ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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ネタに詰まりぎみなので、明日は一日お休みをいただきますorz
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第492話 新システム開発中

 放課後、一緒に帰ろうと誘ってきた和人に、八幡はこう言った。

 

「悪い、実は今日もソレイユに行かないといけないんだよ」

「そうか、八幡ももうすっかり半社会人だな」

「俺は本当は、働きたくないでござる派だったんだけどなぁ……」

「そう言う割りには、熱心に働いているように見えるよな」

「これは将来楽をする為の布石だ、会社を大きくして会長なりなんなりに収まって、

あとは左団扇で生活していけるように、今やるべき事をやるって感じだな」

「それには後継者を育てないとな」

「それは俺と明日奈の子供に任せるさ、子供の頃から英才教育を施して、

立派な後継者に育てあげる………俺以外の誰かが」

「確かに教師役は沢山いるからなぁ……紅莉栖さん、雪乃、クルス、

明日奈も教育ママになりそうな気がする」

「まあ俺は、子供のガス抜き係にでもなるさ、俺には相応しい役割だろ?」

「悪い事ばっか教えそうだけどな」

「良い事と悪い事の判断は自分でさせるから、

うちの子供が良い事だと判断すれば、それは全て良い事だ」

「丸投げかよ!」

 

 二人は笑い合い、この日はここで別れた。そして八幡はソレイユに向かい、

自衛隊に頼まれたシステムのテストをしている開発室に入った。

ちなみにいつも詩乃達がバイトをしている部屋は、ここからガラス越しに見え、

この部屋で常にモニターされていた。

その部屋が、今日はそのシステムのテストに使われているのだ。

 

「よぉアルゴ、イヴ、仕事を急がせちまって悪かったな」

「問題ない、ダルをこき使ったからナ」

「私も頑張りましたよ!」

「おお、えらいぞイヴ、で、当のダルの姿が見えないみたいだが……」

「今はそこの仮眠室でダウンしてるぞ、まあそのうち起きてくるんじゃないカ」

「これは報酬をはずまないといけないな」

「気にすんな、美女に囲まれて働けたんだから、ダルも本望だロ」

「美女……?」

 

 そう言って首を傾げる八幡に、アルゴとイヴは、ニコニコしながらこうアピールしてきた。

 

「おいおい、目の前にいるじゃねえかヨ」

「そうですよ、ここに二人もいるじゃないですか」

「囲まれて?」

「左右で挟めば、十分囲まれてますよ?」

「そういうもんか?」

「そういうもんだろ、ほれ、囲んでやろウ」

「囲んでやんよ!」

 

 そしてアルゴとイヴは、八幡の左右にピッタリくっついた。

 

「お前ら何か、テンション高くね?」

「まあ寝てないからナ」

「脳内麻薬出まくりですよ!」

「寝ろ」

 

 そう言って八幡は、二人の腰に手を回し、掛け声と共に持ち上げ、二人を脇に抱えた。

変則お米様抱っこである。まあさすがに完全に持ち上げる事は不可能であり、

二人とも、地面にずるずると足を引きずった状態である。

 

「うぐ、お、重い……」

「ハー坊さぁ……レディー相手にそれはねえだロ」

「そうですよ、私なんてめちゃめちゃ軽いですよ!」

「一度に二人だから重いんだよ!」

「だったら一人ずつ運べばいいじゃねえかヨ」

「めんどくさい、ほれ、ドアは自分で開けろ」

 

 そして八幡は、二人に仮眠室のドアを開けさせ、そのまま二人を中に放りこんだ。

 

「何かあったら呼ぶから、それまで寝てろって」

「仕方ないな、起こす時はちゃんと優しく起こすんだゾ」

「私は荒々しく起こしてくれてもいいですよ!」

「言っておくが、普通に起こすからな」

「「チッ」」

「さっさと寝ろ!」

 

 丁度その時、仮眠室からダルが起きてきた。

 

