なので18時にもう1話投稿しますので、ご注意下さい!
「ファイヤ軍の人達は、どうやらかなり油断してるみたいね」
「緩んでるよね、数が多いとやっぱりああなるのかなぁ」
「素人の私が見ても、だらだらしてるように見えるよ」
「『どうだ?各個撃破は出来そうか?』
『楽勝ですね、あいつら連携のれの字もありゃしませんよ』
『よし、俺とブラックキャットは狙撃ポイントに移動する、
そっちは付かず離れずの位置をキープしながら、その時に備えてくれ』
『了解、対象をアルファ、ブラボー、チャーリーと設定、情報共有に入ります』だそうよ」
「うわぁ、さすが本格的ぃ」
「さて、お手並み拝見だね」
「どうやら中距離狙撃から開始するみたいね」
そして五人が見守る中、Narrowは敵に襲いかかった。
「うわ」
「あのクリンって子、女の子だよね……」
「勇猛ね」
「あらまああっさりと……」
「やっぱり銃での戦いは、ALOとは違って決着が早いわね」
「あ、罠を仕掛けるみたい」
そしてその罠にかかったもう一チームが壊滅し、Narrowは素早く撤収していった。
「引き時も見事の一言に尽きるわね」
「この人達が敵じゃなくて良かったね」
「でもまだ味方とは言えないのではないかしら」
「あ、スキャンの時間だね」
そして表示されたマップには、ぽっかりと抜けているものがあった。
「あれ……SLとセクシードがいない?」
「ああ~、これ、前にキリト君が言ってた奴だ、
水の中とかにいたら、スキャンが通用しなくなるって奴」
「これで八幡君は、一時的に自由に動けるようになったわね」
「あ、でも、って事は……」
その明日奈の視線の先には、Narrowを示す光点があった。
その言葉通り、ファイヤ軍が北のNarrow目がけて移動を始めた。
「やっぱり……」
「当然そうなるわよね」
「八幡君、どうするのかな……」
「Narrowには悪いけど、囮になってもらって、
その間に敵を片っ端から殲滅しにかかると思うわ」
薔薇がそう言い、四人もそれに頷いた。
「Narrowは森林地帯に移動したわね」
「見て、建物があるよ」
「あそこに篭って迎え撃つつもりなのかしら」
「あ、また罠を設置してる」
「「「「「あ」」」」」
五人はそう言って、ぽかんと画面を見つめた。
画面の中ではクリンが罠を設置しており、その背後に白旗を持ったスネークが、
いきなり姿を現した為だ。
「クリン、後ろ後ろ!」
「クリン、後ろ後ろ!」
「しむら、後ろ後ろ!」
「クリン、後ろ後ろ!」
「クリン、後ろ後ろ!」
五人は異口同音?にそう言い、はたと止まってお互い顔を見合わせた。
「今何か、おかしな言葉が混ざっていなかった?」
雪乃がそう言い、
「うん、確かに別の言葉が聞こえた」
南がそれを受けてそう言った。
「この中に一人、昭和の女がいるわね」
陽乃が面白そうな顔でそう言い、
「で、でもそれだと、三十代って事になっちゃうけど、今ここにいる全員二十代だよ?」
明日奈がそれに対して疑問を投げかけた。
「誰よ、しむらなんて言ったのは!」
そして最後に薔薇がそう言い、残りの四人はじっと薔薇を見つめた。
「な、何?」
「薔薇ちゃん、今の状況で、よくしむらって単語をハッキリと聞き取れたわね」
「あっ……」
「犯人はお前か!」
陽乃はそう言いながら、いきなり薔薇の胸を揉んだ。
それで決着がついたと思ったのか、残りの三人は、
百合百合しい陽乃と薔薇をそのまま放置し、再び画面へと視線を戻した。
「スネークとコミケさん、どうやら知り合いだったみたいね」
雪乃がそう言い、陽乃がそれに興味を引かれたのか、顔を上げた。
「『おう伊丹、ちゃんと仕事してるみたいじゃねえか』
そう、コミケさんの本名は、伊丹って言うのね」
「そんな事まで言ってるんだ」
「って事は、あのスネークって人も自衛隊の人?」
