ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第473話 激闘?シャナvsクリン

「シャナ、大丈夫?」

「本職相手にあまり自信は無いが、サトライザーの実力がどの程度か、

いい比較になるだろうし、まあ楽しんでくるわ」

 

 レンは当然サトライザーの事は知らなかったので、きょとんとしながらシャナに尋ねた。

 

「サトイモ?何?」

「どこからイモが出て来た!?そもそも二文字しか合ってないからな、レン、

サトライザーってのは、まあ俺のライバルだ、ライバル。

ユッコとハルカは知ってるんだよな?」

「ええ、何度も見たからね、第一回BoBのあの映像」

「レンちゃんも、今度見てみるといいわよ、シャナ、サトライザーで検索ね」

「分かりました!」

 

 そしてシャナは一歩前に出ると、クリンと対峙した。

 

「私は銃剣を使うわよ」

「俺はこの短剣でいいです」

「あの光る剣は使わないの?」

「あれは俺のスタイルだと、実は使いづらいんですよね……」

「そうなんだ、まあいいわ、射撃は無し、武器格闘のみのガチンコ勝負、いい?」

「分かりました」

 

 そして二人は三歩ずつ後退し、構えをとった。

お互いの距離は極めて近く、いきなり激しい戦いが繰り広げられる事が予想された。

 

「よ~しカウントするぞ、三、二、開始~、今!」

 

 コミケがそうカウントした瞬間に、クリンは左脇に銃を抱えたまま突撃した。

シャナは様子見とばかりにいきなり目の前に突きつけられた銃剣を短剣の腹で捌き、

上手く角度を付けて、自身の右にクリンの体を流そうとした。

だがクリンは岩のように動かず、同時に自身の右から迫っていた、

もう片方の短剣を持つシャナの手を拳で弾き、

そのまま一歩踏み込んでシャナにアッパーをくらわそうとした。

だがシャナは、短剣を弾かれた勢いのまま後方に体を反らし、それを回避した。

そのまま後方に飛んでバックステップをしたシャナは、

しかしそのままクリンのタックルをくらい、後方に倒された。

 

「シャナ!」

「クリンったら、ガンガンいくわね」

「うおっ、まじか、大将があんな倒され方をするのを見るのは初めてだ」

「クリンもやっぱり強いっすねぇ……

それでいて、自分より強い奴じゃないと付き合えないなんて言うから、

あの凶悪な胸の性能を生かせずに、いつまでも彼氏が出来ないんっすね!」

「あっ、見て!」

 

 だがシャナは、その勢いのまま後方に転がり、

逆にクリンの上になり、マウントポジションをとった。

 

「うおっ、凄えな大将」

「あの状態からだと揉み放題っすね!」

「ケモナー、ちょっと落ち着け」

 

 そしてクリンが、雄たけびを上げた。

 

「まだまだぁ!」

「チッ」

 

 だがクリンはまだ左手に持っていた銃を手放してはおらず、

そのままシャナに銃床を叩きつけようとした為、

シャナは即座にクリンの上から飛び退き、その隙にクリンは素早く立ち上がった。

 

「ふう、さすがにやるわね」

「お褒めに預かり光栄です」

「ふうん、紳士なのね、それなのにあんなに荒々しく私を押し倒したりして、

うん、悪くない、むしろそういうのは大好物ね」

「風評被害が広がるからやめて下さいよ」

 

 クリンはそれには答えず、いきなり振りかぶると、手に持つ銃をシャナに投げつけた。

否、そう思える程凄まじい速度で銃を前に突き出したのだ。

その瞬間に、クリンは銃を持つ手に凄まじい衝撃を受け、たたらをふんだ。

 

「まじか」

「凄い……よく今の速度に対応出来たわね」

 

 見るとシャナが短剣を振りぬいており、

クリンは、どうやらシャナにカウンターをくらったのだと理解した。

だが既に体制は崩されており、クリンの意思に反して体は自由には動かなかった。

シャナはその隙を見逃さず、クリンの銃を持つ手を狙って短剣を振り下ろした。

クリンはたまらず銃からその手を離し、丸腰になった。

 

「これは勝負あったか?」

「まだよ!」

 

 クリンはそう叫ぶと、何と落下中の自らの銃を、シャナ目掛けて思いっきり蹴りつけた。

 

「うおっ」

「ここ!」

 

 そしてクリンは、正面からシャナに抱きついた。

その際クリンはシャナの両腕の上からシャナを拘束した為、

シャナは思わず短剣を取り落とした。だが一番の問題はそこではなかった。

この結果、クリンの胸がシャナに押し当てられる結果となったのだ。

ちなみにそのサイズは、ケモナーが評した通り凶悪であり、現実とまったく変わらない。

 

「くっ……」

 

 さすがにこの体制はまずいと思い、何とか逃れようとするシャナであったが、

動けば動くほど、胸の感触がダイレクトに伝わってくる為、シャナはほとほと困り果てた。

ちなみにクリンの狙いはさば折りだったのだが、生憎ここはゲームの中なので、

シャナの方が遥かにパワーがある為、その狙いは完全に失敗していた。

だがシャナにとっては困った事に、シャナが力でクリンの腕を外そうとすると、

クリンが外されまいと余計に体を密着させてくる為、

その度に力を抜かざるをえないという状況になっていた。

そうやって揉みあっている二人の様子は、ある意味いちゃついているようにも見え、

これは千日手になると判断したコミケが試合を止めようとしたのだが、

その時シャナが、ため息を付きながらこう言った。

 

