一応一対一になったという事もあり、八幡はサトライザーからの攻撃を警戒していたが、
そんな気配は全く無く、拍子抜けするほどあっさりとサトライザーを発見する事となった。
そうあっさりと、である。
(普通はトラップとかが仕掛けられてると思うケースなんだろうが、
相手があいつだとすると、多分そんな手段は使わないよなぁ、
残り一人なら、普通にナイフで倒せばいいやとか思ってそうだ……)
八幡はそう思いつつ、むしろ逆にアピールするように、
大きな音を立てながらサトライザーに近付いていった。
それに対応してサトライザーも立ち上がる。
その瞳は常識ではありえない八幡の行動を訝しんでいるように見えた。
そんなサトライザーを、八幡はじろじろと無遠慮に観察した。
「んんん~、やっぱり見ただけじゃ、イベントのせいで外見も違うから判断出来ないか」
「………日本語だと?君は日本人なのか?一体何の事だ?」
「要は本人確認をする必要があるなって事だ」
「君が何を言っているのかさっぱり分からないんだが」
「そのうち分かるさ、とりあえずは肉体言語で会話といこうぜ」
八幡はそう言いながらアハトXを構えた。
「その剣は………いや、まさかな」
サトライザーはそう呟くと、業物のように見えるコンバットナイフを二刀で構えた。
「こういう事でいいのかな」
「ああ、それじゃあいくぞ」
八幡はそう言って無造作にアハトXをサトライザー目掛けて振り下ろした。
サトライザーはあっさりとそれを避け、的確に八幡の心臓目掛けてナイフを突き出してくる。
その動きには一切の無駄が無く、八幡はその攻撃を辛うじて避け、
相手がやはり本物のサトライザーだと確信した。
「アメリカに戻ってきてたんだなサトライザー、まだその事を妹には連絡していないのか?」
だがサトライザーはそれをかく乱の一種だとでも思ったのか、
八幡への攻撃の手をまったく緩めない。
仕方なく八幡も応戦し、しばらく戦ったところでサトライザーが突然その動きを止めた。
「一応聞くけど、誰だい?」
「反応遅せ~よ!今は中継されちまってるから言えない、
武器を捨てるから、ちょっと近くまで行ってもいいか?」
「いいだろう、だが武装解除は必要ない」
「へぇへぇ、相変わらず自信たっぷりなこって」
八幡はそのままサトライザーに無造作に近付き、小声でこう言った。
「レヴィにはいつも助けてもらってる、たまには顔を出してやれよ」
「やはり八幡だったか、何故こんなところに?」
どうやらサトライザーは、戦闘スタイルやアハトXから、
そうではないかと薄々疑っていたようだ。
「実は今仕事でアメリカに来てるんだが、
たまたまこのイベントの事を知って主催者に挨拶に行ったらこうなった」
「なるほど、それであっさりと参加を決めるところが君らしい」
「で、偽名を使ってない自信たっぷりの奴がいたから、
本人かどうか確かめようと思ってここに来たって訳だ、
もっとももう俺達以外は誰も残っていないがな」
「ははっ、実名でやれば、わざわざ敵を探しに行く必要はないと思ったんでね」
「自分の名前を囮にしたのかよ……」
「しかしこれは幸運だった、そこなら今俺がいる場所の近くだな、
実は落ち着いたら君に連絡をとろうと思っていたところだったんだ」
サトライザーが自嘲ぎみにそう言ったのを見て、八幡は小さく首を傾げた。
「何かあったのか?」
「それを踏まえて説明がしたい、もし良かったらここに来てくれないか?」
そう言ってサトライザーが耳打ちしてきたのは、病院らしき名前であった。
「まさかお前、怪我でもしたのか?」
「ああ、まあそんなところだ、だからこちらからはちょっと出向けないんだよ」
その言葉から、サトライザーの怪我が軽いものではない事が分かる。
「分かった、この後すぐ行くわ」
「すまないね、待っている」
そう言いながら、サトライザーは不意を突くように八幡目掛けてナイフを振るい、
八幡はそのナイフをアハトライトで受けた。
「いきなりかよ!」
「でもちゃんと対応してるじゃないか」
「お前が手加減してなきゃくらってたわ!」
そう言いながら八幡はアハトレフトをサトライザーの首に突き出した。
サトライザーはその攻撃を、もう一本のナイフで弾いた。
「お、やっぱりいい武器を使ってるな」
「分かるかい?」
「ああ、このアハトXで斬れないって事は、そのナイフは宇宙船の装甲板を使ってるんだろ?