「そうね、でもそれにしてはちょっと言い方がおかしいわね、まるで上司が部下に……」
そう言いかけ、雪乃はハッとした顔で陽乃を見た。
陽乃はそれに頷き、薔薇を放置して画面に見入った。
「『あ~……あの、スネークさんは、もしかして閣下ですか?』」
「閣下ですって?」
「何それ?」
「しっ」
陽乃にそう言われ、明日奈と南は押し黙った。
そしてその会話が通訳される度、一同は顔を青くしていった。
「国会とか言ってるんだけど……」
「オリンピックの元日本代表で政治家?」
「嘉納太郎防衛大臣………通称閣下」
最後に陽乃がそう呟き、一同はゴクリと唾を飲み込んだ。
「これは大物の名前が出てきたわね」
「確かBoBの時、クルスに倒されたんだよね」
「まさかそんなえらい人だったなんて……」
そんな話をしている間に、どうやら敵が攻めてきたようだ。
爆発音が何度か聞こえ、それでも唇の動きを読んでいた陽乃と雪乃が、
驚いた様子で顔を見合わせた。
「ちょ、ちょっと姉さん、今閣下が、凄く場違いな言葉を口にした気がしたのだけれど……」
「間違いないわよ雪乃ちゃん、私もハッキリ見たから」
「何?どうしたの?」
「これは言っていいのかしら……」
「いいんじゃない?もし他人に言っても、信じてもらえない類の話だけど」
「そうね……彼が言うには、八幡君に国民栄誉賞を与えようという動きが一時あったようよ」
そう言われた残りの三人は、こいつ何言ってるの?という視線を雪乃に向けた。
「え………」
「こ、国……?え?え?」
「でも、さすがにあの事件の内幕を全て公にする事は、
余計な個人情報を開示する事になってしまうから、取りやめになったらしいわ」
あの事件、という言葉を聞いた三人は、
それが冗談でも何もなく、真実なのだとこの時理解した。
「えっ、えっ?本当に?」
「嘘……まさかそんな……」
「でも確かに、八幡君と和人君は、数千人単位の人間を救ってるもんね……」
「それは明日奈もでしょ?」
「私はほら、ALOの時は捕まってただけだから」
「ちなみにどうやらメディキュボイドの事も加味されているようね、
『今後も別方面で多くの人の命を救うだろう』って言われてるわ」
「うわ、そこまで知ってるんだ、さすがというか……」
「あっ……」
そこで雪乃が驚いたような声を上げ、陽乃は慌てて薔薇にこう言った。
「薔薇ちゃん、さっきの話、前倒しで進めるようにアルゴちゃんに伝えて」
「ど、どうしたんですか?」
「閣下が八幡君を呼び出す事を決めたらしいの、話がしたいんだって。
そこで今回の『お仕事』についての話が出る可能性はかなり高いわ」
「分かりました、すぐ連絡します」
こうして一瞬慌しくなった後、雪乃がさらっとこう言った。
「あら、このクリンって子も、例の合コンに参加するみたいね」
「そうなんだ!そっかぁ、どんな人なんだろ」
「楽しみが増えたわね」
「うん!」
そこに薔薇も戻ってきて、陽乃にこう言った。
「オーケーだそうです、ダル君を呼び出してしばらくこき使うとかなんとか」
「ダル君も、すっかりアルゴちゃんに使われちゃってるわねぇ」
「まあ本人は喜んでいるみたいだからいいんじゃないでしょうか、
この前も部長に向かって、とても嬉しそうに、イエス、マム!って言ってましたし」
「アルゴさん、ダル君の事を本当に上手く操縦してるね……」
「このままだと、コミケが終わるまでくらいはずっと拘束する事になりそうね」
ちなみにこの流れでコミケのソレイユブースにも参加する事になったダルは、
そこでソレイユのバイトとしてコスプレをしていたとある女性と、
運命的な出会いを果たす事になる。
「あっ、見て、八幡君が狙撃体制をとってる」
「ついに始まるのね」
「でも左右の肌色の物体は何なんだろ、
八幡君も、ちょっとそっちを気にしてるみたいだけど」
