ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第454話 旅行の終わり、そして夏の到来

「フカちゃん、連日車を出してもらっちゃってごめんね?」

「いいっていいって、なんたって私達、親戚だから!」

「そんなに嬉しかったんだね……」

「もっちろん!」

 

 美優は満面の笑顔でそう言った。

 

「で、今日はおみやげを買い漁る日って事でいいのかな?」

「うん、片っ端から送っちゃうつもりなの」

「い、一体いくつ買うつもり……?」

「えっと……たくさん!」

「た、たくさんね……オーケーオーケーどんとこいだ!」

「それじゃあレッツゴー!」

「おう!」

 

 二人はノリノリで買い物に出かけた。明日奈と美優の相性は意外と良いようである。

 

 

 

「………で、何でスーパー?」

「甘いよフカちゃん、地方のスーパーってのはね、掘り出し物の宝庫なんだよ!」

「そ、そうなの?」

「例えばこのお菓子、知ってる?」

「うん、どこにでも売ってるし、私もたまに買うけど」

「これは東京には売ってません」

「ええっ、そうなの?」

「うん、これもこれもこれもそう」

「マジかああああ!スーパー凄ええええええ!」

「えっへん!」

 

 明日奈は得意げに胸を張り、片っ端から買い物カゴに、色々な物を詰め始めた。

 

「おお、大人買い……」

「そもそもお土産物屋にあるような物なんて、どこかで見たような物ばかりでしょ?」

「あ、うん、確かにそれは思う」

「でもスーパーなら変わった物がよりどりみどりな上に、お財布にも優しいエコ仕様!」

「おぉ………」

「まあもちろんお土産物屋にも行くけどね」

「あ、行くんだ」

「だってほら、一応値段とか気を遣わないといけない人もいるじゃない」

「あ~……」

 

 美優はその明日奈の説明に、とても納得した。

 

「まあこのくらいかな、それじゃあフカちゃん、

白い恋人ドリンクが売っているお店に案内してもらっていい?」

「オッケー!」

 

 二人はそのまま直営店に行き、白い恋人ドリンクを大人買いし、直接家へと送った。

 

「三十缶入りを二箱とか……もしかしてリーダーって甘い物好き?」

「うん、凄く」

「なるほど……それじゃあ私が持ってくお土産も甘い物にしないと……メモメモ」

 

 そう言って携帯のメモに書き込み始めた美優に、明日奈は言った。

 

「ところでそろそろお昼だけど、どうする?」

「何か食べたい物があるなら案内するよ?」

「う~ん、それじゃあラーメン!」

「明日奈って、結構庶民的なんだね、いい意味で」

 

 明日奈のその答えに、美優は感心したように言った。

 

「だって普段、あんまり食べる機会が無いんだもん」

「前言撤回!やっぱりお嬢様は存在した!」

「いやいやいや、寮住まいの女子高生にそんな機会ってあんまり無いってば」

 

 明日奈のその言葉を聞いた美優は、何かを想像するようにじ~っと明日奈の顔を見た。

 

「な、何?」

「そ、その歳で女子高生は、とても背徳的な香りが……」

「あ~……うん、自分でもたまにそれは思う……」

「だよね……」

「まあいいや、とりあえずラーメン!」

「ラーメン!」

 

 そして二人は、美優の案内でお奨めのラーメン店へと足を踏み入れた。

 

 

 

「あら、明日奈から電話?あの子は確か今、北海道じゃなかったかしら」

 

 土曜日という事もあり、家でのんびりしていた雪乃は、そう思いながら電話に出た。

 

「あ、雪乃?」

「どうしたの?まだ北海道よね?」

「うん、凄いの、もうびっくりなの!」

「どうしたの?何がそんなに凄いの?」

「えっと…………凶暴な旨みでしたね!」

 

 そう言われた雪乃は、明日奈が今どういう状況にあるのか理解した。

おそらくラーメンの旨みに、我を忘れて喜んでいるのだろう。

そう思った雪乃は、優しい声で明日奈に言った。

 

「…………ねぇ明日奈」

「うん」

「私へのお土産は、ラーメンの麺でお願い、出来れば生麺タイプの」

「あっ、お、おっけー、任せて!」

「ふふっ、お願いね」

 

 この電話を掛けてきたのが八幡だったら、雪乃は間違いなく八幡にお仕置きをしただろう、

だが相手が明日奈では、悪気があるとは到底思えず、

雪乃は穏やかな気持ちで相手をする事が出来たようだ。

 

