ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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第585話 無双乱舞

「撃て、撃て!」

「絶対に逃すなよ!」

「皆殺しだ!」

 

 そんな言葉が飛びかう中、滝には雨あられと銃弾が撃ち込まれていた。

最初こそ散発的に反撃があったが、やがてそれも止まり、

一分以上まったく反撃が来なくなった所で、対PM4連合軍は攻撃の手を止めた。

 

「よし、中がどうなっているか調べるぞ」

「気をつけてな!」

 

 一チームがそう言って、滑り落ちないように慎重に滝の裏へと入っていった。

その瞬間に滝つぼから爆発音のような物が聞こえ、そのチームの死体が飛ばされてきた。

 

「な、何だ?」

「さあ、何だろねぇ」

「えっ?」

 

 そして滝つぼ周辺に展開していた軍勢に、背後からピトフーイが襲いかかった。

 

 

 

「この滝か?」

「ええ、作戦はこうよ、中にエムが一人だけ入って、わざと敵に発見される。

そして私達全員がここにいると敵に誤認させ、一斉攻撃をさせる。

その隙に私達五人が背後から襲いかかって敵を全滅させる、どう?」

「それだとエムが無事じゃ済まないんじゃないのか?」

「ううん、それは大丈夫、エム、見せてあげて」

 

 ピトフーイにそう促され、エムが見せてきたのは、

以前十狼で製作しながら未だ出番が無かった、宇宙船の装甲板で作られた盾であった。

これはいくつかのパーツで構成されており、その組み合わせ方で形に応用がきく。

 

「それは……」

「そんな物を用意していたのか」

「初お目見えよ、これで安心した?」

 

 その言葉にダインとギンロウとスネークは頷いたが、

ここでゼクシードが、慎重な意見を述べた。

 

「だが外にいる者が発見されてしまうリスクもあるんじゃないか?」

「ええそうね、なのでそれに関しては、あなたの指示に従うから、

敵に見つからないように上手く私達を誘導してね、スネーク」

 

 そのピトフーイの言葉に四人は驚いた。

そしてピトフーイは、続けてゼクシードにこう言った。

 

「それにしてもゼクシード、何であんたが私に協力してくれる気になったの?

まあダインとギンロウは友好チームだから分かるけどさ、

一応私とあんたは宿敵って事になってるんじゃない?」

「お前、いつそれを……」

「まあ正直あんまり興味は無かったんだけど、一応観察くらいは、ねぇ?

それにあんた達も、別にどうしても隠そうとしてた訳じゃないんでしょ?」

「まあそれはそうだけどね」

「やれやれ、思ったより早くバレちまったな」

「まあ仕方ないっす、そもそも声でバレバレかなって思ってましたしね」

 

 三人が口々にそう言う横で、スネークはピトフーイに頷きながら言った。

 

「分かった、指示に従う。俺がキッチリとスネークさせてやるさ」

 

 こうしてPM4側の作戦が開始される事となった。

そして敵の銃弾を全て盾で跳ね返したエムは、跳弾で多少の傷を負いはしたが、

無事に敵の一斉攻撃を防ぎきり、侵入してきた敵に手榴弾の攻撃をお見舞いしたと、

そういう訳なのであった。

 

 

 

「はい、一丁あがり、思ったよりも楽みたいだから、『三人』はフォローだけお願い」

「分かった、今の攻撃は手榴弾の爆発に合わせたから、

まだ他の敵に気付かれていないみたいだけど、次の攻撃で敵に気付かれる、油断するなよ」

「次は鬼哭を使うから、もう一チームくらいはこのままいけると思うわ」

「了解、フォローに入る」

 

 そしてピトフーイの鏖殺が始まった。

ピトフーイは手始めに、たった今出来上がった敵の死体を敵の頭上から投げ込み、

そのまま鬼哭を構え、敵に襲い掛かった。

 

「あはははは、あはははははは」

「なっ、お、お前どこから……」

「さあ?どこからかなぁ?」

 

 ピトフーイはとぼけたようにそう言うと、そのまま敵を真っ二つにし、

チラリと横目で他の敵の姿を見た。だがその敵は既に逃げ腰になっており、

ピトフーイは仕方なく、たった今斬った敵が持っていた銃を、

そのまま空中でキャッチし、逃げようとする敵に銃弾を浴びせた。

 

