ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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今日からまた12時投稿になります!

人物紹介の川崎沙希の項目を、ヴァルハラ・リゾートのスクナの項目として移動しました。


第607話 是非お願いしますむしろ喜んで!

「キットに乗るのも久しぶりだなぁ」

「だな、それに昔じゃこんなのは考えられない事だよな」

「思いっきり飲酒運転だしね」

「キット様々だね」

『ありがとうございます、なるべく揺れないように走りますので、

気分が悪くなったらすぐに言って下さいね』

 

 キットには今、運転席に八幡、助手席にレヴェッカ、

後部座席に香蓮、エルザ、美優が乗っていた。

キットは先ず最初にエルザの自宅へと向かい、そこでエルザは部屋に置く下着を用意した。

八幡は嫌そうな顔をしていたが、差別は良くないという女性陣の意見に押し通された形だ。

レヴェッカはバッグごと下着を部屋に置きっぱなしだったので、それについては問題ない。

問題は舞であったが、それに関しては本人に状況を説明してから判断という事になった。

ちなみにキットに六人乗るのは厳しい為、舞の顔を知る八幡と美優以外は、

先に八幡のマンションで下ろされていた。

 

「舞さんごめん、お待たせ!」

「風太も大善も、舞さんの事、ありがとな」

「どういたしましてだぜ!」

「それじゃあ舞さん、次にこっちに来る事があったら、その時はまた宜しくね」

「はい是非!お二人とも、ありがとうございました!」

 

 風太と大善はそう挨拶をして去っていき、舞は八幡と美優に笑顔で言った。

 

「おかげでいい観光が出来ました、それじゃあ今日の宿に行きましょうか!」

「それなんだがな……」

「何かありましたか?」

「舞さん、ちょっと私と一緒にキットの中にお願い」

「あ、うん」

 

 舞は美優に連れられ、そのままキットの中で部屋の説明を受けていた。

さすがに八幡はその場に同席するのは躊躇われた為、こういう形になったのだった。

 

「ええっ!?」

 

 突然キットの中からそんな声が聞こえ、八幡はチラリとそちらを見た。

美優にはくれぐれも誤解されないように、正確に伝えてくれと頼んであったが、

舞は驚いた表情から一転して明るい顔でうんうんと頷いていた為、

八幡は美優の癖にどうやらちゃんと説明してくれたようだと安堵した。

そして美優が窓を開けて八幡を呼んだ為、八幡は運転席へと乗り込んだ。

 

「………で、どうなった?」

「うん、リーダーが今思ってる通りかな」

「お手数ですが、近くのデパートもしくは商業施設までお願いします!

是非お願いしますむしろ喜んで!」

「ええと………あ、はい」

 

 八幡にそんな知識があるはずもなく、当然美優もまったく土地勘がない為、

困った八幡は案内をキットに丸投げし、二人を近くの店に案内すると、

下着を選んでいる現場に同席するのは嫌だった為、そのまま車の中で待つ事にした。

八幡はある程度の時間がかかるだろうと思っていたが、

思ったほど待つ事もなく、二人は結構早くに戻ってきた。

 

「あれ、もういいのか?」

「うん、バッチリ!」

「私、こういうのには疎いんで、美優さんのアドバイスに従ってすぐに決めちゃいました」

「そっか、それじゃあ行こうか」

「はい、宜しくお願いします」

 

 八幡は下手な事は言えず、そう言うに留めた。

そしてキットはマンションへと向かい、三人は八幡の部屋の前に到着した。

八幡は一応優里奈の部屋のチャイムも押したのだが、

反応が無かった為、優里奈も今は八幡の部屋にいるのだろうと推測された。

 

「さて、ここがその部屋だ」

「す、凄く高そう……ちょっと気後れしちゃいますね」

「まあ実質女子連中の宿泊所みたいなものだから、気楽にしてくれればいい」

「私、そういうのも慣れてないんで凄く楽しみです!」

 

 普段男社会の中で生活している舞は、期待に満ちた目でそう言い、

八幡はそんな舞に柔らかな表情を見せながら、

扉に鍵がかかっている事を確認してから部屋のチャイムを押した。

自分の持っている鍵で開けても良かったのだが、何かあったら困るので一応そうした感じだ。

 

『はい、どちら様ですか?』

「おう優里奈か、俺だ俺、美優と舞さんを連れてきたぞ」

『すみません、オレオレ詐欺はお断りしてますので……』

「むっ、それくらいの慎重さは必要だ、えらいぞ優里奈」

『冗談だったのにそう真面目に返されると恥ずかしくなっちゃいますよ!

