ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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今日からは五話構成で、学校に行こうシリーズをお送りします!
いつも誤字の訂正をして下さる皆様、本当にありがとうございます!


第653話 明日奈と優里奈、詩乃の学校へ

 ハチマン達が目的を達成して帰還した頃、狩りをしていたリオン達も、

この日の活動を終え、ヴァルハラ・ガーデンに戻っていた。

 

「いやぁ、今日もよく戦ったね」

「リオンもかなり急成長したんじゃない?」

「狩場がすいてるってのはやっぱいいよなぁ」

 

 六人は和気藹々とした雰囲気で、今日の狩りについて振り返っていた。

途中で誰にも遭遇しなかったという事は無いが、

主だったプレイヤーは皆トラフィックスに移動していた為、

狩りのコンディションは最高、獲得経験値もまた最高であった。

 

「さて、俺は今日はこれで落ちるけど、明日はちょっと用事があるから休みでいいか?」

「そうだね、このところ毎日だったしそうしましょうか」

「あ、それじゃあ私もちょっと実家に戻ってこようかな」

「せっかくだし、それじゃあ私もそうしますね!」

 

 キリトの言葉にシノンが同意すると、リズベットとシリカがそう言いだした。

ちなみに実家に帰ると言っても、単に寮ではなく自宅に帰るというだけで、

二人の実家は都内にある為、別に遠くに行く訳ではない。

 

「私は別に予定は無いんだよね」

「今日でトラフィックスの探索も一区切りだし、そうなると一日予定が開いちゃうね」

「私も明日は、会社での勉強が休みの日なんだよね、

紅莉栖さんだけじゃなく、真帆先輩もレスキネン部長もがいないらしくて」

「それじゃあ三人でどこかに出かける?」

「いいね、それじゃあどうやって集まろうか」

「あ、それなら私がハチマン君にキットを借りて迎えに行くよ、

キットなら、別に免許が無くても問題ないしね」

「そうだ、ついでに優里奈も誘ってみない?」

「優里奈?」

 

 リオンはその聞き覚えの無い名前に首を傾げた。

 

「あ、リオンは優里奈とはまだ面識が無いんだ」

「あ、うん、どういう人?友達?」

「ええと、私達のママかな」

「えっ?」

「私とハチマン君の娘だよ」

「ええっ!?」

 

 そのシノンとアスナの返事は、リオンにとってはまったく意味が分からなかった。

 

「おいおい、説明を端折るなって」

「他に言いようが無いってのは分かるけどね」

「つまりママっていうのは、あ~、食事とか色々の事で、日ごろお世話になってる感じ?」

 

 シノンはあの部屋にリオンがまだ場所を確保していない以上、

その事には触れない方がいいのかもしれないと考え、咄嗟にそう言い訳した。

他の者達も、時間の問題だろうなとは思っていたが、

それでももしかしたらハチマンには何か考えがあるのかもしれないと思い、

そのシノンの考えに内心で同意し、詳しい説明をしなかった。

実際は無理に進学をやめさせ、ソレイユに就職させた手前、

両親の信頼を損なうような事はしてはいけないという、ハチマンの気遣いのせいであった為、

その判断は限りなく正解に近かったのである。

 

「えっと、娘ってのは、ハチマン君が優里奈ちゃんの保護者になってるからだよ」

「保護者って、優里奈ちゃんってまだ小さい子供なの?」

「シノノンと同い年かな」

「え、それじゃあ私の一つ下なんだ」

「うん、ご両親とお兄さんに不幸があって、天涯孤独になっちゃったからさ、

多少縁があったハチマン君が保護者の役をやる事になって、

だから私にとっても娘、みたいな?」

「実際はただの友達だけどな」

「まあそうなんだけどね」

 

 その説明で、リオンは優里奈の事をある程度理解したらしい。

 

「まあリオンのライバルだよ、うん、色々な意味で」

「そうなの?」

 

 リオンの胸に視線を向けながらリズベットがそう言った。

 

「リズ、何かおっさんっぽい」

「あはははは、まあ会えば分かるよ会えば、凄くいい子だから何も心配する事はないしね」

「そ、そうなんだ、うん、それじゃあ楽しみにしとく」

「家の位置的に、優里奈ちゃんと一緒にシノノンを迎えに行って、

最後にリオンを迎えに行く感じになるから、事前に着替えを用意しておいた方がいいね」

「着替えって……も、もしかして学校に迎えに来るの?」

「うん、その方が話が早いからね」

「わ、分かった」

「私もそれでいいわ」

 

