長らくご愛顧頂き、ありがとうございます、今後とも宜しくお願いします。
金曜日には実質的な500話で、それまでもそれ以降も、しばらく色々アレな話が続きますが、
どうかお見捨てなきよう宜しくお願いします!
「牧瀬氏、この状況は……?」
「あっ、ダルさん、昨日ぶり」
「あれ、朝田氏?」
「まゆりさんもいつぶりかな、久しぶり」
「前にお店に来てくれた時以来かな、詩乃ちゃん、久しぶり!」
詩乃とまゆりが旧交を温めているその横で、紅莉栖はダルにABCの三人を紹介した。
「橋田、こちらの三人は、詩乃の友達で八幡の友達だから、失礼の無いようにね」
「あ、以前会った事があるお、三人とも、お久しぶりだお、
ちなみに三人も、僕の知らないうちに朝田氏同様、八幡のお手つきに?」
「いきなり何を言い出すのよ!私は八幡のお手つきなんかじゃないから!」
ダルがそう言った瞬間、詩乃はマッハでそう突っ込んだ。
「え?詩乃は違うの?」
「えっ?」
「そうです、私が八幡さんのお手つきの、昼岡映子です」
「同じくお手つきの、夕雲美衣です」
「そして同じくお手つきにして夜伽担当の、夜野椎奈です」
「あ、これはこれはご丁寧に、それじゃあお返しに、僕も改めまして、
僕の本名は橋田至だお、今は八幡のブレインの一人?
って言ってもいいよね?牧瀬氏」
「別にそう思いたいならそれでいいんじゃない?」
「ちょっ、牧瀬氏、ひどっ……」
その後ろで、詩乃がフェイリスに、こそこそと質問していた。
「ねぇフェイリスさん、よとぎ?って何?」
「詩乃にゃんは知らないのにゃ?夜伽ってのは……」
「ふむふむ」
そしてフェイリスが詩乃の耳元で説明していくうちに、
詩乃の顔がどんどん赤くなっていった。
「ちょ、ちょっと椎奈、夜伽って何よ!私だってまだした事がないのに!」
「詩乃にゃんストップにゃ!」
そんな詩乃の口を、フェイリスが塞いだ。
詩乃は一瞬抵抗しかけたが、周りの者達の生暖かい視線を受け、
自分が何を口走ったのか気が付き、顔を更に真っ赤にして震え始めた。
「まだ?今確かに、まだって言ったよね?」
「予定は未定じゃなく、もう決定だと?」
「もう、詩乃っちはかわいいなぁ」
「もう、もう!」
その様子を見ながら、まゆりはとても楽しそうな表情で言った。
「うわ、ダル君、こんなに賑やかなラボは初めてだよ!」
「う、うん、まあそれには同意するけど、まゆ氏もまずは自己紹介しないと」
「あっ、そうだね!」
そしてまゆりも、自己紹介を始めた。
「えっと、椎名まゆりです、趣味はコスプレの衣装作り、
好きな物は、ジューシーからあげです!」
「ちなみにまゆりさんも私達と同い年よ」
詩乃にそう言われ、ABCは次々とまゆりに話しかけた。
「そうなんだ、まゆりちゃん、宜しくね!」
「どこの学校?」
「うわぁ、自分で衣装が作れるんだ、凄いなぁ」
その様子を見て、ダルは紅莉栖にぼそっとこう言った。
「ねぇ牧瀬氏牧瀬氏」
「ん?」
「全員同い年のはずなのに、牧瀬氏だけが浮いている件について」
「う、うるさい!私はちょっと大人っぽいだけだから!っていうか黙れ変態!」
「べ、別に今は変態っぽい事は何も言ってないお!
