ノ<カイバー』とか書いてた時は、
やっぱり同い年の女の子なんだなとか思いましたけど、
その後に教えてくれた想定問題が全部当たるとか、本当に天才なんだなぁと驚きました」
「まじかよ、凄えな紅莉栖」
「おお……」
その言葉に、クルスでさえも感嘆したように見えた。
「実際、お前や雪乃から見て、紅莉栖はどうなんだ?」
「あれは一種の化け物、多分本気を出したらタイムマシンとか完成させて、
世界征服を狙えるような人。もしくはその発明を元に世界大戦が起こるレベル」
「あはははは、そんな事ある訳無いだろ」
八幡はそのクルスの言葉を冗談だと思い、そんな反応をしたが、
そんな八幡にクルスは言った。
「彼女はそんな事は絶対に望まないけど、周りの人はそうじゃないかもしれない。
八幡様もご存知の通り、彼女は実験となると目の色を変える性質がある。
だからそのように彼女の思考を誘導し、利用しようとする者はいるかもしれない」
「ああ、そういう事もあるか……」
「この前も紅莉栖さん、実験をエサに釣られてましたね……」
ハチマンと優里奈は先日八幡の部屋で繰り広げられた光景を思い出し、
紅莉栖ならありうるかもしれないと思った。
「だから八幡様は、早めに彼女の手綱を彼女の教授ごと握るべき」
その、教授ごとという言葉に反応した八幡は、スッと目を細めながらクルスに尋ねた。
「お前、アルゴから聞いてたのか?」
「はい、アメリカ行きのメンバーである、私と雪乃と室長は知っています」
「そうか、まあその事は他言無用でな。まだレスキネン教授は、
そこまでその組織には傾倒していないみたいだから、
実際に教授に会って、こちら側に引き寄せるつもりなんでな」
「分かりました」
そんな二人の会話を聞いて、優里奈は目を白黒させた。
「あ、あの……今何か、普通の女子高生が聞いてはいけないような事を、
思いっきり聞いてしまった気がするんですが」
そんな優里奈に、クルスは真顔で言った。
「優里奈が普通の女子高生?八幡様に関わった時点でそれはない」
「ですか……」
そして八幡も優里奈にこう言った。
「とか言いながらお前、そこまで嫌がってはいないみたいだよな」
「まあ、興味はありますしね」
「頑張って成長して、俺を支えてくれよ」
「何か私、もうすっかり取り込まれてません?」
優里奈は今更ながらその事に気付いたのか、そう言った。
「ははっ」
「笑って誤魔化さないで下さい!」
「ははははは」
「だから笑って誤魔化さないで下さい!」
「はははははははは」
「もう……」
そして優里奈は、ため息をつきながら八幡に言った。
「仕方ないですね、しばらくは付き合ってあげます」
「八幡様、私は最後までお付き合いします」
「おう、俺一人じゃ何も出来ないから頼むわ」
「はい」
「あっ……最後……いえ、は、はい!」
この時優里奈の脳内に、最後まで八幡の世話をやかないとという使命感が刻まれた。
この後優里奈は、積極的に八幡の部屋の管理をこなすようになる。
「あれ、こんなところにゲーム屋があったのか」
「そういえば、今のザ・シードのゲーム市場ってどうなってるんですかね」
「うちのALOが一位で、二位は確かこれだ」
そう言って八幡が手にとったのは、『アスカ・エンパイア』というゲームだった。
「これですか?何か和風なゲームですね」
「若干ホラー系も入ってるみたいだな」
「まあ日本には、神様も妖怪も沢山いますしね」
「だな、ネタを作ろうと思ったらいくらでもいけるんだろうな」
八幡がそんな事を言う中、優里奈はそのゲームをじっと見つめていた。
「どうした優里奈、興味があるのか?」
「あ、はい、そうですね」
「まあ機会があったらやってみるといい、暇なら付き合ってやるから」
「はい、その時はお願いしますね」
そして三人は店を出ると、再び歩き始めた。
「思ったよりも色々な店があるな」
「ですね、あ、こんな所にスーパーがあったんだ、色々買い込むのに便利かも」
「そういえば、部屋の管理にかかった費用はちゃんとまとめて俺に請求するんだぞ?
