ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

468 / 1227
昨日はすみません、お待たせしました!


第466話 脱出

「こいつはどうも参ったな、これがシャナの言ってた可能性って奴か」

 

 スタート直後に近くに身を潜めるのに丁度いいビルを見付け、

その中で待機していたゼクシードは、スキャン結果を見てそう呟いた。

 

「か、完全に囲まれてますよゼクシードさん」

「どうします?」

 

 ユッコとハルカは、焦ったようにそう言った。

 

「まだ完全に囲まれるまでには若干の時間の余裕がある、

先ず予備の装備を使って屋上に三人分のダミーを設置して、そこまでのルートに罠を設置だ。

そうすれば敵は、そっちに僕達がいると思って屋上に向かうだろう。

こちらは一階に潜み、その隙を見て離脱だ」

「シャナさん達のいる西に向かうんですね?」

「ああ、他の奴らは僕とシャナの関係をよく知ってるから、

まさかそっちに逃げるなんて思いもしないだろうからね」

「分かりました!」

「急ぎましょう」

 

 そう言って三人は作業を開始した。時間の余裕はあって数分、

それまでに雑でもいいからとにかく数多くの罠を設置しなくてはならない。

三人はそう考え、外の監視をしつつ作業を進めたのだが、

それはギリギリ間に合わなかった。

 

「ゼクシードさん、敵の集団が見えました、距離は百メートル」

「ちっ、今からじゃ一階に潜むのは間に合わないか、仕方ない、この付近に身を潜めよう」

 

 組んでいるせいか、躊躇いなく集結してきているのだろう、思ったよりも敵の進軍は早く、

ゼクシードは予定を変更して、三階に身を潜める事を決断した。

 

「僕は上から入り口に手榴弾を落としてから隠れるから、二人はここにいるんだ」

「はい」

「お気をつけて!」

 

 そしてゼクシードは単独で二階に下りると、

入り口に敵が姿を現した瞬間にそちらに何個か手榴弾を投げ込み、

直ぐに三階へと退避した。

 

 

 

「君達を雇いたい、報酬はこのくらいで」

 

 街中で突然そう声を掛けられた『ZEMAL(全日本マシンガンラヴァーズ)』の、

リーダーであるシノハラは、詳しく話を聞いて小躍りしながら仲間達の所へと向かった。

 

「………という訳で、そいつに雇われる事にした。

報酬はこのくらい、マシンガンの弾を大量に支給してくれる上に、

シャナ達さえリタイヤさせられれば、後は好きにしていいそうだ」

「まじかよリーダー、あのシャナと敵対すんの?」

「何か問題があるか?」

「いや、無いな」

 

 そのメンバーは、ニヤリとしながらそう言った。

 

「その通り、何故なら俺達は……」

 

 そして残りの五人は、口を揃えて言った。

 

「「「「「マシンガンさえ撃てればあとは何でもいいからな!」」」」」

 

 そんな方針でプレイをしている為、ZEMALは屋内での戦闘を忌避している。

その為彼らは今回は命拾いする事となった。

入り口に不用意に突入しようとしたチームが手榴弾で吹き飛ばされたのだ。

 

「うおっ、危ねえ!」

「セーーーーーーーフ!」

「いきなりビルに突っ込むとか馬鹿かっつ~の」

「リーダー、俺達はどうする?」

「待機だ待機、というか屋内なんて入りたくないし」

「だよな、やっぱり全力でマシンガンが撃てる屋外じゃないとな!」

 

 こうしてZEMALの面々は、東口方面へと移動し、そこで布陣する事になった。

一応Narrowにも警戒しないといけないが、

これは、ゼクシードがシャナのいる方へ向かうはずがないという判断からだった。

 

 

 

「リッチーさん、あのセクシードってのはどんなチーム?」

「第二回BoBの優勝者である、ゼクシードのチームだな、強敵だ」

「ほうほう、BoBの優勝者だったんだ、で、ボブって何なの?」

「…………このゲーム内のトップを決める大会だ」

 

 獅子王リッチーは、ボブって何だよと思いながらもそう答えた。

 

「ワールドカップみたいなもの?