でももっと罵って下さい!はぁ、はぁ」
「やっぱり変態じゃない!」
直後にダルは、冷静な顔で椅子に座り、紅莉栖に尋ねた。
「で、今日はどしたん?」
「……あんたも結構変わり身が早いわよね」
そう言いつつも紅莉栖は、ここに来た理由を説明しようとし、
何か思いついたのか、ドヤ顔でダルに言った。
「特に、意味はない」
「それって全然似てないけど、オカリンの真似?」
「う、うるさい!」
「牧瀬氏もかなりオカリンの影響を受けまくってるよね、それともこっちが素?」
「いいから黙りなさいってばぁ!」
こうして自己紹介も済み、ひと段落したところで、まゆりが紅莉栖にこう尋ねた。
「で、紅莉栖ちゃん、今日はどうしたの?」
「近くにいたからちょっと休憩がてら、涼みにね」
「ちょっ、僕の質問はスルーだったのに……」
そんなダルの抗議は完全に流され、まゆりはのほほんとこう言った。
「なるほどぉ、今日も暑いもんねぇ」
「ここにクーラーが無かったら、絶対来なかったと思うけどね」
「そうだねぇ、本当にまゆしいも、八幡さんには感謝感謝だよ」
そこに何とか会話に加わろうとしたのか、再びダルが口を挟んだ。
「それそれ、ねぇ牧瀬氏、あのオカリンの考えを改めさせるなんて、
八幡はオカリンに何を言ったん?クーラーを買うからお前も金を出せって言われた時は、
本当にびっくりしたお」
ダルが、本当に驚いたという顔でそう尋ねてきた。
「あ、そういえば橋田は、その場にはいなかったわよね、
でも八幡は、困ってる橋田の様子を見て、後で助け船を出してくれたのよ」
「え?僕?」
「そうよ、前ソレイユでそんな会話が出たじゃない、
あの時、橋田が何を言っても岡部は聞く耳を持たなくて、
橋田が困ったような顔をしてたのを見て、八幡が何か考え込んでたのよ、
で、しばらく後、八幡と岡部と私が三人の時に、八幡が岡部に意見してくれたの」
「そ、そうだったんだ……」
ダルはそう言いながらも、微妙に不本意そうな表情をみせた。
「何?クーラーがあるのが嫌なの?」
「べ、別に嫌じゃないお、ただ、僕達が今まで何を言っても聞かなかったオカリンが、
八幡に何か言われただけで考えを変えたのが、何とも言えない気分になるというか……」
「ああ、嫉妬してるのね」
「べ、別に嫉妬とかそういうんじゃ!」
そう言いながらもダルは、わずかに頬を染めた。
「赤くなるな、変態!まあいいわ、私の聞いた限りだと、八幡は岡部にこう言ったのよ。
『なぁキョーマ、マッドサイエンティストがクーラーごときを支配出来なくてどうするよ、
存在する道具を使わないってのは、結局その道具に負けた事になるんじゃないのか?
それとも俺が買ってやろうか?その代わり、給料から天引きするが』
ってね。それで岡部は顔色を変えて、購入を決めたのよ」
「まじ?めちゃめちゃ煽ってるじゃん!しかも逃げ道を塞いでるし」
「さすがは八幡ニャね、キョーマの痛いところを的確に突いてきたのニャ」
「八幡さん、凄い凄い!」
「ちなみにキョーマさんは、何て返事を?」
キョーマとソレイユで何度か遭遇し、顔見知りである詩乃が、
興味津々でそう尋ねてきた。
「それがね、『それには及ばない、既にあいつらは俺の支配下にある、
まもなく我がラボの虜囚となる予定だ』だって。
で、その後は知ってる通りよ、私と橋田と三人で、設置工事の申し込みをしに行ったわよね」
「うわ、オカリン……」
「キョーマ……」
「ふふっ、オカリンらしいね」」
そう呆れるダルとフェイリスに、まゆりはそう言って微笑んだ。
「まあ今は資金にもかなり余裕があるしね」
「そこは八幡様々だお」
「まゆしいもそこは嬉しいのです」
紅莉栖はそう言った後、続けてこう言った。
「その後、岡部が八幡と二人の時にこう言ってたの、
やっぱクーラーがあると違うよなぁって。あの二人、本当に仲良しよね」
「確かにちょっと引くくらいだお」
「橋田、あんただって仲良しでしょう?」
「まあそれはそうなんだけど」
