ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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実はここまでの話には、いくつか縛りがありました。GGOの時は、ラストまでシノンとキリトを会わせないという縛り、GGOアフターでは、渡米中はピトフーイと連絡不能にしないといけない縛り、他にもいくつかあったと思いますが、
この章からはそれがほとんど無くなります、唯一あるのは、マザーズロザリオまではラン(アイ)とユウキをアスナに会わせないという縛りです。
でもそれだとユウキ達の活躍の範囲が狭くなってしまいますので、少し構成についてお話しておきます。

第六章・キャリバー・トラフィックス編
第七章・マザーズロザリオ編
第八章・キャリバー・クロッシング編
第九章・オーディナル・スケール編

こういった予定でいきたいと思っていますので、今後にご期待下さい。


第602話 ヴァルハラ・ウルヴズ

「もう、来るのが遅いのニャ!待ちくたびれて闇堕ちするところだったニャ」

「悪い悪い、戻ってきてから色々と事務処理に手間取っちまってな、ってか離れろ」

「フェイリスは敵の親玉のところに行って、見事改心させてきたのニャ、

それに対する報酬だと思えば気にもならないニャよね?」

「ピトの事か?それには感謝してるが、

詩乃からはあいつが起きた時には全て解決してたって聞いてるけどな」

「チッ、あのツンデレメガネっ子王女め、余計な事を……」

「王女って何だよ、ってかフェイリス黒い、黒いから」

「仕方ないのニャ、今のフェイリスは、八幡の不在で闇の力にかなり侵食されてるのニャ」

「お前のそれ、いつもだよな?」

 

 そんな二人のやり取りを、舞はぽかんと眺めていた。

そんな舞に気付いた八幡は、フェイリスに舞の事を紹介した。

 

「フェイリス、こちらが舞さんだ」

「フェイリス・ニャンニャンです、舞さん、宜しくニャ!」

「あ、こ、こちらこそ宜しくお願いします」

 

 こういった事に慣れていない舞は、戸惑いながらも何とか挨拶を返す事が出来た。

そして二人は個室に通され注文を済ませると、最初に八幡が舞に頭を下げた。

 

「今回の件、舞さんには不愉快な思いをさせて本当にすまなかった、

十狼の代表として心から謝罪したいと思う」

「や、やめて下さいよ!ピトフーイとは和解しましたし、もう何とも思ってませんから!」

「そうか?でもな……」

「それならこれにサインして下さい、それで十分です!」

「あ、例のアレか……」

 

 舞がニコニコ笑顔で狩猟に使っているポーチを取り出し、八幡に差し出してきた為、

八幡は躊躇しながらも素直にそれを受け取った。

 

「サインなんかした事ないんだけどな……」

「って事は私が初めてって事ですか?うわ、やった、凄く嬉しいです!」

「っていうか俺のサインなんか欲しいもんか?

それよりも普通に芸能人とかのサインの方が……」

「比企谷さんのが欲しいんです!」

「あ、そ、そう……」

 

 八幡は舞の勢いに押され、とにかく丁寧にという事を心がけて、

そのポーチに普通に自分の名前を書いた。

その時ポーチの中から何かがゴトッという音を立てて落ちてきた為、

八幡は何気なくそれを手にとった。

 

「これって実弾じゃ………」

「あっ、しまった、一つ残ってた……」

「け、警察に見つからないようにな」

「大丈夫ですよ、狩猟免許もちゃんと持ってきてますから!」

「いや、それでもさ……」

 

 丁度その時フェイリスが注文の品を持って中に入ってきた。

フェイリスは二人の様子を見て、ニャッと目を見開きながら言った。

 

「そ、それはご禁制の魔力弾なのニャ!?」

「ただのライフルの弾だっつの、舞さんは北海道でハンターをしてるからな」

「ニャニャッ、ニャんと!?プロのモンスターハンターの方だったのニャ!?」

「エゾシカってモンスターの括りになりますかね?」

「すまん、見た事がないから分からん」

 

 そしてフェイリスは優雅な仕草で飲み物を二人の前に置き、

舞はそんなフェイリスを、ぼ~っと眺めていた。

 

「舞さん、どうかしたか?」

「あ、いえ、フェイリスさんはかわいいなって思って……」

「え、そうか?意外とあざとくね?」

「あざとくなんかないニャ、失礼ニャね!」

「いえ、あのほら、私ってこんな仕事をしてるじゃないですか、

だからフェイリスさんみたいな人に憧れるというか、羨ましいというか……」

 

