ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

452 / 1227
いつも誤字報告を下さる皆様、ありがとうございます!


第450話 連合の襲撃

 八幡達や明日奈が風呂に浸かって浸かってリラックスしていた頃、

キリトはクリシュナやフェイリスを伴い、キャラの育成の為に戦闘を繰り返していた。

この日のメンバーは、他はリーファとレコンであった。

キリトは各人に目標を設定する事で、全体のレベルアップを図ろうとしていたのだった。

 

「クリシュナさんは静止状態だと問題無いが、動きながらの詠唱がまだ苦手だよな」

「クリシュナでいいわよ、そうね、特に補助魔法は、

効果は高いけれど呪文が長い分大変なのよね」

「魔法を使うタイミングは完璧だから、あとはそっちの練習あるのみだな」

「ええ、頑張るわ」

「それにしてもな……」

 

 そう言ってキリトがフェイリスの方をチラリと見た為、

クリシュナもそれに釣られてフェイリスの方を見た。

 

「言いたい事は分かるわ」

「魔法使いって、もしかしてフェイリスさんの天職か?」

「そうみたいね、どんな難しい呪文でも一度で覚えちゃうし、

正直どうやっているのか教えて欲しいくらいよ」

「ニャニャッ?」

 

 二人の視線に気付いたフェイリスが、

戦闘が落ち着いたのを見計らって二人の方に近付いてきた。

 

「二人とも、こっちを見てどうしたのニャ?」

「いや、フェイリスさんはどうやって呪文を覚えてるのかなって」

「一応部下なんだから、フェイリスって呼び捨てにするのニャよ、副団長。

先ずフレーズを覚えたら、どういうポーズにするか決めて、体全体で覚えるのニャ!」

「中二病乙」

「ネラー乙ニャ」

「ぐぬぬ……」

「やるのニャ?受けてたつのニャ!」

 

 二人はそう言って睨み合ったが、もちろん冗談である。

キリトもそれが分かっているからこそ、何も言わなかった。

 

「キリトさん、大変です!」

 

 丁度そこに、周囲の警戒にあたっていたレコンが駆け込んできた。

 

「どうした?何かあったのか?」

「連合の奴らが真っ直ぐこちらに近付いてきます」

「連合が?あいつらは一度総崩れになったんじゃなかったか?」

 

 例の信号弾、ヴァルハラ・コールの運用と共に、

散々叩きのめされた反ヴァルハラギルド連合は、いくつかのギルドが潰れ、

今はかなり弱体し、組織的な反抗は不可能になっていると考えられていた。

 

「最近加入した七人のメンバーを中心に、また動きが活発になってきたみたいです、

噂では元SAOサバイバーだとか何とか」

「ああ、SAOサバイバーがありがたがられる例の風潮のせいか、名前は分かってるのか?」

「ゴーグル、コンタクト、フォックス、テール、ビアード、ヤサ、バンダナ、だそうです」

「覚えが無い名前ばっかりだな、まあ昔と同じ名前とは限らないか」

「一応これが写真です」

 

 最近では密偵としての技術に磨きがかかってきたレコンは、

色々とそういった情報を収集しているようで、即座にキリトに写真を見せてきた。

 

「当たり前だけど、やっぱり見覚えが無いな」

「ですよね、SAOの時とは違う顔になっている訳ですしね」

「まあ俺達ナーヴギアでスタートした組は、かなり似た造形になっているんだけどな」

 

 そしてキリトは、レコンにこう尋ねた。

 

「で、今こっちに向かっている奴らの中に、こいつらはいたのか?」

「はい、先頭を飛んでました」

「そうか……よし、とりあえず叩いておくか、敵は何人だ?」

「三十人くらいですね」

「結構多いな、まあ頑張れば問題無いだろ、

ちなみにレコン、今ヴァルハラ・ガーデンに誰かいるか?」

「待って下さい、えっと、ユキノさんがいますね」

「おっ、ナイスだ、悪いがユキノに一応こっちのフォローを頼んでおいてくれ」

「分かりました」

 