ついでに何か買う物があるなら今買ってくか?」
「あ、それじゃあちょっとだけ寄りたいです」
「丁度荷物持ちの俺もいるしな」
「そんな、悪いですよぉ」
「別に俺の部屋の管理の為なんだから、悪いって事は無いだろ、遠慮すんな」
「あ、はい、それじゃあお願いします」
そして三人はそのスーパーに入った。
一人暮らしがそれなりに長いクルスや優里奈はともかく、
こういった所で買い物をした事がほとんど無い八幡にとっては新鮮な体験だったようだ。
そして八幡は、お酒が置いてあるコーナーに差しかかった時、思わず声を上げた。
「おおっ、これは中々……」
「そんなに珍しいですか?」
「おう、凄く新鮮な気分だ、いつもはコンビニばっかりだしな」
「八幡さんって、確かに基本コンビニで全部済ませてそうな雰囲気がありますけど、
でもコンビニにだってお酒は置いてあるはずじゃ……」
「意識して見た事が無かったんだよな、
う~ん、缶の酒一つとってもこれだけ種類があるのか……」
そんな八幡の姿が珍しかったのか、クルスは興味深そうに八幡に尋ねた。
「八幡様、何か気になるものでも?」
「この辺りの甘そうな酒を、ちょっとずつ飲み比べしてみたいかな」
「なるほど……それなら今日は宅飲みにしますか?」
「おお、その手があったか、宅飲みは初めてだな、
そうだ、もし良かったら優里奈もジュースで参加するか?」
「いいんですか?それじゃあせっかくだから、料理も色々作りますね」
そう言って優里奈は他の食材売り場へと向かった。
「私は室長に連絡しておきますね、せっかくだから明日奈も呼びますか?」
「そうだな、聞いてみるか」
だが明日奈は、残念ながら旅行の準備で色々忙しいようで、参加出来ないとの事だった。
『行きたかったなぁ、噂の優里奈ちゃんにも会いたかったし』
「まあ結婚式から帰ってきたら、改めて企画すればいいさ」
『うん、楽しみにしとくね』
こうして優里奈が明日奈を見る機会は、今回は訪れなかった。
まだ当分は、優里奈のいつもの質問が、他の女性陣に投げかけられる事になるのであろう。
ちなみに明日奈の着替え一式は、一番大きなスペースに既に準備されていた。
ちなみに下着を選んだのは陽乃である為、確実に八幡以外には見せられないのが難点である。
「八幡さん、量はこれくらいでいいですか?」
「四人だし、十分じゃないか、それじゃあ会計してくるわ」
「あっ、はい、お願いします」
優里奈は、少しくらいは自分で払うなどとここで言う事は無意味だと悟り、
支払いの全てを八幡に任せる事にした。その事によって優里奈の頭の中では、
頂いた食事の分、きっちりと八幡の世話をしようという考えが巡っており、
こうした事が重なって、優里奈は益々八幡の世話にのめりこんでいく事になる。
「さて、そろそろ小猫も仕事が終わるはずだ、とりあえず部屋に戻るか」
「あっ、もう来てるみたいですね」
「だな」
マンションの前で待っていた薔薇も無事に合流し、四人はそのまま八幡の部屋へと戻った。
「さて、何を作るんだ?もちろん俺も手伝……」
「いいから八幡さんは座ってて下さい」
優里奈はその八幡の言葉を遮ると、いつものエプロンを付けてキッチンに立った。
それを薔薇とクルスが手伝い、八幡は何もする事が無く、居間で暇をもてあましていた。
「貧乏性なせいか、こういうのは落ち着かないな……」
明日奈がキッチンに立っている時は、こんな事は思わないのだが、
やはり勝手が違うのだろう、八幡は立ち上がると、
再びキッチンへ、何か手伝う事は無いかお伺いをたてにいった。
「なぁ優里奈、やっぱり俺にも何か……」
「大丈夫ですよ、でもそうですね、そろそろ料理が順番に出来上がっていくと思うので、
それを居間のテーブルに並べていってもらえますか?」
