「撃て、撃て!」
「絶対に逃すなよ!」
「皆殺しだ!」
そんな言葉が飛びかう中、滝には雨あられと銃弾が撃ち込まれていた。
最初こそ散発的に反撃があったが、やがてそれも止まり、
一分以上まったく反撃が来なくなった所で、対PM4連合軍は攻撃の手を止めた。
「よし、中がどうなっているか調べるぞ」
「気をつけてな!」
一チームがそう言って、滑り落ちないように慎重に滝の裏へと入っていった。
その瞬間に滝つぼから爆発音のような物が聞こえ、そのチームの死体が飛ばされてきた。
「な、何だ?」
「さあ、何だろねぇ」
「えっ?」
そして滝つぼ周辺に展開していた軍勢に、背後からピトフーイが襲いかかった。
「この滝か?」
「ええ、作戦はこうよ、中にエムが一人だけ入って、わざと敵に発見される。
そして私達全員がここにいると敵に誤認させ、一斉攻撃をさせる。
その隙に私達五人が背後から襲いかかって敵を全滅させる、どう?」
「それだとエムが無事じゃ済まないんじゃないのか?」
「ううん、それは大丈夫、エム、見せてあげて」
ピトフーイにそう促され、エムが見せてきたのは、
以前十狼で製作しながら未だ出番が無かった、宇宙船の装甲板で作られた盾であった。
これはいくつかのパーツで構成されており、その組み合わせ方で形に応用がきく。
「それは……」
「そんな物を用意していたのか」
「初お目見えよ、これで安心した?」
その言葉にダインとギンロウとスネークは頷いたが、
ここでゼクシードが、慎重な意見を述べた。
「だが外にいる者が発見されてしまうリスクもあるんじゃないか?」
「ええそうね、なのでそれに関しては、あなたの指示に従うから、
敵に見つからないように上手く私達を誘導してね、スネーク」
そのピトフーイの言葉に四人は驚いた。
そしてピトフーイは、続けてゼクシードにこう言った。
「それにしてもゼクシード、何であんたが私に協力してくれる気になったの?
まあダインとギンロウは友好チームだから分かるけどさ、
一応私とあんたは宿敵って事になってるんじゃない?」
「お前、いつそれを……」
「まあ正直あんまり興味は無かったんだけど、一応観察くらいは、ねぇ?
それにあんた達も、別にどうしても隠そうとしてた訳じゃないんでしょ?」
「まあそれはそうだけどね」
「やれやれ、思ったより早くバレちまったな」
「まあ仕方ないっす、そもそも声でバレバレかなって思ってましたしね」
三人が口々にそう言う横で、スネークはピトフーイに頷きながら言った。
「分かった、指示に従う。俺がキッチリとスネークさせてやるさ」
こうしてPM4側の作戦が開始される事となった。
そして敵の銃弾を全て盾で跳ね返したエムは、跳弾で多少の傷を負いはしたが、
無事に敵の一斉攻撃を防ぎきり、侵入してきた敵に手榴弾の攻撃をお見舞いしたと、
そういう訳なのであった。
「はい、一丁あがり、思ったよりも楽みたいだから、『三人』はフォローだけお願い」
「分かった、今の攻撃は手榴弾の爆発に合わせたから、
まだ他の敵に気付かれていないみたいだけど、次の攻撃で敵に気付かれる、油断するなよ」
「次は鬼哭を使うから、もう一チームくらいはこのままいけると思うわ」
「了解、フォローに入る」
そしてピトフーイの鏖殺が始まった。
ピトフーイは手始めに、たった今出来上がった敵の死体を敵の頭上から投げ込み、
そのまま鬼哭を構え、敵に襲い掛かった。
「あはははは、あはははははは」
「なっ、お、お前どこから……」
「さあ?どこからかなぁ?」
ピトフーイはとぼけたようにそう言うと、そのまま敵を真っ二つにし、
チラリと横目で他の敵の姿を見た。だがその敵は既に逃げ腰になっており、
ピトフーイは仕方なく、たった今斬った敵が持っていた銃を、
そのまま空中でキャッチし、逃げようとする敵に銃弾を浴びせた。
「もう、何でこっちに向かってこないのよ、
音も立てずに敵を倒すっていう予定が狂っちゃったじゃない」
