Narrowがファイヤ軍の包囲下に置かれようとしていたその裏で、
カメラに映ったのは、スネークがこっそりと移動していく姿であった。
「おお?」
「スネークがスネークし始めたぞ!」
「スネークのこういった姿が見られるのって、そういえば初めてだよな」
「というかあいつ、まったく喋らないよな」
「あいつ、結構野良パーティには参加してるんだけどなぁ」
そしてカメラはスネークの後を追い、遂にNarrowの潜む建物近くまで到達した。
「スネークが来たぞおおおおお」
「このまま建物の中までスネークするのか?」
「何か取り出してるみたいだが……」
その直後にスネークが白旗を掲げながら、それでいて見事な隠密っぷりを発揮し、
クリンの背後に立った時、観客席は、かなり微妙な空気に包まれた。
「……どう考えても今ならあのクリンってのを殺れるよな」
「でも選んだ選択肢は降伏?意味が分からん」
「っていうかクリンはいつスネークに気付くんだ」
「あっ、スネークがもじもじし始めたぞ」
「不安そうに上からクリンの方を覗きこんでるな」
「それでも気付かないクリン!」
「お、ついに気付いたか!」
クリンはやっと気付いたのか、慌てて振り向くと、スネークに銃を向けようとし、
目の前に広がる白旗を見て、しばらくその場で固まっていた。
「フリーズしたか」
「動かないな」
「まあ普通、ああなったら頭が働かないよな」
「お、やっと動いた……って、通信機?」
「丸投げktkr!」
「クリンかわいいよクリン」
そしてスネークは建物の中へと連れられていき、
カメラは次に、その建物の裏門の方へと移動していった。
「お?別働隊?」
「侵攻軍を、更に二つに分けたのか」
「MMTMは室内戦が上手いから、まあこれは妥当な選択だよな」
「Narrowピ~ンチ」
「二チームと三チームに挟まれてて、どちらかに戦力を集中とか出来ないから、
さすがにあの腕前でもどうしようもないだろうな」
ここでいきなりカメラが切り替わった。
こういった切り替わり方をする時は、大体何か大きな事件が起こった時であり、
観客達は、何があったんだろうと画面に注視した。
そこには、ファイヤのいる本隊に奇襲をかけようとするゼクシードとレンの姿があった。
「うお、まじかよ」
「二人で四チーム相手に奇襲!?さすがに無理だろ!」
「っていうかシャナはどこだ!?」
その瞬間に、カメラの前を何かが横切った。
「おお?」
「今横切ったのって何だ?」
「弾みたいに見えなかったか?」
「って事は……」
そしてカメラの角度が変わり、今度はカメラの後方から、
前方に向かって何度も何度も一定間隔で弾が撃ちこまれるのが映された。
「シャナの狙撃きたあああああああ!」
「このアングル、臨場感ありすぎだろ」
「っていうか、普通に木の間をスイスイ通してくな、ありえないだろ!」
そして再び画面が切り替わり、そこには右往左往するプレイヤー達の姿が映された。
「これってファイヤ軍か?」
「うわっ、びっくりした!」
画面の中の、木の隙間からいきなり弾が飛び出し、
丁度画面に映っていたプレイヤーの頭を吹っ飛ばしたのを見て、
観客達は皆かなり驚いたようだ。
「今度はこっち側か」
「運営さん有能すぎんぞ!」
「うおおお、見ろよ、人がゴミのようだ!」
「お前、一度言ってみたかったんだろ」
「でも確かにゴミみたいにあっさりと吹っ飛ばされてくな……」
そして最後にシャナの姿が映された。
シャナは地面に寝そべりながら、淡々と狙撃しており、
その周囲をユッコとハルカが固めていた。
ちなみにシャナの左右には、ユッコとハルカの生足があり、
観客達は、再び血の涙を流した。
「何だあのリゾートっぽい雰囲気は……」
「完全に別世界だろ」
「それにまったく動じないシャナが男前すぎる!」
ちなみにシャナは現在進行形で、思いっきり動じていた。
だが狙いを外さないのはさすがというべきだろう。
「なあ銃士X、シャナっていつもあんな風に女性には淡白なのか?」
「そんな事はない、シャナ様にだって性欲は存在する。
この場合は対象の性能に問題がある」
「対象の性能に問題って、あの二人の生足の事か?」
「もちろん左右に並ぶあの大根の事」
そう言われた闇風と薄塩たらこは、
もっとよく見ようと思わず立ち上がり、ユッコとハルカの足をしげしげと観察した。
「大根……いやいや、全然太いようには見えないだろ!」
「そうだそうだ、あれを大根と呼ぶのは世の男共が許さん!」
そう言って再び振り返った二人の目に、
いつの間にか下をホットパンツに着替えた銃士Xの姿が飛び込んできた。