「お、八幡、来てたんだ」

「ああ、丁度今来たところだな、昨日は無理をさせたみたいで悪かったな」

「別にいいお、それだけの報酬をもらってるし、

そもそもいつも、明け方近くまで普通に起きてるし」

「まあそれならいいんだが」

 

 そして八幡は、ダルに今茉莉と志乃がどういう状態なのかを尋ねた。

 

「ええと、どうやら二人は射撃練習をしているみたいだお」

「中の様子は見れるのか?」

「うん、これをこうして……今そこのモニターに映すお」

 

 ダルの操作により、モニターに二人の姿が映った。

二人はとても楽しそうに色々な銃の試し撃ちをしており、

次から次へとレアな銃を出現させては消し、弾の消費を気にせず撃ちまくっていた。

 

「これはどうなってるんだ?」

「銃のデータはザスカー社から入手出来たから、

それをボタン一つで実体化出来るようにしただけだお」

「なるほど、さすがはGGOの開発会社というべきか」

「うん、とにかくラインナップが凄いんだよね」

「俺も撃ってみるかな……」

「それならそこにアミュスフィアが置いてあるから、それを使うといいお」

「それじゃあそうさせてもらうわ……ん、あれは……」

 

 その時八幡の視界に、見覚えのある女性の姿が映った、詩乃である。

 

「今日は詩乃が来てるのか」

「家にいるよりもここの方が涼しいらしいお、飲み物もタダだし」

「そうか……詩乃のバイトを中断させて、こっちにつき合わせるか」

「それならこっちのテストって事で、残りの時間はこっちでバイトって事にすればいいお」

「そうか、それじゃあちょっと呼んでくるわ」

「それならこのマイクで話せるお」

「お、それじゃあそれを使うか」

「そこの二つのボタンのうち……」

「これか」

「ちょ、最後まで聞……」

 

 そのマイクにはボタンが二つあり、片方は詩乃がいる室内に、

そしてもう一つは、ソレイユの全社内に放送する為のものなのだが、

八幡はダルの説明を最後まで聞かず、ボタンを二つとも押して話し始めた。

 

「おい、のんびり涼んでるそこのツンデレ、

今日は仕事の内容を変更するからちょっとこっちに来い、

何を知らんぷりしてやがる、ツンデレって言ったらお前しかいないだろ、

そうだお前だ詩乃、分かったらさっさとこっちに来い」

 

 その直後にバタンとドアが開けられ、詩乃が中に入ってきた。

 

「ちょっとあんた、誰がツンデレなのよ!」

「お前以外にいる訳ないだろう」

「別に私はツンデレなんかじゃないわよ、そもそもそれ、もうほとんど死語じゃないの?」

「実際にここにいるんだから、そう言うしかないだろ」

「そんなのいないわよ!」

「ああはいはい、とりあえず仕事だ仕事」

「私に一体何をさせるつもり?まさかえっちな事をさせるつもりじゃないわよね?

べ、別にそれでもいいけど、心の準備ってものが……」

「リアルツンデレきたああああああ!」

 

 その詩乃の反応を見て、ダルがそう叫んだ。

そんなのいないわよと言いつつ、八幡の前ではどうしてもこうなりがちな詩乃である。

 

「ち、違っ……今のは別に……」

「そしてごめん、実は今の会話、全部社内に流れちゃってるんだお」

「えっ?」

「お?」

「そのマイクのボタン、右の方は、全社内に向けて放送する為のボタンなんだお」

「まじか……」

「なのでおそらく朝田氏の声も、全部拾われていると思われ」

「なっ……なっ……なんて事するのよ!」

 

 詩乃はそう言って、八幡に詰め寄った。

だがその目はぐるぐる回っており、詩乃が冷静さを欠いている事は明白だった。

 

「……まあ終わっちまった事は仕方ないよな」

「仕方ないで済まさないでよ!ああ、せっかく作ってきた私のおしとやかなイメージが……」

「言っておくけどまだお前のその声は、全社中に響いてるからな」

「な、なんでスイッチを切ってないのよ!」

「切る前に、お前が絡んできたからだろ」

「ああもう、ああ言えばこう言う!そもそもあんた、最近私の扱いがぞんざいじゃない?

