ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第723話 因縁の一区切り

「ナユちゃん、目的地まであとどれくらい?」

「もうすぐですよフカさん」

「ふふふふふ、遂にこの時が来た、あのビービーとまともにやりあえる日が!」

 

 戦場に不在だったこの二人は、レコンとコマチと合流する為に、

ナユタの案内で待ち合わせ場所へと走っている所であった。

 

「まともにって、今までも何度か戦ってきたんですよね?」

「う~ん、それがさ~、基本ビービーとの戦いって、ガチでやりあうんじゃなくて、

相手の立てた策との戦いだったんだよね」

「そうなんですか?」

「遠くから目を射抜かれたり、溶岩に突き落とされたりってもう散々だったんだよ本当」

「そ、それは災難でしたね……」

「でもここにきてやっとまともに刃を交えられるよ、本当に嬉しい!」

「そうですね、頑張って下さいね!」

「うん!」

 

 フカ次郎は目を輝かせながらそう言い、二人は待ち合わせ場所へと到着した。

 

「この辺りです」

「さて、二人はどこかな……」

「フカさん、こっちこっち」

 

 そこに茂みの中からコマチとレコンが姿を現した。その後ろには大きな袋がある。

 

「ビービーはその中?」

「はい、依頼はバッチリです」

「よっしゃ~、やってやるぜ!」

「頑張って下さいね」

 

 そして二人は袋の口を開け、中で拘束されていたビービーを引っ張り出し、

その拘束具を全て外した。

 

「あ、あんた……フカじゃない、そう、そういう事」

「ふふん、やっとまともに戦える状態を作ってやったぜ!」

「なるほど、策じゃ勝てないからこういう手に出たと」

 

 そう負け惜しみのような事を言うビービーに、フカ次郎は得意げな顔で言った。

 

「いやいや、これも策の一環だからね、で、私とタイマンする所までが策、オーケー?」

「………確かにそう言われるとそうね、誰の策かは分からないけど」

「ん、私の策だけど?」

 

 その言葉にビービーは心底驚いたような顔をした。

 

「えっ、本当に?」

「うん、あんた達を敗走させるのはうちのリーダーに任せたけど、

その後からは全部私なんだけど、あんたの逃げ足が想定より早くて、

まさか逃げられちゃうんじゃないかって本当にびびったよ」

「くっ、もう少し早ければ逃げられたって訳ね」

 

 その言葉でビービーは、十分早いと思っていた自分の判断が、

紙一重で遅かった事を知った。

 

「中々ままならないものね」

「まあそういう事ってあるよね。てな訳で、はいこれ」

 

 そう言ってフカ次郎は、ビービーに一本の片手直剣を差し出した。

 

「………これは?」

「同じ条件でやりあわないと、お互い納得いかないじゃない?だから同じのを用意したの」

「………お互いのメイン武器で普通にやりあえばいいんじゃない?」

「いいの?」

 

 その、いいの?に不穏なものを感じたビービーは、自身の武器を抜きながらこう言った。

 

「私の武器はこれだけど、参考までにフカ、あなたの武器を見せてもらえる?」

「ほええ、初めて見たけどこれは中々……

まあでもちょっとハンデが大きすぎるかなぁ、私のはこれ『ハイファ』だよ」

 

 そう言ってフカ次郎が取り出してきたのは、とんでもない威圧感を持つ片手直剣であった。

 

「ちょ、ちょっと、それは……?」

「ナタク君がこの所張り切って作ってるミラージュ・シリーズの一つだよ、

ロビンのリョクタイとかリーファのイェンホウとかと一緒で個性的な名前だよね。

まあ幹部連のマイティ・シリーズには敵わないけどね」

「そ、そう……それじゃあとりあえずこっちで決着をつけましょうか」

 

 そう言ってビービーが手にとったのは、最初にフカ次郎が差し出してきた剣であった。

 

「まあ当然そうなるよね」

「な、何の事?私はただ、条件を一緒にしようと思っただけよ」

「はいはい」

 

 この時点でフカ次郎は精神的優位に立つ事が出来た。

逆にビービーは、焦りながら内心でこう思っていた。

 

(冗談じゃないわ、あんなのとやり合えないわよ。

ミラージュ・シリーズ?あんな化け物みたいな剣を持ち出されたら、

どう考えても敵いっこないじゃない、まだこっちの方が数倍ましね)

 

 この時点で勝負あったと言うべきだろう、事実直後にやりあった二人は、

フカ次郎があっさりとビービーの剣を弾き飛ばし、

圧倒的にフカ次郎の勝利で戦いを終えた。

 

「うし、圧勝!」

「ちょ、ちょっと、あんたこんなに強かったっけ?」

「え?あれ、いやどうだろう、自分じゃ分からないんだけど、

入団の時に何度も何度もキリト君やアスナやリーダーとやりあったくらいで、

その後は普通に仲間達と一緒に並んで戦うくらいしかしてないはずなんだけどなぁ」

「あの化け物達と一緒にね……」

 

 ビービーはそれで、フカ次郎の実力が上がった理由を悟った。

 