「まあこの話はもういいでしょ、ねぇまゆり、何か飲み物はある?」
「え、えっと、今は『選ばれし者の知的飲料』しか……」
「なるほど……橋田、何か買ってきて」
「え~、何で僕が……」
渋るダルをじろっと見ながら、紅莉栖はフェイリスに言った。
「フェイリスさん、お願い」
「ダルにゃん、お願いなのニャ」
「う~ん、でも今日は特に暑いしなぁ」
「今日は中々しぶといわね、さてどうするか……」
そして紅莉栖は、一同の顔を見回し、詩乃の所で目を止めた。
「ああ、今日は秘密兵器がいたんだったわね」
「ひ、秘密兵器!?私が?」
「ええそうよ、詩乃、ちょっと耳を貸して」
そして紅莉栖は詩乃に何か耳打ちし、詩乃は驚いた顔でこう言った。
「えっ、ほ、本当に私がそれを言うの?」
「ええ、それで全て解決よ」
「ほ、本当の本当に?」
「私を信じなさい」
「う、うん」
そして詩乃は、つかつかとダルの前に歩み寄り、少し逡巡した様子を見せた後、
キッと怒ったような顔になり、こう言った。
「お前はいつからそんなブタに成り下がったんだ、橋田軍曹!」
「へ……?ぐ、軍曹?」
「いいからさっさと動きなさい、この無能!私の言う事が聞けないというのなら、
このヘカートIIで蜂の巣にするわよ!」
「サ……サー!イエッサー!」
ダルはその瞬間にピンと背筋を伸ばし、敬礼をした。
「そんなお前には、迅速に行動出来なかった事への罰を一つ追加する、
飲み物と一緒にアイスも人数分買ってこい!十分以内によ!」
「イ、イエッサー!」
そして詩乃は、途端に相好を崩し、笑顔でこう言った。
「お前には期待しているからな、橋田軍曹」
「イエス、マム!」
そう言ってダルは、とても嬉しそうな顔で、駆け足でドアから外に出ていった。
「「「「「「おお~!」」」」」」
そして一同から拍手が巻き起こり、詩乃は困ったような表情で言った。
「こ、こんな感じで良かった?」
「パーフェクトよ、しかも最後の笑顔、あれアドリブよね?」
「え、えっと……あ、あは……」
「詩乃、凄い凄い!」
「どこであんなやり方を!?」
「そ、その……アルゴさんって人の真似……」
それはアルゴがダルを操縦する時に多用するやり方だったらしく、
詩乃は苦笑しながらそう言った。
「なるほど、そう言われると確かにそうね」
「ねぇ詩乃、そのアルゴさんって?」
その美衣の質問に、詩乃はこう答えた。
「えっと、ハッカーの人?」
「え、ハッカーって本当に存在するの?」
驚く美衣に、椎奈がこう言った。
「まあソレイユだし、それくらい普通にいるでしょ」
そしてまゆりが横からこう言った。
「ちなみにさっきのダル君も、ハッカーの人だよ」
「えっ?まったくそうは見えなかったけど、そんなに凄い人だったの?」
「詩乃っち、そんな人にあんな事を言って大丈夫?」
美衣と映子は心配そうに、詩乃にそう声をかけた。
「大丈夫よ、橋田は絶対に喜んでたから」
「まあダル君ならそうかもなのです」
「ダルにゃんなら間違いなくそうニャ」
紅莉栖とまゆりとフェイリスはそう断言し、椎奈は詩乃をこう賞賛した。
「さすが詩乃、女王様気質!」
「そ、そんなんじゃないわよ!いっぱいいっぱいだったわよ!」
その瞬間にいきなりドアが開き、ダルが戻ってきた。
「橋田軍曹、ただいま戻りました!」
その瞬間に、慌てた詩乃は、咄嗟に腕組みをしながらダルにこう言った。
「や、やはりお前は私の期待に応えてくれたな、
これからもお前の働きには期待している」
「イエス、マイロード!」
そしてまゆりがダルにタオルを手渡し、ダルは椅子に腰かけ、
二重の意味ではぁはぁしながら顔にタオルを乗せた。
「………やっぱり女王様気質だよね?」
「ち、違うわよ!」
「でも今の、どう考えてもアドリブだよね?」
「う、うう……」
こうしてしばらく詩乃はからかわれ続けた。
ちなみに後日、ソレイユで似たような状況があり、
詩乃は咄嗟に同じような態度をとってしまい、延々と八幡にからかわれる事になる。
尚もラボでの雑談は続く。