ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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今日の投稿はなんとなく11月11日11時11分で!


第551話 十狼四天王(自称)の戦い

「うわあああああああああああ!」

「あはははは、あはははははははははは!」

 

 絶叫するレンを抱えたまま、ピトフーイはダンッ、と地面へと着地した。

多少足がしびれる感じはしたが、ピトフーイはそれに耐え、レンを地面に下ろすと、

気にせず戦い続けている三人の横に並んで、銃撃を始めた。

 

「先生、シズ、イクス、遅いよ!」

「ごめんごめん、ロザリアさんに頼まれてブラックを飛ばしてきたんだけど、

こんなギリギリになっちゃった」

 

 ピトフーイは嬉しさを隠すようにそう抗議し、シズがそれにそう答えた。

 

「ううん、今回は何か素人が多いらしくてピンチだったから、実は凄く助かった!」

 

 ピトフーイはそう言い、一人取り残されていたレンに、ニャンゴローが声を掛けた。

 

「あなたがレンさんね、さあ、ここから巻き返すわよ」

「あ、は、はい!」

「奮闘、推奨」

「え?が、頑張ります!」

 

 そしてシズカは、全員に聞こえるように、ブラックのマイクを使ってこう叫んだ。

 

「ここは十狼が引き受けた!戦士達よ、敵を殲滅せよ!」

「「「「「「「おお!!!!!」」」」」」」

 

 その呼びかけに、プレイヤー達は気合いのこもった声でそう答えた。

 

「シズカさんにニャンゴローさんに銃士Xさんだ!」

「ピトフーイもいるぞ!」

「十狼!十狼!」

 

 そこから戦いは続けられ、

レンは明らかに先ほどよりも戦闘が楽になっている事に気がついた。

プレイヤー達は先ほどまでの鬱屈した様子は欠片も見せず、

その盛り上がりっぷりに、レンはわくわくドキドキを抑えられなかった。

たった一人の言葉で一気に形勢が逆転し、プレイヤー側が有利になるという、

通常ありえない奇跡のようなものを目の当たりにしたからだ。

 

「十狼って一体………」

 

 そして思わずそう呟いたレンに、シズが笑顔で言った。

 

「そう、私達はシャナが作ったスコードロン『十狼』のメンバーよ。

私はシズカ、宜しくね、レンちゃん」

「ニャンゴローよ、先生と呼んで頂戴」

「銃士X、呼ぶならイクスで」

「そして私はピトフーイ、この四人が、十狼の美人四天王よ!」

 

 もしその言葉をロザリアやベンケイやシノンが聞いたら絶対に抗議したであろうが、

この場に彼女達はいない。そしてこういうのは、言った者勝ちである。

もちろんシズカ達が抗議するはずもない。四天王の一人に数えられているのだから当然だ。

 

「ピ、ピトさんもシャナの仲間だったんですか!?……うわぁ、うわぁ、凄いなぁ、

一瞬リアルで最近出来た私のお友達かと思ってちょっとびっくりしちゃいました!

喋り方とかがそっくりだったんで!」

 

 その言葉に三人は、一瞬ビクッとした。

ピトフーイはそれを見てニヤリとしたが、何も言わなかった。

そして三人はレンにこう言った。

 

「気、気のせいじゃないかな……だぜ」

 

 シズカは目を泳がせながらそう言った。

 

「そうそう、気のせいだと思うのニャン!」

 

 ニャンゴローはむしろ口実が出来たと、嬉々として語尾をニャンに変えた。

 

「ごめんごめん、ちょっとシンプルすぎたね、いつもはこうじゃないんだけど、

私ってばほら、一度喋りだすとこんな感じで止まらないからさ!」

 

 銃士Xは滅多に見せない素の喋り方でそう言った。

 

「あ、よく聞いたら全然違いました、ごめんなさい」

「そ、そう、それならいいの、さあ敵を殲滅しよう……だぜ」

「行くのニャン!」

「レンちゃん、レッツゴー!」

「はい、さあピトさん、蹴散らしてあげましょう!」

「そうね、敵を皆殺しましょう!」

 

 その言葉を合図に、ニャンゴローはブラックの屋根の上に上り、ミニガンを乱射し始め、

シズカはレンの隣に並んでP90の連射を始めた。

 

「あっ、シズさん!それって私のピーちゃんと同じ……」

「うん、お揃いだ……ぜ!」

「わ~い!二人で撃ちまくりましょう!」

「だぜ!」

 

 銃士Xはニャンゴローの足元で中距離狙撃を繰り返し、

ピトフーイは銃をコロコロ変えながら、敵を殲滅していった。

だが敵の圧力は徐々に増大し、次第に形勢は、再びモブ有利な情勢へと傾いていった。

そんな中、敵に大きな動きがあった。

 

「ねぇ、何か味方の攻撃力が落ちてない?……だぜ」

「違うわ、シズ、あれを見てニャン」

「あれってカブトムシ?いや、角がないから雌のカブトムシ!?」

「コガネムシという発想は無いのかニャ?」

「どっちでもいいじゃない、とにかく固い奴!」

「要するに、一体を倒す為の銃弾の数が増大したという事ニャ」

 

 敵の第何陣かは分からないが、迫り来るそのいかにも固そうな姿にレンは焦り、

とにかく一体でも敵を多く葬ろうと、全弾撃ちつくす勢いで、ピーちゃんを撃ちまくった。

 

