「あ、あれ……?ゆきのん?」
「ユイユイ、大丈夫?」
「う、うん、ゆきのんが助けてくれたの?ありがとう」
「直接助けてくれたのはクルスよ、お礼ならあの子に言って頂戴」
「そうなんだ、うん!」
最初に結衣に活を入れた後、次に雪乃は優美子に活を入れた。
「優美子、大丈夫?」
「ん………あれ、雪乃?陽乃さんは?」
優美子は頭を振りながら雪乃にそう尋ねた。
「クルスが倒したわ」
「え、本当に?よくまああの陽乃さんを……」
「優美子も災難だったわね、うちの姉さんが迷惑をかけてごめんなさい」
「で、陽乃さんは?」
「そこよ」
「そこ……?って、まさかこれ?」
「ええ」
「うわ、高そうな下着だねこれ……」
「最初に出てくる感想がそれなのね……」
結衣と優美子はとりあえずといった感じでブラだけ着用した。
服装はとりあえずまだ男装のままである。
そして陽乃の太ももをつんつんして遊んでいる優美子を残し、
雪乃は最後に明日奈を覚醒させた。
「雪乃……?ごめん、よく覚えてないんだけど、もしかして私、いきなりやられちゃった?」
「いいのよ、私も同じようなものだから」
「えっ、雪乃も?それじゃあ一体誰が助けてくれたの?」
「クルスよ」
「あ、そうなんだ!」
「問題ない、全ては八幡様に褒めてもらう為だから」
「あ、あは……それじゃあ沢山褒めてもらってくるといいよ」
「うん、早速行ってくる」
「行ってらっしゃい」
クルスはそう言って、わくわくした表情で部屋の外に出ていった。
そして残った四人は陽乃を取り囲んだ。
「で、姉さん、何か申し開きはあるかしら?」
「うぅ……反省してます……」
陽乃はこんな格好をさせられた事で頭が冷えたのか、素直にそう謝った。
「そもそも何でこんな事に?」
「だ、だって、みんなが八幡君に胸とかをチラチラ見られてるのに、
私だけちっとも見てもらえないから、何か理由があるのかなって」
「………え?」
「いやいや、さっきは言えなかったけど、それは無いっしょ」
「そもそもこの中で一番胸が大きいのは姉さんだし」
「でも確かに胸を見られていると、直ぐに分かるわよね?
それなのに視線を感じないって事は、やっぱり見ていないという事なのかしら」
「もしかしてあの男、あの若さで枯れたのかしら、明日奈、どうなの?」
「「「どうなの?」」」
そう尋ねられた明日奈は、顔を真っ赤にしながら、搾り出すような声でこう答えた。
「う、ううん、そんな事はまったく無い………よ?」
「そう、それはいつ頃の話なのかしら」
「えっ、そ、それはええと先………あっ」
明日奈は素直に白状しかけ、三人のニヤニヤした視線に気がつき、言うのをやめた。
おそらく茶巾の中の陽乃もニヤニヤしているのだろう。
「も、もう、もう!」
明日奈は更に顔を赤くしながら三人をポカポカ叩いた。
「ふふっ、ごめんなさい明日奈、さて、からかうのはこのくらいにして、
どうやらあの男の性欲には何の問題も無いようね」
「ゆきのん、性欲って……」
「それじゃあ何か他に理由が?」
「これはもう本人に聞くしかないようね、ちょっと呼んできましょうか」
「そうだね、それじゃあ私、八幡君を呼んでくるね」
「それまでに私達は、この姉さんの拘束を解いておくわね」
「うん」
明日奈はそう言って八幡を呼びにいき、残りの三人は、陽乃に話しかけた。
「さて姉さん、もう何もしないと約束出来るかしら」
「ごめんなさい、もうしません……」
「本当に?」
「本当の本当に!」
「ねえ陽乃さん、これって勝負ぱんつ?」
「なっ……」
「ゆ、優美子!?」
突然優美子がそんな質問をし、雪乃と結衣は驚いた。
「な、何でそんな質問を……」
「え、だって、陽乃さんの下着を見る機会なんてほとんど無いし、興味ない?」
「確かにそう言われると……」
「むむ……」
そして下半身に三人の視線を感じたのか、陽乃は足をもじもじさせ始めた。
「あ、あんまり見ないでってば……」
「で、姉さん、どうなのかしら」
「え、えっと……ち、違います」
「違うの!?」
「違うんだ……」
「これで違うのね……」
三人は驚き、再びしげしげと陽乃の下着を観察し始めた。
「普通でこれとは驚きね」
「勝負ぱんつがどんなのか想像出来ない……」
「うん……」
「お前ら、何やってるんだ?姉さんは?」
「「「!?!?!?」」」
そこにいつの間に入ってきたのだろう、八幡がそう声を掛けてきた。
後ろには明日奈とクルス、そして沙希の姿もある。
「ん、何だそれ、マネキンか?」
「あっ………」
「まったく何でそんな物が……しかも高そうな下着まで履かせて……
