ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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第588話 倒れ行く仲間達

「くそっ、さすがは展開が早いな、こういう戦闘を得意にしてるだけの事はある」

「なぁエム、ピトはまだ目を覚まさないのか?」

「はい、必死に呼びかけてはいるんですが……」

「いくらHPが減っていようとも、意識を失う事はないはずだ。

もし気絶したというなら回線落ちしているはず。

撃たれた時のショックで意識を僅かに残しつつも、覚醒出来ない状態になっているのか……」

 

 今のピトフーイの状態を、誰も説明出来る者はいなかった。

通常ありえない状態だからだ。

 

「何にせよ、守りきるしかないって事だ」

「そうすればLFKYが駆けつけてくれるかもだしな」

「最大の敵に期待せざるを得ないのって、結構つらい状況だけどね」

 

 そして三人を代表して、ゼクシードがエムに言った。

 

「なぁエム、君はハンヴィーの運転が出来たよね?」

「あ、はい、出来ます。シャナさんに叩きこまれましたから」

「それじゃあいざとなったらここから飛び降りて、敵のハンヴィーを奪って逃走するんだ、

僕達はこれからその為の捨石になる。

もちろんピトフーイと一緒に戦闘に加わってくれればそれに越した事はないが、

最悪の場合、絶対にピトフーイの生存を優先してくれよ」

「あ、ありがとうございます、でもどうしてそこまで……」

 

 その問いにダインはこう答えた。

 

「俺はこいつがどれだけシャナに懐いているのか、そしてその事でどう変わったか、

最初からずっと見てきたからな、だからこいつをどうしてもシャナと再会させてやりてえ」

 

 そしてギンロウも、続けてこう言った。

 

「俺はシャナさんを崇拝してるんで、その役に立てるなら、命を張るだけっす」

 

 次にゼクシードが、少し困った顔でエムに言った。

 

「僕はそこまでピトフーイに思い入れは無いんだけどね、

でもあの事件からこっち、どうしてもシャナに恩返しをしなくちゃいけないって、

ずっとそんな気がして凄く落ち着かないんだよね。

今後もずっとシャナと対等にやり合う為にも、

ここでその恩を返しておくべきかなって思うんだよ、

まあその恩ってのの正体がサッパリ分からないんだけどね」

 

 そして最後に通信機越しにその会話を聞いていたらしいスネークが、

そのままこう通信してきた。

 

『SAO事件以来の一連の悲劇を、またここで繰り返させる訳にはいかねえからな、

その為にはこの老体の命なんざ、いくらでもくれてやるさ』

 

 それを聞いた者達は、この緊迫した状況にも関わらず、思わず同時にこう突っ込んだ。

 

「「「「老体!?」」」」

『何だよ、何か俺、おかしい事を言ったか?』

「あ、いや、自分の事を老体って、スネークって本当はいくつくらいなのかなって」

『あん?確かにお前らの二倍から三倍は生きてるけどな、こちとら戦後すぐの生まれよ』

「二、二倍もしくは三倍!?」

「まじっすか……」

「そ、そうだったんですか、今まで失礼な口の聞き方をしてしまってすみませんでした……」

 

 恐縮する三人に、スネークは鷹揚な態度でこう言った。

 

『おいおい、ゲーム内にリアル年齢が関係あるか?今まで通りで頼むぜ、戦友達よ!』

 

 その言葉にその場にいた者達は、胸を熱くした。

仲間として行動し始めてからここまでの時間は確かに短いが、

そこには確かに仲間としての絆があったからだ。

 

「確かにそうだな、これからも宜しく頼むぜスネーク!」

「この大会では最後になるかもしれないけど、出来るだけやってやりましょう!」

「僕は最後まで生き残るつもりだけどね」

『おう、とりあえず俺が外から先陣をきる、それに合わせて中から攻撃を頼むぜ!』

「「「了解」」」

 

 そんな仲間達の姿を見て、エムは羨ましさを覚えつつも、

必死にピトフーイを覚醒させようと頑張っていた。

 