 こうしてキリト達は慌しく動き始めた。

フェイリスとクリシュナにはレコンが付き、前衛をリーファとキリトが努める。

作戦としては、クリシュナが全体を強化し、キリトはそのまま突っ込んで敵を集めつつ、

隙を見てフェイリスとリーファが魔法攻撃を叩き込むというシンプルなものであり、

もし近くに敵が来た場合は、リーファとレコンがそのまま撃退する事になっていた。

 

「お、あれか?確かにさっきの七人がいるな」

「ですね、何の工夫もしないでただこっちに向かってきてるみたいですが……」

「もしかしてなめられてるのかな?」

「まあ戦力差は六倍ですからね、何とかなると思ってるんじゃないですか?」

「だそうだ、どうする?」

 

 キリトはあえて、三人の女性陣にそう話を振った。

 

「いい度胸よね」

「なめた態度をとった事を後悔させてやるニャ」

「久々に暴れられるわね、腕が鳴るわ」

 

 元々そういった素養があったフェイリスだけじゃなく、

クリシュナも好戦的な様子でそう言った。

どうやら順調にヴァルハラの空気に染まりつつあるようだ。

 

「さて、まあとりあえず話してみるわ」

「とか言いながら、煽る気満々でしょ?」

「さすがは副団長、よく分かってるのニャ」

「まあ仲良くする理由も意味も無いからな」

 

 そう言ってキリトは、一歩前に出た。

同時にクリシュナは、ゆっくりと強化魔法の詠唱を開始し、

適正なタイミングで発動出来るように、詠唱速度の調節を始めた。

 

「よっ、一応聞いておくが、俺達に何か用か?ひよっこども」

 

 そのキリトのセリフを聞いたフェイリスとリーファは、ひそひそと囁き合った。

 

「いきなり煽ったニャね」

「私が言うのもアレだけど、お兄ちゃんはうちで一番好戦的だしね」

 

 そしてそのキリトの煽りを受け、フォックスと呼ばれるプレイヤーが一歩前に出て言った。

 

「けっ、相変わらず嫌な野郎だ、だがあの時とは違う、今度こそ目にものを言わせてやるぜ」

「今度こそ?どこかで会ったか?」

「レベル制MMOの、残酷なまでの現実って奴は、もう通用しねえぜ」

「他のゲームでそれなりに鍛えてきたからな」

「今度は負けねえ!」

 

 その言葉にキリトは、一瞬昔の記憶を刺激された気がしたが、

やはり何も思い出す事は出来なかった。

 

「何だそれ、そんな事あったか?」

「なっ……」

「覚えてないのか?」

「おう、覚えてないな、お前は今まで踏み潰してきたアリの数なんか覚えてないだろ?」

「くっそ、ロザリアの奴といいお前といい、むかつくぜ」

「あのクソ女、現実に帰還してしばらくしたら、私は勝ち組ですってな感じで、

まったく連絡がとれなくなったからな」

 

 その言葉を聞いて、キリトは相手が誰なのかハッキリと思い出した。

 

「ああ~!お前らロザリアの取り巻きだった、ABCDEFGか!」

「ふざけるな、俺達はそんな名前じゃねえ!くそっ、フルボッコにしてやる!」

「敵はたったの五人だ、こっちは三十人、負けるはずがねえ、行くぞ!」

「フォーカスライト!」

 

 その瞬間に、クリシュナの強化魔法が発動し、ヴァルハラの五人は光に包まれた。

 

「おお、力が漲ってくるこの感じ、癖になりそうだな」

 

 そう言いながらキリトは、敵の集団へと突っ込み、またたく間に三人の敵を斬り伏せた。

 

「で?」

「くそっ、こいつさえ倒せば残るは雑魚だ、数の力で押し切れ!」

「誰が雑魚ですって?エア・ブレイズ!」

「なめるんじゃないニャ、ナパーム・フレア!」

 

 その言葉にフォックスが反応した瞬間に、その顔の横を炎と風が通過し、

二人の味方が直撃をくらい、その動きを止めた。どうやらかなりのダメージを受けたようだ。

 

「ちっ……」

 

 フォックスは舌打ちすると、仲間とアイコンタクトをとった。

それを受け、ヤサとバンダナがフェイリスに、テールとビアードがリーファに襲いかかった。

 

「させないわよ、インビジブルハンド!」

 

