ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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やっと指の腫れが落ち着きました!でも指先が硬くなってテカテカに見えます!
お待たせしてしまったので日曜ですし、今日は10時に投稿しました!


第501話 EBNサバイバー

 八幡と優里奈がマンションの駐車場に着いたその時、キットが突然警告を発した。

 

『私の駐車スペースに人が二人座り込んでいます、その為ここで、車を一旦停止します』

「ん、どこだ?ってあれは………」

「結衣さんと優美子さんですね」

「だな……あいつらあんな所で何やってんだ?」

「普通に考えれば、八幡さんを待っていたんだと思います、

私も八幡さんも不在だったという事は、部屋に入る手段が無いって事ですから」

「そう言われると確かにそうだな」

 

 八幡はその意見に頷くと、優里奈を伴って車を降りた。

 

「あっ、ヒッキー……」

「八幡……」

 

 二人は疲れた顔で、そう八幡に声をかけてきた。

 

「随分疲れてるな、とりあえず部屋に行くか。キット、後は任せる」

『はい、お任せ下さい』

 

 

 

 部屋に入ると、二人はソファーに倒れ込み、優里奈は慌てて冷蔵庫に走った。

 

「すぐに冷たい飲み物を用意しますね」

「優里奈ちゃん、ありがと……」

「優里奈、あーしは炭酸で……」

「はい」

 

 そして二人は飲み物を受け取ると、それをぐいっと飲み、

それでやっと落ちついたのか、その場で脱力した。

 

「はぁ……」

「うぅ……」

 

 結衣はぐったりとソファーに仰向けになり、

優美子も天を仰ぎながら、両手をソファーの背もたれの上にかけ、

弛緩した顔で目をつぶっていた。二人とも、八幡がいる事をまったく気にせず、

スカートはまくれあがり、かなりだらしない姿を見せており、

それを見た八幡は、慌てて二人に言った。

 

「お、おいお前ら、スカートとかやばいから、やばいから!」

「そんな事はどうでもいいよ、ヒッキー……」

「そうそう、見たければいくらでも見ればいいし、あーしは今それどころじゃないし」

「いや見ねえから……ああもう、仕方ない、俺はこっちの椅子に座るぞ」

 

 八幡はそう言って、二人の後方にあるキッチンの椅子に座った。

 

「まあ大体想像はつくが、今日は一体どうしたんだ?」

「分かりやすく言うと、あたし達はEBNサバイバーなの」

「EBN?」

「あーし達、さっきまで姫菜の所にいたんだけど……」

「EBNって海老名の略かよ!逆に分かりにくいわ!」

「え~?そうかなぁ?まあそんな訳で、姫菜の所から無事生還してきたって訳」

「姫菜が買い出しに行く時に、後は二人にはきついだろうからって解放してくれたし」

 

 八幡はその言葉を聞き、ハテナと疑問に思った。

 

「きついって、これから佳境に入るって話だったが……」

「え?何で知ってるの?」

「さっき池袋の薬屋で海老名さんに会ったからな、確かに色々抱えてたが」

「えっ、本当に?」

「とはいえ、お嬢様聖水と激強打破しか見えなかったが」

 

 二人はそれを聞いて身震いした。

 

「それ、ここ最近のあーし達の食事だわ……」

「はぁ?」

「あとはカップラーメンかな、でも今日はそれすらも尽きて……」

「お腹減った……」

「あっ、今朝作ったおかゆがまだ残ってますよ」

「それは丁度いいな、優里奈、早速用意してやってくれ」

「はい!」

 

 そして優里奈は二人におかゆを提供し、

二人はそれを食べて、やっと少しは落ち着けたようだ。

 

「ふう……」

「久々に人間らしいものを食べた気がする……」

「でもどうしておかゆなんか作ったの?」

「俺が昨日の夜少し熱を出してな、優里奈が朝作ってくれたんだ」

「えっ、大丈夫なの?」

「ああ、体を休めたら良くなったから大丈夫だ」

「そっかぁ、それなら良かった」

 

 二人はそう言いながら、再びソファーでぐったりとし、

八幡は気になっていた事を優美子に尋ねた。

 

「なぁ優美子、お前から海老名さんに意見出来なかったのか?

