ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第725話 猫が原祝勝会

 戦いの後、安土温泉旅館にて、今回の戦いの祝勝会が行われていた。

参加したのはヴァルハラ・ウルヴズの全員とSHINCの全員、

それにおっかさんとイヴとG女連の数人、そしてサクヤとアリシャと領主軍の数人、

それにカゲムネとサラマンダー軍の数人、ダインとギンロウ、

それに忍レジェンドの幹部四人にコヨミであった。そして更には……。

 

「何で私がここに呼ばれてるのか意味が分からないんだけど」

「まあまあビービー、こういう時くらいいいじゃない」

「そもそも私は中立には戻したけど、絶対に味方じゃないんだけど」

「それじゃあ敗者を晒し者にする為にここに呼び出したって事でもいいよ?

勝者の権利って奴」

「そういう事ならまあいいわ、甘んじて受けましょう」

 

 どうやらビービーは、フカ次郎に街で捕まり、そのままノリで連れてこられたらしい。

そんなビービーに声をかける者がいた、ハチマンである。

 

「よぉビービー、久しぶりだな」

「う………」

 

 ハチマンの顔を見たビービーは、思わず後じさった。また苦い記憶が蘇ったのだろう。

 

「どうした?」

「な、何でもないわよ」

「そうか」

 

 そう言ってハチマンは、そのままビービーの隣に腰をおろした。

 

「な、何でここに座るのよ!」

「いや、真ん中にいると、色々挨拶とかが面倒でな。

だから今日の主役に席を譲ってきたわ」

 

 ハチマンはそう言いながら、沢山の仲間に囲まれているナユタに目をやった。

その横ではコヨミが嬉しそうに飛びまわっている。

 

「ああ、そういえばあの子が例のあんたの娘?」

「娘的存在ではあるが、正式にそうなった訳じゃないけどな、

あくまで俺が保護者を買って出ただけだな」

「ふ~ん、その若さでねぇ、あんた、光源氏にでもなるつもり?」

「何でそうなるんだよ、そんな事欠片も思っちゃいねえよ」

「それなら正式に娘にしちゃえばいいじゃない、

年の差一桁の親子ってのもまあありなんじゃないの」

「いや、それは昔拒否された。うちの子になるか?って聞いたら……

あ、いや、何でもない、まあとにかく嫌だそうだ」

 

 そんなハチマンの様子を見て何か思い当たったのか、

ビービーはニヤニヤしながらこう言った。

 

「ははぁ、そしたらあんた、

『それじゃあハチマンさんと結婚出来なくなっちゃうじゃないですか』

とか言われたんでしょ」

「凄いなお前、エスパーかよ!しかも芸達者かよ、今のちょっと似てたし!」

「まあ年頃の女の子ってのはそういうもんよ」

「そういうもんか」

「ええ」

 

 そのまま二人は黙りこくり、

何となく真ん中で行われている忍レジェンドの連中の芸をぼ~っと眺めた。

 

「あの忍者達、芸達者よねぇ」

「正直いい拾い物だったわ」

「水芸にジャグリング、マジックショーとか、らしいといえばらしいわね」

「まあ楽しそうでいいんじゃないか」

「ええそうね、私も楽し………」

 

 そう言いかけたビービーは、そこで言葉を止めた。

 

「どうした?」

「今日はもう帰るわ」

「用事でも思い出したか?」

「ううん、もしこのままここに長居すると、

あんた達に感情移入しちゃって今後戦えなくなるかもしれないなって思って」

「なるほど、まあ俺は平気で戦えるけどな」

「手加減してくれてもいいのよ」

「そしたら不快に思うんだろ?」

「正解、それじゃあね」

「おう、またな」

「ええ、また戦場でね」

 

 こうしてビービーはあっさりと去っていき、ハチマンはそれを黙って見送った。

 

「あれ、リーダー、ビービーは?」

「仲良くしすぎると戦いの時に困るから帰るとさ」

「ああ、確かにそれはあるかも、まあいっか、あいつは所詮敵だし」

「お前はそういうの、割り切れるんだな」

「うん、私は例えレンが相手でも戦える女だからね!」

「そしたら俺はレンの味方になるがな」

「がああああああああああん!」

 

 そう口だけで言ったフカ次郎は、そのまま平然とハチマンの隣に座った。

 

「リーダー、ありがとね」

「何がだ?」

「私、ビービーには苦手意識を持ってたんだけど、

今回の戦いに圧勝して、やっとそれが無くなったよ」

「やってみたら案外余裕だっただろ?」

「うん、余裕だった」

 

