ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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第605話 年齢差は友情には関係ない

 丁度その時入り口から誰かが中に入ってくるのが見えた、嘉納である。

 

「お、比企谷君、待たせたな」

「まだ時間には早いですし、俺達も今来たところですよ、閣下」

 

 そこに美咲が再び現れ、驚いたような顔で言った。

 

「あら、お二人はリアルでもお知り合いでしたの?」

「おう美咲ちゃん、そうなんだよ、こいつは中々見どころのある奴でなぁ、

実は前からちょこちょこ間接的に世話になってたんだが、最初はよ……」

「閣下、それ以上言ったらカットを返してもらいますよ」

 

 八幡はそれ以上言わせまいと、咄嗟にそう言った。

 

「おっと、そいつはいけねえ、まあ美咲ちゃん、

とにかくこいつは今後の日本に必要な奴なんだ、目をかけてやってくれな」

「もうとっくにかけてますわよ?」

「おうそうか、さすが男を見る目は一流だな、わはははははは」

 

 その後ろから入ってきたのはゼクシードこと茂村保でだった。

後ろには当然ユッコこと桜川悠子とハルカこと井上遥の姿もあった。

それを見た杏が気を利かせて代わりに嘉納を席へと案内し、

そして保は美咲に案内され、八幡の顔をじっと見詰めながらこちらに近付いてきた。

 

「えっと、初めまして?君がシャナかい?」

「おう、初めましてだな、ゼクシード」

「……………」

「どうした?」

「いや、初めてって感じがどうしてもしなくてさ」

「気のせいだろ、なぁ?ユッコ、ハルカ」

「そうですよゼクシードさん、気のせい気のせい」

「ささ、大人しく席につきましょう」

「あ、ああ、それじゃあ今日は宜しくね、シャナ」

「ああ、楽しくいこうぜ」

 

 だが席についた瞬間、保だけではなく悠子と遥も思わず動きを止めた。

 

「え、え?」

「嘘……テレビで昼に見た……」

「ま、まさか嘉納防衛大臣ですか?」

「おう、俺がスネークこと嘉納太郎だ、宜しくなゼクシード、それにお嬢ちゃん達」

 

 三人はその言葉に完全に固まった。

そして最後にエルザ達が店に入ってきた。後ろには香蓮と美優の姿も見える。

 

「うわ、私こういう店に入るのは初めてだ」

「当たり前でしょ美優、普通こういうお店は男の子しか来ないわよ」

「ミサキチ、ごめん、ギリギリになっちゃった」

 

 そんなエルザの顔をまじまじと見ながら、

美咲はそれでも動揺を表に出さないように気を付けながら言った。

 

「大丈夫よ、それにしてもピト………あなた、神崎エルザさんだったのね」

「うん、正解!驚いた?驚いたよね?」

「そうね、驚いたわよ」

「………う~ん、ミサキチってばそんなに驚いているようには見えないけどなぁ」

「誰が来ても驚いたら失礼に当たるから、表情に出ないように訓練してるだけで、

心の中ではとても驚いているわよ」

「そうなんだ、でも分かるように驚いて欲しかったなぁ」

 

 そう残念そうに言うエルザに、美咲は含み笑いをしながら言った。

 

「でも席について、一番驚くのはあなたじゃないかなって気はするわ」

「え~?そんな事ありませんよ~だ」

「そう?それならいいのだけれど」

 

 そして美咲は三人を席に案内し、その顔ぶれを見た瞬間に、ピトフーイが絶叫した。

 

「ええええええええ、もしかして防衛大臣?誰?スネーク?」

 

 こうしてエルザの強がりは一瞬で破綻し、八幡とレヴェッカ、それに嘉納は思わず笑った。

その直後にエルザの声で覚醒した保が、エルザの顔を見て再び硬直した。

 

「え………か、神崎エルザ?」

「そういうあなたはゼクシード?私はピトフ-イよ、宜しくぅ!」

「あ、あ………何だよこの集まり、どうなってんの………?」

「まあそういう事もあると思って受け入れろ、ゼクシード」

「シャナは全部知ってたのかい?いくらなんでも平然としすぎでしょ……」

 

 ちなみに悠子と遥は平気だった。この事を以前八幡に仄めかされていたからだ。

 

「レンちゃん、食事会以来?」

「だぁね、元気そうだね」

「うん、凄く元気!」

 

