「お義姉ちゃん、大丈夫?」
「うん、ごめんね小町ちゃん、心配をかけちゃったね」
明日奈の事が心配で、八幡が帰宅して直ぐに回れ右をさせ、
明日奈の迎えに出させた小町は、明日奈が元気な姿を見せてくれた為、心から安堵した。
「そっかぁ、それなら良かったよ」
「実はここに来る途中でかおりと義輝君に会って、
話をしてたら不調の原因が何となく分かったんだよね」
「そうなんだ、さっすがかおりさん!で、義輝って誰だっけ?」
そう首を傾げる小町に、八幡がこう声をかけた。
「材木座だ小町」
「あ~、材木座材木座……って、ああ!あの中二病の人?」
「言っておくが、うちの社の人間はほとんどが中二病の因子を持ってるからな、
小町も今のうちに慣れておいた方がいいぞ。ついでにあいつはお前の上司になるからな」
「あ、そっか、確かにそうかもね……って、かおりさんは中二病じゃないよね!?」
その言葉に八幡と明日奈は顔を見合わせた。
「かおりは中二病とは言えないと思うが、
酔うとカラオケでプリキュアの曲を熱唱するぞ、な?明日奈」
「うん、これがまた上手なんだよね……」
「そ、そうなんだ、えっと、まさかフリつきとか?」
「当たり前だろ」
「あ、当たり前なんだ……」
小町は、自分も一つくらいそれ系のアピールが出来るようになっておくべきだろうかと、
若干の焦りを感じた。
(小町も暇を見て色々勉強しておかなくちゃ……)
後日たまたまかおりと遭遇し、その話をした小町は、
アニメが原作のゲームも数多くあるのだからという理由で、
勉強の為と称してかおりと一緒に八幡のマンションで定期的にアニメ鑑賞会を開き、
仕事中に話を振られた場合、その内容が大体理解出来る程度にはアニメに詳しくなる。
「それでね、結局私が幸せすぎるのが理由なんじゃないかって話になってね」
「え、何それ……」
さすがの小町も理解不能だったらしく、どういう意味なのかうんうん唸って考えだした。
そんな小町に明日奈は電車の中でも会話の内容を教え、小町もそれを聞いて納得したが、
小町の口から出てきたのは納得とは真逆の言葉であった。
「お義姉ちゃん、そういうのは駄目!絶対駄目!」
「ええっ!?こ、小町ちゃんはお義姉ちゃんが嫌いなの!?」
「違うよお義姉ちゃん、小町はお義姉ちゃんの世間知らずなところを心配してるんだよ、
いい?この世の中にはね、リア充死ね爆発しろ!
とか思ってる性格の捻じ曲がった人が沢山いるんだよ。
だから不特定多数の人が多いところでそういう話は絶対にしちゃ駄目!
いい?お義姉ちゃんに何かあったら小町だって悲しくて死んじゃうんだからね?」
確かに材木座がガードしていなかったら、
何だこいつと思ってちょっかいをかけてくる馬鹿もあるいはいたかもしれない。
その小町の言葉に明日奈は真面目に反省した。
「う、うぅ……ごめんなさい」
ちなみにハチマンは、小町の言葉による流れ弾に被弾し、苦しそうに心臓を押さえていた。
「性格が捻じ曲がった……確かに昔の俺はそうだったかもしれないな……」
そんな八幡に鋭い視線を向けながら、小町は八幡にもお説教をした。
「まったくもう、本当はお兄ちゃんが率先して、
お義姉ちゃんのこういう所に注意していないといけないんだからね!」
「返す言葉もない……」
「というかお義姉ちゃんを失ったら、
お兄ちゃんのところにお嫁に来てくれる人なんて、もう二度と…………………」
現れないかもしれないんだからね!と小町は言うつもりであったが、
その瞬間に陽乃や雪乃、結衣に優美子にいろは、他多数の女性の顔が浮かび、
何となくむかついた小町はいきなり八幡のボディにパンチを入れた。
「ぐほっ………こ、小町ちゃん、いきなり何をするの?」
不意打ちをくらい、思わずそんな口調になってしまった八幡である。