 そしてフカ次郎は、笑顔でハチマンに言った。

 

「私、強くなってるよね?」

「おう、なってるぞ」

「よし、よし」

 

 フカ次郎はそれだけ確認すると、レンで遊んでくると言って去っていった。

 

「レンと遊ぶじゃなく、レンで遊ぶ、か」

 

 ハチマンは苦笑しながらフカ次郎を見送り、

その横に、待ってましたとばかりにクックロビンが座った。

 

「ハッチマ~ン!」

「おう、それじゃあ俺はそろそろ移動するわ、まあゆっくりしてってくれ」

「ちょ、ちょっと!何で私に対しては当たりが厳しいの?」

「それは自分に聞け」

「え~?まったく心当たりが無いんだけど……」

「お前はもっと色々と自分の事を省みる癖を付けろ」

「いいから座って!」

「お前は本当に人の話を聞かないな」

 

 そう言ってハチマンは、仕方なく再び腰をおろした。

 

「で、俺に何か用か?」

「ううん、甘えに来ただけ、あとあの敵を倒した事を褒めてもらおうかなって、

それにまあ他にもちょっとね」

「お前さ、子供じゃないんだからさ」

「体は子供だもん!」

「そこで自虐ネタかよ!」

 

 だがクックロビンは珍しくそれには乗ってこず、少し思い詰めたような表情をしていた。

 

「どうした?元気が無いのか?」

「ううん、でもちょっと思うところがあってさ~」

「ああ、今言ってた他にもちょっとってやつか」

 

 クックロビンは頷き、じっとハチマンの目を見つめながら言った。

 

「私、もしかしてエムに負担をかけすぎてる?」

「そう思うならもう一人くらい人を雇え、さすがに一人じゃきついだろう」

「だよね……」

 

 この場にエムがいない事を、クックロビンも自分なりに気にしていたらしい。

確かに十狼の中で、エムだけがここにいない。

 

「でも中々いい人がさぁ……」

「確かにお前のノリに付いて行ける奴なんて中々いないよな、

倉さんに頼んで誰か紹介してもらったらどうだ?」

「それが、アサギちゃんがブレイクしそうだから、あそこも今人手が足りないみたいなのよ」

「ああ、確かに最近露出が増えたよな、今日はよく来てくれたもんだ」

「だよね、CMとか凄いよね」

「確かに毎日忙しそうだなぁ……となると新人か……ん、新人?

そうかそうか、あの三人の中でお前と合いそうなのは……」

 

 ハチマンはそれで何かに気付いたのか、じっとイロハの方を見つめた。

その視線に気付いたのか、イロハがとてとてっとこちらに走ってきた。

 

「何ですか先輩、そんなに私を舐めるように見つめちゃってもしかして欲求不満ですか?

さすがの私もここでってのは嫌なんで、

高級ホテルを予約してから改めて今日中に連絡して下さいごめんなさい」

「あ~はいはい、お前が大人になったのは分かったからとりあえず俺の話を聞け」

 

 イロハはそのまま大人しくハチマンの隣に座り、そんなイロハにハチマンは言った。

 

「なぁイロハ、お前、こいつの事務所にしばらく出向するか?」

「えっ、そ、それはどういう……」

「あくまで倉さんと相談してからになるが、こいつのところがかなりの人手不足らしくてな、

新しく人を雇うまでの間、勉強だと思って、

ちょっとこいつの芸能事務所の手伝いをしてみないかなと」

「な、なるほど……う~ん、学校の方は多分もう大丈夫だから、可能ではありますね……」

 

 そんな少し迷うそぶりを見せたイロハに、クックロビンはニコニコしながらこう言った。

 

「ちなみに来年全国ツアーがあるよ!」

「やります、やらせて下さい!」

「そうか、それじゃあ全国のお土産宜しくな」

「はい、各地の風景をバックにした私のセクシーショットと一緒にいっぱい送りますね」

「セクシー?誰が?」

 

 ハチマンは顔色一つ変えずにそう返したのだが、当然いろははマイペースさを崩さない。

 

「もう、先輩ったら本当は嬉しい癖に!」

「ああ、はいはい、分かったからせめてデータにしてくれ」

「了解です!」

 

 こうしてイロハの出向が決定し、

本人の知らないところでエムの仕事の負担が多少は軽くなった。

そしてクックロビンとイロハは仲良く去っていき、

次にキリトとアスナがハチマンの隣に腰かけた。。

 