「ピト、早く起きてくれ、頼むよピト、頼むから……」

 

 そんなエムに断りを入れ、三人はスネークと呼吸を合わせて攻撃すべく、

その部屋を出ていった。

 

 

 

「クリア」

「クリア」

「クリア」

「この部屋にもいないか」

 

 その頃MMTMは、一階の部屋をしらみつぶしに捜索していた。

 

「予想はしていたが、一階にはいないか。外から見た感じ、この建物は三階立てだったよな」

「だな、多分敵は上だろう」

「ここからは危険度が上がる、どんな兆候も見逃さないように注意してくれ」

 

 そして部屋を出た瞬間に、横合いから銃弾が撃ちこまれ、

最初に部屋を出たメンバーがその餌食となった。

 

「くっ、下にも敵がいたのか?」

「でも一体どこに?」

「多分外だろう、しかもこいつの射撃はかなり正確だぞ!」

「だがこっちにも……」

 

 その言葉通り、直後にスネークは、背後から銃弾を受けてその場に倒れ伏した。

 

「く、くそ、車の中に一人残ってやがったのか……」

「悪いがそういう事だ、あばよ」

 

 そしてスネークはそのまま頭を撃ちぬかれて絶命した。PM4の最初の犠牲者である。

 

「こいつ……一体何者だ?」

 

 ふと興味が沸いたのか、そのメンバーは、今自分が倒した敵のマスクをはぎとった。

 

「ま、まじかよ……それじゃあ中にいるのは……」

 

 そしてそのメンバーは、慌ててデヴィッドに通信を送った。

 

「おいデヴィッド、やばいぞ、今外にいた敵はあのスネークだ、スネークだった!

って事は中にいる他のメンバーも、BoBの決勝クラスの強敵揃いかもしれん、注意しろ!」

 

 その通信が聞こえはしていたが、デヴィッドはそれに対して返事をする事が出来なかった。

スネークを仲間の背後からの奇襲で倒した直後に、二階から降りてきた二人組から、

激しい銃撃を浴びせられていたからだ。

 

「って事はこの二人も……だがこのフィールドで俺達が負ける訳にはいかない、

いや、絶対に負けない!」

 

 その言葉通り、この戦闘は徐々にMMTMが押し始めた。

元々五対二の戦闘という事もあるが、攻める立場のMMTMは基本思い切った攻撃が出来る。

それこそ今まさに行おうとしているように、手榴弾を敵陣に平気で投げ込めるのだ。

もちろん防御側も同じ事が可能ではあるが、問題は逃げ場所の差である。

防御側は下がるにしても限界があるが、

攻撃側はいくらでも下がって仕切りなおす事が可能なのである。

 

「そろそろやべえな、ギンロウ」

「っすね、ゼクシードさんの負担を減らす為にも、ここで二、三人は倒しておきたいっすね」

 

 三人で戦っていなかったのには理由がある。

これは三人が同時に倒されて、ピトフーイまでの道が一気に開けてしまうのを防ぐ為と、

もう一つは単純に、三人が同時に展開出来る程、この建物が広く作られていないせいである。

 

「よし、命を捨てるか」

「オッケーっす、それじゃあ俺が……」

「いや、お前の持ってる銃の方が貫通能力が高い、なのでここは俺が先に行かせてもらうぜ」

「りょ、了解!」

 

 そしてダインは咆哮を上げ、敵の真っ只中へと一気に突っ込み、

両腕を広げ、一気に三人の敵を拘束した。

それにより、MMTMによる手榴弾の投擲は中断された。

 

「ギンロウ!今だ、俺ごとやれ!」

「は、はい!」

 

 そしてギンロウが飛び出し、決死の覚悟でダインごと三人に銃弾の雨あられを浴びせた。

二人の命を捨て、三人の敵を葬る作戦であった。だがここで予想外の事が起こった。

 

「デヴィッド、やれ!」

「分かった、任せろ!」

 