「はぁ……これだけはやりたくなかったんだがなぁ……」

 

 そしてシャナは、腕に力を入れるのと同時に膝を折り曲げ、

そのせいでシャナの体はずずっと下にずれた。

その為シャナの顔は、当然クリンの胸に埋まる形となったが、

シャナは気にせずそのまま沈み、完全に下から抜け出した。

 

「あれは……羨ましい……のか?」

「後で感想を教えて欲しいっす!」

 

 コミケとケモナーからそんな茶々が入ったが、シャナは気にせず、

そのままクリンの太ももを抱え込んで立ち上がった。

 

「きゃっ」

 

 その時クリンがそんな悲鳴を上げ、Narrowのメンバーは思わず顔を見合わせた。

 

「おい、今のってクリンの声か?」

「あいつ、女だったんだな……」

「クリンのあんな声は私も初めて聞くわね」

「大将、さすがエロいっす!」

 

 レンはその光景に思わず顔を覆った、どうやら恥ずかしかったようだ。

ユッコとハルカはシャナらしくないその行動にぽかんとしていた。

当のシャナは、そんな周囲の反応はまったく気にせず、

そのままぐるぐると回り始めた。まさかのジャイアントスイングである。

 

「ちょ、ちょっと!」

「さて、どこまで耐えられるかな」

「目、目が……」

 

 クリンはしばらくもがいていたが、やがて動かなくなった。

それを確認したシャナは、器用にクリンの体を抱え込み、

お姫様抱っこの体制になると、そのままコミケの前へと歩き始めた。

ちなみに誤解されるかもしれないのを承知でお米様抱っこにしなかったのは、

背中に胸が当たってしまうからだった。

そして目の前にシャナが立った時、コミケはクリンの状態を確認し、

そのままシャナの勝利を宣言した。

 

「勝者、シャナ!」

「「「「「「「おおっ」」」」」」」

 

 こうしてクリンは破れ、強制ログアウトこそさせられなかったが、

完全に目を回してしばらく立ち上がれなくなった。

クリンにとっては不本意かつ不完全燃焼かもしれないが、

途中経過を見れば、それなりに満足出来る内容だっただろう。

こうして戯れの勝負は終わったが、シャナはここで一つのミスを犯していた。

クリンが回復するまでNarrowはこの場で待機せざるをえなくなったのだ。

誰かが担いで連れて行く事も検討されたのだが、

その場合は安全を確保する為にスキャン直後が望ましかった為、

シャナ達は、Narrowの援護無しに、ファイヤ達の下へと向かう事となった。

 

「悪いな大将、この戦闘馬鹿が回復し次第、すぐに追いかけるからよ」

「こっちの都合に合わせてもらってた訳ですから、気にしないで下さい。

もしそちらが間に合わないうちにこっちの決着がついちゃったら、

そのままチーム戦に移行して勝負しましょう」

「分かった、頑張ってな」

「はい、それじゃあクリンさんに宜しくお伝え下さい」

 

 そしてNarrowのメンバーに見送られながら、シャナ達四人は東へと向かった。

 

 

 

「しかしシャナの奴、ちっとも姿を見せないよな」

「シノハラよぉ、さすがにこれは遅くないか?」

「そうだなぁ……でもここで勝手に動くのもな……」

 

 その頃ZEMALの生き残り四人はとても迷っていた。

シャナ達に対する抑えを志願したのはいいが、

当のシャナ達がちっとも姿を見せないからだ。

 

「とりあえず本隊に連絡してみるか、さすがに遅すぎる」

「待った待った、後ろから誰か来るみたいだ」

「本当だ、あれは………あれ、ファイヤさんとリッチーさん?」

「何で二人だけなんだ?」

「まあいい、本隊に連絡する手間が省けたって事で、とりあえず合流しようぜ」

 

 そしてZEMALのメンバーは立ち上がり、ファイヤの下へ移動を開始した。

 

 

 

「え?本隊が壊滅ですか?」

「ああ、どうやら別働隊もやられたようだ、さっきからまったく連絡がとれない」

「マジっすか……」

 

 シノハラは獅子王リッチーにそう説明を受け、呆然とした。

 

「でも俺達、ずっと姿を隠しながら監視してたんですけど……」

「何らかの手段で見破って、回避するルートを通ったんだろうな、

さすがというか、本当にシャナは敵に回すとやっかいな奴だよ」

 

 獅子王リッチーは、そう言ってため息をついた。

 

「シャナを敵に回した事を後悔しているとか?」

「いや、それは別に無いが、問題はあっちでな……」

「ああ、なるほど……」

 

 獅子王リッチーが親指で指し示した先にはファイヤがいた。

ファイヤにとってはこんなに思うようにならない事態は生まれて初めての経験だったらしく、

ファイヤはぶつぶつと呟きながら、ある意味放心状態にあるように見えた。

 

「初めての挫折って奴ですかね」

「かもしれないな」

「どうします?」

「こうなったらもう俺達だけで、シャナを迎撃するしかないだろうな、

幸い俺もお前らも、拠点防衛に適した銃を持っている、

狙撃されないような拠点を何とか見つけて、そこで待ち伏せするのがベストだろうな」

「よっしゃ、やっとマシンガンが撃てるぜ!」

「今回ばかりは残ったのがお前らで、本当に良かったと思うよ」

 

 こうしてファイヤ軍の残党も方針を決め、

近くにあった待ち伏せに適した廃墟に立て篭もる事となった。

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