 そして香蓮は八幡に促されてその隣に座った。

ちなみにレヴェッカはその反対であり、美優は香蓮の正面という事になった。

席順はちなみにこうである。正面左から香蓮、八幡、レヴェッカ、スネーク、

手前が美優、悠子、保、遥であり、香蓮と美優の間の上座にはエルザが座らされた。

エルザはそれを拒否しようとしたが、八幡がそれを許さなかった。

ちなみに嘉納は最初から上座に座る気はまったく無く、最初に座った席から動かなかった。

 

「おいピト、お前はそこ、一番えらそうな席な」

「え~?八幡か大臣が座ってよぉ……」

「いいからさっさと座って会を始めろ」

「ちぇっ、は~い」

 

 そしてそれぞれ好きな飲み物を頼み、乾杯した後、自己紹介から会は始まった。

 

「それじゃあ私から、神崎エルザ、ピトフーイだよ!」

「あの、小比類巻香蓮、レンです」

「比企谷八幡、シャナだ」

「八幡の護衛をしているレヴェッカ・ミラーだ、ヨロシクな」

「スネークこと嘉納太郎だ、おいお前ら俺の時だけそんなに固くなるなって」

「私はフカ次郎こと篠原美優、宜しくね!」

「桜川悠子、ユッコです」

「し、茂村保、ゼクシードです、宜しくお願いします」

「井上遥、ハルカでっす!」

 

 次に最初に話を振ったのは、予想外に悠子であった。

 

「いやぁ、しかしレンちゃんにはびっくりだよ、

随分成長したよね、もうトッププレイヤーの一角じゃない?」

「そ、それほどでも……」

「いやぁ、本当に凄いって、それにその相変わらずの高身長……」

 

 香蓮はその言葉に反射的にビクッとしたが、

八幡はそんな香蓮を安心させようと優しく微笑んだ。

今の悠子と遥が香蓮を傷つけたりするような事を言うはずがないと信じていたからだ。

 

「凄く格好いい羨ましい!」

「ええっ!?」

「だよね、羨ましいし妬ましいよね!」

 

 ここでエルザもそう被せてきた。

 

「八幡もそう思うでしょ?」

「あ?俺は別に身長とか関係なく、香蓮はかわいいと思うがな」

 

 そう言いながら八幡は、香蓮の頭にポンと手を置き、

次の瞬間香蓮の顔が真っ赤に染まっている事に気付き、慌ててその手を離した。

 

「わ、悪い、いつもの癖でつい……」

「う、うん、大丈夫、いつもの事だから」

 

 その言葉に遥が反応した。

 

「あ~、確かにあんたってよく女の子にそういう事をするよね」

「これはジゴロだね、うん間違いない!」

「だな、よし比企谷君、俺が今度、君がジゴロだと閣議決定するように提案してやろう」

「閣下、もう酔ってんすか!?そういうのは冗談でも本気でやめて下さい!」

「わははははは、保君はどう思う?」

「そういうところ、昔は嫌いだったんですけど、

今でも嫌いです、ええ、キッパリとね!こいつ、モテすぎるんですよ、意味不明でしょう!」

「お前、いきなりキャラが違わないか?」

「フン、もう友達なんだから好きな事を言う事に決めたんだ、

君もこんな僕と友達になっちまった事を諦めて、全部受け入れるんだな」

「そういえばお前、最近自分の事、俺って言わないよな、強がるのはもうやめたのか?」

「フン、無理に格好つけて、俺って言うのが面倒臭くなったのさ、

もともと僕は、自分の事を僕って呼ぶのがデフォだからね」

「へぇ、まあいいんじゃないか」

「べ、別に君にそう言われても嬉しくなんかないけどね」

 

 その言葉に女子組は、ヒソヒソとやりだした。

 

「これってツンデレ?」

「うん、ツンデレだね」

「間違いないよね」

「でもゼクシードさん、本当に変わったよね」

「私、親切なゼクシードさんしか知らないんだけど」

「あ、香蓮ちゃんはそうかもね、昔はこの二人、本当に仲が悪かったんだよ」

「そ、そうなんだ」

 

 その横で、レヴェッカと嘉納は銃談義をしていた。

 

「おお、やっぱり本職だけあって詳しいな」

「あんたも中々話せるね、政治家にしておくのはもったいないよ」

「そうか?わはははは、まだまだ若い者には負けんよ」

 

 そんな一同を、美咲と杏は羨ましそうに眺めていた。

 

「何かいいなぁ、楽しそう」

「そうね、年の差とか、友情には関係ないって本当によく分かるわよね」

「あ、美咲ちゃんその発言はおばさんっぽい!」

「あら、あなたよりは私の方がまだまだ全然モテると思うわよ?」

「くっ、事実だけに言い返せない……」

 

