ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭
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第678話 鉱山の奥へ

「なのなっ、なのなっ」

「上機嫌だな、リナゾー」

「なっ!ハチマン、どれが何リナか分かるのか?」

「……悪い、さっき教えてもらった」

「むぅ、早く分かるようになるのな!」

「お、おう、努力するわ」

「ハチマン、私の話もちゃんと聞いてよ」

「ちゃんと聞いてるぞ、リョク」

「それならいいじゃん」

 

 リナとリョクの二人は、ハチマンの両脇をしっかりと固め、とても楽しそうにしていた。

 

「こうして見ると、ハチマン君はやっぱりお兄ちゃんなんだなってよく分かるわよね」

「ハチマン様をハチマンお兄ちゃん、

もしくはリナちゃんに合わせてにぃにと呼ぶ……私的にはアリ」

「セラフィムは相変わらずハチマンの事が大好きよね……」

「リオンほどじゃない」

「こっちに飛び火した!?」

「私は大人だからちゃんと自制している」

「あれで!?」

 

 そのセラフィムの言葉に、ユキノでさえも驚いた顔で振り返った。

 

「えっ?」

「い、いいえ、そう、自制してるのね、なるほど……」

「そう、鋼の精神力」

 

 何故かセラフィムはドヤ顔をし、他の者達は、

鋼ってそんなに柔らかかったっけともやもやした気分になった。

 

「お前ら、そろそろ到着するぞ」

 

 ハチマンはそう言って、山肌に隠れるように口を開けた、鉱山の入り口前に着地した。

 

「こんな所に鉱山があったのね」

「ユキノ以外はここは初めてだよな、敵もかなり強いし、

一応おかしなルートに入ると落下したら即死みたいな場所もあるから注意してな。

ちなみにこの中は飛べないからな」

「えっ、そんなに危険な場所なの?」

「一般用のメインルートはそこまでじゃないけどな、ただ敵が強いだけで」

「ちょっと、不安になるような事を言わないでよ」

「大丈夫大丈夫、それじゃあ行くか」

「なのな!」

「ハチマン、おんぶ」

「甘えんなリョク、自分の足で歩け」

「え~っ?別にいいじゃん」

「いいからさっさと来い」

「は~い」

 

 ハチマンとリナとリョクは、そう言って先に洞窟へと侵入していった。

 

「さて、私達も行くわよ」

「ユキノ、入り口付近って、敵は沸くの?」

「滅多に沸かないけど、メインルートを進んでる間は一応出るわよ」

「さっきから言ってる、そのメインルートって言葉が凄く怖いんだけど……」

「つまり私達は、メインじゃない道を行くって事だよね?」

「大丈夫よ、その為に私がいるのだから」

「その説明だけじゃ全然安心出来ないんだけど……」

 

 そう言いつつも、セラフィムとクリシュナとリオンは、大人しくユキノの後に続いた。

 

「ユキノ、リナちゃんとリョクちゃんって、戦闘力はそんなに無いよね?

ここって敵がかなり強そうだけど、大丈夫なの?」

「ハチマン君が守るでしょ」

「それはそうかもだけど」

「リョクさんの素材に関する知識は凄いのよ、

それにリナさんの解析スキルはちょっと特殊でね、みんな見たらきっと驚くわよ」

「鑑定スキルとかじゃなくて、解析?

それは少し興味があるわね、私にも覚えられるのかしら」

「可能でしょうけどおすすめはしないわ、そもそもあんなスキルが存在するなんて、

アルゴさんですら知らなかったくらいだし、出現条件がまったく謎なのよね」

「えっ、そうなの?」

「ええ、まあとにかく見れば分かるわ」

 

 ユキノはニコニコしながらそう言い、何かに気付いたように足を止めた。

 

「ハチマン君、ちょっと待って」

「ん、どうした?」

「これ、ここにほんの少しだけ顔を出してのって、

もしかしてアダマンタイトなんじゃないかしら?」

「ん、表ルートにあるなんて珍しいな、どれ……」

 