 その時クリシュナが、その四人に動きを阻害する魔法を掛けた。

その魔法を受け、四人の動きは明らかに鈍くなり、

リーファは自らの剣でその二人を余裕を持って迎え撃ち、

フェイリスは少し後方に下がり、レコンが代わって前に出た。

 

「お前らの相手は僕だ!」

 

 フェイリスは、そのまま敵の集団にどんどん魔法を撃ち込んでいく。

何人かはそれを見て、フェイリスの方へと向かおうとしたのだが、

それらの敵にはキリトが睨みをきかせ、絶対にフェイリスの方へは向かわせなかった。

レコンはハチマン直伝の短剣さばきを見せ、二人を相手にどんどん傷を与えていく、

そしてその直後に、リーファはテールを、レコンはヤサを倒す事に成功した。

 

「テール!」

「ヤサ!」

「よそ見をしている暇があるの?」

「自分の心配をした方がいいと思うな」

 

 残されたバンダナとビアードも、徐々に二人に追い詰められていく。

そしてキリトは、大人数相手に大立ち回りを続けていたが、

仲間の方に敵を行かせないようにしていた為、中々キル人数を伸ばせないでいた。

そんな中、突然クリシュナが、赤と黒の信号弾を上げ、

キリトはそれで、ユキノが近くまで来ている事を理解した。

 

「よし、ユキノが来たら、もう少し敵を倒す事に集中出来るな」

 

 

 

「クリシュナ?近くに来たわ、信号弾をお願い」

『了解』

 

 ユキノは、今日のメンバーの中で、

おそらく戦闘中に一番余裕があると思われるクリシュナに通信を入れ、

直ぐに返事をもらう事に成功していた。

そしてその直後に赤と黒の信号弾が上がるのを見て、ユキノはそちらへと全力で向かった。

 

「赤と黒……攻撃しろ、救援求む、ね、要するに敵を攻撃中、場所はあそこって事かしら。

劣勢にはまったくないっていないようね、さすがはキリト君だわ」

「だな」

 

 ユキノにはどうやら連れがいたようで、その連れは笑顔でユキノにそう返事をした。

そして前方に、争う多くのプレイヤーの姿が見えてきた。

 

「あれみたいね」

「先に行く」

「了解よ、気を付けてね」

「ああ、リズに鍛えてもらったこの剣のデビュー戦だ、負ける訳にはいかないな」

 

 

 

 そして戦場に一筋の黒い光が走り、

キリトの背後にいたプレイヤーの一人が真っ二つにされ、その光はそのまま着地した。

キリトがチラリと見ると、そこにはキズメルが、キリトの背中を守るように立っていた。

 

「お、来てくれたのか」

「ああ、今はハチマンがいないから、妻である私が代わりに出るべきだろう。

夫の留守は妻たる私が守らないといけないらしいからな」

「それは何から学んだんだ?」

「先日見た時代劇だ」

「なるほど」

「誰だお前は!」

 

 その時フォックスの後ろに控えていたコンタクトが一歩前に出た。

コンタクトはヴァルハラのメンバーを全て把握しており、今の会話の妻という部分に反応し、

乱入してきたのがアスナではない事を理解した上でキズメルにそう叫んだ。

ちなみに今のキズメルは、目元を蝶のアイマスクで隠しており、

その正体がNPCだと気付かれないようにしていた。

 

「ヴァルハラの秘密兵器、仮面の美女、黒アゲハだ、

と名乗るように、ハチマンから言われている」

「なっ、何だそれは」

「考えるな、感じるんだ、お前は今、それどころではないという事を、

と言えとも言われている」

「何を教えてるんだハチマンは……」

「キリト君、黒アゲハ、避けて」

「むっ」

「下がるぞキリト」

 

 二人はその言葉に合わせ、そのまま後ろに下がった。

その直後に上空から巨大な剣が降ってきて、コンタクトの体を貫き、

コンタクトは地面に叩き付けられ、そのまま死亡マーカーが表示された。

その剣はそのまま地面に突き刺さり、上空から降りてきた一人の少女が、

その剣の上にふわりと降り立った。もちろんそれはユキノである。

 