 舞は先ほど落ちた弾を弄びながらそう言い、八幡とフェイリスは顔を見合わせた。

 

「いや、舞さんも普通に美人だと思うが……」

「そうニャよ、とっても美人さんニャよ?」

「あ、ありがとうございます、でもほら、仕草とかそういう部分がちょっと……

どうしてもガサツになっちゃって、職場じゃ残念美人とか言われる事もありますし」

「いやいや、健康的な美人ってだけだろ、なぁ?」

「そうそう、何も気にする事は無いニャよ、方向性の違いニャ!」

「でも……」

 

 尚も下を向く舞に、フェイリスは定番の提案をする事にした。

 

「それなら舞さんも、試しにメイド服を着てみるニャ?」

「えっ、いいんですか?」

「もちろんニャ、ささ、こちらへどうぞ」

 

 あれよあれよという間に舞はフェイリスに連れていかれ、

少ししてからメイド服姿で戻ってきた。

 

「ど、どうですか?」

「おお……かわいい……」

「そ、そんな、かわいいだなんて!」

「いやいや、凄くかわいいニャよ!」

「あ、ありがとうございます……」

 

 舞は普段、美人と言われる事はあってもかわいいと言われる事はまったく無いらしく、

もしもじしながらも、とても嬉しそうにはにかんでいた。

 

「せっかくだから、二人で写真でも撮るのニャ!」

「写真ですか!?はい、是非お願いします!」

「ちょっと待っててニャ、まゆしい、ちょっといいかニャ?」

「フェリスちゃん、どうしたの?あっ、八幡さん!」

「お、まゆさん、挨拶が遅れてすまないな、今回は心配かけてごめんな」

「ううん、まゆしいは無事だって信じてたから平気なのです!

で、フェリスちゃん、どうしたの?」

「ちょっと手伝ってほしいのニャ、ええと……」

 

 フェイリスはまゆりに何か耳打ちし、まゆりはそれに頷いた。

 

「うん分かった、任せて!」

 

 そしてフェイリスは、舞からスマホを受け取り、二人を並ばせて撮影の体制に入った。

 

(あれ、何でまゆさんを呼んだんだ?この状態だと特に必要ないような……)

 

「それじゃあ撮るニャ、準備はいいかニャ?」

「おう、いつでもいいぞ」

「はい、大丈夫です」

「それじゃあいくニャよ、まゆしい!」

「は~い!」

 

 そして横からまゆりが舞を八幡の方にそっと押し、舞は八幡にもたれかかる格好になった。

 

「きゃっ」

「はい、チーズ!」

 

 そしてその瞬間を逃さず、フェイリスはスマホのシャッターを押した。

 

「よし、凄くいい出来ニャ!」

「フェイリス、お前な……」

「ほら舞さん、見てみてニャ!」

 

 そこには恥じらいながらも八幡に寄り添って、

その顔を見上げる舞の姿がバッチリ写っており、

舞はスマホをとても大切そうに自分の胸に抱いた。

 

「あ、ありがとうございます、一生の宝物にします!」

「どういたしましてニャ!」

「まあ本人がいいならいいか」

 

 そして舞は再び席に座り、ドキドキを抑えようとお茶を口にした。

 

「それじゃあごゆっくりニャ」

「あっ、あの、もし良かったらフェイリスさんも一緒に……」

 

 舞が突然そんな事を言い出した為、フェイリスはキョトンとした。

 

「ん~?でも二人きりの方が良くないかニャ?」

「あ、いや、私こういうのに慣れてなくて、一人だと会話に困ってしまいそうなので……」

「ああ、そういう事ニャね、分かったニャ、フェイリスがバッチリフォローしてあげるニャ」

 

 そして三人での会話が始まった。言葉に詰まる場面もあったが、

その度にフェイリスが舞に助け船を出し、会話はとてもスムーズに流れていった。

 

「フェイリスがGGOをやってたら、もっと色々話せたんだけどニャ」

「まあそうだな、フェイリスはとことんファンタジー系だから、

リアル系のGGOの話とか、合わないよな」

「いえ、そんな、私、今凄く楽しいですから気にしないで下さい!」

「それならいいんニャけど」

 