(何なのよもう、本当にヴァルハラって嫌なギルドよね……)

 

「私の負けよ、あなたの好きにすればいいわ」

 

 ビービーは直後にそう言い、フカ次郎はきょとんとした。

 

「え?別に何もしないけど?」

「……敗者を好きにするのは勝者の権利だと思うけど」

「それじゃあおっぱいをもませろ!」

「そういうの、冗談でも本当にやめてよね!」

「う~ん、別に冗談じゃないんだけどなぁ、それが駄目ならやっぱ何も無いかなぁ、

リーダーにも、苦手意識を克服してこいって言われただけだしなぁ」

「苦手意識、ね」

 

 それでハチマンの狙いを悟ったビービーは、観念したように地面に大の字に寝転んだ。

 

「はぁ、まったく敵わないなぁ……」

「あっ、それ、気持ち良さそう、私も私も!」

 

 そう言ってフカ次郎もその横に寝転んだ。

 

「で、そもそもこの戦いの発端って何なの?

聞いてた話だと、どう考えてもヴァルハラには結びつかないんだけど、

何であんた達がメインの敵みたいになってるの?」

「えっ?知らなかったの?」

「単純にお金目当てと、ちょっとの正義感で受けただけだからね」

「あ、それは私が説明しますね」

 

 そこでナユタが一歩歩み出てそう言った。

ちなみにレコンとコマチはいつの間にかいなくなっており、

どうやら本陣へと帰還したのだと思われる。

 

「あ、うん、お願い」

「えっとですね……」

 

 そしてナユタから話の一部始終を聞いたビービーは、

珍しく感情を露にし、憤慨したようにこう言った。

 

「何よその女の敵共は」

「はぁ、まあハチマンさんもちょっとやりすぎたって反省してましたけどね」

「同じ女として許せない奴らね、まあ気持ちは分かるけど」

 

 そう言ってビービーはナユタの胸を、もにゅっっと揉んだ。

 

「きゃっ」

「おいビービー、自分の胸は揉ませないくせに他人の胸は揉むのか!」

「ええそうよ、悪い?」

「悪くないけどずるい!おいこらビービー、私にもその素敵なおっぱいを揉ませろ」

「フカさん、許可は私からとって下さい!」

 

 そんなナユタの抗議もなんのその、

直後にフカ次郎はもう片方のナユタの胸を揉み、その後にこう言った。

 

「私も揉んでもいい?」

「じ、事前に許可をとって下さいよ!」

 

 そう言いながらもナユタは、二人のやりたいようにさせていた。

さすがに当事者として、この戦いに関しては思うところが多いのだろう、

迷惑をかけているという自覚もあり、ナユタは甘んじて二人の手を受け入れた。

もっとも相手が男だったら、当然そんな事をさせるはずもない。

 

「ふふん、観念したようだねナユたん」

「はぁ、まあそれでお二人の気が済むならまあ、ちょっとくらいいいかなって」

 

 そして先にナユタの胸を揉んでいたビービーが、驚愕した表情で呟いた。 

 

「こ、これは確かに男を狂わせるかもしれないわね」

「私もあんたもある方だとは思うけど、ナユちゃんにはちょっと敵わないよね、

しかもナユちゃんって、リアルでもまったく同じ体型なんだよ」

「何ですって!?」

 

 ビービーは信じられないという風にナユタの顔を見て、

ナユタは恥ずかしそうに顔を伏せた。

 

「す、すみません、生体スキャン機能をオンにしたまま作ったキャラなので……」

「あ、順番が逆なのね、なるほどそういう事なんだ」

「で、ビービーはこの後どうすんの?私達はそろそろリーダーの所に戻るけど」

「そうね、心情的には今日だけでもそっちに寝返りたいところだけど、

さすがにこのままそっちの味方をするのはまずいでしょうし、

この借りの代償として、今後一度だけ、あんた個人に味方してあげる事にする」

「私個人に?」

「ええ、あんたが危ない時、一度だけ助けてあげるわ、それでチャラでいい?」

「オッケーオッケー、そういうの嫌いじゃないぜ!」

 

 フカ次郎は闇風の真似をしながらそう言い、ビービーはそのまま立ち上がった。

 

「それじゃあ行くわね、あ、でもナユタさん、だったっけ、

あなたに敵対するような事は今後も絶対にしないから、まあ色々と頑張ってね」

「い、いいんですか?ありがとうございます!」

「別にいいのよ、まあ直接やりあっている最中にあなたがヴァルハラの味方をする時は、

必ずしもそうは言えないけど、それ以外の時には、ね」

「はい、それは当然です!」

「それじゃあフカ、私も鍛えなおしておくから今度は負けないわよ」

「おう、リベンジを待ってるぜ!」

 

 そしてビービーは去っていき、二人も立ち上がった。

 

「さて、私達も戻ろっか」

「はい!」

 

 こうして完全にではないが、区切りとしての決着がついた。

そして後日、といってもかなり先だが、ビービーはこの時の約束を忠実に守った。

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