ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第505話 八月八日・ヴァルハラの出撃

 ヴァルハラのメンバーは全員知っている事だが、八月八日は八幡の誕生日である。

だが八幡は、常日頃から余計な気を回す性格であり、

今回の誕生日もまた、メンバーに余計な金銭的負担を与える事をよしとせず、

プレゼントは仲間達と楽しく遊ぶ事だと言い放ち、

費用は全て自分で持ち、軽食と飲み物を用意した上で、

プレゼントの用意は不要だと重ねて念押しした上で全メンバーを集合させ、

交代でログアウトを可能という事にして、外で交流を深める事を可能にしつつ、

中の様子を外でモニター出来るように手配し、

全員でのヨツンヘイム奥地での定点狩りを提案してきた。

それを受け、空港に一人の女が降り立った、フカ次郎こと篠原美優である。

 

「コミケまであと数日、こっちに出てくるにはまあいいタイミングだったね、

さて、早速外部参加の我が友コヒーに会いに行くか」

「もう来てるわよ」

「うわっ、びっくりした!」

「もう、最初から迎えに来て欲しくてどの便で来るとか、

八幡さんに事前に詳しく教えてた癖に」

「いやぁ、半信半疑だったけど、まさか本当に来てくれるとは、さすが我が友、愛してる!」

 

 美優は上機嫌でそう言った。

 

「もう、調子いいんだから」

「で、リーダーは?」

「駐車場で待ってるわよ、さあ、行きましょ」

「あ、待ってってば!」

 

 駐車場では、八幡がキットの運転席で目を瞑り、二人の到着を待っていた。

 

「こんこんこん」

「おう、そのわざとらしい口でのノックは美優か」

「お待たせリーダー!あなたのフカちゃんが、再びこの地に降り立ったよ!」

「俺のフカなんて奴は知らないから人違いです」

「部下!部下を省いただけだから!」

「おう、美優だったか、最初誰だか分からなかったわ」

「ついさっき、美優かって言ってたから!」

 

 香蓮はそんな二人の様子を見て、さっさと移動するように促した。

 

「はいはい、いつもの漫才はそのくらいにして、早く移動しよ」

「そうだな、とりあえずうちのマンションに荷物を置きに行くぞ、美優」

「アイアイサー!」

 

 そして荷物を置く段階で、美優は部屋に先客がいる事を知った。

クローゼットの引き出しの名前が二つ増え、荷物が置いてあったからだ。

 

「リーダー、この方々はどちらさまで?」

「それは自衛隊のお姉さま方だ、お前も知ってると思うが、

今うちの会社で自衛隊の訓練用のシステムを開発してるんだが、

その為に出向してもらってる二人が、自由に部屋を使えるようにしてあるんだよ、

もちろん毎日じゃないがな」

「なるほど、さっすがリーダー、愛人を増やすのに余念が無い!」

 

 その瞬間に、美優の頭に拳骨が落ち、美優はその場に蹲った。

 

「よし、会場まで歩いて行くぞ」

「ア、アイアイサー……」

 

 会場に着くと、美優はその異様な光景に目を疑いそうになり、

直後に八幡ならまあ当たり前かと納得した。自己完結したのである。

 

「相変わらず女性比率が多いですなぁ、いやぁ絶景絶景」

「おいフカ、さっき言ってた二人を紹介しておく、志乃さんと茉莉さんだ」

「ん、八幡君、この方は?」

「これは篠原美優、俺の仲間の一人です、北海道に住んでるんですが、

こっちではしばらく俺のマンションに住む事になるんで、

お二人に紹介しておこうと思いまして」

「なるほど、私は栗林志乃よ、宜しくね」

「私は黒川茉莉です、美優さん、宜しく」

「こちらこそ、短い間ですが宜しくお願いするです!」

 

 そんな三人の姿を見ながら八幡は、出席者の管理をしてくれている雪乃の所へ向かった。

 

「雪乃、まだ誰か来てない奴はいるか?」

「いいえ、これで全員よ」

「そうか、それじゃあ始めるとするか」

「分かったわ」

 

 そして雪乃はマイクを持ち、司会の真似事を始めた。

 

「みんな、それじゃあ八幡君の誕生日会を始めるわ、各自何でもいいから飲み物を用意ね。

といってもケーキとかも特に用意はしてないし、プレゼントも無しな約束になってるけど、

彼の事をお祝いしつつ、この機会に存分に交流を深めるという事で今回は納得して頂戴、

それじゃあお祝いの言葉だけ、ご唱和をお願いね、八幡君、誕生日おめでとう!」

「「「「「「「「「「おめでとう!」」」」」」」」」」

 

 参加者達は口々にお祝いの言葉を述べ、こうして本当にささやかではあるが、

八幡の誕生日会が始まった。

ちなみに今回の外部参加者は、ソレイユの社員組であるかおり、舞衣、薔薇、南、

メイクイーン組からはオカリン、ダル、まゆり、八幡親衛隊(自称)のABC、

自衛隊組の二人、GGOから闇風と薄塩たらこ、そして最後に優里奈と千佳である。

エルザは今回はそもそも呼ばれていない、今は遠く九州の地でライブを行っているからだ。

主に会社に関わっている者達が勢ぞろいした格好となる。

 