二人は目を見開き、銃士Xが生足を組みかえると、
ふらふらとそちらに向かって引き寄せられていき、そのまま銃士Xに蹴り飛ばされた。
「ぐあっ!」
「ぶほっ!」
「だから闇風もたらこもモテない、その事を自覚すべき」
「仰せの通りで……」
「で、でもよ、シャナだって性欲はあるんだろ?だったら見たりもするんじゃないのか?」
「肯定、その証拠に、シャナ様からもよく、私の生足に注がれる情欲の視線を感じる」
そのストレートな表現に、闇風と薄塩たらこだけではなく、
周囲で聞き耳をたてている者達も思わず銃士Xの生足から目を背けた。
さすがにエロキャラ認定されるのは避けたいのだろう。
「我慢出来る時点で、あの二人の生足は大根レベルだと言わざるを得ない、
もしあそこに私とシズがいたら、シャナ様は理性を崩壊させて、大会中にも関わらず、
私達の体を貪ろうと獣のように振舞った事は間違いない」
さすがにそのありえない言葉に、二人は苦情を申し立てた。
「お前、さすがにそれは盛りすぎだろ!」
「そうだそうだ、さすがにそれはない」
「だよね、てへっ」
銃士Xは、いきなり自分の頭をコツンと叩いてそう言った。
「ええええええええ」
「な、何だこの破壊力は……」
「天使がここにいた……」
そんな初めて見る銃士Xの態度に、その場にいた者達は驚愕したが、
銃士Xは即座にいつもの調子に戻り、画面を指差した。
「あそこ、今何かいた、一人隠れてる」
その言葉に一同は思わず振り向いた。画面の中ではレンとゼクシードが発砲しており、
バタバタと敵が倒れていく姿が見えた。そして敵の姿が見えなくなると、
二人はシャナ達と合流し、再び二手に分かれ、敵の数を数え始めた。
「まずい、油断してやがる」
「敵はどこだ?」
「今は分からない、でも一人隠れているのは確か」
そしてレンを庇ってゼクシードが死亡すると、その場は奇妙な静寂に包まれた。
その直後に、観客達の口から驚きの声が発せられた。
「まじかよ、あのゼクシードがピンクの悪魔を庇ったぞ!」
「大往生って奴か……」
「畜生、うっかりあいつの事、格好いいとか思っちまった……」
「ゼクシードの奴、変わったよな」
「あんな綺麗なゼクシードはゼクシードじゃねえ!」
そしてさすがの闇風も、この時ばかりはゼクシードに感謝した。
「まじかよ……レンを守ってくれてありがとな、ゼクシード」
その直後にレンが雄たけびを上げるような仕草を見せ、敵に向かって突っ込んでいった。
「うわ、まじか」
「無謀じゃないか?」
「大丈夫なのか?」
観客達がそう囁き合う中、師匠である闇風だけはこう言った。
「行け、ゼクシードの仇はお前がとるんだ」
その言葉通り、レンは凄まじい機動を見せ、あっさりと敵の頭に銃口を付きつけ、
一言二言言葉を交わした後に、そのプレイヤーを葬った。
「うお、凄え動きだな」
「よく見えなかったぞ……」
「さすがはスピードスター二世!」
闇風はそんな感想に、さも当然という風に頷くと、別の事を言った。
「あいつは見た事があるな、確かクラレンスとか言ったよな?」
「肯定、性別は一応女、でも実は男よりも女の方が好き」
「ああ、まああの見た目だし、それ何となく分かるわ……
って銃士X、何でそんな事を知ってるんだ?」
「一度口説かれた事があるから」
「なるほど……」
その銃士Xの言葉はとても説得力のあるものだった為、皆その答えに納得した。
その時銃士Xが、画面を見ながら突然こう言った。
「『敵の二チームが背後に向かっている』
『正面はこちらで処理するか?こちらからは背後から襲えるチャンス』」
その言葉が何かの通訳だと感じた一同は、慌ててモニターを見た。
そこにはハンドサインを送るシャナの姿があり、一同は、何か動きがありそうだと感じた。
その直後にシャナが輝光剣を三本取り出したのを見て、観客の興奮は最高潮に達した。
「輝光剣きたああああああああああああ!」
「って、シャナは使わないで、三人に渡すのか」
「でも何でわざわざ剣を使うんだ?」
そして銃士Xに再び視線が集まり、銃士Xはこともなげに言った。
「音を立てたら、別働隊にこちらの存在がバレてしまう」
「ああ~!」
「そういう事か」
画面の中では四人がまるで暗殺者のように、
ファイヤ軍の者を一人、また一人と葬っていった。
「うわ、あんなのに狙われたくないな……」
「連続で倒せるってのがヤバイよなぁ、銃を使うとどうしても最初の一人を倒した時点で、
敵にその存在がバレちまうもんなぁ」
そして敵は全滅し、遂にSLとNarrowは合流を果たす事となったのだった。