そう言いながらそのチームを殲滅したピトフーイは、
音に気付いてこっちを見上げているチームに向かい、地面に落ちている死体を盾に突撃した。
「はい、次の段!」
ピトフーイはそのまま死体ごと敵にぶつかり、その敵を押し倒すと、
その頭を片手で持ち、ガンガンと地面に打ちつけた。
その敵はそのまま頭を潰されて死体となり、
慌ててピトフーイに銃を向けた他のプレイヤーの攻撃は、
まだピトフーイが片手に持ったままだったその死体に全て防がれていた。
「死体のくせにこんなに役にたってくれて、ありがと~う!」
ピトフーイはそう言ってその死体を敵に投げつけ、
先ほど頭を潰した敵の持っていた銃を拾い、そのまま乱射した。
その攻撃でその場にいたプレイヤー達が全て死体となり、
ピトフーイはニタリとしながら崖下を覗き込んだ。
「これで三チーム、残りはあんた達だけね」
滝つぼの横の川沿いの、一番下の段に布陣していたその二チームは、
ピトフーイを見て錯乱し、そのまま滅茶苦茶に発砲し始めた。
「う……うわああああああ!」
「撃て、とにかく撃て!」
「だから君達はいつまでも二流以下なんだよ」
そこに横合いからゼクシード達が攻撃を開始し、何人かがあっさりと倒された。
「う、上じゃない、横だ!」
その瞬間に、今度は頭上からピトフーイが音もなく襲いかかってきた。
ピトフーイは敵プレイヤーの頭を踏みつけてその首をへし折ると、そのまま綺麗に着地し、
混乱して無防備になった敵に向かって銃弾を雨あられと降らせ、
そのほとんどを殲滅する事に成功した。もちろんゼクシード達のフォローあっての事である。
「さてと、これでおしまい?」
「みたいだね」
「随分あっさりだったわねぇ、それじゃあエムと合流して、次に向かいましょうか」
「分かった、そうしよう」
そう言ってピトフーイ達は、滝の裏から出てきたエムと合流し、どこかへ去っていった。
「おい、誰か、おい!」
「デヴィッド、どのチームからも返事が無い、これはやばいかもしれないぞ」
「くそ、何があったんだ……」
離れた場所にいた為、唯一生き残ったMMTMのメンバー達は、
通信機を前にとても焦った様子を見せていた。
「おいデヴィッド、どうする?」
「………」
デヴィッドは腕組みをしたまま動かなかったが、やがて決断したのか顔を上げた。
「一時離脱だ、味方は全滅したものと判断する」
「分かった、おいみんな、すぐに移動だ!」
「この場所はまだバレてないと思うから、敵に見つからないように気をつけて南に向かうぞ」
「「「「「了解!」」」」」
MMTMは、こういった行動はさすがに鍛えられているようで、
そのまま整然と南に移動を開始した。だがそれを見ていた者がいた、スネークである。
スネークは攻撃開始前に、MMTMだけがその場にいない事に気付き、
ピトフーイに断って、MMTMの居場所を探る為、別行動していたのだった。
「こちらスネーク、MMTMを発見した。現在敵は南へと移動中、場所は……」
こうしてPM4も、そのスネークの誘導に従って南へと移動を開始した。
その為岩山を目指していたLFKYは、
次のスキャン結果が表示されるまでPM4を見失う事となる。
「悪い、今戻った」
「あ、シャナお帰り、ちょっとは落ち着いた?」
「おう、かなりな、で、あれからどうなった?」
「今PM4が、連合チームをやっつけたところかな」
「ほう?あいつはあれから卑怯な真似はしなかったか?」
「うん、それは大丈夫、全て戦術の範囲内だったよ」
「それならいいが……」
シャナはそう言って腕組みをし、銃士Xがこれまであった事を、整然と説明した。
「LFKYがSHINCに圧勝しました」
「圧勝?そんなに差があったのか?」
「その直前に、SHINCがZEMALに襲われたので、
結果的に奇襲のような形となりました」
「なるほど、エヴァめ、少し油断したか?まあ今度その辺りも含めて鍛えてやらないとな」