「おう、お安い御用だ」
八幡は、やっと自分にも仕事が出来たと喜び、どんどん料理を運んでいった。
「さて、これで全部ですね」
「優里奈は手際がいい、あまり手伝う事が無かった」
「そんな事ないですよ、クルスさんには助けられましたよ」
「くっ、胸の差はほとんど無いけど、女子力の差が……」
そう呟いた薔薇に、八幡は冷たく言った。
「ちなみに俺はお前に女子力があると一度でも感じた事は無いからな」
「いつも私の胸を見て興奮している癖に!」
「風評被害広めんなコラ、街中ででかい声で、『お~い小猫』って呼んでやんぞ」
「ごめんなさい調子に乗りました……」
そのコミカルな雰囲気に、優里奈とクルスは笑いを堪え切れなかった。
だがそんな空気は、いざ飲み会が始まった瞬間に一変した。
「小猫、それを取ってくれ」
「はい、これね」
「あとアレだ」
「はいはい、アレね」
「おう、悪いな」
会話の合間に繰り広げられるこんな遣り取りに、二人は目を見開いた。
八幡と明日奈はアイコンタクトだけで同じような遣り取りをする為、
比較対象にすらならないが、世間の一般的な熟年夫婦が醸し出すような雰囲気を、
この二人は自然と纏っていたからだ。
「薔薇さん、凄い……」
「これもある意味女子力?いや、八幡様力?さすがは室長、私も見習わなければ……」
「ん?私の何を見習うって?」
「いえ、こっちの話です」
「室長は女子力は無いけど熟女子力は凄い」
「ちょっとクルス、あんたどさくさ紛れに何を言ってるのよ!」
「今のは褒め言葉」
「褒め言葉?ならいいわ」
「いいんだ……」
そんな驚く優里奈に、薔薇はそっと囁いた。
「いい?優里奈、この程度の事でいちいち目くじらをたてるような女は、
彼の傍にいたとしても長くもたないわよ」
「………分かりました、肝に銘じます」
「今ならまだ引き返せるわよ?」
「いえ、私は今、とても楽しいですから、この出会いに全力でしがみつきますよ」
「そう、残念ね」
その薔薇の言葉を聞いた優里奈は、微笑みながら言った。
「ふふっ、残念でしたね」
「まったくよ、ライバルを一人潰そうと思ったのに」
「八幡さんのお世話係は渡しませんよ」
「え?」
薔薇はその言葉に唖然としたが、優里奈がそれで満足しているようだったので、
それならそれでいいかと思い直し、冗談めかして言った。
「私のように、この胸を使って八幡のお世話をする事が出来るのかしらね」
「自分の妄想を事実のように他人に語るんじゃねえよ」
「ふぎゃっ」
どうやら薔薇の言葉が聞こえたらしく、八幡がいきなり薔薇の頭に拳骨を落とした。
その八幡の後ろでは、クルスが自分の胸を押さえながら何かぶつぶつ言っており、
優里奈は薔薇を慰めながら、そっと囁いた。
「その技術も、研究して必ずモノにしてみせます!」
その優里奈の真面目な表情を見て、薔薇は優里奈の天然さに呆れたが、
面白そうだからとそのまま放置する事にし、にこりと微笑むだけに留めたのだった。
こうして飲み会は終わり、三人は八幡の部屋で眠りについた。
八幡は当然居間のソファーベッドで寝る事になったのだが、
そんな八幡の部屋の扉を開ける者がいた。
「ん……誰だ?」
八幡は、この部屋の鍵が他に存在していた事に驚きつつも、入り口へと向かった。
そこにいたのは、興味深そうにきょろきょろしている明日奈の姿だった。
「お?明日奈、何でここに?っていうかどうやってここの鍵を手に入れたんだ?」
「あ、うん、実は私専用の鍵だっていって、前に姉さんに渡されてたんだよね、
もっとも今までこれを使う機会が中々無かったんだけど」
「そういう事か、まああがってくれ」
「うん」
そして明日奈は居間に入ると、その意外な広さに驚いた。