「これはお兄ちゃんに対する罰なのです!」
「そ、そうか、罰なら仕方ないな……」
それで納得してしまう八幡も八幡である。
「まあ後ろ向きな話はここまでにして、とりあえずご飯を作ろっか、お義姉ちゃん!」
さすがの小町も今の八幡に対する攻撃を気まずく思ったのか、
話題を変えるように明るい表情を作ってそう言った。
「う、うん、作ろう!」
「お、俺も手伝うぞ!」
「お兄ちゃんは邪魔だからそこに座ってテレビでも見てて」
「あっ、はい……」
八幡はそう言われてすごすごとソファーに座り、
明日奈と小町が仲良さそうに料理をする姿を指をくわえて見ている事しか出来なかった。
そして料理が完成し、三人は仲良く夕食をとる事になった、その席上での事である。
「で、明日奈はこれからどうするつもりなんだ?」
「う~ん、そこなんだよねぇ、強力な敵になりそうなプレイヤーに心当たりはないし、
ライバルは結局身内になっちゃうんだろうけど、お互い気を遣っちゃいそうだし、
何か私が目標に出来るような事って、心当たりとかある?」
「ふむ……」
八幡は箸を休めて考え込み、直ぐに昨日の夜のアナウンスの事を思い出した。
「そういえば確か昨日の夜のメンテで、
オリジナル・ソードスキルが実装されたんじゃなかったか?」
「あ、そういえばその事が今日も話題にのぼってた!」
「かなり難易度が高いって噂だから、
それで強力なソードスキルを開発してみるってのはどうだ?
明日奈は凝り性な所があるから案外はまるんじゃないかと思うぞ」
「なるほど……色々試行錯誤してたら、おかしな悩みなんか忘れちゃいそうだね」
「ついでにSAOのソードスキルも実装されているはずだから、
復習がてらそれも試してみるといい、
今日はキリトはソードスキルを何も使ってなかったのか?」
明日奈は今日の戦いの事を思い出し、
キリトが一度もそれらしき技を見せなかった事に改めて気が付いた。
「あれ、そういえば使ってなかったかも」
「あいつめ、さすがに大技をいきなり使うのは遠慮したみたいだな」
「さすがにスターバースト・ストリームとかを使われたら勝負にならないしね」
「他の奴らは?」
「誰も使ってなかったかも」
「そうか、まあそのうちみんな使いだすだろうな。
………ああ、そうだ小町、食事の後に明日奈と一緒にALOに行って、
お義姉ちゃんの格好いい所を見せてもらうといい」
その八幡の勧めに小町は目を輝かせた。
「お義姉ちゃん、小町、凄く見てみたい!」
「それじゃあそうしよっか、八幡君はどうする?」
「俺はALOでちと野暮用があるんでな、後で合流するわ」
「ん、分かった、それじゃあヴァルハラ・ガーデンの練習場で待ってるね」
「おう、悪いな」
そして食事が終わり、明日奈と小町は仲良くお風呂に入った後、
ALOの世界へと旅立っていった。ちなみに八幡は、食後直ぐにログイン済である。
「それじゃあ基本の技から見せるね」
「うん、お願い!」
「うわぁ、今日インして良かった」
「アスナのソードスキルを見るのはいつ以来だろうかな」
もういい時間の為、今ヴァルハラ・ガーデンにいるのはアスナとコマチの他は、
アサギとキズメルだけであった。
というかアサギがいたのは二人にとって、完璧に予想外であった。
何故なら今はまだ映画の撮影の真っ最中だからである。
到着してすぐにアサギを見付けた二人はとても驚いたものだ。
「あれ、アサギ?」
「こんな時間にインしてたんだ?」
「うん、今日の昼間は撮影で忙しいから入れなかったんだけど、
この時間なら入れるから、昼に見れなかった総当り戦の動画を少しだけ見たいなって思って、
キズメルと二人でお茶をしながら動画を鑑賞してたんだ」
「うむ、楽しい時間だった」
「ああ~、そういう事かぁ」