八幡さん、お待ちしてました。今そちらに………あっ、明日奈さん待って……』

 

 それと同時にどたどたという足音と共に扉が開かれ、中から明日奈が顔を出した。

 

「八幡君!」

「あれ、明日奈も来てたのか?」

「うん、こういう場にはやっぱり私がいないとねって事になったみたいで呼び出されたの」

「そうか、今は中に俺が入っても問題ない状況か?」

「大丈夫だよ、今は私が着替えてるだけだから」

「そうか」

 

 見ると通路の奥からエルザと香蓮、それに優里奈がひょこっと顔を出し、

少し驚いた顔でこちらを見ていた。

八幡は一体何を驚いているんだろうと思いつつも、そのまま奥に進んだ。

 

「お前ら何をそんなに驚いてるんだ?」

「だ、だって……」

「八幡は、何でそんな平然とした顔をしてるの?」

「あん?俺が何に驚くんだよ」

「だって、今の明日奈は思いっきり下着姿じゃない!」

 

 そう指摘された八幡と明日奈は、今自分達が置かれた状況に気が付いた。

普段自宅の明日奈の部屋に二人でいる時、明日奈は八幡の前でも平気で着替えており、

明日奈が八幡の部屋にいるケースでも同様であった。

以前の京都旅行の時、二人きりで過ごしていた時から徐々にこうなっていたのだが、

今では二人ともその状況にすっかり慣れてしまい、その事に気付かなかったという訳である。

ちなみにもちろんそういった状況にドキドキしなくなったという訳ではなく、

過剰に反応しなくなっただけであり、当然今も正面から正視している訳ではなかったのだが、

どうやら他の者達にはそうは見えなかったようだ。

 

「「………」」

 

 そして二人は即座にアイコンタクトをとり、直後に明日奈がわざとらしい悲鳴を上げた。

 

「き、きゃぁ!八幡君のえっち!」

「悪い、わざとじゃなかったんだ、すまん」

 

 だがそんな演技が当然通用するはずもない。

 

「これは遠まわしなのろけ?」

「ぐぬぬ、ちょっと羨ましい」

「でも二人とも、なまらかわいい……」

「さすがは八幡さん、女性の半裸くらいでは動じないのですね!」

 

 二人はそう言われ、気まずそうに目を逸らした。

その時舞が、あっと声を上げた。その視線はエルザに向けられており、

八幡はそういえばと思い、ついでにこの状況を何とかしようと舞の肩をポンと叩いた。

 

「後で正式に紹介するけど神崎エルザ本人だ。舞さん、驚いたよな?」

「話から有名な人だろうと思ってはいましたが、本当にまさかでした」

「だよなぁ」

「そういえばエルザさんは、本当に空港に出迎えに来たんですか?」

「うん、もちろん行ったよ!ちゃんと変装してたから、おかしな事にはならなかった!」

「何人かにはバレてたっぽかったから、

写真とかに撮られないうちにと思って慌てて移動したんだよな」

「そうそう、危なかったよね!」

「それはやばかったですね」

 

 そんな和気藹々とした雰囲気の中、八幡は一人足りない事に気付き、香蓮にこう尋ねた。

もちろん先ほどの演技の事をもっと有耶無耶にしたいという気持ちがあった事は間違いない。

まだ明日奈は下着姿のままで佇んでおり、八幡はタイミングを見て明日奈に合図をし、

こっそり移動させるつもりでいたのだが、今回はそれが裏目に出た。

 