「おう、二人ともお疲れ」

「いやぁ、今日は沢山暴れられたな」

「私もこういうのは久しぶりだったなぁ」

「まあそうだな、俺も久しぶりだった、しかし何か忘れてる気がするんだよなぁ………

う~ん、何だったかなぁ……」

 

 そんなハチマンの様子を見て、キリトとアスナはうんうんと頷いた。

 

「あるあるだな」

「絶対に知ってるはずなのに思い出せない事ってあるよね」

「いつもはすぐ思い出せるのにな」

「そうそう、喉まで出かかってるのが凄く気になるんだよね」

「で、ちょっと後に思い出すんだよな」

 

 三人はそんな日常生活あるある話をした後、

今日の戦闘について、反省すべき点は何かないかと話し始めた。

ここにはソレイユとユキノも呼ばれ、五人はう~んと唸りながら今日の戦闘を振り返り、

まあ特に問題ないだろうという事であっさり話が終わり、次に武器の話をし始めた。

 

「姉さん、ユキノ、『ジ・エンドレス』と『カイゼリン』はどうだった?」

「一言じゃ言えないんだけど、まだ装備に慣れていない事を考えても破格の性能ね、

MP効率がいいから魔力の通りがいいというか」

「MPが余って仕方なかったわ、ヒールのスキル回しを考え直す必要があるわね、

そうすればその分攻撃に回せると思うし」

 

 どうやら二人には概ね好評のようである。

 

「キリトとアスナはどうだ?」

「慣れるまでにかなり時間がかかるかもしれないな」

「だよなぁ……俺も使いこなせてるとはまだ言えないわ」

「ちょっと時間がかかるね」

 

(となると『セントリー』と『スイレー』も、

早めにあいつらの手に渡るようにしないとか……)

 

 ハチマンは誰にも聞こえないような小さな声でぼそりとそう言った。

 

「ピーキーな武器だものね、人を選ぶというか」

「まあ魔剣クラスだからな、例えば俺達がユージーンのグラムを使っても、

直ぐには使いこなせないように……」

 

 そこで三人は、ハッとした顔をして同時に叫んだ。

 

「「「それだ!」」」

「どれかしら?」

「いや、さっき何か忘れてるなって三人で話をしてたんだよ、

今の会話で思い出したわ、ユージーンがいないんだが誰か知らないか?」

 

 最後の言葉は大きな声で全員に聞こえるように言ったハチマンであったが、

誰からも返事は無い。

 

「カゲムネ、どうだ?」

「おかしいですね、もうとっくに到着しててもおかしくないはずなんですが……」

「まさかとは思うが、落ち武者狩りにやられたりしてないよな?」

「それなら一瞬で街に戻ってきてると思います」

「だよな……って事は、まさか迷子とかじゃないよな?」

「あ~………確かに将軍は、ちょっと迷子癖がありますけど……」

「まあまさかだよな」

「ですね、まさかですね」

「「「「「「あははははははは」」」」」」

 

 全員がその会話に笑った瞬間に、店の入り口からユージーンが姿を現した。

 

「おいキリト、ひどいではないか!この場所を拠点にしているなら先に教えておけよ!

おかげですっかり迷子になってしまった。

偶然G女連とやらのメンバーと会わなかったらここまでたどり着けなかったぞ!」

「あ………」

 

 ユージーンにそう言われたキリトは気まずそうに目を背けた。

まだメッセージ機能は使えるようになっておらず、

ヤオヨロズの複雑さを考えると、どれだけユージーンが難儀したか想像出来たからだ。

 

「わ、悪い、迷子になってるんじゃないかと思って笑っちまった、悪かった……」

「い、いや、確かに迷子にはなっていたからそれは別に構わん。

まあそれでも悪いと思うなら、ちょっと俺と立ち会え、今日は戦い足りなくて消化不良でな」

「おう、それくらいなら全然いいぜ」

 

 そう言って二人は仲良く外へ出ていった。

 

「相変わらずの戦闘狂どもが……」

「まあそれがあの二人だから仕方ないよ」

「とにかく勝てたんだし良かったじゃない」

「だな、みんな、今日は存分に楽しんでいってくれ!」

 

 こうしてナユタの件から始まった今回の戦争は終わり、

忍レジェンドが友好ギルドとなった事で、ナユタの安全も完全に確保される事となった。

そしてハチマン達は、アスカ・エンパイア中にその名を轟かせる事になった。




多分残り三話くらいでこの章は終わりとなる予定です!
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