とりあえずこれは横に片付けておくからな、で、姉さんはどこだ?」
そう言いながら八幡は、マネキンを片付けようと、その太ももをわし掴みにした。
「………ん?」
そして八幡は、手にむにゅっとした感触を感じ、不思議そうにその太ももを撫で回した。
「やぁん!」
その瞬間にどこからかそんな声が聞こえ、八幡はビクっとして手を離した。
見るとマネキンの足がもじもじし出し、八幡は愕然とした顔で振り返った。
「お、おい………まさかこれ………」
「そう、姉さんよ」
「姉さんだよ」
「陽乃さんだね」
「陽乃さんの生足と生ぱんつ?」
「さすがは八幡様、男らしい」
「あ、あんた、何で気付かないの?」
振り返った八幡の視界に、笑いを堪えている一同の姿がうつった。
お堅い沙希ですら、我慢出来ないというようにぷるぷる震えていた。
「ち、違う、誤解だ、俺はもちろんこれが姉さんだと、ちゃんと気付いていた」
「「「「「「へぇ~?」」」」」」
「だがみんなの手前、悪い事をした姉さんをそのまま普通に扱うのは良くないと思い、
あえて物扱いしたんだ、そう、あえてだ。
まあそういう理由な訳だが、もちろんお前らは信じてくれるよな?」
「つまり、分かってて姉さんの下着をずっと直視していたのね?」
「うっ………」
八幡は雪乃にそう言われ、言葉に詰まった。
「えっち」
「えっちだし」
「えっちね」
「八幡君、見たいなら正直にそう言ってくれれば……」
「八幡様、水くさい、クルスはいつでも八幡様に全てを見せる用意があります」
「私は見せないわよ」
六人にそう責められ、八幡はその場に崩れ落ちた。
「す、すみませんでした……」
そんな八幡を見て、さすがにこれ以上からかうのはやめようと思ったのか、
雪乃が代表して前に進み出た。
「ごめんなさい、私達も悪かったわ、本当なら姉さんの拘束をもう解いているはずなのに、
姉さんのこの下着が勝負ぱんつかどうか興味を持ってしまって、
それでこの状態のままにしておいたのだから」
「あ、そうだったんだ」
「なるほど……」
明日奈とクルスは、そう言われて陽乃の横に跪き、しげしげと観察を始めた。
「で、姉さん、どうなの?」
「ち、違います……」
「違うんだ!?」
「さすがは社長……」
沙希はさすがに恥ずかしいのかその会話には入ってこなかった。
そして二人はとりあえず疑問が解消した為、そのまま陽乃の拘束を外そうとした。
「あ、あれ、外れない……」
「結束バンドを切らないと……」
「誰かハサミか何か持ってない?」
「あ、私、持ってるよ」
沙希がそう言ってバッグの中から裁縫用のハサミを取り出し、明日奈に渡した。
「ありがとうサキサキ」
「サキサキ言うな」
「あっ、ごめんサキサキ」
「………」
そして明日奈は服を切らないように慎重に作業に入った。
若干苦労はしたが、それで陽乃は無事に解放された。
「さて、まだそこまで差し迫った時間じゃないが、
準備に時間がかかる奴はそろそろ準備を始めないとな」
八幡が切り替えるようにそう言い、それで雪乃と明日奈、それにクルスは表情を改めた。
「結衣と優美子は、着替えたらゆっくり休んでてくれ」
「う、うん、ありがと」
「そこのクーラーボックスに飲み物が入ってるから、好きに飲んでね」
「うん」
陽乃と八幡と沙希は、とりあえずやる事がまだ無い為外の椅子に並んで腰掛けていた。
「それにしてもサキサキ、久しぶりだね」
「サ……あ、はい、ど、どうも」
沙希は陽乃に抗議しかけたが、さすがに相手が相手だけに、
いつものように「サキサキ言うな」とは言えなかった。
「サキサキ言うな」
「ちょ、ちょっと、何であんたが言うのよ」
「いや、何か遠慮してるみたいだったから、俺が代わりに言ってやろうと……」
「余計な事は言わないでいいから」
「お、おう、すまん……」
八幡は沙希に気圧されてそう謝った。
そして陽乃はそんな二人を面白そうに見ながら、沙希に尋ねた。
「で、サキサキはどうしてここに?こんな所に来るタイプだとは思えないんだけど」
「サ………いえ、ええと、友達に頼まれて、コスプレの衣装を作りに……」
「あ、そうなの?もしかしてさっきのガハマちゃんと三浦ちゃんの衣装がそれ?」
「あ、はい」
「へぇ、あれってお手製なんだ、凄いね」
「川崎は自分でサイトを立ち上げて、色々衣装を売ってるんだよな」
「ま、まあ細々とだけどね」
「そうなんだ、どんなサイト?」
「あ、ええと……こ、これです」
沙希はそう言って自分のスマホをいじり、陽乃にそのサイトを見せた。
「ちょっと見せてもらってもいい?」
「あ、はい」
そして陽乃は熱心に、沙希のサイトの閲覧を始めた。