「あ、そういえば香蓮、レヴィはどうした?」

「あ、レヴィさんなら寝室で着替えてるよ、

さすがにこういう部屋で普段着ている男っぽい服を着たままでいるのは嫌で、

もっと楽な格好になりたかったみたい」

「あれ、あいつそんな普通の服なんか持ってたっけか?」

「うん、何かお兄さんに持たされた服があるらしくて、それに着替えるんだって」

「ガブリエルが?そうか、これであいつの趣味が分かるな」

「趣味で決めたかどうかは分からないけどね」 

 

 その瞬間に寝室のドアが開き、中から下着姿のレヴェッカが顔を出した。

 

「なぁお前ら、これってどうやって着るんだ?って、やっと来たのかボス」

 

 レヴェッカはそう言うと、自分の身体を一切隠そうともせず、八幡の前に立った。

その胸の破壊力は抜群であり、この場にいる者の中で対抗出来るのは優里奈しかいない。

 

「ロケット弾!?」

「いいなぁ……私もあれくらいの武器があれば、もっとモテてるはずなんだけど……」

「私はそういうのあんまり気にしないけど、でもやっぱりもう少し……」

「う~ん、憧れるけど、狩りの邪魔になりそう」

「皆さん落ち着いて下さい!」

 

 ただ一人動じていなかった優里奈がそう声をかけ、レヴェッカは首を傾げながら言った。

 

「ん、この格好の事か?でもこれって明日奈と同じだろ?何か問題あるか?」

「そ、そう言われると確かにそうなんだけど、でもやっぱり違うから!その、大きさとか!」

 

 明日奈は動揺したようにそう言ったが、

すぐに我に返ったのか、レヴェッカの手を引いて寝室へと向かった。

 

「レヴィ、私が服を着させてあげるから、とりあえず寝室に行きましょ」

「お、助かるわ、頼むぜ明日奈」

「うん!」

 

 そして明日奈は近くにあった自分の服を掴むと、レヴェッカと共に寝室へと消えていった。

こうしてロケット弾の脅威は去り、室内は平穏を取り戻した。

 

「ロケット弾か、確かにそんな感じだったな……」

 

 八幡が見た感想を正直にそう言ってしまう程にロケット弾の破壊力は強大であったが、

それに対して責める者は誰もいなかった。その場にいた者達も全員そう思っていたからだ。

 

「ぼぼ~ん!」

「あれが本当のアルプスかぁ」

「くっ、べ、別に羨ましくなんかないし!」

「ねぇ、あれって優里奈ちゃんとどっちが大きいのかな……」

「ふえっ!?」

 

 美優がそう呟き、八幡も思わずそちらを見た。

 

「八幡さん、八幡さん相手なら別に見られてもいいんですが、

これだけ他の人の目があるとやっぱりちょっと恥ずかしいです……」

「そ、その言い方は俺も恥ずかしいからやめるんだ、優里奈」

 

 八幡はそう言って慌てて目を背けたが、

そんな八幡には構わず、美優は優里奈の胸をガン見したままで言った。

 

「サイズ的には同じくらいじゃないかな?ね?優里奈ちゃん」

「あ、はい、聞いた話だとそうみたいですね」

 

 真面目な優里奈は、美優のそんなセクハラ質問にも律儀にそう答えた。

 

「でも優里奈ちゃんの方が胸が大きく感じない?」

「あ、えと……身長差があるからかもしれませんね、体格も違いますし」

「あっ、そうか、つまり優里奈ちゃんの方がカップが大きいんだ!