もうちょっと私に優しくしなさいよ、ほら、ほら!」

「ちょ、おい馬鹿やめろ、変な所に触るな!」

 

 そこで放送は切れ、社員達はそれにより、妄想を膨らませる事となった。

変な所というのはマイクのスイッチであり、何もやましい事は無いのだが、

切れたタイミングがタイミングだけに、その後しばらく、

八幡は女子社員からもれなく貞操の心配をされる事となり、それが八幡の頭痛の種となった。

 

 

 

「落ち着いたか?」

「ごめんなさい、ちょっと冷静さを失ってたわ」

「まったくだ、お前はもう少し、落ち着きを持つようにした方がいい」

「一体誰のせいだと思ってるのよ!」

「ほれそこ、そういうとこな」

「一体誰のせいだとお思いなのですか!」

「丁寧に言えばいいってもんじゃない、しかも叫んでるじゃねえかよ」

 

 詩乃もさすがに自覚があったのか、そう指摘され、思わず口ごもった。

 

「まあいいんじゃね?それが朝田氏の魅力でもあるんだろうし」

「さっすがダル君、よく分かってるわね」

「お前、ダルを君呼ばわりかよ、相変わらず態度がでかいんだな」

「ああもう、いいからさっさと私に何をさせるつもりか言いなさいよ」

「これをかぶって銃を撃て」

「え?」

「ほれ、とりあえずかぶれかぶれ、俺もかぶるから。よし、リンクスタート」

 

 八幡は説明するのが面倒臭くなったのか、

アミュスフィアをかぶるなり、すぐにそう言った。

 

「ちょ、ちょっと待ってよ、もう、リンクスタート!」

 

 そんな二人を呆れた顔で見ていたダルは、ぼそっと言った。

 

「何だかんだこの二人、やっぱり仲がいいんだよなぁ……」

 

 そしてダルは、中の様子を見る為に、モニターに目を向けた。

 

 

 

「ここは?」

「自衛隊の依頼で製作してる、訓練用のスペースだ」

「そんな仕事もしてるのね」

「防衛大臣に頼まれたからな、うちとしても可能な依頼だったし、

請けないという選択肢は無かったからな」

「防衛大臣に?直接?」

「おう、実は今日も学校で会ってきたぞ」

「へぇ……やっぱりあんたって実は大物なのね」

「まったく自覚は無いけどな」

 

 そして二人は、楽しそうに射撃訓練をしている茉莉と志乃と合流した。

 

「あれ、八幡君も来たんだ」

「凄く楽しそうだったんで、来てみました」

「ええと、そちらの方は……」

「GGOでの俺の仲間の一人で、朝田詩乃です、

そういえば字は違いますが、栗林さんも志乃って名前でしたね」

「そうなんだ、よろしくね、詩乃ちゃん」

「こちらこそ宜しくお願いします、志乃さん」

「私は黒川茉莉よ、宜しくね」

「宜しくお願いします」

 

 そして二人は、黒川に案内されて、射撃場に足を踏み入れた。

 

「ふむふむ、お、ヘカートIIもあるんだな」

「本当に?どれ……」

 

 詩乃はヘカートIIを選択し、それを実体化させた。

 

「うわぁ、GGOのヘカートIIとそっくりね」

「まあ同じデータを使ってるからな」

「ああ、そうなのね」

 

 そんな詩乃を見て、二人は少し驚いた。詩乃と対物ライフルの組み合わせが、

どう考えても不釣合いなのに、釣り合っているように見えたからだ。

 

「ちょっと撃ってみるか?」

「そうね、でも的がちょっと近いわね」

「あ、的の位置も変えられるよ、どのくらいにする?」

「それじゃあとりあえず、一キロくらいで」

「いっ……いちっ……キロ?」

「まあその為の銃ですしね、詩乃もそれでいいよな?」

「問題ないわ」

 

 そして詩乃は、いつものように地面に寝そべって的に狙いをつけ、

ギリギリその的の端に弾を命中させた。

 