「うわお、派手な登場ニャね」

「やばい、ユキノさん格好いい」

「ユキノに全部持ってかれた……」

「ユキノさん、最高です!」

 

 そしてキリトも、苦笑しながらユキノに声を掛けた。

 

「随分派手な登場だな、絶対零度」

「以前彼にもらったこの剣は、こういう風にも使えるんだぞって、

前に彼から教わっていたのよ、黒の剣士」

「確かに効果的だな、あいつらみんな、お前に見蕩れてやがる」

「彼以外に見蕩れられても意味が無いのだけれど」

 

 その巨大な剣は、ユキノが以前ハチマンにプレゼントされ、

ゼクシードをぶっ飛ばすのに使われた例の剣だった。

そしてそのキリトの言葉通り、敵は度肝を抜かれ、放心したようになっていた。

そしてユキノは詠唱を始め、それを聞いたキリトとキズメルはユキノの近くに移動し、

逆にレコン達は、少しユキノから距離をとった。

 

「アイス・フィールド!」

 

 そしてユキノの詠唱が完成し、ユキノを中心に、ドーナツ型の氷のフィールドが形成され、

そこに立っていた敵は、その場から動けなくなった。

これは自身の攻撃力不足を痛感し、ユキノが覚えた攻撃魔法のうちの一つだった。

 

「今よ!」

「ヴァルキリー・パワー!」

 

 そのユキノの言葉にかぶせるように、クリシュナが攻撃力を上げる魔法を発動させた。

 

「了解」

「行くわよ!」

「黒アゲハ、いざ参る」

「リング・スライサー!別名クリリンのアレ、気円ニャン!」

 

 リーファとレコンは、棒立ちになったビアードとバンダナを倒す事に成功し、

キリトは名も知らぬプレイヤー達を片っ端から殲滅していき、

フェイリスの放った円盤状の光の刃物は、ゴーグルの体を斬り裂いた。

そして仲間を全て失ったフォックスが、呆然と呟いた。

 

「ま、また勝てないのか……」

「当たり前だろ、ヴァルハラが最強と呼ばれている意味を、もっとよく考えるんだな」

 

 キリトはフォックスに、冷たい声でそう言った。

 

「それじゃあまたの機会に出直してきてくれ、良かったな、ここがSAOじゃなくて」

「くっ、くそおおおお、今度は絶対に勝ってやるからな!」

「最後まで無様ね」

「雑魚らしい捨てゼリフにゃ」

「格好悪い……」

「フラグ立てんな、テンプレ乙って感じかしら」

 

 その女性陣から投げかけられる言葉を聞いて、レコンはこう呟いた。

 

「僕、こっち側で本当に良かった……」

 

 そしてフォックスもキリトに倒され、

周囲は三十個の死亡マーカーであるリメインライトで埋め尽くされた。

そのマーカーに向け、キリトが言った。

 

「ちなみにお前らが嫌うロザリアも、今はこっち側だ、もっともALOはやってないけどな。

お前らと違って、あいつは今は凄く有能で、ハチマンからの信頼も厚い出来る女だからな、

お前らが元仲間扱いしてるのを聞くとイラっとするな」

 

 そしてキリトは続けて仲間達に言った。

 

「さて、それじゃあ今日はそろそろ戻るか、俺達の庭に」

「キリト君、あなた随分……」

「さ、さあ行くぞ、キズメルの入れてくれたお茶を飲んで一息つこうぜ!」

 

 ユキノが何かいいかけるのを遮って、キリトは顔を赤くしながらそう言った。

それを見た仲間達は顔を見合わせると、そのままキリトと共に去っていった。

残された死亡マーカーは、一つ、また一つと消えていったが、彼らの戦意は消える事もなく、

今後彼らは、何度もヴァルハラ・リゾートに嫌がらせを仕掛けてくる事となる。




解説:アニメSAO一期第四話より、全員集合直後の立ち位置、左から

ゴーグル →ゴーグルをしてるから
コンタクト→最近眼鏡からコンタクトに変えた
フォックス→キツネ顔
ロザリア←立ち位置ここ
テール →しっぽのある髪型
ビアード→あごヒゲ
ヤサ  →ヤサぐれている優男
バンダナ→バンダナをしてるから

旧タイタンズハンド
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。