「本場の味……楽しみだわ、上手く作れるかしら」

 

 そう言いながら雪乃は台所に向かうと、一つの寸胴鍋を取り出した。

 

「ついにあなたの出番ね、八麺くん、ふふっ、うふふっ」

 

 そして雪乃は、しばらく使っていなかった八麺くんを綺麗にする為に、

たわしで丁寧にごしごしとこすり始めた。

 

 

 

「すいません、モカソフトを四つお願いします」

 

 エルザに買いに行かせる訳には当然いかず、

クルスはエルザの盾として残しておく必要がある為、

必然的に買い物は、八幡と詩乃の役目になっていた。

二人は恐縮していたが、トラブルを避ける為にもこれは必要な事なのだと、

八幡は二人を説得し、こういう事になっているのだった。

 

「美味」

「おいしい!」

「うん、いいね」

「それは何よりだ」

 

 八幡達は、目立たない位置にあるテーブルに座り、色々と名物を楽しんでいた。

 

「ソフトクリームって色々な所で色々な種類の奴が売ってるよな」

「この近くにも、信州味噌ソフトってのがあるみたいよ」

「食べてみたいけど、さすがに連続だとお腹を壊しそうだね」

 

 そしてクルスが、長野県に存在するソフトクリームを羅列し始めた。

どうやら事前に調べていたらしい。

 

「リンゴソフト、巨峰ソフト、蜂蜜ソフト、黒蜜ソフト、栗あんソフト、

とうもろこしソフト、チーズソフト、わさびソフト、そばソフト、バッタソフト」

「待て待て、後半に怪しい名前の製品が並んでいた気がするぞ」

「バッタソフトって何!?」

 

 驚いたようにそう叫んだ詩乃に、クルスは淡々と言った。

 

「虫系が苦手な人は、絶対にぐぐっては駄目」

「うっ……そう言われると見てみたく……」

「見てみなよシノのん、私は見ないけど」

「詩乃、頑張って、私も見ないけど」

「さすがはBoB優勝者の勇者詩乃だ、まあ俺も見ないけどな」

「や、やめとく……」

 

 そして詩乃は、話題を変えようと思ったのかこう言った。

 

「わさびソフトとそばソフトは興味があるわね」

「いつか食べてみたくはあるね」

「通販とか出来ないのか?」

「無理でしょ」

「だよな……」

 

 この時よほど悔しく思ったのか、東京に戻った後、八幡は、

社員食堂に強引に業務用のソフトクリームメーカーを三台入れ、

普通のソフトクリームとフルーツ系のソフトクリームの他に、ご当地系のソフトクリームを、

社員食堂限定で、一般販売はしないという条件でメーカーと交渉の上、仕入れる事に成功し、

夏限定商品として、社員達に好評を博す事になる。

ちなみにバッタソフトが仕入れられたという事実は無い。

 

 

 

「明日奈、夜の予定は?」

「うん、明日の午前中に帰る事になってるし、さすがに実質最終日だから、

義姉さんを交えて先方のご家族と一緒に食事会かなぁ」

「もう結婚はほぼ確定と考えても?」

「むしろこの状態からふられるようじゃ、兄さんは一生結婚出来ないんじゃないかな」

「確かに……まあそういう事なら明日奈、

確実にあの二人がくっつくようにくれぐれもお願いね!」

「うん、任せて」

 

 そして美優は、時間まで明日奈に帯広を満喫してもらおうと考え、

明日奈を様々な場所へと連れていった。

初めてカヤックに乗った明日奈は、実はSAOで同じような船に乗った事があった為、

美優も驚くような腕の冴えを見せた。

釣り教室に行った時は、生餌こそ苦手のようだったが、

釣りの腕前自体はニシダの教えを受けていた為、

それなりに経験のある美優より遥かに多くの数の魚を釣りあげていた。

最後に二人は普通の場所にも行こうと相談し、カラオケに行ったのだが、

少しでもいい所を見せようと張り切って神崎エルザの新曲を歌った美優に対して、

古い曲ながら、明日奈は神崎エルザの曲を振りつきで完璧に再現し、

美優はそのクオリティに舌を巻いた。

ちなみに明日奈の歌った曲は、以前同窓会でエルザと一緒に披露した曲であった。

 

