推敲も甘いので帰ってから少し直しますね、申し訳ありません。
「その仕事、俺達が先鋒を努めてもいいか?リッチー」
「『MMTM(メメントモリ)』か、確かお前らは室内戦闘が得意なんだったか?ダヴィド」
「俺はデヴィッドだ!ピトフーイと同じ呼び方をするんじゃねえ!」
「おう、悪い悪い、でも大丈夫なのか?
敵は確かに地図に表示されてる建物にこもってると思うが、
多分そこまでの間には、罠がかなり仕掛けられていると思うぞ?」
「大丈夫だ、そういう訓練もしてきたからな」
「そうか」
「俺達も行くぜ」
そんな二人にもう一人、声をかけてきた者がいた。
『T-S』のリーダー、エルビンである。
「俺達は重装備だからな、多少攻撃をくらっても問題ない、
MMTMの援護は俺達が適役だろう」
「そうだな、それじゃあ他に、三チーム程参加してもらうとするか」
現在ファイヤチームの総数は十チーム、その半数が今回の戦いに投入される事になる。
その時獅子王リッチーの通信機に通信が入った。
「ん、ZEMALからか?いや、これはスネークからか、
あいつは今一体どこにいやがるんだ……」
そう言いながら通信に出た獅子王リッチーは、
スネークの離反を聞かされ、呆然としたが、直ぐに気を取り直し、一同に言った。
「……スネークが敵についた」
「まじか!」
「あのスネークさんが……」
「これはやばい………のか?」
「どうなんだろう……」
実際スネークは、戦闘で目立つようなプレイスタイルでは遊んでおらず、
その実力はあまり知られていなかった。
その為、この離反はさほど一同に衝撃を与えなかったのだが、
彼らがそれを間違いだと知るのは、まもなくの事である。
「まあいい、とりあえずダヴィド、指揮は頼むわ」
「だから俺はデヴィッドだっての!」
そう言いながらもデヴィッドは、仲間達をまとめ、森へと入っていった。
そしてファイヤ達も、罠を警戒しつつ、広場に見張りを数人残し、森の中へと入る事にした。
これはシャナの狙撃を警戒しての処置だった。
「隊長、罠がかなり回避された、敵の中にそういうのに詳しいチームがいる模様」
「そうか、それはきついな」
罠による爆発音は何度かしていたが、その回数がかなり少なかった為、
コミケはその可能性を事前に予想しており、平然とした口調でケモナーにそう答えた。
「それは多分、MMTMだな、あいつらはそういうのが得意なんだよ」
「そうなんですか」
「しかもあいつらは、室内戦闘が得意だからな、注意しろよ」
「情報助かります」
スネークはその言葉に頷いた後、笑いながらこう言った。
「もっともシャナ程じゃないがな、あいつはそもそも罠があるのが分かるって話だしな」
「分かるって……うへぇ、大将はやっぱり化け物だな」
スネークはその言葉に同意した。
「だな、あいつには、まったく勝てる気がしねえよ」
「俺達が一緒でもですか?」
「おう、一緒でもだ、ちなみに実は、
あいつに国民栄誉賞を与えようって話もあったんだけどな、
さすがに名前とその功績を公開するのはまずいって事で、取りやめになった事があったな」
その想像もしなかった言葉に、コミケはとても驚いた。
「まじですか!?大将は一体何をやったんです?」
「秘密だ、だが大勢の人間の命を救ったのは確かだ」
「人助けですか」
「そして今後も別方面で多くの人の命を救うだろうな」
「別方面?」
「まあ詮索は無しだ、とにかく面白い奴だよ、会った事はないがな」
「それなら呼び出して会えばいいじゃないですか」
「ん?そうか、それは考えた事が無かったな、ふむ」
真面目な顔で考え込んだスネークに、コミケは慌てて言った。
「今の、冗談だったんですけど……」
「いやいや、確かにあいつには、会うだけの価値はある気もするな、
何か口実を作って呼び出す事にするよ」
「うへぇ、大将は何者だよ……」
その言葉を通信で聞いていたのだろう、ケモナーが嬉しそうに言った。
『まあいいじゃないですか隊長、俺達が大将に味方したのは間違ってなかったって事で』
「だな、よし、大将の為にも、出来るだけ多くの敵を道連れにしてやるか」
『ですね、やってやりましょう』
その言葉に、クリンとブラックキャットも乗った。
「そうですね、彼との合コンの為にもここで恩を売っておかないと」
「おいブラックキャット、お前笑顔で黒い事を言うなよ……」
「ん、そっちの嬢ちゃんは、シャナと合コンをするのか?」
「はい、実は私、彼とは別口の仕事で知り合いになったもので」
「そいつはラッキーだったな、まあ楽しんでこいよ」