 こうして四人で遊びに行く事が決まり、そして迎えた次の日、

明日奈は学校で余所行きの格好に着替え、キットの迎えを待っていた。

詩乃や理央と違い、帰還者用学校の校則はこういう部分は緩いのである。

そして八幡も今日はソレイユに顔を出す為、明日奈と一緒にキットを待っていた。

 

「随分おめかししてるんだな、明日奈」

「うん、かわいいでしょ?」

「今日に限らず明日奈はいつもかわいいと思うが……」

「え~?もう、八幡君ったら正直なんだから」

「そういうとこ、明日奈も図太くなったよな……」

「べ、別に太ってないよ!?」

「それ、分かっててわざと言ってるよな?」

「ふふっ」

 

 そんな二人に声をかけてくる者がいた。

 

「はい、そこの二人、校門でいちゃいちゃするのはやめなさい、逮捕するわよ」

「………理事長、何故婦警っぽいコスプレを?」

「うわ、理事長、凄く似合ってますね!」

 

 そこには何故か婦警の格好をした理事長が立っており、

理事長はおもちゃの銃を八幡に突きつけながら言った。

 

「コスプレとか言うんじゃありません、明日奈ちゃんを見習って素直に褒めなさい」

「…………年を考えろって言ってるんです」

「シャーラップ!これは今度やる事になった一日署長の服装よ!

つまりこれは仕事の上での戦闘服、つまりは正装よ!」

 

 その予想外の言葉に八幡は驚いた。

 

「えっ、理事長、一日署長をやるんですか?」

「ええ、本業の絡みでちょっとね」

「芸能人でもないのに何でそんな事を……」

「それがねぇ、この前週刊誌で、私の事が報道されちゃったのよ、

美人すぎる建設会社社長ってね、しかも陽乃とセットでなの。

まったく今頃気付くなんて周回遅れもいいところよね、

ぷんぷん、八幡君もそう思うでしょう?」

 

 そんな子供っぽい事を言う理事長に対し、八幡は思わず本音が出そうになった。

 

「ぷんぷんって所がオバ……あ、いや、ええ、本当に気付くのが遅すぎですね。

というか、もしかして姉さんも一日署長を?」

「いいえ、これは私と陽乃による、血で血を洗う勝負の結果なのよ。

ああもう、何故私はあそこでチョキを……」

 

 それで、ジャンケンで負けたんだなと分かった八幡は、

とりあえず理事長を持ち上げておく事にした。

これ以上おかしな絡まれ方をするのが面倒臭かったのだろう。

 

「ド、ドンマイです理事長、でもあれです、その格好、とても素敵ですよ」

「でも理事長、本当に美人婦警って感じで凄く格好いいですよ」

「でしょう?ただこの制服、胸のあたりがちょっときついのよね、

八幡君もそう思うでしょう?」

「………何故俺にその質問をしたんですかね」

「だってあなた、女の子をチラッと見ただけで、そのスリーサイズが分かるのよね?」

「何だよその風評被害は!おかしな噂を広めるのはやめろ!」

「ふふっ、で、ここで何をしているの?」

 

 どうやら理事長は、二人がここに立っているのを見て、

暇つぶしに着替えて降りてきただけらしい。

 

「ああ、今から明日奈が友達と遊びに行くんで、キットを待ってるんですよ。

俺はそれに便乗してソレイユ本社に顔を出そうと思って」

「あらそうなの、明日奈ちゃん、今日は八幡君の悪口で盛り上がるのね」

「はいっ!」

「はいっ、て、おい明日奈……」

 

 明日奈が笑顔でそう答えた為、八幡は心底情けなさそうな顔をした。

 

「も、もちろん冗談だよ?」

「いや、分かってるんだが……」

「もう、ほら泣かないの、よしよし」

「そうよ、泣かないの、泣くならこの私の胸の中で泣きなさいな」

「いや、泣いてないからな、お、キットが来たみたいだ、

それじゃあ理事長、一日署長、頑張って下さいね」

「ええ、それじゃあ明日奈ちゃん、気をつけてね」

「はい、行ってきます!」

「それじゃあ理事長、またです」

 

 そしてキットに乗り込んだ後、八幡は思わずこう愚痴った。

 

「まったくあの人は、相変わらずフリーダムだよな」

「あの格好を見ても、他の生徒がまったく反応しないってのも凄いよね」

「もう慣れっこだからな、まあでも、裏を返せば慕われてるって事なんだろうな」

「うん、そうだね!あっ、優里奈ちゃんだ、お~い!」

 