「もう、何でこっちに向かってこないのよ、

音も立てずに敵を倒すっていう予定が狂っちゃったじゃない」

 

 そう言いながらそのチームを殲滅したピトフーイは、

音に気付いてこっちを見上げているチームに向かい、地面に落ちている死体を盾に突撃した。

 

「はい、次の段!」

 

 ピトフーイはそのまま死体ごと敵にぶつかり、その敵を押し倒すと、

その頭を片手で持ち、ガンガンと地面に打ちつけた。

その敵はそのまま頭を潰されて死体となり、

慌ててピトフーイに銃を向けた他のプレイヤーの攻撃は、

まだピトフーイが片手に持ったままだったその死体に全て防がれていた。

 

「死体のくせにこんなに役にたってくれて、ありがと~う!」

 

 ピトフーイはそう言ってその死体を敵に投げつけ、

先ほど頭を潰した敵の持っていた銃を拾い、そのまま乱射した。

その攻撃でその場にいたプレイヤー達が全て死体となり、

ピトフーイはニタリとしながら崖下を覗き込んだ。

 

「これで三チーム、残りはあんた達だけね」

 

 滝つぼの横の川沿いの、一番下の段に布陣していたその二チームは、

ピトフーイを見て錯乱し、そのまま滅茶苦茶に発砲し始めた。

 

「う……うわああああああ!」

「撃て、とにかく撃て!」

「だから君達はいつまでも二流以下なんだよ」

 

 そこに横合いからゼクシード達が攻撃を開始し、何人かがあっさりと倒された。

 

「う、上じゃない、横だ!」

 

 その瞬間に、今度は頭上からピトフーイが音もなく襲いかかってきた。

ピトフーイは敵プレイヤーの頭を踏みつけてその首をへし折ると、そのまま綺麗に着地し、

混乱して無防備になった敵に向かって銃弾を雨あられと降らせ、

そのほとんどを殲滅する事に成功した。もちろんゼクシード達のフォローあっての事である。

 

「さてと、これでおしまい?」

「みたいだね」

「随分あっさりだったわねぇ、それじゃあエムと合流して、次に向かいましょうか」

「分かった、そうしよう」

 

 そう言ってピトフーイ達は、滝の裏から出てきたエムと合流し、どこかへ去っていった。

 

 

 

「おい、誰か、おい!」

「デヴィッド、どのチームからも返事が無い、これはやばいかもしれないぞ」

「くそ、何があったんだ……」

 

 離れた場所にいた為、唯一生き残ったMMTMのメンバー達は、

通信機を前にとても焦った様子を見せていた。

 

「おいデヴィッド、どうする?」

「………」

 

 デヴィッドは腕組みをしたまま動かなかったが、やがて決断したのか顔を上げた。

 

「一時離脱だ、味方は全滅したものと判断する」

「分かった、おいみんな、すぐに移動だ!」

「この場所はまだバレてないと思うから、敵に見つからないように気をつけて南に向かうぞ」

「「「「「了解!」」」」」

 

 MMTMは、こういった行動はさすがに鍛えられているようで、

そのまま整然と南に移動を開始した。だがそれを見ていた者がいた、スネークである。

スネークは攻撃開始前に、MMTMだけがその場にいない事に気付き、

ピトフーイに断って、MMTMの居場所を探る為、別行動していたのだった。

 

「こちらスネーク、MMTMを発見した。現在敵は南へと移動中、場所は……」

 

 こうしてPM4も、そのスネークの誘導に従って南へと移動を開始した。

その為岩山を目指していたLFKYは、

次のスキャン結果が表示されるまでPM4を見失う事となる。

 

 

 

「悪い、今戻った」

「あ、シャナお帰り、ちょっとは落ち着いた?」

「おう、かなりな、で、あれからどうなった?」

「今PM4が、連合チームをやっつけたところかな」

「ほう?あいつはあれから卑怯な真似はしなかったか?」

「うん、それは大丈夫、全て戦術の範囲内だったよ」

「それならいいが……」

 

 シャナはそう言って腕組みをし、銃士Xがこれまであった事を、整然と説明した。

 

「LFKYがSHINCに圧勝しました」

「圧勝?そんなに差があったのか?」

「その直前に、SHINCがZEMALに襲われたので、

結果的に奇襲のような形となりました」

「なるほど、エヴァめ、少し油断したか?まあ今度その辺りも含めて鍛えてやらないとな」

 