次に銃士Xは、他のチームの動向を説明した。
「T-Sはどうやら、外周の上を自転車で走っているようです」
「自転車で?まじで?」
「でもどうやら下に下りる道が分からずに困っているようです、
案外最後まで生き残りそうですが、戦闘は一切せずに終わるかもしれません」
「まあそういう事もあるかもしれないな」
「マップ左下の三チームはこう着状態です、どこも動きません」
「三竦みになっているのか?」
「はい、他のチームが介入してきたら、あっさり三チームとも全滅するかもしれませんね」
銃士Xのその言葉に、シャナは再び頷いた。
「ここまでどのチームも何も打開策を出せていないってなら、多分そうなるだろうな」
「そういえばシャナ、ここを見て、ここ」
「ここ?ん、これは……車か」
シズカの指差す先には、二台の車があった。
「これって多分動かせるよね?」
「だろうな、乗り物系は意外と沢山マップ内に点在してるからな」
「なるほどね、後報告しておく事は……」
「シャーリーさんはその後どうなった?」
「あっ」
それで思い出したのか、シズカがシャナにこう言った。
「あのね、上から逃げてきたシャーリーさんとスネークさんが何か話してたよ」
「え、何その組み合わせ、もしかして知り合いだったのか?」
「違うんじゃないかな、シャーリーさん、最初は凄い警戒してたみたいだし」
「そうか」
「でも話してるうちに普通になっていって、最後は何かシャーリーさんが凄く元気になって、
凄く嬉しそうな顔をして去っていったんだよね、あれって何だったんだろ?」
「ほほう?」
「何か恨みとかをまったく感じさせない、爽やかな顔をしてたんだよね」
「ううむ……一体何があったんだろうな……」
それが分かるのは、大会後の事である。
「あ、あとSHINCの生き残りとLFKYが、一緒に行動してるんだよね」
「え、まじか、それは面白いな」
「でもこのままだと、LFKYとPM4は入れ違いになっちゃうんだよね」
「まだまだ決着には時間がかかりそうだな、まあじっくりと見させてもらおうぜ」
「うん!」
その時銃士Xが、お花を摘みに行ってきますと言ってログアウトした。
シャナはさすがに何か言うのは憚られ、黙って頷くに留めた。
「ふう」
「あらクルス、お帰り」
「あ、ゆ、雪乃?何故ここに……」
起きた直後に自分のすぐ傍に雪乃がいた為、クルスは驚いてそう尋ねた。
「大丈夫、ちゃんと着替えさせておいたから心配しないで。
怖かったわよね、よく頑張ったわね」
「えっ?」
見ると今のクルスは下半身が下着姿であり、その下着は自分の物ではなかった。
それにどこか見覚えのあったクルスは、まさかと思いながら雪乃に尋ねた。
「こ、これって……」
「あ、ごめんなさい、それは私の予備の下着よ、
クルスの予備の下着がどこにあるか分からなかったから、とりあえず私のを、ね」
その言葉にクルスは顔を真っ赤にし、そのまま俯いた。
「ご、ごめん、ありがと……」
「いえいえ、どういたしまして」
「あ、あの、この事は八幡様には……」
「もちろん内緒に決まってるじゃない」
「あ、ありがとう雪乃……」
そしてクルスはそのままGGOへと戻った。
自分の下着の状態を確認したかったから落ちただけであって、
別にトイレに用事があった訳ではなかったからだ。
そして戻った銃士Xに、シズカとロザリアがこっそりと話しかけた。
「大丈夫だった?」
「う、うん、雪乃がパンツを代えてくれてた……」
「えっ、そうなの?雪乃ってばエスパーか何か?」
「八幡様が落ちた時、話を聞いてもしやと思ったみたい」
「凄っ……」
「ちなみに私がログインする時、一応といった感じで二人の下着も調べてたみたい」
「えっ?」
「そ、そうなの?」
「うん」
その言葉で、三人は同時に顔を赤くする事になり、
シャナはそんな三人を見て首を傾げながらもこう言った。
「そろそろ三度目のスキャンだな」
こうして戦場は、再び動き出す。