ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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今日ちょっと資格試験があるので明日はもしかしたら投稿出来ないかもしれませんすみません!


第820話 副長の意味するもの

「とりあえずユージーンさんの蘇生をしてしまいましょうか」

 

 そう言って立ち上がったのはユキノだった。

そして長い詠唱を経て無事に復活したユージーンは、

豪快に笑いながらユウキに歩み寄った。

 

「いやぁ、言い訳のし様が無いくらいの完敗だ、お前は強いな」

「うん、ボクは強いよ!」

「あの技、凄かったな。てっきり俺がナンバーワンだと思っていたんだが」

「えへっ、今はボクがナンバーワンだね!」

「あはははは、絶剣だったか、いい二つ名だ、いずれ俺がもっと強くなった時にまたやろう」

「うん、またやろう!」

 

 ユウキとユージーンは固く握手をし、再戦を誓った。

だがこういう状況を黙って見ていられない者が一人いた、

バトルジャンキー二号ことキリトである。

 

「よし、ユウキ、次は俺とやろう」

 

 キリトは突然そう言って立ち上がった。

 

「何っ、キリト、それはずるいぞ!」

「俺はお前に勝った、ユウキもお前に勝った、それじゃあ当然次は俺の番だろ?

どうだユウキ、俺と戦ってみたくないか?」

「うん、戦ってみたい!」

 

 バトルジャンキー三号であるユウキが、その申し出を断るはずもなく、

ユージーンは悔しそうではあったが大人しく引き下がり、仲間達の方へと移動していった。

二人はそのままステージ上に移動しようとしたのだが、

そんな二人の肩を、誰かが掴んで止めた。

 

「ん、ハチマンか?こうなったら止めても無駄だぞ」

「そうだよ、ボクももうやる気になっちゃってるからね!」

「いや、俺じゃないぞ」

「「あれ?」」

 

 その言葉に振り向いた二人の前にいたのは、なんとハチマンではなくアスナであった。

 

「あれ、アスナ………?もしかしてボクを心配してくれてるの?

それなら大丈夫だよ、絶対にボクが勝ってみせるから!」

 

 そんなユウキにアスナは首を振った。

 

「今の私が勝てるとは思わないけど、でも一度戦っておかないと、

私は前に進めない気がするんだよね」

「………何の事?」

「キリト君、ユウキとは私が戦うわ」

 

 アスナはキッパリとそう宣言し、スリーピング・ナイツの一同は仰天した。

ユウキはその言葉に呆然とし、ランは目を細めて無言を貫いていた。

 

「ちょ、ちょっとアスナ、本気?」

「さすがに無茶だよ!」

「何でそんな事を………」

 

 ランとユウキ以外の者達が口々にアスナに声を掛けてきた一方で、

きょとんとしていたのはヴァルハラ組である。

 

「みんなは何を言ってるの?」

「アスナが戦うのがどうして無茶なの?」

「えっ?」

「どうしてって、だってアスナは……」

 

 その時アスナから、名状し難い何かの気配が漂ってきて、

スリーピング・ナイツの一同は慌ててそちらを向いた。

そこには一振りの剣を握ったアスナが立っており、

その姿を目にした一同は、背筋がゾクリとするのを感じた。

 

「アスナ、その剣………」

「あ、これ?私の愛剣で暁姫って言うんだよ、凄く綺麗な剣でしょ?」

「も、もしかしてアスナって剣が使えたり?」

「あ~、うん、まあそれなりにね」

「で、でもアスナはヒーラーで……」

 

 この時呆然としていたユウキが我に返り、そう呟いた。

だがそんなユウキにユキノが威厳のある声で言った。

 

「よく分からないけど、あなた達は何か考え違いをしているみたいね、

うちの副長というのは、ALOでは恐怖の代名詞なのよ?」

 

 恐怖、つまりそれは、強大な戦闘力を有しているという事に他ならない。

ユウキは尚も迷っているようだったが、そんなユウキにランが言った。

 

「ユウ、あの幻の意味がやっと分かったわね、これは運命よ」

「あっ、そっか!分かった、ボクはアスナと戦うよ!」

 

 その言葉でユウキはパッと顔を輝かせ、

ランも以前見た幻が事実だった事に満足したのかニヤリと笑った。

だがランの体も戦いたがっているのか、武者震いが止まらない。

 

「さてと、そういう事なんだけど、キリト君、いい?」

「ユウキ本人とハチマンがいいってなら俺は別に構わないぜ、

別に戦うのが今すぐじゃなきゃ駄目なんて事はないしな」

「いいよね?ハチマン君」

「アスナの好きにするといい」

 

 ハチマンは鷹揚に頷き、ユウキは当然頷いた為、

アスナとユウキが戦う事がここに決定された。

 

「さて、それじゃあ俺はどうするかな」

「それならキリトはランの相手をしてやってくれ。

どうやらこいつ、武者震いが止まらないみたいなんでな」

「別にハチマンが戦ってもいいんじゃないか?」

「やだよ、絶対こいつ、途中でセクハラとかしてくるし」

「え、それは俺も嫌なんだけど………」

「大丈夫よ、私はハチマン以外にセクハラはしないわ」

 

 ランはそう断言し、キリトはほっと胸をなでおろした。

 

「ならまあ軽く相手をしてもらおうかな」

「いいえ、やるからには本気で相手をして頂戴。

もし手加減なんかしたら、私は一生付き纏うわよ……………………ハチマンに」

 

 キリトは一瞬固まり、最後の言葉の意味を理解した瞬間に、焦ったようにわめき散らした。

 

