ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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第640話 秘密基地を探せ

「いざ探してみると、中々それっぽい場所は見つからないもんだね」

「その代わり街にはどんどん詳しくなってるな」

「秘密基地、秘密基地……」

 

 三人はそれっぽい場所を探索しまくったが、それらしき場所は中々見つからなかった。

途中何度も仲間と行きあい情報交換をしたが、それらしき場所の発見報告は無い。

 

「リオン、マップの具合はどうだ?」

「うん、そっちは順調に埋まってるみたい」

 

 このエリアでは、プレイヤーはいつでも白地図を呼び出す事が出来た。

その地図は一度移動した場所がどんどんオープンになっていくタイプの地図であり、

これはナイツに与えられた機能の一つでもあった。

メンバーの誰がその場所に移動しても、全員のマップが更新される仕様であり、

更にどの場所がどんな施設なのか、名前と業種を登録出来るようになっている。

ちなみに最初に全員に配られた通信機もナイツのメンバーに与えられた機能の一つである。

 

「う~ん、マップはどんどん埋まってくが……」

「見つからないね……」

 

 それから数十分後、ハチマンとアスナもマップを開き、そう嘆息した。

 

「他に行ってない所はもう無いか」

「もうすぐ一時間だし、一度フェンリル・カフェに戻る?」

「そうするか……」

 

 そして三人は、とぼとぼとフェンリル・カフェへと戻り始めた。

途中何人もの仲間と合流したが、その表情は皆暗かった。

 

「もしかして、秘密基地的な場所は存在しないのかもなぁ……」

「絶対あると思ったんだけどな」

「まあ仕方ないね、どこを拠点にするか、通常物件の中から選ぶ相談をしよっか」

 

 そしてリオン達はフェンリル・カフェがあるビルの前に到着した。

 

(素人だから仕方ないとはいえ、せっかく来たんだし、

私ももうちょっとこういう部分で役に立ちたかったな……)

 

 リオンはそんな事を考えながらビルを見上げた。

六階建てのビルの五階に、先ほど見たフェンリル・カフェの内装が見え、

リオンは今度は何を注文してみようかな、等と考えながら、

ハチマン達と一緒にエレベーターの中に乗り込んだ。

そしてハチマンが、一番上の五階のボタンを押したのを見た瞬間に、

リオンの脳内に先ほど自分が見た光景がフラッシュバックした。

 

「あ、あれ?」

「ん、リオン、どうした?」

「ご、ごめん、ちょっと待って」

「お、おう」

 

 そして周囲の者達が何事かと首を傾げる中、リオンはハチマンにこう尋ねた。

 

「ここって五階だよね?」

「ああ、そうだな」

「ごめん、ちょっと来て」

「お、おい……」

 

 そしてリオンはハチマンの手を引いて再びエレベーターに乗り込み、

迷う事なく一階のボタンを押した。

 

「いきなりどうした?」

「ごめん、ちょっと付き合って」

 

 そしてリオンはハチマンの手を引き、そのままビルの外に出た。

まだ下にいた仲間達が、どうしたのかとその後に続いた。

 

「ねぇ、見て」

「ん、どこだ」

「あそこ、あれってフェンリル・カフェだよね?」

 

 リオンは外から見える、フェンリル・カフェを真っ直ぐ指差した。

 

「ああ………あれ?」

 

 それでどうやらハチマンも違和感を感じたらしい。

二人は顔を見合わせて頷くと、再びエレベーターへと走った。

 

「お、おい、どうしたんだよ」

 

 そんな二人に、その場にいた者を代表してキリトがそう尋ねた。

 

「キリト、お前、さっき外からフェンリル・カフェを見たか?」

「それなら見たけど……」

「どこにあった?」

「ビルの五階だろ?上から二番目……」

「じゃあこれはどういう事だ?」

 

 そしてハチマンは、エレベーターの階層ボタンを指差した。

そこには五階までのボタンしかなく、キリトもそれを見て目を見開いた。

 

「お、おい、まさか……」

「分かったか、そうだ、このビルは六階建てなのに、

エレベーターのボタンが五階までしか無いんだ」

 

 その言葉に他の者達もどよめいた。

 

「とりあえずフェンリル・カフェに戻るぞ」

 

 そして一同は、再びフェンリル・カフェに集結した。

 

「ハチマン君、何があったの?」

「今から説明する」

 

 そしてハチマンは、ここが最上階だと思っていたこのビルに、

上のフロアが存在する事を告げ、全員で上へのルートを探す事となった。

 

「階段か何かは無いか?」

「どこにも無いわね……」

「他のフロアから、非常階段的なのが伸びてるとか……」

「分担して全部のフロアをチェックしたけど、何も無かったわね」

「外にも行ってみたけどそれっぽい階段は無かったぜ」

「ただのバグって可能性は?」

「どうだろう……さすがに無いんじゃないか?この街はAI生成だしな」

「一体どこに……」

 

 リオンも必死で上へのルートを探したが、やはり見つからない。

 

「隣のビルから見えない通路が繋がってるとかは?」

「どうだったかな、もう一度外からこのビルを見にいってみるか」

「わ、私も行く」

 

 そう言って下に向かおうとするハチマンに、リオンも同行した。

二人は下からビルを見上げ、このビルの周辺には同じ高さのビルが存在しない事を確認し、

更に外から中に入る扉も何も存在しない事を確かめた。

 