 デヴィッドはそのままダインを完全に無視し、

味方の体越しにギンロウ目掛けて手榴弾を投げた。

 

「なっ……まさか!」

 

 そしてギンロウは爆発に巻き込まれ、そのまま死亡した。

皮肉な事にダインの大きな体が敵にとっては盾となり、

MMTMの三人は、銃弾と手榴弾の爆発に晒されながらも、辛うじて生き残る事に成功した。

 

「くっ……しくじった、すまん……」

 

 ダインもそれで大ダメージを食らい、そのままその場に倒れ、

その止めはデヴィッドが刺した。

 

「急いで手当てを、あいつらと違ってこっちにはまだ戦力に余裕がある、

今のうちに立て直すぞ!」

 

 そしてデヴィッドは、素早くダインとギンロウの覆面を外した。

 

「ダインとギンロウ……という事はこの奥にいるのは、それ以上の奴か。

該当するプレイヤーは……ゼクシードしかいないな」

 

 前回のBoBの出場選手の顔を思い浮かべながら、デヴィッドはそう分析した。

他の有力選手はほとんどが女性プレイヤーであり、該当する男性プレイヤーは、

シャナもしくはゼクシードくらいしか存在しない。

そして残る相手は絶対にシャナではありえない。

 

「もしシャナなら、俺達はとっくに全滅させられているはずだからな」

 

 デヴィッドは、シャナと他のプレイヤーの間には、それほどの差があると確信していた。

キリトの事も同じくらい評価してはいるが、今回はLFKYに参加している事が確認済だ。

 

「よし、俺はこのくらいでオーケーだ」

「分かった、行くぞ!」

 

 ダメージを食らった三人のうち、比較的ダメージが少なかった一人が戦線に復帰し、

デヴィッドは無傷だった三人を率いて攻撃を再開する事にした。

手始めに二階への階段に鏡を少し覗かせ、奥の様子を観察しようとする。

その瞬間に鏡が銃弾によって破壊され、奥からこんな声が聞こえた。

 

「僕にそんな手は通用しないよ、デヴィッド」

「その声は……ゼクシード、やっぱりお前か!」

「久しぶりだね、まあさすがにこの人数差で勝てるとは言わないが、

頑張って三人くらいは道連れにさせてもらう事にするよ」

「ゼクシード、お前……」

 

 その言葉で、ゼクシードが既に死ぬつもりだと察したデヴィッドは、

この階段を抜く困難さが思いやられ、思わず仲間達の方を見た。

その時仲間達の中から一人が一歩前に出て、デヴィッドにこう言った。

 

「ここは俺が犠牲になるから、必ず四人でピトフーイの奴を討ち取ってくれよ」

「………すまん」

「気にするなって、勝利の為だ」

 

 それは特攻の申し出であり、デヴィッドはその申し出を、苦渋の表情で受ける事にした。

 

「行くぞ」

「せ、せめて少しでも防御が上がるように、体に色々と巻き付けていってくれ!」

「ははっ、実はもう既に準備済だ」

 

 そう言ってそのメンバーは、体に巻きついた手榴弾の束を見せてきた。

 

「お、おい!」

「へへ、おしゃれだろ?それじゃあ行くわ」

 

 そう言ってそのメンバーは体を低くして、階段を駆け上がっていった。

 

「一人とは、僕もなめられたものだね」

「さて、どうだろうな」

「なっ……しまっ……」

 

 その直後に銃声が響き、同時にガラスの割れる音と、爆発音がその場にこだました。

そしてその場に静寂が訪れ、デヴィッドが階段を覗くと、そこには誰もいなかった。

 

「あいつのマーカーは……これか、ありがとうな」

 

 そこには死体は無く、ただマーカーだけが浮き上がっていた。

どうやら爆発で、その体は粉々になったと思われる。

デヴィッドはそのマーカーにそう声を掛け、仲間と共に上への階段を上っていった。

ここでデヴィッドは気が逸っていたのか、一つミスを犯した。

その事が後にこの勝負の勝敗を決する事となる。


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