「へぇ、いい部屋だねぇ」
「色々とおかしな所が満載だけどな」
「あ、今日はここで寝てるんだ」
「おう、こういう時は、寝室は取られちまうからな」
「三人はもう寝てるの?」
「だな、俺が覗く訳にはいかないから、こっそり覗いてみるといい。
あ、ちなみにクローゼットも女性陣に占拠されててな、
個人の着替えが僅かばかり入ってるらしいんだが、一番大きな引き出しに、
明日奈の予備の下着も用意されてるらしいぞ、ちなみに選んだのは姉さんだ」
「そうなの?それじゃあ遠慮なく……」
明日奈は最初に八幡に説明されたクローゼットを開け、赤面しながら呟いた。
「姉さん、これを私に着ろと……ま、まあどうせ八幡君しか見ないんだからいいけど……」
そして明日奈は次に、大胆にもベッドの近くに行くと、優里奈の顔を覗き込んだ。
(あ、やっぱりお兄さんの面影があるや)
その直後に明日奈は目を横に向け、わずかにぎょっとしたような雰囲気を見せた後、
居間にいる八幡の所へと戻った。
「クローゼットの中、確認したか?」
「あ、う、うん……八幡君のえっち」
「え?そんなにか?俺はどんなのか、よく知らないんだが」
「あ、うん、大丈夫大丈夫、多分」
「そ、そうか……」
実際は大丈夫とはとても言えないのだが、知らぬが花である。
「で、どうだ?優里奈の顔は見れたか?」
「あ、うん、確かにお兄さんの面影があったかな」
「そうか、まあ知らなければ、別に優里奈の事は放置しても良かったんだが、
やっぱり知っちまった以上は、可能な限り面倒をみないといけないからな」
その言葉に頷いた明日奈は、次に予想外の事を八幡に言った。
「そうだね、やった、小町ちゃんに続いて私にもう一人妹が出来る」
「ん?俺はしっかりと自立させればいいと思ってたけど、
明日奈はそういう認識なのか?それならそういう方向でも別に構わないか」
「うん、その方向で!」
どうやら明日奈は優里奈の顔を見て、母性本能が刺激されたようだ。
その事を八幡に告げられた明日奈は、突然落ち込んだ姿を見せた。
「母性本能ね……ははっ……」
「ど、どうした明日奈、そんな乾いた笑いをして……」
「だって、あの八幡山脈を見ちゃったらねぇ……」
「八幡山脈って何だよ……」
「優里奈山が二つ、薔薇ヶ岳が二つ、それにクルス連峰で八幡山脈だよ」
「あ~………」
八幡はやっとその意味を悟り、問題ないという風に明日奈を抱き寄せると、
優しい声で明日奈に言った。
「俺には明日奈が一番だ」
「本当に?」
「おう、本当だ」
その言葉を聞いた明日奈は、とても嬉しそうに微笑み、
八幡に馬乗りになってキスをせがんだ。
八幡は明日奈をしっかりと抱きしめ、明日奈にそっとキスをした。
「ふう、八幡君成分補給っと」
「姉さんや理事長みたいな事を言うなって……」
「それじゃあ外にお父さんの車を待たせてあるから、今日は行くね」
「おう、落ち着いたらまたここに来ればいい」
「うん!」
どうやら明日奈は準備の買い物の帰りに、
章三に頼んで少しだけここに寄ってもらったらしい。
そして明日奈は帰り際に、八幡に言った。
「ねぇ、北海道のお土産は何がいい?」
「白い恋人ドリンクがいい、マックスコーヒーと飲み比べをしたり、混ぜたりしてみたい」
「ぷっ」
そのいかにも八幡らしい言葉に明日奈は微笑んだ。
「分かった、多分送る事になると思うから、期待して待っててね」
「おう、それじゃあまたな」
「うん!」
そして二人はもう一度キスをし、明日奈はそのまま去っていった。
「さて、俺も寝るとするか」
八幡はソファーベッドに横になり、明日奈の香りを僅かに感じながら眠りについた。
そして二日後、明日奈は北海道へと旅立っていき、
八幡達もまた、軽井沢へと向かったのだった。