 明日奈はソレイユの前で待っていた優里奈に車の中から手を振った。

そしてキットから降りた八幡は、優里奈にその席を譲った。

 

「さて、それじゃあ二人とも、気をつけてな」

「うん、行ってくるね!」

「八幡さん、行ってきますね」

「キット、今日は頼むな」

『はい、お任せ下さい、八幡』

 

 こうして二人はキットの運転で詩乃の学校へと向かった。

 

「優里奈ちゃん、今日はいきなりごめんね」

「いえ、私こそ、誘って下さってありがとうございます」

「迷惑じゃなかった?」

「そんな事思った事もありませんよ!」

「それならいいんだけど」

 

 そう言いながら明日奈は優里奈の格好を見た。

まだ暑いが優里奈はラフな格好はしておらず、

薄手ではあるがジャケットをしっかり着用しており、その胸部はいつもより控え目に見えた。

 

「優里奈ちゃん、その格好、暑くない?」

「いいえ、暑さに強いのもありますけど、特には」

「そっか、もしかして、八幡君に何か言われた?」

「どうしてですか?」

「ううん、その、ほら、胸がちょっと……」

「ああ!」

 

 優里奈はその言葉に微笑みながらこう答えた。

 

「それは常に気にしてますよ、外出する時はいつもこんな感じです」

「あ、そうなんだ、でもたまにはもっとラフな格好とかしたくない?」

「それは八幡さんの前だけでいいと思って。でもそれって明日奈さんも一緒ですよね?」

「あ、バレた?」

「はい、皆さんの家での格好がどういう感じか、私はよく知ってますからね」

「まあそうだよね、八幡君って意外とそういうところ、気にするよね」

「それでいて、家じゃ何も言わないんですよね」

「独占欲が意外と強いっていうか」

「でも明日奈さんも、そういうの、嫌いじゃないですよね?」

「優里奈ちゃんもだよね?」

「ふふっ」

「あはっ」

 

 こんな感じで二人は和やかに会話しながら詩乃の学校へと到着した。

そこには既に人だかりが出来ており、ABCの三人娘が必死で詩乃のガードをしていた。

二人はそれを見て、何事かと目を剥いた。

 

「し、シノのん、どうしたの?」

「凄い人ですね……」

「た、助かった!二人とも、早くキットの外に出て!」

「えっ?」

「どうしたんですか?」

 

 そして二人は言われた通りキットの外に出た。

それにより、その場は一瞬ガッカリしたような雰囲気となったが、

直後に周りにいた男子生徒達が色めきたった。

 

「シノのん、これってどうなってるの?」

「私がここで待ってるのを見て、

八幡が久しぶりに迎えに来るんじゃないかって思ったらしいの」

「ああ~!」

「それでこの人だかりですか……」

 

 二人はかつてここで起こった八幡絡みの騒ぎを知っていた為、納得したようにそう言った。

 

「シノのん、凄い人気だね」

「これは八幡の人気なんだけどね……」

「八幡さんは本当に、どれだけやりすぎたんですかね」

 

 そんな三人を守るように、椎奈が周りを囲む生徒達にこう叫んだ。

 

「ほら、今日は八幡さんは来ないんだってば!

この二人は八幡さんの大事な人なんだから、変な事をしたら八幡さんに睨まれるよ!」

 

 そう言いながら三人は、早く行くように詩乃にゼスチャーをした。

 

「映子、美衣、椎奈、ありがとうね!」

「三人とも、またね!」

「いいっていいって」

「気をつけてね!」

「行ってらっしゃい!」

 

 こうして明日奈と優里奈と詩乃は、逃げ出すように詩乃の学校を離れ、

詩乃は深いため息をついた。

 

「はぁ………やっと楽になれたわ」

「大変だったねぇ」

「うん、本当に大変だった……」

「今度あの三人にお礼を言わないとね」

「実は毎日言ってるんだけどね」

「そうなんですか!まったく八幡さんにはもうちょっと自重して欲しいですよね」

 

 三人は笑いながら、理央の学校に着くまで女子トークを繰り広げた。

 

「そういえばシノのん、着替えは持ってきた?」

「うん、理央を拾ったらどこかで一緒に着替えるつもり」

「キット、あとどのくらいで着く?」

『あと五分ほどです、もうすぐ見えてきますよ』

 

 そして理央の学校に着いた三人は、校門の様子を見てあんぐりと口を開けた。

そこには詩乃の時よりは若干遠巻きにしてる感じではあったが、

人数的には詩乃の学校の時と同じくらいの人だかりが出来ていたのだった。


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