 次に銃士Xは、他のチームの動向を説明した。

 

「T-Sはどうやら、外周の上を自転車で走っているようです」

「自転車で?まじで?」

「でもどうやら下に下りる道が分からずに困っているようです、

案外最後まで生き残りそうですが、戦闘は一切せずに終わるかもしれません」

「まあそういう事もあるかもしれないな」

「マップ左下の三チームはこう着状態です、どこも動きません」

「三竦みになっているのか?」

「はい、他のチームが介入してきたら、あっさり三チームとも全滅するかもしれませんね」

 

 銃士Xのその言葉に、シャナは再び頷いた。

 

「ここまでどのチームも何も打開策を出せていないってなら、多分そうなるだろうな」

「そういえばシャナ、ここを見て、ここ」

「ここ?ん、これは……車か」

 

 シズカの指差す先には、二台の車があった。

 

「これって多分動かせるよね?」

「だろうな、乗り物系は意外と沢山マップ内に点在してるからな」

「なるほどね、後報告しておく事は……」

「シャーリーさんはその後どうなった?」

「あっ」

 

 それで思い出したのか、シズカがシャナにこう言った。

 

「あのね、上から逃げてきたシャーリーさんとスネークさんが何か話してたよ」

「え、何その組み合わせ、もしかして知り合いだったのか?」

「違うんじゃないかな、シャーリーさん、最初は凄い警戒してたみたいだし」

「そうか」

「でも話してるうちに普通になっていって、最後は何かシャーリーさんが凄く元気になって、

凄く嬉しそうな顔をして去っていったんだよね、あれって何だったんだろ?」

「ほほう?」

「何か恨みとかをまったく感じさせない、爽やかな顔をしてたんだよね」

「ううむ……一体何があったんだろうな……」

 

 それが分かるのは、大会後の事である。

 

「あ、あとSHINCの生き残りとLFKYが、一緒に行動してるんだよね」

「え、まじか、それは面白いな」

「でもこのままだと、LFKYとPM4は入れ違いになっちゃうんだよね」

「まだまだ決着には時間がかかりそうだな、まあじっくりと見させてもらおうぜ」

「うん!」

 

 その時銃士Xが、お花を摘みに行ってきますと言ってログアウトした。

シャナはさすがに何か言うのは憚られ、黙って頷くに留めた。

 

 

 

「ふう」

「あらクルス、お帰り」

「あ、ゆ、雪乃?何故ここに……」

 

 起きた直後に自分のすぐ傍に雪乃がいた為、クルスは驚いてそう尋ねた。

 

「大丈夫、ちゃんと着替えさせておいたから心配しないで。

怖かったわよね、よく頑張ったわね」

「えっ?」

 

 見ると今のクルスは下半身が下着姿であり、その下着は自分の物ではなかった。

それにどこか見覚えのあったクルスは、まさかと思いながら雪乃に尋ねた。

 

「こ、これって……」

「あ、ごめんなさい、それは私の予備の下着よ、

クルスの予備の下着がどこにあるか分からなかったから、とりあえず私のを、ね」

 

 その言葉にクルスは顔を真っ赤にし、そのまま俯いた。

 

「ご、ごめん、ありがと……」

「いえいえ、どういたしまして」

「あ、あの、この事は八幡様には……」

「もちろん内緒に決まってるじゃない」

「あ、ありがとう雪乃……」

 

 そしてクルスはそのままGGOへと戻った。

自分の下着の状態を確認したかったから落ちただけであって、

別にトイレに用事があった訳ではなかったからだ。

そして戻った銃士Xに、シズカとロザリアがこっそりと話しかけた。

 

「大丈夫だった?」

「う、うん、雪乃がパンツを代えてくれてた……」

「えっ、そうなの?雪乃ってばエスパーか何か?」

「八幡様が落ちた時、話を聞いてもしやと思ったみたい」

「凄っ……」

「ちなみに私がログインする時、一応といった感じで二人の下着も調べてたみたい」

「えっ?」

「そ、そうなの?」

「うん」

 

 その言葉で、三人は同時に顔を赤くする事になり、

シャナはそんな三人を見て首を傾げながらもこう言った。

 

「そろそろ三度目のスキャンだな」

 

 こうして戦場は、再び動き出す。


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