「副団長が完璧超人すぎる………出来ない事なんか無いんじゃないの?」

「何でもは出来ないよ、出来る事だけだよ」

「その出来る事が多いんじゃないかって事なんだけど……」

「どうだろう、自分じゃ意識した事無かったなぁ」

「ちなみに車の免許とかは?」

「あ、免許は持ってないけどマニュアル車の運転は出来るよ」

「えっ、何で?」

「ゲームの中で練習したんだよね、ほら、法律とか関係ないじゃない?」

「あ~、そっか、私もそれで練習だけしておこうかな」

「うん、ありだと思うよ」

 

 そして美優は、明日奈に次々と言葉を投げかけた。

 

「乗馬は?」

「乗れるよ?馬ってかわいいよね」

「ピアノ」

「それなりには」

「華道とか」

「すぐにやめちゃったけど基本くらいは?」

「茶道」

「それも大丈夫」

「むむむむむ、隙が無い……」

「そんな事ないよ、私なんて隙だらけだよ?」

「ど、どこが?」

「えっと……よく八幡君に、よだれをたらしながら寝ている所を見られたりとか……」

「か~っ、甘酸っぺえええええええ!」

 

 美優はそう言いながら、頭を抱えながらその場で悶絶し始めた。

 

「私もリーダーに、優しくよだれを拭いてもらいてえええええ!」

「そ、それくらいは機会があればしてもらえるんじゃないかな?」

「ほ、本当に?」

「う、うん、まあ多分……」

「明日奈様お願いします私にもそういったイベントが欲しいです、

朝リーダーに優しくよだれを拭いてもらいながら起きてみたいですうううううううう」

「そ、それなら私と一緒に今度千葉に来る時に、

八幡君が借りているマンションに泊まればいいんじゃない?」

 

 明日奈は美優の剣幕に押され、苦笑しながらそう言った。

 

「あ、でもその日はコヒーの家に泊まる事になってるんだ……ど、どうしよう……」

 

 葛藤する美優に、明日奈はこんな提案をした。

 

「それなら香蓮さんも一緒に泊まってもらえばいいんじゃない?

何度か会ったけど、じっくりと話した事は無いから、どんな人なのか興味があるし」

「で、でもコヒーは明らかにリーダーを狙ってますよ!?」

「あ、あは……今更って感じじゃない?今の八幡君の周りの子は大抵そうだし」

「た、確かに……」

「それに、手元に置いて管理しておいた方が色々と対策もとりやすいしね」

「えっ?」

 

 一瞬明日奈から、黒い波動を感じた気がして、美優は慌てて明日奈の顔を見たが、

明日奈は先ほどと同じようにニコニコと笑顔のままでおり、

美優は気のせいだろうと思い、そのまま明日奈とお泊りの予定を立て始めた。

 

(もう安定している昔からの知り合いと違って、

シノのんと香蓮さんと優里奈ちゃんの動向には、まだちょっと注意が必要なんだよね、

今回の件は、私にとっても渡りに船だったよ)

 

 この旅行後、明日奈は噂の八幡のマンションへの訪問が決まっており、

上手く調整して、そこに美優も連れて行く事を決めた。

 

 

 

「こ、これは……」

「まさに雪乃の為にあるような商品ね……」

「あいつへの土産はこれに変更だな」

 

 八幡が見付けたそのアイテムは、ねこカップという。

色々回っている最中に、とある売店で見付けたものだった。

 

「これって、東京の方でも売っているらしいですね」

「そうなのか……まあしかし、これ以上の土産はもう考えられないな」

「だね」

「八幡様、そろそろ白糸の滝に行きませんか?」

「そうだな、時間も押してるし、そろそろ行くか」

 

 そして四人は、あちこちの自然の風景を見てまわり、存分にリフレッシュする事が出来た。

 

「土産関係もオーケーだし、見たい所は大体見れたかな」

「短い時間だったけど、楽しかったねぇ」

「今度は他の人も誘ってどこかに旅行出来たらいいわね」

「それじゃあどこかで夕飯を食べてから戻るか、

明日の昼には向こうに戻るから、他にやりたい事や行きたい場所があったら今のうちにな」

 

 こうして軽井沢組も北海道組も、存分に旅行を堪能した。

東京に戻ったら、香蓮のお見合い問題と夏コミが待っているが、今はその事は置いておき、

八幡は、帰ったら明日奈と一緒に今回の旅行中に撮影した写真を眺めながら、

いずれ一緒に来る時の為の相談でもしようかと、のんびりと考えていたのだった。

 

 

 

 そして数日後、八幡のマンションに、明日奈を筆頭に、多くの女性陣が集まっていた。

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