ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第508話 八月八日・その戦いの裏側で

 ヴァルハラのメンバー達がログインし、残された者達は、

興味津々でモニターに見入っていた。

 

「ALOってこんな感じなんだ、GGOしか知らないから新鮮だねぇ」

「そういえばここにいる全員、GGOの事しか知らないか、

もしくはどっちも知らない人ばっかりっすか?」

 

 闇風が、メンバーをぐるりと見渡しながらそう言った。

 

「あたしも千佳も、どっちもやってないよね」

「うん、そのうち余裕が出来たらやってみたい気はするけどね」

「その為には、千佳の代わりに店をきりもりしてくれる、

素敵な旦那様を捕まえるのが必須条件だよね、

千佳、そういうチャンスがあったら絶対に逃さないようにね!」

「それはその通りなんだけど、人生最大のチャンスを棒に振ったかおりがそれを言う?」

「そ、それは言わないで……」

 

 千佳が言ったのは、当然中学の時に、八幡からの告白を断った時の事なのだが、

かおりがあまりにも落ち込んだ様子を見せた為、

誰もその事について、尋ねてくる者はいなかった。

 

「うちも経験は無しかな、今はとにかく、秘書になる為の勉強が忙しいんだよね」

「南は本当に頑張っているから、入社したら少しはのびのびするといいわよ」

「いえ室長、うちには比企谷を支えるという使命があるので!」

「………まああまり気を張りすぎないようにね」

「はいっ!」

 

 南は元気よくそう言った。目標があるせいか、

今の南は毎日の生活がとても充実しているようだ。

だが真面目すぎるのも良くない為、いずれ八幡が、その辺りを何とかしようと動くだろう。

 

「俺とダルはここの仕事で多少は経験はあるが、まゆりは未経験だよな?」

 

 そのキョーマの言葉に、まゆりは反応しなかった。

だがシャッター音が立て続けに聞こえ、訝しく思ったキョーマがまゆりの様子を伺うと、

まゆりは目を輝かせながら、モニターに向けて携帯のシャッターを何度も押していた。

どうやらヴァルハラのメンバーの制服に興味津々らしい。

 

「見て、オカリン、全員のマークのデザインが違うよ?

他にも色々、人によって改造してるみたいだよ、凄い凄い!

ほら、フェリスちゃんのマークはヘッドドレスにネコ耳だし、

クリスちゃんのマークは……ねぇオカリン、あれって何?」

「何だろうな……ダル、知ってるか?」

「あの丸いのは人の頭で、脳の部分に雷マークを配置したらしいお」

「さしづめ電脳のイメージって感じか?」

「まあそんな感じかな、牧瀬氏らしいっちゃらしいけど、

僕なんかからすれば、もう少しかわいらしいマークでも良かったと思うんだよね」

「まあ本人が決めたならそれでいいんじゃないかな」

「あいつは実験大好きっ子だから仕方ないな」

 

 そして最後に残ったABCは、珍しく真面目な顔でこう言った。

 

「私達は今年受験だし、さすがに余裕が無いかなぁ」

「詩乃に随分差をつけられちゃったしね」

「就職は八幡さんのコネがあるからもう心配無いんだけど、

それに甘えて出鱈目な生活を送る訳にはいかないしね」

「大学にいって、ソレイユに入るのに必要な事をしっかり勉強して、

その息抜きに何かやるかもしれないって程度かな」

「三人とも、将来の事をちゃんと考えてるのね、えらいわ」

 

 そう宣言した三人に、薔薇が感心した様子でそう言った。

三人は嬉しそうに頷き、いずれ宜しくお願いしますと薔薇に頭を下げた。

丁度その時モニターの中で動きがあった。どうやら狩場に着いたようだ。

 

「うわ、あのトンキーってモンスター、岩に擬態なんか出来るんだ」

「どういうコンセプトでああいうデザインと能力にしたんだろ」

「確かに謎だよな……」

「きっと頭のおかしい人が考えたんだろうね」

 

 ちなみにその頭のおかしい人は、今は逮捕されて牢の中である。

 

「狩りが始まったね」

「さくさく倒していくなぁ、ALOの狩りってこんなもんか?」

「そう見えるかもだけど、ヴァルハラの狩りは本当に特殊なのよ、

参考までに、他の人がネットにアップした狩りの動画、見てみる?」

「お、そんなのがあるんすか?お願いしゃっす!」

 

 その闇風の頼みに薔薇は快く応え、別のモニターに呼び出した動画を流した。

 

「…………ええと、この敵、強くないすか?」

「その敵は、今ヴァルハラのメンバーが狩っている敵と比べると、

アンギラスとゴジラくらいの差があるわよ」

「薔薇さん、その例え、凄く分かりにくいです、あと古いっす」

「っ……」

 

 そう言われ、一瞬言葉に詰まった薔薇は、何か思いついたのか、ドヤ顔でこう言った。

 

「メタルスライムとはぐれメタルくらいの差があるわよ」

「あまり変わりませんが、さっきよりは分かりやすいです」

 

 その例えなら理解出来たのか、闇風だけではなく、他の者達も驚いた。

一部分かっていない者もいたが、その者には、薔薇が別の説明をした。

ちなみにまゆりには島サークルと壁サークル、

千佳にはホワイト・クリスマスとベルサイユのバラ、

かおりにはソレアルとソレイケルで比較していた。

かおりはそれで理解したようだが、その例えは他の者には当然まったく理解出来ない。

 