そうじゃなかったらナイフごと斬っちまったところだ」
「それはラッキーだったね、こっちのサーバーにはまだそれを作れる職人はいないんだよ」
「へぇ、そうなのか」
「それじゃあそろそろ本気でやり合うとしようか」
「だな、観客の皆さんがお待ちかねだ」
二人はそう言って距離をとり、今度は本気で構えたが、
そこでまさかの主催からの横槍が入った。突然二人に直接通信が入ったのだ。
二人は顔を見合わせて、そのまま武器を下ろした。
『ストップ、ストップ!』
「その声はジョジョか?どういうつもりだ?」
『こんな豪華なカードを、
一部の人しか見ていないこんなイベントでやっちゃうのはもったいない、
三ヶ月後に第四回BoBを日米共催で開催する予定だから、
決着はそこで付けるってのはどうだい?』
その提案に二人は苦笑した。
「商魂逞しいな、おい」
「だがまあ特に異存は無いな」
「ならそういう事にするか」
「だな」
『ありがとう、それは助かるよ!』
「それじゃあ後でな、サトライザー」
「ああ、待っている」
そこで試合は強制終了となり、観客達からは大ブーイングが巻き起こった。
だがそこでジョジョが登場し、第四回BoBの開催を告げ、
そこでこの戦闘の続きがみられるだろうとアナウンスした瞬間に、会場は大歓声に包まれた。
「この続きはCMの後で、みたいなもんか、
何度もやられるとうざいが、たまにならいいのかねぇ」
目覚めた後、八幡はぼそりとそう呟いた。
そして体を起こそうとした八幡は、妙に体が重く感じた為、
アミュスフィアを外してそちらを見た。
そこに乗っていたのは、紅潮した顔でこちらを見詰めているクルスと萌郁であった。
「………おい」
「八幡様お帰りなさい!留守の間はこうして八幡様の体をお守りしてました!」
「うんうん」
そう言ったクルスに萌郁も同意し、二人はそのまま八幡から離れようとせず、
逆に胸を押し付けてきた。
「………そろそろそこからどいて欲しいんだが」
「安全が確認されたらそうします!」
「うんうん」
二人はそう言って離れようとしない。仕方なく八幡は両手を振り上げ、
二人のお尻を思いっきり叩いた。
何故お尻かというと、たまたまそこが、ちょうど手を伸ばした先だったからである。
「きゃんっ!」
「っ………」
二人はその痛みを受けて慌てて体を起こし、それでやっと八幡は解放された。
「やれやれ、戻ったらお仕置きだな」
「そ、それは性的なお仕置きですね、分かりました、お受けします!」
「いや、俺はそんな事は一言も言ってないよ!?」
「悪い事をしたらお仕置きされるのは当然、例えそれが性的なものでも」
「萌郁まで何言っちゃってんの!?」
「大丈夫です八幡様、エルザも誘いますから秘密は守られます」
「うんうん、秘密厳守」
八幡はため息をつくと、そんな二人のお尻を再び叩いた。
「きゃっ!」
「い、痛い」
幸いこの二人はエルザのようにドMではなかった為、普通に効果があったようで、
二人はお尻を押さえながらその場に蹲った。
「ほれ、お仕置き終了だ。この後移動するからその準備を頼む」
「分かりました」
「了解」
二人はそう言われ、即座に立ち上がってそう言った。何とも切り替えの早い事である。
「で、どこに行くんですか?」
「病院なんだが、ジョジョに場所を聞くつもりだ」
丁度その時部屋がノックされ、そのジョジョが中に入ってきた。
「やぁやぁ、戦いの邪魔をしちゃってごめんね」
「いや、それは別にいい。それよりジョジョ、聞きたい事があるんだが」
八幡はそう言って、ジョジョにとある病院の名を告げ、そこまでの道順を尋ねた。
PoHについては個人情報でもあるし、最初から聞くような事はしなかった。
どうせ登録も偽名で行っているだろうし、どこからアクセスしているかも、
巧妙にカモフラージュされているだろうと思ったからである。
むしろ八幡は、PoHが日本にいないらしい事が分かった為、ひと安心していた。
「へぇ、ここかぁ」
ジョジョはその病院の名を聞いて、訳知り顔でそう言った。
「何かあるのか?」
「いやね、ここってば一般の患者さんは受け付けてない病院なんだよね、
いわゆるセレブ御用達って奴?」
「そうなのか?」
「だからタクシーの運転手とかにこの病院の名前を言っても、
多分どこだか分からないと思うんだよね」
「あの野郎、そういう事は事前に言っとけっての」
そう毒づく八幡に、ジョジョからこんな提案があった。
「それなら僕が連れてってあげるよ、入り口も顔パスでいけるしね」
「マジか、それは助かるわ」
「そのかわり、僕もサトライザーに会わせてくれないか?そこに彼がいるんだろ?」
ジョジョはどうやら二人の様子からそう考えたらしい。
何とも食えないが、やはり有能な男である。
「何故あいつに?」
「いや、彼ってばうちのスターだからね、理由は分からないが、
もしおかしな病気で引退とかなったら僕も困るから、一応確認しておきたいんだよね」
「う~ん……」
さすがの八幡も、その提案には迷った。
「あ、一応面識はないけど話した事はあるから、
彼に僕の名前を出して確認してもらって、許可が出たらって事でいいよ」
「ん、そうか、それならいい」
「オーケーオーケー、それじゃあ早速行こうか」
こうして四人はサトライザーのいる病院へと向かう事になった。