ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
<< 前の話 次の話 >>

596 / 797
書き貯め状況にもよりますが、出来れば今年中もしくは一月一日に600話を投稿したいので、年内に一度か二度、二話投稿を考えています。という訳で、クリスマスSSとかを書かない主義な俺としては、早速今日二話投稿をしたいと思います、頑張って597話まで今日書いたので!


第591話 ここからはプレーオフ

「お、LFKYもハンヴィーを見つけたな」

「入れ違いになっちゃったみたいだけどね」

「これで三つ巴がくるか?」

 

 そのシャナの予想は至極当然の予想だった。だが展開は、思わぬ方向へと進んでいく。

 

「エルビンがやっと外壁から脱出出来たな」

「だね、本当に全然意味がない行動だったよね」

「だよなぁ……って、おい、ここはまさか……」

 

 エルビンを映したモニターには、遠くに小さくピトフーイが映っていた。

だがシャナがそれに気付いたのは、あくまで複数のモニターで観戦しているからであり、

現地にいても気付かない可能性が高いというレベルの話であった。

だがここでピトフーイは、最悪の選択をした。

 

「ここでまさかの信号弾かよ……自分で自分の位置を教えちまった……

もしかしてあいつ、ここで死ぬかもしれないな」

「う~ん、まあそれならそれで?」

「そうだな……シノン達が配置についた以上、それでもいいんだが、

それでもあいつは一度レンにぶちのめされた方がいいと思うんだよなぁ……」

 

 そしてシャナの予想通りにピトフーイは凶弾に倒れた。

 

「閣下は間に合わなかったか……これは嫌な結末になったな……いや、あれは……」

 

 シャナは目を細めてモニターに集中し、

確かにピトフーイのHPがほんの僅かだけ残っている事を確認してとても驚いた。

 

「ギリギリ残ったか、あいつは悪運が強いな……」

「心配だった?」

「いや、別に心配なんかしてないが」

「へぇ~?」

 

 シャナはそのシズカの笑顔での問いかけには答えず、画面を見ながら淡々とこう言った。

 

「これはLFKYは絶対に間に合わないな、PM4とMMTMのガチ戦闘だ」

 

 その表情からは、シャナが何を考えているのかは伺い知れなかったが、

少なくとも楽しんでいるようにはまったく見えなかった。

 

 

 

「あいつら何やってるんだよ……」

 

 スネークの死は仕方ないと割り切ったシャナであったが、

さすがにダインとギンロウのミスには顔をしかめていた。

 

「まあしかし、今のはMMTMが上手くやったと言うべきか……」

「よく防いだと思うわよ」

「だな、さすがにこういった状況での戦闘が得意だと豪語するだけの事はある」

「あ、次はゼクシードが出てくるんじゃない?」

「だな、あいつなら多分数人は……って自爆特攻かよ、一々やる事がうぜえ……」

 

 シャナはそういったやり方があまり好きではなかったが、

強敵相手だと確かに有効な作戦ではあると認めてもいた。

 

「でもこれ、ゼクシードの奴は生きてるな、まあ足が吹っ飛ばされたのが見えたから、

しばらくは動けないだろうけどな」

「咄嗟に上手く反応してましたけど、こういう所はさすがですね……」

 

 戦争の時、シャナを助ける為とはいえ、ゼクシードに倒された経験のある銃士Xは、

複雑そうな表情でそう言った。

その時丁度画面が切り替わり、必死にピトフーイに呼びかけをするエムの姿が映し出された。

 

「お、画面が変わったな、あの馬鹿、まだ寝てるのか……」

「ねぇシャナ、ピトは何で起きないんだろ?」

「GGOの仕様上、こんな事はありえないんだがなぁ……」

「このままだと倒されちゃうかな?控え室で出迎える?」

「それでもいいんだが、あいつの使ってる控え室の場所が分からないからな」

 

 その疑問に答えたのはユッコだった。

 

「あ、それなら二つ向こうの部屋よ、シノンのいた部屋の向こう」

「そうなのか?そんなに近いなら、MMTMに倒された後でも十分間に合うな、

今はとりあえず、意味はないかもしれないが、ここからあいつに呼びかけておこう」

 

 シャナはそう冗談めかしながらも、ピトフーイに呼びかけ始めた。

 

「いつまでもめそめそしてないで、さっさと起きろ。

もっとももし負けても俺は二つ隣の部屋にいるから、すぐに笑いに行ってやるけどな」

 

 シズカはそんなシャナの姿を見て苦笑した。

 

「無理に悪ぶっちゃって……」

「あっ」

 

 その時銃士Xが短く叫んだ。画面の中のピトフーイが、

今まさに起き上がろうとしていたからだ。

 

「嘘」

「今のシャナの声が聞こえたとか?」

「いやいや、そんな事ある訳ないだろ」

「だよね、それじゃあ偶然?」

「だろうな、まあ俺に笑われるのがよっぽど嫌だったのかもしれないけどな」

「そうなったらピトは、喜びそうだけど……」

「いやいや、いくらあいつが変態でも、そこまでじゃないだろう」

「ピトはそこまでの変態だと思うけどね……」

 

 そしてピトフーイは鬼哭を抜くと、壁目掛けて水平に振るった。

 