「くっ……倒れろ、倒れろ!」

「レンちゃん落ち着いて、大丈夫だから」

「ピトさん、で、でも……」

「とりあえずこれを使いなさい」

 

 そう言ってピトフーイがレンに渡したのは、ピトフーイの愛剣、鬼哭だった。

 

「こ、これって輝光剣って奴ですよね!?凄く大事な物なんじゃ?」

「もちろんあげないわよ、貸すだけ」

「でもそれじゃあピトさんの分が」

「私、実はもう一本持ってるから」

 

 そう言ってピトフーイが取り出したのは、もう一本の輝光剣であった。名を血華という。

 

「あらピト、もう一本作ってもらったのニャ?」

「うん、BoBの景品で輝光ユニットをもらったの」

「名前は?」

「血華」

「へぇ、名前の由来は後で聞かせてもらおうかしら。さて、そろそろね」

「うん」

 

 二人はそう言ってシズカの方を見た。レンも釣られてそちらを見たが、

これから何が起こるのかはまったく分からない。だが何かが起こる事だけは分かっていた。

そんな緊張の中、シズカは仲間達をチラリと見ると、

レンが手に剣の柄を持っている事を確認し、

その腰に差していた剣を抜き、高らかにこう叫んだ。

 

「先生はブラックの運転をお願いね、総員抜刀!」

 

 その言葉を受け、銃士Xは青い刀身の剣を抜いた。

 

「流水、抜刀」

 

 ピトフーイも手に持っていた剣の柄のスイッチを入れ、

その柄から鬼哭よりも濃い赤色の刀身が姿を現した。

 

「血華、抜刀」

 

 それに釣られてレンも空気を読んで、同じように叫ぼうとしたが、剣の名前が分からない。

それを察したピトフーイが、レンに耳打ちした。

 

「レンちゃん、鬼哭よ、鬼哭」

「き、鬼哭抜刀!」

 

 そんなレンを見てクスリと笑ったシズカは、レンにこうアドバイスした。

 

「レンちゃん、その剣は、シャナに教えてもらった短剣術と同じように扱えばいいからだぜ」

「わ、分かりました!」

 

 要するに、敵の側面を駆け抜けながら、その体を斬り裂けという事なのだろう、

レンはそう考え、とにかく落ち着いて、言われた事を確実に実行に移そうと、

ただひたすらそれだけを考えた。

 

「総員乗車!」

 

 そしてニャンゴローが運転席に座り、レン達三人が車の屋根に上ったのを確認すると、

シズカも同じように屋根に上り、再び高らかに叫んだ。

 

「十狼、出撃!」

「「「「おう!!!!」」」」

 

 レンもノリでそう叫んだが、どうやら間違っていなかったようだ。

そしてブラックは敵の真っ只中へと突っ込み、最初に銃士Xが言った。

 

「お先に」

 

 そして銃士Xはブラックから飛び降り、近場の敵を片っ端から斬り始めた。

当然ニャンゴローは、アクセルを緩めたりはしていない。

 

「次、行くね」

 

 次にピトフーイが飛び降り、同じように敵を斬り始め、

レンもなるべく敵の多そうな所を選んで飛び降りた。目の前から敵の巨大な姿がレンに迫る。

 

「こ、怖っ……で、でも、とにかく言われた通りに……」

 

 そしてレンは、剣を水平に構え、何も考えずに敵の横を通過した。

 

「あ、あれ?手応えがほとんど無い……」

 

 レンは疑問に思い、振り向くと、そこには動きを停止した敵の姿があった。

 

「こ、これって……」

 

 そしてレンが敵をちょんとつつくと、途端に敵の上部と下部がズレ、ゴトリと落ちた。

直後に敵は爆散し、そのまま塵となった。

 

「うわ、うわ……」

 

 レンは驚き、次の敵にも同じ事をした。

そしてその敵も同じように爆散した事で、レンは調子に乗った。

 

「いける!」

 

 レンはそう考え、戦場を文字通り縦横無尽に走り回った。

 

「レンちゃん、やるなぁ……私も負けてられないね」

 

 そしてシズカもブラックから飛び降り、敵の殺戮を開始した。

四色の光が戦場を駆け巡り、敵は段々とその数を減らしていった。

だが局地的に敵の数が多くなる事はある。レンの周りが今まさにその状態であった。

 

「くっ……このままだと囲まれる?」

 

 そんなレンの耳に、ピトフーイの声がした。

 

「レンちゃん、思いっきり真上に飛んで!」

 

 その声が聞こえた瞬間、レンは言われた通り真上に飛んだ。

直後にレンの真下をブラックが通過し、そのままレンの体をピトフーイが空中で受け止めた。

 

「おおっ!?」

 

 どうやらピトフーイは一度ブラックに戻っていたようで、

レンは自らの足で立つと、ピトフーイにお礼を言った。

 

「ピトさん、ありがとう!」

「危なくなったら必ず先生が車をまわしてくれるから、今度は一人で上手く飛び乗るのよ」

「り、了解!」

 

 そう伝えた直後にピトフーイは再びブラックから飛び降りた。

レンもタイミングを見て飛び降り、こうしてニャンゴローの運転するブラックが走り回る中、

四人は上手くブラックに避難しながら順調に敵の数を減らしていき、

ついに敵は全滅する事となった。そしてその場にアナウンスが流れた。

 

『敵の全滅が確認されました、皆様、今回の防衛戦も成功です、お疲れ様でした』

 

 その瞬間に大歓声が上がり、レンもブラックの上で、喜びを爆発させたのだった。


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