『ハチマン、構造的にも隠し通路の類は存在していないと思うわ』

 

 そこに上にいるクリシュナからそう通信が入り、二人は悩みながら再びビルを見上げた。

 

「一体どこにあるんだろうな」

「どこだろうね………あ、あれ?」

「どうしたリオン、また何か気づいたか?」

「う、うん、ねぇハチマン、あのエレベーターさ、

外から見ると、ちゃんと一番上まで繋がってない?」

「確かに……そうか、エレベーターか!」

「多分」

 

 そして二人は再びエレベーターへと舞い戻り、今度はその中を詳細に調べ始めた。

 

「五階のボタンの上には……何も隠されていないか」

「ボタンを何かの順番で押すとか?」

「そこまで複雑にはしないと思うが……」

 

 そしてエレベーターは再び五階まで上がり、扉が開くと、外からクリシュナが顔を出した。

 

「どう?何か分かった?」

「どうやらエレベーターが怪しいって事が分かった、

外から見るとこのエレベーター、ちゃんと上まで繋がってやがる」

「なるほど……」

「上か……」

 

 ハチマンはそう呟きながら、何となく五階のボタンを押した。

 

 ピッ………

 

 その瞬間に、どこからかそんな電子音が聞こえ、三人は顔を見合わせた。

 

「今確かに音が……」

「今五階のボタンを押したのよね?」

「おう、こういう時の定番って言うと……」

「「「長押し!」」」

 

 三人は同時にそう叫び、ハチマンは五階のボタンを押し続けた。

そしてキッチリ六秒後に、三人の目の前に、物件の購入画面が出現した。

 

「「「あった!」」」

 

 その声を聞き、仲間達がどんどん集結してきた。

 

「あったのか?」

「おう、五階ボタンを六秒押しっぱなしにしたら、この画面が出てきたわ」

「六秒って、一フロア一秒なのかな?」

「どれどれ……購入画面か、やったなおい!」

「ちなみにいくらだ?」

「幸い余裕で買える額だな、五千万」

「ギルドの資金の五分の一くらいか」

「みんないるか?どうやら購入前に六階の様子は見る事は出来ないようだが、

購入する事に異論のある奴はいるか?」

 

 その問いには誰も答えず、ハチマンは頷いた。

 

「よし、買うぞ」

「おう!」

「秘密基地、ゲットだぜ!」

「やったね!」

 

 そしてハチマンは購入ボタンを押し、次に物件の名前の入力画面が現れた。

 

「拠点の名前か……」

「ヴァルハラ・ウルヴズ・ガーデンだと長いよなぁ」

「よし……リオン、お前が決めてくれ」

「えっ?」

 

 その言葉にリオンはとても驚いた。

 

「な、何で私?」

「だってここを見つけられたのはお前のおかげじゃないかよ、なぁみんな!」

「異議なし!」

「リオン、任せた!」

「大丈夫、どんな名前でも誰も文句は言わないって!」

「そうそう、気楽にね!」

「う、うぅ……」

 

 そしてリオンは、迷いながらもこう答えた。

 

「ウ……」

「ウ?」

「ウルヴズヘヴン……」

「よし、今からここはウルヴズヘヴンだ!ここを狼達の天国にしてやろうぜ!」

「「「「「「「「「「おう!」」」」」」」」」」

 

 そしてハチマンが名前を入力した瞬間に、周囲に突然こんなアナウンスが流れた。

 

「このビルは、ナイツ『ヴァルハラ・ウルヴズ』の拠点として登録されました。

以後はビルの入り口にて入室チェックが行われる事となります、ご注意下さい」

「「「「「「「「「「ビル?????」」」」」」」」」」

 

 それはメンバー達にとって、青天の霹靂だった。

誰もが六階が拠点となるのだと思っていたのだが、

どうやらビル全体が拠点扱いになるようだ。そして直後に再びアナウンスが流れた。

 

「これより当ビルは、拠点モードに移行します、中にいるプレイヤーは、

終了までビルの廊下にて待機して下さい、繰り返します……」

「うわ」

「そ、外に出ろ、」

 

 そのアナウンスを聞き、三人は慌ててエレベーターから外に出た。

そして一同が固唾を飲んで見守る中、あちこちから何かが動く音が聞こえてきた。

 

「何だこれ……」

「さすがにこれはやりすぎじゃね?」

「一体どうなるのかしら……」

 

 そしてすぐに音が止み、辺りは静寂に包まれた。

 

「よし、分担して各階層のチェックだ、ユキノ、分担を」

「分かったわ」

 

 そしてユキノの仕切りで分担が割り当てられ、メンバー達は散って行った。

 

 

 

 調査の結果、以上の事が判明した。

 

・フェンリル・カフェのメニューは全部タダ。

・五階から六階にかけては吹き抜けになり、室内の階段で六階に上がれるようになった。

・その六階はただの談話室。

・四階は戦闘訓練場と射撃訓練場。

・三階はロッカーと武器庫。

・一階二階は統合され、ガレージになった。ちなみに乗り物はまだ何も無し。

・外に『ウルヴズヘヴン』の看板が出て、秘密基地感が無くなった。

 

 一番最後の項目に関しては、全員が何ともいえない表情をする事になった。

こうしてヴァルハラ・ウルヴズは、合同イベントの拠点、

『ウルヴズヘブン』をまんまと入手し、しばらくはここを起点に冒険が幕を開ける事になる




このエピソードはとりあえずここまで!

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