「うお、いきなりかよ」

「これってまさに、ロザリアさんが拉致された時のシャナの行動の再現?」

「え?そうか?あの時の俺ってこんなんだったか?」

「さあ、私は目を潰されていたから、その辺りはよく分からないけど、

これとはまったく違った気がするわ」

「だろ?俺は平和主義者だからな」

 

 そう強弁するシャナを放置して、ロザリアは淡々と言った。

 

「あの時の方が、何ていうかより無双っぽかったと思うから、

これとはまったく違うと思うわ」

「無双なぁ……」

 

 シャナがそう言って若干目を泳がせた為、

ユッコとハルカはシャナが気まずさでも覚えているのかと考えたのか、明るい笑顔で言った。

 

「いやいや、あの時のあんたは悪くない、むしろ胸を張りなよ」

「そうそう、負け組についた私達が言うのもアレだけど、

あれは私達から見ても胸糞悪い事件だったから、セーフだよセーフ」

「いや、まあ別にアウトだと思ってる訳じゃないんだけどな、

ただ、今ピトが実際に俺と同じような事をやってるのを見て、

やはり輝光剣の攻撃力って圧倒的に無慈悲だなって思っただけだ」

「銃弾すら全て撃墜するしね」

「そんな変態はキリトだけだ」

 

 そんなシャナを見て一同は含み笑いをしたが、

シャナは実はこの時、若干反省していたのであった。

 

(GGOの世界に輝光剣をこれ以上広めちまって、

ゲーム性が損なわれでもしたら、ザスカーの連中に申し訳ないよなぁ……

明日あっちのおえらいさんと話さないといけないっていうのに)

 

 シャナはそう思いつつ、画面の中のピトフーイを見ながらこう言った。

 

「ところであいつ、刀を止められて、刃を逆に出して押し切ろうとしてるみたいだけど、

下にまだ敵が二人残ってる事を忘れたりしてないよな?」

「あっ……」

「その二人が来たら、逆にピンチ?それともエム君が何とかするかな?」

「どうだろうな、エムはこういう時、案外指示待ちになっちまう悪い癖があるからな」

 

 その時二人が一瞬階下に注意を向けるような仕草をし、

直後にピトフーイが安心したような顔で何かを口走った。

 

「ピトは今何て?」

「『へぇ、やるじゃない』だそうだ、大方ゼクシード辺りが復活して、

敵の掃除でもしたんだろうさ」

「お、うちのゼクシードさんも中々やるじゃない」

「まあ間違ってるかもしれないぞ、ただの状況からの推測だからな」

 

 シャナがそう言った直後に、その推測通りにゼクシードが姿を現し、

一同の目の前でデヴィッドが鬼哭に貫かれ、

ここに味方陣営……という表現が正しいかは微妙だが、それ以外の勢力は全滅した。

 

「終わったな」

「だね、これで残ってるのは事情を知ってるチームだけだね」

「ってかあいつ、死ぬのはやめたとか言ってるぞ、あの変態め、気分屋すぎるだろう」

「えっ、そうなの?そっか、良かったぁ……でも一体何があったんだろうね」

「いや、それが……夢の中で俺に説教されたとか言ってやがるんだが……」

 

 その言葉に他の五人は顔を見合わせた。

 

「えっと……」

「これって想いの強さって奴なのかな?」

「あいつは勘が鋭いからな、無意識に何かを感じたのかもしれないが」

「ピトの場合は妄執って感じよね」

「ま、まあ自力で正道に立ち返ったと思って褒めてもいいんじゃない?」 

「許す条件は変えないぞ」

「そっか、まあそうだよね」

 

 その事については予想通りだったのか、誰も口を挟もうとはしなかった。

そこからの展開は、既に語られた通り、ゼクシードがちゃんと仕事をし、

エムがピトフーイに責められる事もなく、最後の決戦が行われる事が決定した。

 

「おお、ゼクシードさん、いい仕事したね」

「あいつもたまには役にたつんだなぁ……」

「ちゃんと褒めてあげてね?」

「あいつは別に俺に褒められたいなんて思ってないだろ……」

 

 そんな会話を交わしている間に、生き残った者達は、

三組に分かれて別々の方向に移動していった。

シャナの通訳が無い為、今の状況が分からない五人は、

シャナに一体どうなっているのか説明してくれるように頼んだ。

 

「ああ、どうやら三組で対戦する事が決まったみたいだ、

レンとフカの相手がピトとエム、キリトの相手がSHINC、

そして闇風の相手がゼクシード、だそうだ」

「あ、そうなんだ!」

「ゼクシードさん、また闇風君に挑むんだ……」

「どっちが勝っても恨みっこなしって感じなのかな?」

「まあそうだな、これで全て解決、後はプレーオフみたいなもんだ」

「シノノン達に引き上げてもいいって連絡しとく?」

「いや、それはそれで面白いと思うから放っとこう」

 

 シャナはそう言いつつも、画面の中でキリトとピトフーイが接近し、

こそこそと何かを話しているのが気になっていたが、

後日その時の会話の内容を聞いて、ピトフーイの勘が人間離れしている事を、

改めて実感する事となった。




次の投稿は、本日18時を予定しております、お気をつけ下さい!

感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に
感想を投稿する際のガイドライン
に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。