そして画面が引き、その物体が何なのかを、五人は理解した。
「あ、これ、二人の足だったんだ」
「防御体制……なのかしら、まあそれは分かるんだけど」
「でもあいつ、あまり気にしてなくない?」
「ううん南、一見そう見えるかもだけど、八幡君、随分気にしてるよ」
「そうなんだ、私には分からないけど……」
そんな二人に、薔薇がこう言った。
「これはもう有罪でいいんじゃないかしら」
「そうね、それでいいと思うわ」
雪乃もそれに同意し、明日奈はそれを受け、頷いた。
「そうだね、これで前科二犯か……これはいじりがいがありそう」
八幡の運命は、どうやらこの時点で既に決まっていたようだ。
「うぅ、うちには何も無いのに、何であの二人ばっか……」
「その分今度、八幡君に言う事をを聞かせればいいんじゃないかな」
「うん、そうしてみる」
「南も言うようになったわね」
「そうじゃないと、あいつの秘書はやってられないと思うので」
「まあそうね」
そして戦闘が始まり、画面の中のシャナは、森の中へどんどん銃弾を送り込んでいった。
「………どうしてあんな狭い木の間に弾を通せるの?」
「それは八幡君だからとしか……あ、でも多分シノのんにも出来るのかも」
「二人とも化け物ね……」
「あ、場面が変わった、そして銃弾が奥から飛んでくる……」
「ちょっと怖いわねこれ、森の中からいきなり即死級の弾が飛んでくるとか」
「八幡君に敵対するというのはこういう事なのね」
そしてついに獅子王リッチーが、ファイヤの手を引いて逃げ出し、
森の中のファイヤ軍は壊滅する事となった。
「内と外で、ほぼ全滅させたわね」
「ゼクシード君もレンちゃんも、楽だったでしょうね」
「もぐら叩きみたいなものだったしね」
「あれ、でもほらここ、一人プレイヤーが生き残ってない?」
「あら本当、よく見つけたわね明日奈」
「うん、自分でもそう思う」
「でもこれって危なくない?」
「もしこのプレイヤーが仕掛けてきたら、一人くらいはやられちゃうかもね」
その心配は的中する事になる。SLとセクシードが敵の殲滅具合を確認する為に分かれ、
レンが連絡役として派遣された時、それは起こった。
「あっ、ここ、狙ってる!レンちゃんが危ない!」
「誰か、レンちゃんを守って!」
「あっ」
その声が聞こえた訳ではないだろうが、ゼクシードがレンを庇い、そのまま死体となった。
彼をよく知る雪乃が絶句していた為、その死ぬ直前の言葉を陽乃が三人に伝えた。
「『レンちゃん、五チームが多分奥の建物に侵攻中、可能なら倒した方がいい。
あと、俺はここまでだけど、お前は絶対にレンちゃんを勝たせろと、シャナに伝えて』
『頑張れ』だそうよ」
「ゼクシードさん……」
「ゼクシードが最後に男を見せたわね」
「ちょっと格好良かったかも」
「いつもの彼は、どちらかというとギャグ担当だったはずなのに、変われば変わるものね」
「あっ、見て、レンちゃんが!」
画面の中ではレンが雄叫びを上げ、そのプレイヤーに突っ込んでいく所だった。
レンはそのプレイヤーの股下をくぐり、いつの間にか背中に差していた短剣を抜き、
そのプレイヤーの太ももを斬り裂いていた。
「速っ」
「よく見えなかった……」
「レンちゃん、やっぱり凄い……」
「あら、このプレイヤーは確か……クラレンス、だったかしら」
「ああ~、確か戦争後にこの木なんの木の拠点防衛戦にいた人だ」
「今回は敵に付いたみたいね」
「あ、見て、八幡君が動くよ」
ゼクシードにお別れを言い、その死体にハッキリと勝利を宣言したシャナは、
その遺言ともいえる言葉を実行に移し、Narrowと連携して、敵を殲滅した。
観戦者編が予定より伸びてしまったので、今日一日で終わらせようと思います、
なので18時にもう1話投稿しますので、ご注意下さい!