「ハチマンにかよ!ちょっとビクッってしちゃったじゃないかよ!」

「おいキリト、絶対に手を抜くなよ、絶対だぞ」

 

 ハチマンも遅れて言葉の意味を理解したのか、焦った顔でキリトにそう念押しした。

そしてランは、申し訳なさそうな顔でキリトに謝罪した。

 

「ごめんなさい、勘違いさせてしまったわね、

お詫びに服の上から私の胸の膨らみを見て、妄想を膨らませる事を許可するわ」

「おいロビン、選手交代だ!どう考えてもこれはお前向きの相手だろ!」

 

 キリトのその叫びを聞いたクックロビンは、じっとランの顔を見た。

ランもクックロビンを見返し、一触即発かと思われたその瞬間、

ロビンはランに親指を立て、ランもそれに答えた。

どうやら変態同士、通じる物があったらしい。

 

「駄目か………」

「まあ諦めろキリト、ランもさすがに戦いが始まったらふざけたりはしないはずだ。

そんな事をしたら、三人いるランの師匠にぶっ飛ばされちまうだろうしな」

「師匠?師匠って誰だ?」

「京都のじじいと姉さんとうちの娘だな」

「え、マジかよ………じじいって前に動画で見た、アスナのところのご隠居だろ?

それにソレイユ姉さんと………ん、娘ってユイちゃんか?ユイちゃんは何の師匠なんだ?」

 

 これに対するハチマンの答えは衝撃であった。

 

「何だ知らないのか?うちのユイは全部のソードスキルのデータを知ってるから、

今やランは刀系のソードスキルは全部使えるし、

他の武器のソードスキルへの対策もバッチリっていう、まさにチート状態なんだぞ」

「え、何それずるい……」

「そんなに褒められると照れるわ」

「おいハチマン、どうしてハチマンの知り合いはこんな子ばっかりなんだよ!」

「すまん、俺も努力はしてるんだが………

とりあえずラン、キリトと戦うって事で異論はないな?」

「ええ、もちろんよ」

「それじゃあ決まりだ、みんな全力で頑張れよ」

 

 こうしてランとキリトが戦う事も決定され、

四人はデュエル・ステージの順番待ちの列に加わった。

その前に並んでいた者達は慌てて四人に場所を譲ろうとしたが、

アスナとキリトがそれを断った。

例えヴァルハラのメンバーといえども特別扱いは駄目だ、

二人はそう主張し、その者達はその言葉に納得し、順番待ちの列に戻った。

こういう細かい所がヴァルハラの名声を支えているのである。

そしてその待ち時間の間に、残された者達は仲良くお喋りしていた。

 

「兄貴、アスナってどのくらい強いの?」

「そうだなノリ、アスナは俺よりも強いって言ったら信じるか?」

「驚くけど信じるよ、だって兄貴の言う事だもん」

「そうか、まあここにいる誰よりも強い事は確かだな」

「そこまでなんだ………」

「まあノリも、いずれ相手の強さが肌で分かるようになるさ、頑張れよ」

「う、うん!」

「ちなみに不意打ち出来れば私は勝てるわよ、最初に大きいのを当てて、

あとは必中ソードスキルの引き撃ちかしら」

 

 その時横からそう言ってきたのはシノンである。

 

「確かにシノン相手だとそうかもしれないな」

「兄貴、引き撃ちって?」

「ああ、お前らの中には遠隔攻撃の使い手はいないもんな、

引き撃ちってのは下がりながら弓や銃を撃つ、例のあれだ」

「あ~、あれかあ!そっか、それじゃあシノンさんって弓使い?」

「ええそうよ、なのでここでのデュエルには参加しにくいのよね」

 

 シノンは残念そうにそう言った。やはりシノンもデュエルがしてみたいのだろう。

 

「私も不意打ちすればいけるわね、遠くから足を凍らせれば後はどうとでもなるでしょうし」

 

 続けてユキノがそう言ったが、それにはハチマンが疑問を呈した。

 

「でもアスナなら、足を切り落としてユキノに迫っていくとかやりそうじゃないか?」

「うっ………否定出来ないのが恐ろしいわね、それじゃあ腰まで氷漬けにするわ」

「ユキノさんでもそんな感じなんだ……」

「そうね、接近されたら終わりかしら、私は近接戦闘のスキルを上げていないもの」

「でも多分ユキノはどんな武器でもそれなりに使えるよな」

「まあ、リアルとは違ってここではスタミナ切れも起きないし、

それなりには可能でしょうけど、やはり命がけの近接戦闘を経験していない私では、

アスナに対抗するのは無理だと思うわ」

「ユキノがSAOにいてくれたら、俺ももっと楽が出来たと思うんだがなぁ」

「ハチマン、私は私は?」

「お前はこの前死にたがってたから駄目だ、役にたたん」

「ごめんなさい反省してますもうしません」

 

 クックロビンは慌ててハチマンに謝り、ヴァルハラ組は楽しそうに笑った。

だがスリーピング・ナイツ組は全員変な顔をしており、

それを疑問に思ったハチマンは、そちらに声をかけた。

 

「ん、お前らどうした?」

「いや、今の会話に何か違和感が………」

 

 その瞬間にステージから大歓声が上がった。どうやらユウキとアスナの出番が来たらしい。

 

「おっ、話は後だな、今はあっちの戦いに集中しよう」

「あ、うん、そうだね!」

「ユウキ、頑張れ!」

「アスナもファイト~!」

 

 真実の一端に手を掛けかけたジュンやノリ達であったが、

結局その手はそこから離れてしまったようだ。実に惜しい事である。

そしてアスナとユウキの戦いが、遂に幕を開ける事となった。

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