さすがは優里奈ちゃん、大和撫子だね!」

「優里奈は確かに大和撫子だが、一般的な大和撫子にそういう要素は無えよ」

 

 ここでやっと調子を取り戻したのか、八幡が即座にそう突っ込んだ。

その言葉は一同の笑いを誘い、その後は誰もその話題について触れなかった。

それでとりあえず胸の話題から離れる事が出来たと判断し、八幡はほっと胸を撫で下ろした。

その後六人はリビングに移動し、香蓮、エルザ、優里奈に舞が紹介される事となった。

 

「こちらがシャーリーこと霧島舞さん、まあエルザと香蓮はよく知っている事と思うが、

わざわざ北海道から俺に会いに来てくれた、大切な仲間の一人だ」

 

 その言葉に舞はとても驚いた顔をした後、元気よく三人に挨拶をした。

 

「八幡さんの仲間の霧島舞です、ふつつかな仲間だけどこれから宜しくね、

エルザさん、香蓮さん、優里奈ちゃん!」

「あ、はい、こちらこそ宜しくお願いします、櫛稲田優里奈です!」

「こっちでもあっちでも宜しく!ピトフーイこと神崎エルザだよ!」

「改めて宜しくお願いします、レンこと小比類巻香蓮です」

 

 二度言うあたり、舞は仲間扱いされた事が余程嬉しかったとみえた。

そして着替え終わった明日奈とレヴェッカがリビングに顔を出し、

八幡はレヴェッカの服装を見て、意外に思った。

 

「なぁレヴィ、それってガブリエルのチョイスだよな?」

「ああ、そうだけどそれがどうかしたか?」

「肩の露出したニットトップスにジーンズか、

とてもあのTシャツを着ていた奴のチョイスだとは信じられなくてな」

「違いねえ」

 

 レヴェッカはそう言って面白そうに笑った。

そして明日奈と舞がお互いに自己紹介したところで、八幡のお腹が鳴った。

 

「………そういえばそろそろ夕食の時間か」

「あ、みんなで一緒に食べようと思って準備はしておいたよ」

「おお、すぐに食べられるのは助かる」

「それじゃあ用意するね、みんなも手伝ってもらっていい?」

「うん」

「了解!」

「ささっと準備しちゃいましょう!」

「あの、私も手伝います!」

 

 そしてその場には、八幡とレヴェッカだけが残された。

 

「なぁ、ボス」

「ん?どうした?」

「ボスもさ、やっぱりある程度の家事って出来た方がいいと思うか?」

「ん~、ある程度はやっぱり出来た方がいいだろうな、何かと便利だしな」

「やっぱりそうか、俺は野外ならそれなりに料理もしてきたけど、

実はまともにキッチンに立った事は無いんだよな」

「ならこの機会に学べばいい、今度明日奈か優里奈に教えてもらうんだな」

「あの二人は料理が得意なのか?」

「おう、今日の飯は期待出来るぞ」

「そうか、それは楽しみだ」

「うん、楽しみにしてて!」

 

 その会話が聞こえたのか、キッチンからそう明日奈の声が聞こえ、

直後に若干過剰かなと思われるくらいの量の料理がどんどんリビングに運ばれてきた。

 

「お、おい、さすがにこれは多くないか?」

「そうか?普通だろ?」

「あ、そういう事か、これはレヴィ用か」

「そういう事」

 

 そして食事が始まり、レヴェッカの食欲に驚いたりもしたが、

八幡以外は全員女性だという事もあり、一同は穏やかな雰囲気の時間を過ごす事が出来た。

その間にそれぞれの者達と八幡との関係の簡単な説明も成されており、

舞はその多様さに驚いた。八幡の素性についてはさすがに平静ではいられなかったようだが、

事前にALOのハチマンとSAOのハチマンについては調べたらしく、

主にそれは八幡のリアル面に対しての驚きであったようだ。

 

「さて、それじゃあ俺はちょっと休憩させてもらうが、みんなは好きにしてくれ」

 

 そう言ってごろごろしようとした八幡に、エルザが言った。

 

「ストップ、その前にやる事があるよね?」

「ん?何かあったか?」

「ぱ・ん・つ?」

「お前さ……少しは言い方ってものを考えろ」

「ぱ・ん・てぃ?」

「そういう意味じゃねえよ!」

 

 そう突っ込みつつも八幡は、これから何をさせられるのか思い出して意気消沈した。

八幡にとって、今日最後の試練はこれからなのである。


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