 そして会は進み、ほどよく酔いも回ったところで、嘉納が先に帰る事になった。

 

「すまんな、明日は色々やる事があってな」

「閣下、お疲れ様でした、カットにも宜しく伝えて下さいね」

「おう、伝えとくわ、今度の休日は一日ドライブだな、楽しみだ」

「しばらく忙しいと思うんで、今度は伊丹さん達も交えて暇な時に飲みましょうね」

「だな!今日は短い時間しか参加出来なくて本当にすまんかった。あ、あとエルザちゃんや」

「あ、はい!」

「歌………」

 

 嘉納はそう呟き、エルザはその言葉にきょとんとした。

 

「えっと、はい」

「君の歌、俺は好きだぜ、何があっても比企谷君を信じて、これからも歌い続けてな」

 

 その言葉に、エルザは満面の笑みを浮かべながら元気に返事をした。

 

「はい、頑張ります!」

 

 そして嘉納はどこからか現れたSPに連れられ、帰っていった。

 

「SPの人も大変だよなぁ……」

「あれも仕事だ、プロなんだから大変だとか思わないさ」

「あれ、でも私達が同席する事、危ないと思ってなかったのかな?」

「事前に俺達の身元の調査くらいはしてあったはずだ、

そうじゃないと、レヴェッカがいるのにSPが中に入ってこない理由が説明出来ないだろ」

 

 その言葉にレヴェッカも同意した。

 

「ああ、確かに私なら一瞬で彼を殺せるからな」

「怖い事を真顔で言うんじゃねえ!」

「ボスの命令が無い限りそんな事はしないっての」

 

 八幡は思わずそう突っ込み、レヴェッカはそう言ってニヤニヤしていた。

 

「ほええ、猛獣と猛獣使いって感じ」

「やっぱり八幡君は凄いね」

「香蓮、こんな事で褒められてもちっとも嬉しくないんだが」

「君はほら、あのピトフーイまで手なずけたじゃないか、もう怖い物なんて何もないよね」

「本人の前で『あの』とか言わないでよゼクシード!」

「君ね、今までの自分の行いを胸に手を当てて考えてみなよ、いや今回の事だけじゃなくさ」

「ふふん、胸が無いから分かりません!」

「ピ、ピトさん、泣かないで!」

「ううっ、自虐ネタは自分にもダメージが大きい……」

「ところで今更ですが、今日舞さんをリーダーのマンションに泊めてもいいですか?」

「ああ、別に構わないぞ」

「あざっす!」

 

 その瞬間に、カオス状態だった場の会話がピタリと止まった。

 

「え、今何か聞き捨てならない言葉が聞こえなかった?」

「ん?気のせいだろ」

「い~や、確かに聞こえたね、君のマンションに誰かを泊めるとか何とか」

「ああ、ほとんど使ってないんだが、実は会社の近くに俺が借りてるマンションがあってな、

帰りが遅くなって家に帰れない時とかこうして遠くから美優みたいなのが尋ねてきた時の、

女性陣の溜り場になってるんだよな」

「ああ、そういう事か」

「それなら安心ね、何だ、勘違いしちゃった」

 

 八幡は上手く話を誤魔化し、それを聞いてあははははと笑う保と悠子と遥であったが、

その中に、空気を読めない者が一人いたのを八幡は忘れていた。

 

「ああ、あのボスのハーレムマンションな、泊まってみて驚いたぜ、

あれって一体何人分の予備の下着がストックしてあるんだ?」

 

 そして八幡が止める間もなく、美優がそれに答えた。

 

「この前数えたから知ってる!今は二十七人分だね!

全員自分で自分の予備の下着を持ち込んで管理してもらってるんだよね」

 

 その管理という言葉には、優里奈に、という主語が抜けていた。

それを聞いたエルザの目が座り、八幡はそれを見て、やばい、と思った。

 

「えっと、八幡、説明して」

「違う、誤解だ、決して香蓮の下着とかを俺が管理してるという訳では断じてない」

「そこで私の下着を引き合いに出さないで、は、恥ずかしいから」

 

 香蓮が顔を真っ赤にしてそう言い、それを見た一同は、八幡を問い詰めるのを忘れた。

 

「かわいい……」

「かわいいね……」

「くっ、女子力じゃ負けないと思ってたのに、コヒーめ……」

「お前のどこに女子力があるんだよ……それよりみんな、

エルザと美優、それにレヴェッカにはもう話したが、先に大事な話がある」

 

 突然八幡が真面目な顔でそう言い、一同はその顔を見て、居住まいを正したのだった。




八幡は果たしてこのまま逃げ切れるのか!?

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