 丁度その時まゆりが追加の飲み物を持って部屋に入ってきた。

八幡は何気なくそちらを見たのだが、まゆりの後ろに見覚えのある人物を見付け、

八幡は思わずあっと声を上げた。

 

「八幡さん、まゆしいがどうかしましたか?」

「あ、いや、今まゆさんの後ろに見た事のある奴が見えたんで……」

「今帰ってきた二人組のご主人様の事かな?」

「帰り?ああ、そうか、確かにここは帰宅する場所だしな。

えっとシャーリーさん、GGOをプレイしてる奴が二人ほどいたけど、話してみるか?」

 

 舞はその言葉に、自分の知ってる人だろうかと首を傾げながら八幡に尋ねた。

 

「誰ですか?」

「闇風と薄塩たらこだ」

「えっ?リアルでもお知り合いなんですか?」

「ああ、で、どうする?」

「そうですね、興味があるので是非お願いします!」

「それじゃあまゆさん、悪いが二人をここに呼んでくれ。

ついでにここからは、舞さんの事はシャーリーって呼ぶ事にするか」

「それじゃあ私もシャナさんって呼ぶ事にしますね」

 

 そしてまゆりに案内され、部屋に風太と大善が入ってきた。

 

「おう、二人とも、こっちだこっち」

「あれ、何でここに?って、また違う女の子を連れてやがる……」

「どういう事だよ!しかもこんな美人メイドさんを二人も!」

 

 その言葉に舞はもじもじした。そんな舞を、八幡は二人に紹介する事にした。

 

「あ~、闇風、たらこ」

「ん?お、おう」

「むっ」

 

 その呼び方でGGO関係者だと分かったのだろう、二人は居住まいを正し、椅子に座った。

 

「こちらはシャーリーさんだ、たらこはともかく闇風はよく知ってるよな?」

「えっ、あのシャーリーさんか?うわ、初めまして、僕が闇風です」

「僕とか気持ち悪い、俺も面識ならあるぞ、

シャーリーさん、初めましてでお久しぶり、薄塩たらこです」

「は、初めまして、シャーリーです、宜しくお願いします」

 

 舞は緊張した面持ちでそう言った。自分と比べ、BoBの常連であるこの二人は、

シャナも含めてかなり格上のプレイヤーだからだ。

 

「あとこれはフェイリス・ニャンニャン、ALOのフェイリスだ、お前らは知ってるよな?」

「えっ、そうだったの?」

「二人とも、宜しくニャ!」

「こちらこそ宜しく!」

「宜しくな」

 

 そしてフェイリスも含めた五人は仲良く会話を始めた。

さすがにフェイリスとは違い、二人は銃の話にも普通についてこれる為、

舞も自然と打ち解け、会話はどんどん弾んでいった。

 

「そういえば聞くのを忘れてたが、二人は何でここに?」

「いやぁ、今日は二人ともバイトだったんだけどさ、

どこかでお茶でもして帰るかって話してたら、丁度そこにダル君が通りかかって、

で、ここを紹介されたから試しに来てみたって感じかな」

「そういう事か」

「しかし凄い偶然だよなぁ」

「だな」

 

 そして風太が、突然思い出したようにこう言った。

 

「そういえばこの前の陽乃さんの会見には驚いたぜ」

「GGOとALOがコラボするなんてな」

「あ、それ私も見ました!」

「フェイリスも見たニャ!」

「新しく二社が共同で、GGOとALOの両方のプレイヤーが同時にログイン出来る、

五層からなる迷宮に挑戦するって奴だよな?」

「バランスを崩さない程度にいい装備とか、特殊なスキルが手に入るとか」

「興味がありますよね!」

 

 その話に八幡は頷き、続けてこう言った。

 

「ああ、その話か、アメリカで上手く提携話が進んだんでな、

アルゴが一緒だった事もあって、とんとん拍子に話が進んで、ああいう事になったんだよ」

「アレのテストプレイも俺達の仕事になるのか?」

「いや、それだとネタバレになっちまうから、他の奴らにやらせる事にした」

「それって……」

「せっかくシャーリーさんがいるんだ、それじゃあその話をするか」

 

 そして八幡は、真面目な顔で三人に言った。

 

「三人とも、俺がそれ用に臨時で作るチーム、ヴァルハラ・ウルヴズに入らないか?」


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