「アサギも参加出来れば良かったのにね」
「私、防御力はともかく攻撃力に関してはまだまだだからなぁ。
でもいずれは参加してみたいかも」
「でもそれにはアサギの仕事が減らないといけないっていう」
「うぅ……それも困るのよね……」
四人はそんな会話を交わし、笑い合った。
「で、こんな時間に二人は何を?」
「あ、うん、実はね……」
アスナは自らの不調を回復させる為に、
オリジナル・ソードスキルを作ろうと思い立った事、
その準備段階として、旧SAO時代のソードスキルを完璧に思い出す為に、
今日はここでそれを小町に披露する為に二人でインした事をアサギに告げた。
「確かに今日のアスナは調子が悪そうだったわよね。
ソードスキルかぁ、興味があるなぁ、それ、私も見てもいい?」
「「もちろん!」」
二人は声を揃えてそう言い、コマチとアサギとキズメルの前で、
アスナはSAO時代のソードスキルの披露を開始した。
「先ずは基本のリニアーからね、今までもなんちゃってなら使ってたけど、
システムアシストが追加されてどうなったのかちゃんと把握しておきたいしね」
「あれ、今日の戦闘でお義姉ちゃん、それっぽい動きをしてなかった?」
「今日はリニアーを撃つぞって意識はなかったし、
フォームもあくまでなんちゃっての範囲だったから発動しなかったんじゃないかな?
まあ今試しにやってみるね」
アスナはそう言うと、昔を思い出すように体の中心に暁姫を持っていき、
溜める感覚で僅かに剣を引いた。
「「おおっ」」
その瞬間に暁姫が赤い光を放ち、アスナは捻りを加えながら暁姫を鋭く前に突き出した。
「リニアー!!!」
その瞬間に、かつての呼び名を彷彿とさせるように、
ボッ!という音と共に赤い閃光が走った。かつては白かった閃光であるが、
今は武器のせいで赤く見えるようである。
「うわぁ!」
「凄い凄い!」
「二人とも、これがアスナの『閃光』だぞ」
その言葉をコマチは知っていたが、アサギは知らなかった為にきょとんとした。
「閃光って?」
「えっとねアサギさん、お義姉ちゃんはSAO時代に、閃光のアスナって呼ばれてたんだよ、
その意味が今日コマチにもやっと分かったよ!」
「そうなんだ、凄い凄い!」
アサギは凄いを連発する事し、アスナは恥ずかしそうに頭をかいた。
「それじゃあ次、フラッシング・ペネトレイター!」
「いきなり大技かよ」
「あっ、ハチマン君!」
いきなり現れたハチマンが、アスナにそう突っ込んだ。どうやら用事は済んだようである。
「アスナ、調子はどうだ?」
「うん、凄く懐かしい!それに楽しい!」
「そうか、それなら良かった」
そう言ってハチマンは雷丸を抜き、アスナの正面に立った。
「お兄ちゃん?」
「ハチマンさん?」
コマチとアサギはそのハチマンの行動を見てまさかと思ったが、
そのまさかは次のハチマンの言葉によって直ぐに現実となった。
「アスナ、俺が敵役をやってやるから、殺すつもりで来い」
(まあ俺はアスナが弱くても一向に構わないんだが、
アスナ自身がそれは嫌みたいだし、俺に出来る事をしてやらないとな)
「え、本当に?」
「ああ、まあ俺はアスナの技なんかくらったりはしないけどな」
「ふ~ん、へぇ、そんな事を言っちゃうんだ」
アスナはそのハチマンの挑発にまんまと乗った。
もしかしたらわざと乗ったのかもしれない。
ハチマンは当然アスナを奮起させる為にそんな事を言ったのだが、
コマチとアサギはそんな二人を見て、緊張を抑えられなかった。
「あの二人が戦う所って滅多に見られないからちょっとドキドキかも」
「私は見るの、初めてだよ」
ハチマンはアスナが相手だと本気で攻撃出来ない為、
別に二人がガチでやり合う訳ではないのだが、
とにもかくにもこうしてハチマンとアスナは、訓練場で対峙する事となった。