ヴァルハラのメンバー達がログインし、残された者達は、
興味津々でモニターに見入っていた。
「ALOってこんな感じなんだ、GGOしか知らないから新鮮だねぇ」
「そういえばここにいる全員、GGOの事しか知らないか、
もしくはどっちも知らない人ばっかりっすか?」
闇風が、メンバーをぐるりと見渡しながらそう言った。
「あたしも千佳も、どっちもやってないよね」
「うん、そのうち余裕が出来たらやってみたい気はするけどね」
「その為には、千佳の代わりに店をきりもりしてくれる、
素敵な旦那様を捕まえるのが必須条件だよね、
千佳、そういうチャンスがあったら絶対に逃さないようにね!」
「それはその通りなんだけど、人生最大のチャンスを棒に振ったかおりがそれを言う?」
「そ、それは言わないで……」
千佳が言ったのは、当然中学の時に、八幡からの告白を断った時の事なのだが、
かおりがあまりにも落ち込んだ様子を見せた為、
誰もその事について、尋ねてくる者はいなかった。
「うちも経験は無しかな、今はとにかく、秘書になる為の勉強が忙しいんだよね」
「南は本当に頑張っているから、入社したら少しはのびのびするといいわよ」
「いえ室長、うちには比企谷を支えるという使命があるので!」
「………まああまり気を張りすぎないようにね」
「はいっ!」
南は元気よくそう言った。目標があるせいか、
今の南は毎日の生活がとても充実しているようだ。
だが真面目すぎるのも良くない為、いずれ八幡が、その辺りを何とかしようと動くだろう。
「俺とダルはここの仕事で多少は経験はあるが、まゆりは未経験だよな?」
そのキョーマの言葉に、まゆりは反応しなかった。
だがシャッター音が立て続けに聞こえ、訝しく思ったキョーマがまゆりの様子を伺うと、
まゆりは目を輝かせながら、モニターに向けて携帯のシャッターを何度も押していた。
どうやらヴァルハラのメンバーの制服に興味津々らしい。
「見て、オカリン、全員のマークのデザインが違うよ?
他にも色々、人によって改造してるみたいだよ、凄い凄い!
ほら、フェリスちゃんのマークはヘッドドレスにネコ耳だし、
クリスちゃんのマークは……ねぇオカリン、あれって何?」
「何だろうな……ダル、知ってるか?」
「あの丸いのは人の頭で、脳の部分に雷マークを配置したらしいお」
「さしづめ電脳のイメージって感じか?」
「まあそんな感じかな、牧瀬氏らしいっちゃらしいけど、
僕なんかからすれば、もう少しかわいらしいマークでも良かったと思うんだよね」
「まあ本人が決めたならそれでいいんじゃないかな」
「あいつは実験大好きっ子だから仕方ないな」
そして最後に残ったABCは、珍しく真面目な顔でこう言った。
「私達は今年受験だし、さすがに余裕が無いかなぁ」
「詩乃に随分差をつけられちゃったしね」
「就職は八幡さんのコネがあるからもう心配無いんだけど、
それに甘えて出鱈目な生活を送る訳にはいかないしね」
「大学にいって、ソレイユに入るのに必要な事をしっかり勉強して、
その息抜きに何かやるかもしれないって程度かな」
「三人とも、将来の事をちゃんと考えてるのね、えらいわ」
そう宣言した三人に、薔薇が感心した様子でそう言った。
三人は嬉しそうに頷き、いずれ宜しくお願いしますと薔薇に頭を下げた。
丁度その時モニターの中で動きがあった。どうやら狩場に着いたようだ。
「うわ、あのトンキーってモンスター、岩に擬態なんか出来るんだ」
「どういうコンセプトでああいうデザインと能力にしたんだろ」
「確かに謎だよな……」
「きっと頭のおかしい人が考えたんだろうね」
ちなみにその頭のおかしい人は、今は逮捕されて牢の中である。
「狩りが始まったね」
「さくさく倒していくなぁ、ALOの狩りってこんなもんか?」
「そう見えるかもだけど、ヴァルハラの狩りは本当に特殊なのよ、
参考までに、他の人がネットにアップした狩りの動画、見てみる?」
「お、そんなのがあるんすか?お願いしゃっす!」
その闇風の頼みに薔薇は快く応え、別のモニターに呼び出した動画を流した。
「…………ええと、この敵、強くないすか?」
「その敵は、今ヴァルハラのメンバーが狩っている敵と比べると、
アンギラスとゴジラくらいの差があるわよ」
「薔薇さん、その例え、凄く分かりにくいです、あと古いっす」
「っ……」
そう言われ、一瞬言葉に詰まった薔薇は、何か思いついたのか、ドヤ顔でこう言った。
「メタルスライムとはぐれメタルくらいの差があるわよ」
「あまり変わりませんが、さっきよりは分かりやすいです」
その例えなら理解出来たのか、闇風だけではなく、他の者達も驚いた。
一部分かっていない者もいたが、その者には、薔薇が別の説明をした。
ちなみにまゆりには島サークルと壁サークル、
千佳にはホワイト・クリスマスとベルサイユのバラ、
かおりにはソレアルとソレイケルで比較していた。
かおりはそれで理解したようだが、その例えは他の者には当然まったく理解出来ない。
「まあこれで全員、何となく何が起こってるのかは分かってもらえたかしら」