 ハチマンはそう言って、ユキノが指差す先をじっと見つめた。

 

「お前これ、よく見つけたな、ほぼ完全に埋まってるじゃないかよ」

「鉱山の中だと、アイテム名が表示されないのが難点よね」

「だな、とりあえず掘ってみるわ」

 

 ハチマンはそう言ってピッケルを取り出し、その岩を掘り出して、リョクに差し出した。

 

「リョク、どうだ?」

「多分そうだと思うけど、でもどこか違和感があるじゃん」

「そうか……それじゃあリナ、いつものを頼むわ」

「うん、リナちゃんに任せてなのな!」

 

 そしてリナは、その岩を手に取ると、いきなり口に運んだ。

 

「ひょいパクっと」

「えええええええええ!?」

「リ、リナちゃんそれ、食べられるの?」

「お腹を壊しちゃう!」

「いつ見ても凄い光景よね……」

「俺達も慣れるまでにちょっと時間がかかったからな」

「どういう事?」

「まあ見てれば分かる」

 

 そしてリナは、うんうんと頷きながら、驚いた顔をしている三人にこう告げた。

 

「これは普通のアダマンタイトよりも強度が低くてその分比重が軽いな、

加工するのに必要なスキルの数値も多少低いみたいなのな」

「という事はそれ、軽アダマンタイトだね、幸先いいじゃんね」

 

 リナがそう分析し、その結果を元に、リョクがそう結論付けた。

 

「もしかして今のが分析スキル……?」

「そうだ、リナは食べた物の特徴を言い当てる事が出来る、

そしてリョクは、ALOの素材についてはほぼ網羅している」

「えっへん!」

「まあこれくらい普通じゃんね」

「「「おお」」」

 

 方法はともかく、その見事なコンビプレーにクリシュナとセラフィムとリオンは感心した。

それと同時に、クリシュナがあっと呟き、リナにこう尋ねた。

 

「あれ、でもそうしたら、素材そのものは手に入らないんじゃ……

リナちゃんが食べちゃった訳だし」

「問題ないのな、ここにあるのな」

 

 そう言ってリナは、先ほど食べた物と寸分違わぬ軽アダマンタイトの塊を、

スカートの中からひょいっと取り出してクリシュナに手渡した。

 

「えっ?」

「い、今何をしたの?」

「食べた物を取り出したのな」

「ど、どこから!?」

「それは乙女の秘密なのな」

「す、凄く気になる……」

「考えても無駄よ、そういう物なんだと思うしかないわ」

 

 ユキノやセラフィムはこういった事にさほど拘ったりはしないのだが、

クリシュナやリオンのように、科学を生業としてる者からすると、

どうしても何故そうなるのかが気になって仕方がないようだ。

 

「あっ、ハチマン、奥から何かが近付いてきてるのが見えるじゃん」

「敵襲か?」

「多分そう、この方向」

 

 そう言ってリョクは、暗闇の奥を指差した。

 

「確かに気配があるな、しかしいつも思うが、リョクは本当に目がいいよな」

「いいから早くやっちゃってよ、私達はユキノの後ろに隠れてるから」

「おう、任せろ、行くぞマックス」

「はい、ハチマン様!」

 

 そしてクリシュナが即座に二人に支援魔法をかけ、

リオンはロジカルウィッチスピアを展開した。

 

「目覚めよ、我が娘よ!」

 

 それを見たリナの目が輝いた。

 

「そ、それは何なのな?」

「これはロジカルウィッチスピアっていう武器だよ」

「ロジカルウィッチスピア……じゅるり」

「じゅるり!?じゅるりって何!?」

「……………それ、食べていい?」

「だ、駄目ぇぇぇ!」

 

 リオンはそう言ってロジカルウィッチスピアを胸に抱えた。パイスラ再びである。

それを見たユキノは片手でリナの頭を撫でながら、笑顔でこう言った。

 

「リナちゃん、食べるならこの子とあの子の胸を食べましょうね」

「ひ、ひいっ」

「それって美味しいのな?」

「どうかしら、もいでみれば分かるかもしれないわね」

「それじゃあもぐのな!」

「もぎましょうか」

「ハ、ハチマン!何とかして!」

 