なるほどなるほど、それでお山の大将を決めるんだ」

 

 リッチーは、BoBは個人戦なので、あえてワールドカップを引き合いに出すなら、

それに該当するのはこの大会じゃないだろうかと思ったが、

ファイヤに対して特に追加で何か説明する事は無かった。

リッチーがこのチームに参加したのはあくまで報酬の為であり、

ファイヤ個人は正直嫌いだったからだ。

 

「まああのチームは位置的に邪魔だから、さっさと倒しちゃおう。

それくらいは当然いけるよね?」

「残りの十二チームのうち、半数を既に差し向けました、

残りはシャナに備えて周囲に布陣させました」

「それじゃあ念のため、僕達はどのチームもいない方向に少し離れようか、

前のめりになりすぎて、背後からズドンとか怖いしね」

 

 ファイヤはファイヤでそれなりに状況を理解しているようで、

言っている事は意外とまとものようだった。だが基本一言多い事に変わりはない。

 

「もう一チームはどうなの?Narrowだっけ?」

「源平合戦の時にちょっとだけ見ましたが、ぱっとしないチームでしたね、

最終日にはいなかったですし」

「ふ~ん、まあ絡んでくるようなら数の力で押し潰せばいいね、

力が劣るメンバーなのを承知で数を集めたのはその為だしね」

 

 獅子王リッチーは、その言葉にイラっとしつつも我慢しながらこう答えた。

 

「………………まあそうですね」

 

 

 

 一方チームNarrowはというと、中央へ向かっている真っ最中だった。

 

「さて、この状況をどう思う?」

 

 そうコミケに問われ、スキャン結果を思い出しながら、ブラックキャットが言った。

 

「どうやら中央のチームは全部組んでますね、動きが組織的です」

「だよなぁ……」

「隊長、どうする?」

「あ~……とりあえずシャナの旦那は極力スルーで、お仕事が果たせなくなったら困るしね」

「そのシャナっての、そんなにやばいの?」

 

 そんなコミケを見て、クリンがきょとんとしながらそう尋ねた。

 

「おう、あれは化け物だな、とりあえずやり合うとしても、ノルマを果たしてからだな」

「へぇ、それは興味があるね、是非お手合わせ願いたいわ」

「……まあ給料分の仕事を片付けてからな」

 

 獰猛な顔でそう言うクリンに、コミケはそう言った。

 

「隊長、ノルマって何組でしたっけ?」

「サンプルとして最低限相手しないといけないのは三組だな」

「なるほど」

 

 今回のNarrowチームの目的は、GGOが訓練に使えるかどうか調べる為であった。

どうやらその為に、三組以上を相手にした戦闘のサンプルが必要なようだ。

 

「それじゃあ隊長、四組目はあの、SLってチームね」

 

 ちなみにSLとは、シャナとレンの頭文字を合わせただけの、シンプルなチーム名である。

 

「はぁ……まあ確かに一番いいデータが取れそうだし、あくまで四組目以降にな」

「よっしゃあ、やる気出てきた!」

 

 そう嬉しそうに言うクリンに、微笑みながらブラックキャットが言った。

 

「ちなみに合コンをお願いしたのもあの人よ」

 

 以前八幡と交わした約束を思い出しながら、

ブラックキャットこと黒川は、クリンにそう言った。

そもそも誰でもいいから合コンがしたいと強く望んでいたのはクリンなのであった。

 

「え?そ、そうなの?」

「まじで!?大将と!?」

「ブラック姉さんいつの間に!?」

「姉さん言わないで。ええそうよ、私、あの人とは別の仕事で一応面識があるのよね」

「ど、どんな人?」

「う~ん、守秘義務ってものがあるしねぇ……」

「お、大雑把でいいから!」

「そうねぇ……」

 

 ブラックキャットは、少し迷うようなそぶりを見せた後にクリンに言った。

 

「まあ今回の合コンは、元々あなたに頼まれていたんだし、仕方ないわね、

あの人は………やばいわよ、もし結婚出来たらあなた、勝ち組ね、

もっとも彼女持ちだから、多分無理だと思うけど」

「彼女持ち!?でも合コンしてくれるの?」

「優しい人だからね。お友達になれたとしたら、それだけでもあなた、勝ち組よ」

「そこまで言う!?うわぁ、凄く興味が沸いてきたわ」

 

 そんな二人の会話を聞いたコミケ達は、目を剥いた。

 