「まあこれで全員、何となく何が起こってるのかは分かってもらえたかしら」

「うん、わかった!でも室長の説明は本当にウケルし」

「私にはかおりの頭の構造の方がウケルんだけどね……」

「でも千佳なら何となく分かるでしょ?」

「それはそうだけど!ああもう、この何とも言えない感情を、比企谷君と共有したい……」

「あたしには、千佳への説明の方がまったく意味不明なんだけど」

「薔薇の品種よ、まあ分からなくて当然ね」

「薔薇さんだけに!?ってかそんな名前の薔薇があるんだ……」

 

 こうして一通り説明が終わったところで、モニターを見ながら一同は口々に言った。

 

「あれが普通の狩り?本当に?」

「ヴァルハラの狩りとぜんぜん違う……」

「同じ条件で比較しないとアレだけど……」

「八幡の奴、平然と見物してやがる………ん?」

 

 その時画面の中で、アルゴがハチマンに何か話しかけているのが見えた。

それを受け、ハチマンは悪そうな顔をすると、アルゴに何か指示を出し、

アルゴもそれを受け、他の仲間に何かを耳打ちしていった。

 

「あれ、何をしてるんだろ……」

「さあ……」

 

 そしてアルゴがほぼ全員の所に行ったのを確認したハチマンは、突然こう言い出した。

 

「さて、そろそろ適当に休憩を挟んでいくか」

 

 そしてハチマンとキリトとアスナが先に落ちた。

その為モニターは、ハチマンの正面に固定される事となった。

具体的にはその広場の入り口に向いている。

 

「ふう、休憩休憩っと」

「あ、あの、八幡さん、画面の向きが……」

「そうよそうよ、これじゃあみんなの戦う姿が見えないじゃない、

あんたにしては珍しいミスよね」

「それが実はミスじゃないんだな、お前ら、画面をよ~く見てみろ」

「画面を?」

 

 そして一同は、じっと画面を見つめ、最初に志乃が、その事に気がついた。

 

「あっ、もしかして対抗部隊が来てる?」

「さすがですね、そういう事です、敵襲です」

「敵が来てるのか?」

「こんな所でのんびりしてていいのかよ!?」

「問題ない、あいつらはそう簡単にやられたりしない。

それに敵が突撃してきたら、この画面ですぐに分かるしな」

「それでカメラをこの向きにしたのか」

「なるほど、そういう事だったんだ」

「さっすが比企谷君!」

「ちゃんと保険もかけてあるものね」

「雪乃!」

 

 そこに雪乃も合流し、これでここにリーダーと副長三人が揃う事となった。

 

「保険?」

「一体何をしたんだ?」

 

 そして八幡は、画面を指差しながら言った。

 

「この後ろで姉さんが待機中だ、要するに落ちたフリをさせてある。

うちの最大戦力に、適当に奇襲をかけてくれと伝えてあるんだよ」

「あ、そういえば社長がいない」

「なるほど、さすがというか……」

「あっ、見て!」

 

 そして画面の中では、次々と敵が乗り込んできていた。

 

「うわ、凄い数じゃない?」

「本当に大丈夫なの?」

「大丈夫だ、ここじゃ飛べないから、平面的な戦いになるしな」

「どういう事?」

「タンク……ええと、盾役が機能しやすくなるって事だな」

「でもあの数相手に大丈夫なのか?」

「セラフィムも成長してきたからな、それに多少取りこぼしても、

クラインとエギルが何とかするさ、リズやフカも後ろに控えているしな。

何より姉さんの攻撃で、ほとんどの敵が行動不能になるんじゃないか?」

 

 だがその八幡の予想は外れた。いつになってもソレイユは動かなかったのだ。

 

「………社長が動かないね」

「何をやってるんだあの馬鹿姉は、仕方ない、キリト、アスナ、ユキノ、俺達も行くぞ」

「心配は無さそうだけど、こんな楽しそうな戦いに参加しない手はないしな」

「さっすがキリト君、相変わらずのバトルジャンキーね」

「ユキノも大概だと思うけどな」

「ほら二人とも、行こっ」

「待ってアスナ、今行くわ」

「おう、それじゃあみんな、行ってくる」

 

 四人はそう言って、再びログインしていった。

その直後にモニターの画面が動き、戦闘の様子が映し出された。

 

「おう、戦線が完璧に維持されてるな」

「ってか敵の数が随分減ってるね」

「ハチマン達は外に移動するのか」

 

 ちなみにソレイユは、この段階でもう呪文の詠唱を開始していた。

 

「どれどれ……おお、まだ遠いけど、敵の援軍が結構来てるねぇ」

「この詠唱は………ついに社長の出番か!」

「陽乃さんって超有名なプレイヤーなんだよね?」

「らしいな、さてどうなるんだ……?」

 

 そして一同が見守る中、ソレイユの呪文の詠唱が完了し、

最後にソレイユは、呪文名を高らかに叫んだ。

 

「ライトニング・ネビュラ!」

 

 その瞬間に雷が渦を巻き、近くにいる者達を引き寄せ始めた。

 

「う、うわっ、何だ?」

「敵が引き寄せられて、吸い込まれ………?」

「うっわ、えげつな……」

 

 そして死亡マーカーが大量に発生し、わずかな生き残った敵も、

ハチマンの手によって殲滅された。

 

「姉さん、大丈夫か?」

「魔力が切れた上に、集中しすぎて頭がガンガンする」

「中の連中を片付けてるまで我慢してくれよ、

とりあえず俺から絶対に離れないようにな」

「うん、早めにお願いね」

 

 そしてハチマンは、部屋の中に入り、敵に挨拶をした。

 

「よっ」

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