「ふう、何とか当たったわね」

「どうだ?詩乃」

「うん、バレットサークルに慣れちゃってる分、難しいね、

まあ無風だから当てられたけど、風があったら多分外れてたわね」

「まあその辺りの感覚は確かに違うよな」

「でもこれを続けてたら、かなり強くなれそうな気がするわ」

「相手にしてみれば、バレットラインが見えないのに、

弾が超長距離から飛んでくるのは悪夢だろうな」

 

 そんな二人の会話を聞いて、茉莉と志乃は目を白黒させた。

 

「ほええ……」

「朝田さんって今いくつなのかしら」

「あ、えっと、十七です、高校二年生です」

「最近の女子高生は、銃の扱いが上手いのね……」

「随分GGOをやり込んでるみたいだけど、勉強の方は大丈夫?」

「そういえばそうだな、おい詩乃、お前、学校の成績は大丈夫なのか?」

「大丈夫よ、私、これでも結構優秀なのよ」

「ん、そうだったか、ならいいが、ゲームもバイトも程ほどにな」

「うん、さすがにそろそろログインを減らさないとまずいなとは思ってるわ」

 

 その詩乃の言葉を聞いた八幡は、頷きながら言った。

 

「自覚があるならまあ問題ないが、

今度また、紅莉栖達に勉強を教えてもらえるか聞いておいてやろうか?」

「いいの?是非お願い」

「そういえばお前と紅莉栖は同い年なんだよな」

「そうね、でも本当にどうすればあんなに頭が良くなるのか謎よね」

「あいつは特別だからな」

 

 その会話を聞いていた茉莉が、八幡にこう尋ねてきた。

 

「八幡君、紅莉栖って、もしかして牧瀬紅莉栖さんの事?」

「あ、はい、そうです」

「八幡君って、牧瀬さんとも知り合いなんだ……」

「あいつは友達ですね」

「牧瀬さんには、この前うちでも講演をしてもらったのよ」

「そうなんですか?」

「ええ、その時の内容は、『戦闘記憶の側頭葉への蓄積について』だったわ」

「そんな事まで……」

「せっかくの機会だし、難しい話は置いといて、

とりあえずもっと色々な銃を撃ってみない?」

 

 その話を横で聞いていた詩乃が、八幡にそう言ってきた。

どうやら詩乃は、ずっと射撃欲を刺激されていたらしい。

 

「それもそうだな、とりあえず色々やってみるか、詩乃」

「うん」

 

 その時志乃が、複雑そうな表情で八幡に話しかけてきた。

 

「八幡君が『シノ』って言う度に、何ともいえない気分になるんだけど」

「ああ、そう言われると確かにそうですね」

「まあ、八幡君は私の事を栗林さんって呼ぶから、あくまで私の問題なんだけどね」

「何かすみません」

「いえいえ、話の腰を折って悪かったわね、それじゃあ撃ちまくりましょうか」

 

 その後四人は、銃談義をしながら色々な銃を試射してみた。

特に目だった問題は無かったが、細かい変更をした方がいい点などについて話しつつ、

試験運用初日としては、まず成功といえる結果を出す事が出来た。

 

「それじゃあ私はそろそろバイトが終わる時間だから、先に帰るわね」

「おう、俺達はダルを交えてちょっと問題点とかについて話してくるわ」

「それじゃあお二人とも、また機会があったら宜しくお願いします」

「またね、詩乃ちゃん」

「まったね~!」

「はい、またです」

 

 そしてダルとの話を終えた後、二人は荷物を置く為に、八幡のマンションへと向かった。

実質二日目とはいえ、一応初日でもあった為、

この日は八幡は家に帰る事にし、二人だけでリラックスしてもらう事にした。

 

「何から何までありがとうね、八幡君」

「いやぁ、楽しかったね」

「ですね、これからも宜しくお願いします」

 

 そして二人は優里奈に連絡をとり、指定された時間に八幡の部屋へと向かい、

そのまま優里奈も交えて色々と話しつつ、ソレイユへの初出勤を終える事となった。




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