「さて、それじゃあヴァルハラ組は、早速ログインよ、とりあえず狩場へと移動するわ」

 

 その雪乃の言葉に従い、会場脇に用意されたクッションスペースで、

メンバー達は続々とゲーム内へとログインしていった。

それと同時に、モニターに八幡の主観カメラからの映像が表示され、

残された者達は、興味深げにそのモニターを覗きこんだ。

 

「これが比企谷君達のギルドって奴?制服まで揃えてるんだ」

「うん、ヴァルハラ・リゾートって言うんだってよ、千佳」

「格好いいなぁ、それに何ていうか、いかにも強そう」

「まあ伊達に最強ギルドなんて呼ばれてないって事だね」

 

「壮観だねオカリン、まゆしいも何か創作意欲が沸いてきたよ」

「これがヴァルハラ……八幡の作りしギルドか」

「オカリンもやってみたい?」

「そうだな、お試しで空くらいは飛んでみたいな」

 

「………ねぇ二人とも、微妙に詩乃の格好がエロくない?」

「GGOの時も、太ももの内側だけ露出させてたよね、ああいうのが詩乃の趣味なのかな?」

「これは戻ってきたら問い詰めてみないといけませんな」

 

「うわぁ、まるで軍隊だねぇ」

「でもみんな凄く楽しそうよ」

「あっ、飛んだ」

「綺麗……」

「うちでも空を飛ぶ訓練が導入されないかな?」

「……あなたね、ゲーム内で空を飛べるようになったとして、それをどこで実践するの?」

「い、言ってみただけだってば!」

「まったく志乃は相変わらず……」

 

「優里奈は初めて見るんだっけ?」

「はい薔薇さん、凄く興味深いです」

「舞衣と南は見た事くらいはあるんだったかしら」

「私は開発室で何度か」

「うちはちゃんと見るのは始めてかも、開発の手伝いをした事があるくらい」

「そう、じゃあとても楽しみね」

 

「なぁたらこ、俺達って場違いじゃね?」

「確かに女性比率は高いが、まあいつもの事だろ」

「そう言われるとそうなんだが……レベル高いよなぁ」

「まあこの機会に、友達を増やそうぜ」

「ついでに目の保養だな!」

 

 

 

「それじゃあヨツンヘイムへと進軍する、キリト、トンキーを」

「了解、とりあえずトンキーの住処へ行こう」

 

 本当に昔の事ではあるが、始めてALOにログインした頃、アルンに向かう途中で、

一行はトンキーという邪神モンスターと交流を深める事となった。

その中でもキリトはトンキーの事をいたく気に入り、

ヨツンヘイム突入後に頑張ってトンキーを見つけ出し、

その後も密かに彼?と交流を深めていた。

他のプレイヤーに討伐されないように、見つからないような場所にトンキーの住居を作り、

そこにたまに足を運んで、友達として付き合っていたのだった。

 

「キリト、ここか?」

「ああ、ちょっと待っててくれ、トンキー、いるか?」

 

 そのキリトの呼びかけが聞こえたのか、奥からゾウのようなクラゲのようなモンスターが、

こちらに向かって嬉しそうにふわふわと移動してきた。

 

「うわ、これは何なのニャ?」

「これがトンキーだ、俺の友達だ!」

 

 キリトはそう言うと、トンキーの上へと飛び乗った。

 

「トンキー、強そうな敵がそれなりに沢山いるような狩場に俺達を案内してくれないか?

出来ればたまに休憩出来るようなスペースがあると嬉しいな」

 

 その言葉を理解したのかどうか、トンキーはキリトを乗せたまま、

ふよふよと移動を開始した。

 

「まだ何人か乗れるから、乗りたい奴は乗ってくれ」

 

 その言葉で、フェイリス、クリシュナ、シノン、フカ次郎の新規組がトンキーの上に乗り、

他のメンバー達は、飛びながらトンキーの後を追った。

同じ新規組でも、セラフィムはハチマンの傍にいる事を望み、その後方を飛んでいた。

ちなみに今回は、ユイとキズメルも同行しており、

並んで飛ぶハチマンとアスナのすぐ近くにいた。

 

「このままだと結構奥地に行く感じになりそうだな、楽しみだ」

「帰りに迷わないように、ちゃんと覚えておかないといけないわね」

「だな」

 

 ハチマンはそっち方面はユキノに任せ、今回の主役として、

他のメンバー達に色々と声をかけられながら飛んでいた。

その為後方への警戒を疎かにする事となり、尾行してくる者の気配に気付かなかった。

 

 

 

「おい、ヴァルハラ・リゾートがどこかに出撃するみたいだぞ」

「幹部連に至急報告を、斥候職の者、何人かであいつらを尾行だ」

 

 それはいわゆる連合と呼ばれるギルドのメンバーであり、

機会さえあれば、ヴァルハラを積極的に狙ってくる者達である。

もっとも連戦連敗ではあるのだが、彼らはめげずにヴァルハラを狙い続けているのだった。

こうして連合も動き出したが、ハチマン達はそういったリスクに関してはまったく気にせず、

トンキーに導かれ、狩場へと向かう。

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