「ありがとうございます」
『私も参加するんです!ブラックキャット、合コンの為に頑張ろうね!』
「お前ら、一応今は仕事中だって事を忘れるんじゃないぞ」
コミケは呆れた顔でそう言い、改めて敵が向かってきているであろう方角を見つめた。
「さて、こっちもそろそろ動くか」
「今回は狙撃の機会が多いね、シャナ」
「そうだな、正直最近は、GGOでも剣を振るってばかりだったからなぁ……
まあたまにはいいんじゃないか」
「そうだね、それじゃあ僕達は、慌てる敵を、出来るだけ倒してくるとするよ」
「おう、頼んだ、ゼクシード」
「まあ期待して待っててくれよ」
そう言ってゼクシードは、シャナから借りたピンクの布をかぶり、
レンと共にほふく前進を開始し、敵のいる方へと進んでいった。
今回は珍しく、ユッコとハルカがシャナのガードを努めていた。
これは予備のピンクの布が一枚しか無かった為であり、
実力的に、レンと一緒に行動するのはゼクシードがいいだろうという事になった為であった。
「それじゃあ始めるか」
シャナはそう言うと、やや盛り上がった小さな丘に寝そべり、狙撃体制をとった。
そしてそのシャナを挟むように、ユッコとハルカも逆向きに伏せた。
「…………何だ?」
「シャナさんを敵の攻撃から守りつつ、
敵に簡単に発見されないように体制を低くして周囲を監視してるのよ」
「…………まあ確かに効率的ではあるが」
シャナはそう言いながら左右に控える二人の姿を見た。
そんなシャナの目に、二人の太ももが飛び込んできた為、
シャナは慌てて目を背けつつ、ほっと胸をなでおろした。
(二人がミニスカートじゃなくホットパンツでまだ良かった……)
シャナはそう思いながら気を取り直したように狙撃体制に戻った。
「やはり森の中か」
「どう?狙えそう?」
いつの間にか二人が覗き込んできており、シャナにそう尋ねてきた。
「問題ない、これだけ木の隙間が開いていれば大丈夫だ」
「隙間……?」
ハルカが単眼鏡を覗き込みながら、首を傾げた。
「おう、隙間だな」
「………見えないんだけど」
「まあ見てろって」
「うん」
そしてシャナは、何の気負いも無くあっさりと引き金を引いた。
「命中だ」
「嘘っ!?」
「よし、次だな」
シャナは二人の反応はまったく気にせず、淡々と引き金を引き続けた。
ファイヤ軍は今、混乱の極みにあった。
「ど、どこから撃ってきてるんだよ、ここは森の中だぞ!?」
「何で当たるんだよ!」
「こんなのどうすれば……」
「逃げろ、逃げるんだ!」
「どこへだよ!」
「とにかく弾の当たらない所だ!」
ファイヤはその状況の中、それでも何とか場を落ち着かせようと苦心していたが、
実力の無いリーダーの言う事に従う者はいない。
度重なる攻撃を受け、多くのプレイヤーは、もうほとほと嫌気がさしていたのだった。
「ちょ、ちょっと君達、落ち着いて!」
「ファイヤさん、こうなったらもう駄目だ、もうどうしようもない」
「まだ戦力的にはこっちの方が……」
「まあ確かにな、でももうこいつら、こっちの言う事なんか聞きやしねえよ、
ほら、どんどん逃げてくだろ?」
「くっ……な、何でこんなに上手くいかないんだ、せめてここに、うちの社員がいれば……」
「それが何の役にたつんだよ!そもそもあんた、銃での戦いの事を、少しは学んだのか?」
「そんなの数の力で並んで押せばいいだけだろう?自明の理じゃないか」
この言葉にはさすがのリッチーもイラっとしたらしい。
「だからあんたは駄目なんだよ、GGOをなめんなよ!」
そしてリッチーは、ファイヤの手を引きながら、東へと向かって歩き出した。
「な、何をするんだ!」
「もううちのチームの残り三人はやられちまった、残ってるのは俺だけだ、
仕方ないから俺くらいは最後まで残ってやるから、
この混乱を生かして今のうちここから逃げるんだよ!」
「そ、そんな、僕は、僕はまだ負けてない!」
「そうだよ、だから逃げるんだよ!まだ負けてないうちにな!」
今のシャナの攻撃で、既に十人近くがやられていた。
そして逃げだそうとした者達のうち、二チーム程が、
待ち伏せをしていたゼクシードとレンに倒されていた。
「今だ、あいつらを囮にして俺達も逃げるぞ!」
「あ、ああ……」
こうして居残りをしていた五チームは、
今近くにいないZEMALを合わせると残り三チーム七名となり、実質壊滅した。
ファイヤは獅子王リッチーと共にいずこかへ消えていったが、まだ生きている。
戦いは激動し、更なる局面を迎える事となるのだった。