「うん、わかった!でも室長の説明は本当にウケルし」
「私にはかおりの頭の構造の方がウケルんだけどね……」
「でも千佳なら何となく分かるでしょ?」
「それはそうだけど!ああもう、この何とも言えない感情を、比企谷君と共有したい……」
「あたしには、千佳への説明の方がまったく意味不明なんだけど」
「薔薇の品種よ、まあ分からなくて当然ね」
「薔薇さんだけに!?ってかそんな名前の薔薇があるんだ……」
こうして一通り説明が終わったところで、モニターを見ながら一同は口々に言った。
「あれが普通の狩り?本当に?」
「ヴァルハラの狩りとぜんぜん違う……」
「同じ条件で比較しないとアレだけど……」
「八幡の奴、平然と見物してやがる………ん?」
その時画面の中で、アルゴがハチマンに何か話しかけているのが見えた。
それを受け、ハチマンは悪そうな顔をすると、アルゴに何か指示を出し、
アルゴもそれを受け、他の仲間に何かを耳打ちしていった。
「あれ、何をしてるんだろ……」
「さあ……」
そしてアルゴがほぼ全員の所に行ったのを確認したハチマンは、突然こう言い出した。
「さて、そろそろ適当に休憩を挟んでいくか」
そしてハチマンとキリトとアスナが先に落ちた。
その為モニターは、ハチマンの正面に固定される事となった。
具体的にはその広場の入り口に向いている。
「ふう、休憩休憩っと」
「あ、あの、八幡さん、画面の向きが……」
「そうよそうよ、これじゃあみんなの戦う姿が見えないじゃない、
あんたにしては珍しいミスよね」
「それが実はミスじゃないんだな、お前ら、画面をよ~く見てみろ」
「画面を?」
そして一同は、じっと画面を見つめ、最初に志乃が、その事に気がついた。
「あっ、もしかして対抗部隊が来てる?」
「さすがですね、そういう事です、敵襲です」
「敵が来てるのか?」
「こんな所でのんびりしてていいのかよ!?」
「問題ない、あいつらはそう簡単にやられたりしない。
それに敵が突撃してきたら、この画面ですぐに分かるしな」
「それでカメラをこの向きにしたのか」
「なるほど、そういう事だったんだ」
「さっすが比企谷君!」
「ちゃんと保険もかけてあるものね」
「雪乃!」
そこに雪乃も合流し、これでここにリーダーと副長三人が揃う事となった。
「保険?」
「一体何をしたんだ?」
そして八幡は、画面を指差しながら言った。
「この後ろで姉さんが待機中だ、要するに落ちたフリをさせてある。
うちの最大戦力に、適当に奇襲をかけてくれと伝えてあるんだよ」
「あ、そういえば社長がいない」
「なるほど、さすがというか……」
「あっ、見て!」
そして画面の中では、次々と敵が乗り込んできていた。
「うわ、凄い数じゃない?」
「本当に大丈夫なの?」
「大丈夫だ、ここじゃ飛べないから、平面的な戦いになるしな」
「どういう事?」
「タンク……ええと、盾役が機能しやすくなるって事だな」
「でもあの数相手に大丈夫なのか?」
「セラフィムも成長してきたからな、それに多少取りこぼしても、
クラインとエギルが何とかするさ、リズやフカも後ろに控えているしな。
何より姉さんの攻撃で、ほとんどの敵が行動不能になるんじゃないか?」
だがその八幡の予想は外れた。いつになってもソレイユは動かなかったのだ。
「………社長が動かないね」
「何をやってるんだあの馬鹿姉は、仕方ない、キリト、アスナ、ユキノ、俺達も行くぞ」
「心配は無さそうだけど、こんな楽しそうな戦いに参加しない手はないしな」
「さっすがキリト君、相変わらずのバトルジャンキーね」
「ユキノも大概だと思うけどな」
「ほら二人とも、行こっ」
「待ってアスナ、今行くわ」
「おう、それじゃあみんな、行ってくる」
四人はそう言って、再びログインしていった。
その直後にモニターの画面が動き、戦闘の様子が映し出された。
「おう、戦線が完璧に維持されてるな」
「ってか敵の数が随分減ってるね」
「ハチマン達は外に移動するのか」
ちなみにソレイユは、この段階でもう呪文の詠唱を開始していた。
「どれどれ……おお、まだ遠いけど、敵の援軍が結構来てるねぇ」
「この詠唱は………ついに社長の出番か!」
「陽乃さんって超有名なプレイヤーなんだよね?」
「らしいな、さてどうなるんだ……?」
そして一同が見守る中、ソレイユの呪文の詠唱が完了し、
最後にソレイユは、呪文名を高らかに叫んだ。
「ライトニング・ネビュラ!」
その瞬間に雷が渦を巻き、近くにいる者達を引き寄せ始めた。
「う、うわっ、何だ?」
「敵が引き寄せられて、吸い込まれ………?」
「うっわ、えげつな……」
そして死亡マーカーが大量に発生し、わずかな生き残った敵も、
ハチマンの手によって殲滅された。
「姉さん、大丈夫か?」
「魔力が切れた上に、集中しすぎて頭がガンガンする」
「中の連中を片付けてるまで我慢してくれよ、
とりあえず俺から絶対に離れないようにな」
「うん、早めにお願いね」
そしてハチマンは、部屋の中に入り、敵に挨拶をした。
「よっ」