さすがにその状態はやばいと思うんだが……」

「姫菜はもう擬態する必要もなくなったから、

普段はともかく、こういう時はあーしの言う事は聞かなくなったんよ」

「ああ、まあそうかもしれないな……」

「私達、友達だよねって笑顔で言われて引き受けたけど、もう二度と手伝いはしない……」

「そういえばさっき言いかけたが、佳境なのに抜けてきちゃって良かったのか?」

 

 八幡は思い出したように二人にそう言った。

それを聞いた二人は顔を見合わせ身震いすると、

何故か八幡の手を取り、ソファーの二人の間に座らせた。

 

「ん、何だ?」

「いや、確認というか……」

「もう何が現実なのか分からなくなっちゃって……」

 

 そして二人は、八幡の腕に抱きつき、潤んだ目で八幡の顔を、至近距離から見つめた。

ちなみに優里奈はそれを見て、うわぁ、うわぁと顔を赤くしていた。

八幡は焦り、逃げ出そうと腰を浮かせかけたが、

その二人の目はどちらかというと、泣きそうな目に見えたので、

八幡は思いとどまり、二人に事情を尋ねる事にした。

 

「………何がどうしたんだ?」

「えっとね、佳境って事は、要するにそういうシーンが増える訳」

「ああ……」

「あーし達が手伝ってたのは主に日常シーンだったけど、

それだけでも精神的にかなりくるものがあったのに、

ここからはいよいよ絡みのシーンが増えてきてさ……」

「それで姫菜が気を遣ってくれたの、二人にはまだちょっと無理かなって言って」

「まだ?まだって言ったのか?お、おいお前ら、そういうのに興味なんか沸いてないよな?」

 

 八幡は焦った顔でそう言い、二人は八幡の腕を抱く力を強めた。

結衣の豊満な胸と、優美子のそれなりの胸が、

それによってぎゅっと八幡の腕に押しつけられる事になったが、

それをまったく意識しないほど、八幡の顔は焦っていた。

 

「あーし達は平気だけど……こういう言い方はちょっとアレだけど、

そういう事をあんたとしたいって普通に思ってるし」

「あたしもそうだよ、でもほら、やっぱり不安になるじゃない?その……」

 

 そして二人は下を向き、ぷるぷる震えながらこう言った。

 

「あんたが……」

「キリト君とあんな事を……」

「ストップ、ストップだ!そういう事を思い出すんじゃねえ、

俺にはそんな趣味はまったく無えから!」

「あは、だよね……ヒッキーは昔から、よくあたしの胸を見て顔を赤くしてたし」

「あんたは高校の時、あーしのパンツを見て喜んでたんだしね」

「い、今はそんな事無えよ!」

「今は?」

「確かに昔はそういう事もあったからそれは否定しない、そういう意味での今は、であり、

積極的にそういう事をしていた訳じゃないという事は主張しておく」

 

 慌ててそう抗議した八幡だったが、二人はそれで何かに気がついたのか、

ハッとした様子で顔を見合わせた。

 

「そういえば最近、胸にヒッキーの視線をあまり感じない……」

「あーしもパンツを見せろってまったく言われなくなったし」

「おい、結衣はともかく優美子はさすがに話を盛りすぎだろ!」

「もしかしてヒッキー、やっぱり本当は……」

「あんた、本当は……」

「だから無えよ!何で俺がキリトに!」

 

 その時優里奈が突然八幡に、こんな質問をしてきた。

 

「あ、あの、八幡さん、そういえば、キリ×ハチとかゼク×ハチってどういう意味ですか?」

「う………」

 

 八幡はその質問に、思わず言葉を詰まらせたが、

ここにはそれに詳しくなってしまった者があと二人いる為、

その質問に対する答えは、スムーズに行われた。

 

「男同士の絡みで、最初の名前の人が男性役、後の人が女性役って事だよ」

「えっと、つまりそれは……」

「うん、姫菜の中ではヒッキーは、常に相手を受け入れる役みたいなんだよね」

「う、受け入れる、ですか!?えっと、えっと……」

「優里奈はそんな世界とは永遠に関わらなくていい、

だからそういう事を深く考える必要は無い、これっぽっちも無いからな!」

「そ、そうですね、私もお二人みたいに、やっぱりそういう事は、

私と八幡さんの間で行われるべきだと思いますし……」

「ばっ、お前何を……」

 