「大将ってそうなのか!?」

「ええ、そうですけど……隊長は知らなかったんですか?」

「いや、まあ俺も会った事は無いしな……」

「それじゃあさっさとノルマを達成して、彼と話しに行きましょうか」

「賛成!」

「それじゃあお仕事を始めますか」

 

 その時前方から爆発音が聞こえ、五人は直ぐに戦う者の顔になった。

 

「隊長、前方に爆発音、どうやら手榴弾のようです」

「早速始まったか、まあ位置的にはこちらに都合がいい、とりあえず急ぐぞ」

「「「「了解!」」」」

 

 こうしてNarrowも目的地に近付き、中央付近は混沌とした状況になってきた。

 

 

 

「シャナ、爆発音が!」

「ああ、そうみたいだな、多分あれは、ゼクシードがやったんだと思う」

 

 シャナは冷静な口調でそう言うと、レンにこう言った。

 

「あいつの事だから、何とかしてこっちと合流しようとするはずだ、

レン、先行してビルの入り口を監視し、情報をこちらに逐一伝えてくれ」

「了解!」

「くれぐれも気を付けてな」

「うん!」

 

 そしてレンは、全速力で走り出した。

シャナはそれを追いかけながら、信号弾をひとつ用意した。

 

「こっちの場所がバレるリスクはあるが、合流さえ出来れば何とかなるだろ」

 

 シャナはそう呟きながら、走り続けた。そこにレンからの連絡が来た。

 

『シャナ、今いくつかのチームがビルの中に入ってった、一組だけは外で待機中、

位置はビルのこっち側かな』

「Narrowが東、こっちが西だったから、残るは北か南か……

レン、そのどちらかに敵影は見えないか?」

『待ってね………あっ、北に今ファイヤっぽい人影が見えた、南は多分敵影無し』

「ファイヤの奴は何チームか連れて北に逃げたのか、

よしレン、俺は南に移動して信号弾を上げる。おそらくゼクシードの奴は、

それを合図に飛び出してくるはずだから、そのままこっちに誘導してくれ」

『うん、任せて!あっ、今ビルの上の方から爆発音、でもこれ、多分トラップの音かも』

「ほう、分かるのか?」

『うん、聞きなれた音だったから!』

「銃声は聞こえるか?」

『ううん、何も』

 

 そのレンの報告を聞いて、シャナは、ゼクシードがトラップと同時に仕掛けないのなら、

おそらくゼクシードはビルの下の方に潜んでおり、

敵をある程度やり過ごした後に、強行離脱をはかるつもりだと予想した。

 

「分かった、時間が無いからとにかく急ぐ。

レンはもしゼクシードが先にビルから出てきたら、それを援護してやってくれ」

『うん!』

 

 そしてシャナは全力で南に向かい、信号弾を上げた。

 

 

 

「ゼクシードさん、南に今、信号弾が上がりました!」

「信号弾?そうか、よし、全力で入り口から離脱、

そのまま信号弾が上がった方向へと向かうぞ!」

「その先にシャナさんが?」

「おそらくね、よし、行こう!」

「「はい!」」

 

 ビルの中に入ってきた敵は、まだ四チーム程だったが、

その全てが、ゼクシード達が仕掛けておいた予備の装備で作った人形を見て、

ビルの上へと駆け上がっていった。それをしっかりと見た後、後続が無い事を一応確認し、

三人は意を決して姿を現すと、階下へと走り出した。

それを上の階から見付けたプレイヤーが、踊り場の上から銃を撃ってきたが、

その時には既に、ゼクシード達は外へ飛び出してた後だった。

そんなゼクシードの視界に、先日見たピンクの姿が映り、

ゼクシードは迷わずにそちらに向かって走り出した。

 

「レンちゃん!」

「ゼクシードさん、こっちです!」

「了解、ユッコ、ハルカ、味方だ」

「やりましたね!」

「いや、まだ分からない、くれぐれも周囲の警戒を怠らないようにね」

「はい!」

「左に敵影!」

「くっ、まだいたのか……」

 

 丁度その時、騒ぎを聞きつけたZEMALのメンバーが、慌ててこちらに姿を現した。

 

「いたぞ、敵だ!よっしゃあ、俺達のマシンガンの力を見せてやれ!」

「「「「「ヒャッハー!」」」」」

 

 ZEMALのメンバー達は、嬉しそうにそう答え、ゼクシード達に向けて銃を構えた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。