 だがリオンの頼みの綱のハチマンは、一人で敵を殲滅していた為忙しそうにしていた。

同時に前に出たセラフィムは、どうやらユキノの言葉が聞こえたのだろう、

胸を押さえてこちらを警戒していた。

 

「あらあら、二人もまだまだね」

「おいこらユキノ、お前は戦闘中に余計な事を言うんじゃねえ」

 

 そこに戦闘を終えたハチマンが戻ってきて、ユキノに苦情を言った。

 

「このくらいで戦闘中に心を乱すようでは困るのだけれど、

確かに今のはやりすぎだったわね」

「まあお前が言いたい事は分かるけどな、セラフィムもリオンも、

ユキノが本気でそんな事を言う訳ないだろ、いくらなんでもびびりすぎだぞ」

「そ、そうですよね、いくらユキノでもそんな……」

「ご、ごめんなさい、冗談を真にうけてしまって……」

「クリシュナみたいにどんな時でも戦闘中は、心を乱さずそっちに集中するんだぞ」

「ふふん、さすがは私といったところね」

「お前も調子に乗るな、まあそういうところは凄いと思うけどな」

 

 その会話の間、ユキノはニコニコしているだけで何も言わなかったが、

セラフィムとリオンはずっとユキノからのプレッシャーを感じ、冷や汗が止まらなかった。

その瞬間に大変珍しい事に、ハチマンがユキノの頭に拳骨を落とした。

 

「ちょっとハチマン君、いきなり何をするの?」

「やっぱりお前が悪い、お前の価値はそういう所には無いんだから、

いい加減にその事を理解しろ」

「確かに今のはちょっと感情が混じりすぎていたわね、本当にごめんなさい」

 

 ハチマンは、『言いたい事は分かるけどな』と前置きしたように、

ユキノが、戦闘中に心を乱さないようにと二人を鍛えようとしたと認識していたが、

さすがに戦闘後のユキノの状態を見て、鍛えるというには私情が入りすぎていると感じ、

ここで嗜めておかないとと思ったようだ。

それに対してユキノが素直に謝った事で、ハチマンはそれ以上は何も言わなかった。

 

「さて、その事はもういいとして、もうすぐ出番だから頼むぞユキノ」

「そういえばそろそろね、分かったわ、任せて頂戴」

 

 ハチマンとユキノはそう初見組には訳が分からない会話を交わし、一行は再び歩き出した。

その道中でリナが、ハチマンにこう話しかけてきた。

 

「それにしてもハチマンは相変わらず強いのな」

「おう、俺は強いぞ」

「もしアカムシとの戦いの時にハチマンがいてくれたら、きっと……」

「前もそんな事を言ってた気がするが、アカムシって何だ?」

「ううん、何でもないのな、今が幸せだから問題ないのな」

「ふ~ん、まあリナやリョクや他のみんなが幸せだって言うならそれでいい」

「リナは色々な物が食べられて嬉しいのな」

「私はこの広い世界の事をもっと知りたいじゃん」

「そうか、まあちょくちょく連れ出してやるから一緒に冒険しような」

「なのなー!」

「約束だからね」

 

 そしてそれからしばらく歩いたところで、ユキノがハチマンに声をかけた。

 

「ハチマン君、そろそろ最初の分かれ道よ」

「お、もう着いたか、今日は敵が少なくてラッキーだったな」

「この横道に入るの?」

「違う違う、あっちだあっち」

 

 確かにそこには奥へと続く横道があった。

だがハチマンが指差したのは、そこから横に反れてすぐのところにある崖であった。

 

「ハチマン様、そっちには道が無いのでは……」

「あ、一応道っぽいのがあるにはあるわね」

「うわ、何ここ……まさかここを渡れっていうの!?」

 

 そんな一行の前に姿を現したのは、下が見えない程深い崖と、

そこにかかった数センチしか幅がない岩の釣り橋という、道と呼ぶには細すぎる道であった。


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