 優里奈は二人の影響を受けたのか、思考がおかしくなっており、そんな事を口走った。

それを聞いた二人は突然立ち上がり、優里奈の両端に陣取った。

 

「えっ?えっ?」

「そういえば優里奈ちゃんって、あたしと同じくらい胸があるよね、

もしかしたら高校の時のあたしよりも大きいかも……」

 

 そう言って、結衣は優里奈の胸をもみ始めた。

 

「それでいて、優里奈って細いよね……あーしとほとんど変わらないし」

 

 そう言って、優美子は優里奈のスカートをたくし上げ、

その太ももをまさぐり始めた。

 

「ちょ、ちょっと、結衣さん、優美子さん、駄目です!八幡さんに見られちゃいます!」」

 

 優里奈は抵抗しようとしたが、さすがに相手が二人だと、抵抗もままならなかった。

 

「大丈夫大丈夫、ヒッキーならほら」

 

 そう言われて八幡の方を見た優里奈の目に、目を瞑り、耳を塞いだ八幡の姿が写った。

 

「ほら、大丈夫っしょ」

「ですね……でもこれはこれで、少し残念な気もしますね」

 

 そのまましばらく優里奈は二人になすがままにされていたが、

さすがに長いと思ったのか、突然八幡が立ち上がり、一瞬目を開けると、

二人の頭にアイアンクローをかました。

 

「お前ら、そろそろやめような」

「い、痛い、分かった、分かったってばぁ!」

「昔と違ってあんたも逞しくなったし……」

 

 そして二人は優里奈を解放し、優里奈はやっと自由の身になった。

 

「とりあえず二人とも、寝不足でハイになってんだろ、

寝室を使っていいからとりあえず寝てこいって」

「あ、うん、それじゃあそうさせてもらう……」

「あんたも一緒に寝る?」

「いや、寝ねえから」

「ふん、相変わらずのチキンね、あーしがあんたなら、

黙って一緒に寝てあげるくらいするのに」

「優美子は男前すぎるんだっつの」

「それじゃあ代わりに優里奈ちゃん、一緒にお昼寝しよ!」

 

 結衣が突然そう言い、優里奈は慌ててそれを断った。

 

「わ、私なら大丈夫です」

「でも少し眠そうじゃない?」

「そ、それは……」

 

 優里奈がそれを否定しなかった事で、八幡も、昨日自分の看病をしたせいで、

優里奈が寝不足だろうという事実に気がついた。

 

「だな、昨日は俺の看病をしてくれたせいで睡眠時間が足りてないと思うし、

お昼寝程度なら別に構わないだろ、優里奈も一緒に寝てくるといい」

「えっと……はい、それじゃあお言葉に甘えます」

「うし、それじゃあ早速いくし」

「あ、お二人とも、自分で歩けますから!」

「いいからいいから、こっちこっち!」

「あ、ちょっと!」

 

 そして優里奈は二人に両手を拘束され、そのまま寝室へと連れ込まれた。

おそらくそのまま、二人に挟まれて寝る事になるのだろう、

八幡はそんな事を考えながら、夕食くらい作ってやるかと思い、

冷蔵庫を覗いた後、買い出しに出ようと家を出た。

丁度そのタイミングで、八幡の事を心配した明日奈から電話がかかってきた。

どうやら今学校が終わったらしい。

 

『八幡君、具合はどう?』

「おう、心配かけたな、どうやら疲れがたまってたみたいなんだが、

優里奈に看病してもらって何とか持ち直したわ」

『そっかぁ、それなら良かったよ、で、今優里奈ちゃんは?』

「海老名さんの所から脱出してきた結衣と優美子と一緒に、

マンションのベッドで仮眠中だ」

『脱出!?監禁でもされてたの?』

「正確には缶詰だな、ほら、コミケが近いだろ?」

『あっ』

 

 それで明日奈は事情を察したようだ。

 

『なるほどね、八幡君は今何をしてたの?』

「あいつらが起きた時の為に夕食でも作っておいてやろうかと思って、

これから買い出しに行くつもりだったな」

『八幡君一人で大丈夫?私も今から行こうか?』

「そうだな、俺だと簡単な物しか作れないし、そうしてくれると助かる」

『分かった、それじゃあ学校に迎えにきてもらってもいい?』

「ああ、すぐに行くから待っててくれ」

 

 こうして八幡は、明日奈を迎える為、キットで学校へと向かった。


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