ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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時間が無い時には暴走するに限りますね、何故か早く書けます!


第854話 ハーレム王様ゲーム

「ほ、本当だ」

「どうなってるんですかね?」

 

 ランの言葉を受け、ノリとシウネーもコンソールを開き、驚きの声を上げた。

 

「まさか幽霊なんじゃ……」

 

 ユウキは明日奈同様そういったものが苦手なのか、顔を青くしながらそう呟いた。

 

「り、理央は何か知ってる?」

「さ、さあ、バグなんじゃない?」

 

 とは言ったものの、理央はその理由を知っていた。

そもそもクロービスの記憶をコピーする準備をしたのは理央なのである。

 

(多分スタンドアローンだったVRラボをネットに接続したせいなんだろうなぁ、

あれもザ・シード規格だし、多分この場所を作るのに使ったプログラムを流用しているから、

ゲーム間でギルドデータを共用出来るようになったあのシステムのせいで、

名前が復活しちゃったんだろうけど……)

 

 理央はこの状況のまずさを理解していた。メリダとクロービスの事は秘密だったからだ。

 

(とりあえずアルゴ部長にこの状況を伝えなきゃ……)

 

 そして理央は機転をきかせ、こっそりとアルゴにメールをした。

 

「あれ、よく見たら八幡君と紅莉栖、それにクルスもログイン状態になってるね」

「それってもしかしてアメリカ組?」

「アメリカからALOにでもログインしてるのかな?」

 

 そう言われた明日奈は、三人が今どこにいるのか確認しようとした。

 

「え~っと、今八幡君がいるのは、VR……」

 

(や、やばいやばい、三人の居場所が何て表示されてるのかは分からないけど、

それがもしメリダちゃんやクロービス君と一緒だったら本当にやばい!)

 

 理央が焦り、何とか誤魔化そうと話題を変えようとしたその瞬間、

明日奈とランがキョトンとした顔で同時にこう言った。

 

「あ、あれ?消えた……」

「こっちも消えたわ、一体何だったのかしらね」

「や、やっぱりバグだったんじゃない?」

 

 理央は慌ててそう言い、他の者達もその言葉に納得してくれた。

 

「まあ普通に考えればそうだよね」

「でも本当に幽霊だったら良かったのにね」

「そうしたらまた会えるもんね」

 

(セ~~~~~~~~フ!アルゴ部長、ナイスです!)

 

 理央は何とか誤魔化せた事で、ホッと一息つく事が出来た。

その瞬間に室内に、何故かダースベイダーのテーマが流れ始めた。

 

「きゃっ、な、何この曲」

「あれ、これって………」

「嘘、本当に?」

 

 ランとユウキは何も説明せずに外に駆け出していき、残りの者達もそれに続いた。

外に出ると、二人はとても嬉しそうに誰かと話をしており、

その人物は軽く手を上げて明日奈に声を掛けてきた。

 

「よっ、明日奈、お疲れ」

「あっ、八幡君!」

 

 ここでまさかの八幡の登場である。八幡はアルゴから連絡を受け、

さっきの事を誤魔化す為に、VRラボからログアウトし、ここに移動してきたのであった。

もちろんメリダ達の名前が表示されてしまった事はアルゴによって対策済である。

 

「八幡、来てくれたんだ!」

「まあ見舞いくらいはな」

「地球の反対側にいるくせに無理しちゃって」

「別に無理はしてないし、まあ顔くらいは出しておかないとと思ってな。

それにしてもみんなのその格好、パジャマパーティーか?

まあ俺は男共と少し話して帰るつもりだから、みんなで楽しくやってくれ」

 

 八幡はそう言って立ち去ろうとしたが、ランとユウキがそれを許さない。

 

「まあまあ、男子で交流を深めるのはいつでも出来るじゃない」

「そうそう、今度でいい今度でいい」

「いや、あいつらもたまには俺と話したいだろうし……」

「いいからいいから」

「そうそう、必要ない必要ない」

 

 八幡はそのままランとユウキによって、強引に家に連れ込まれた。

明日奈がいなければ完全に事案であるが、明日奈はもちろん二人の行動を止める気は無い。

そして室内に入り、ランとユウキが自分から離れた瞬間に、

八幡は近くに理央が来たのを見計らってこう囁いた。

 

「理央、よくやった」

「え?あ、うん、危なかったね」

「その事を話すのは二人の病気が何とかなってからがいいと、

あの二人に言われてるからな、マジで助かったわ」

「うん、私もあの二人の希望は尊重してあげたいからね」

 

 そして理央との短い会話を終えた後、八幡は何故か七人の中央に座らさせられた。

 

「………何で俺がここ?」

 

 そんな八幡を無視し、ランは割り箸のような物を手に持ちながらこう宣言した。

「それじゃあみんな、これから『ドキッ、女だらけのハーレム王様ゲーム』を始めます!」

「何だその不穏な名前のゲームは……」

「それではルールを説明します」

「聞けよ!」

 

 だがそんな八幡にランが答える事は当然ない。

 

「王様が番号を指定して命令出来るというのは普通の王様ゲームと一緒だけど、

王様は何を命令するか、最初にこのカードを引いて公開し、その内容通りに命令する事」

「そんなカード、いつ作ったんだよ……」

「王様は命令対象に自分を指定出来ない」

「お?それは珍しいな」

「そして王様は必ず命令対象の片方に七番を指定しなければならないわ」

「は?七番を指定だと?」

「そして八幡は七番に固定よ」

「おい!それってつまり……」

 

 そのルールを聞いた瞬間に、ラン以外の六人の目付きが変わった。

 

「つまり王様になると損……」

「六分の一の確率でイヤンなイベント発生?」

「先生、でもそれって内容次第では私的に困る事になると思うんですが!」

「明日奈、よく言った!」

 

 ここで明日奈が手を上げてランにそう疑問を呈し、

八幡はこれでゲーム自体が行われなくなるのではないかと期待した。

だがランはそんな明日奈を制し、笑顔でこう言った。

 

「ええ、その心配は当然だと思うわ。

だから命令内容を明日奈が却下したら、そのゲームは不成立とします」

「それなら文句はありません、先生!」

「あ、明日奈、裏切ったな!」

「うふふふふ、八幡君、こういうのはいいガス抜きになって、私の地位が安定するんだよ?

天才かよお前、って言ってくれてもいいんだよ!」

「黒い、黒いよ明日奈………」

 

 八幡はその明日奈の笑顔を見て、それ以上何も言えなかった。

反対に周りからは明日奈を賞賛する声が飛ぶ。

 

「よっ、さすがは正妻!」

「天才かよお前!」

「太っ腹!」

「一生付いていきます!」

「うんうん、もっと言ってもっと言って」

 

 明日奈は完全に調子に乗ったのか、そんな事まで言い出した。

こうなるともう八幡に発言権は無い。というかまあ、そもそも最初から無い。

 

「よろしい、それではゲームを始めます」

 

 そしてランの無慈悲な宣言により、ゲームが開始された。

 

「「「「「「「王様だ~れだ!」」」」」」」

「ほら、八幡も!」

「……………だ~れだ」

 

 他の七人とは対照的に、八幡は嫌々ながらそう言った。

 

「うわっ、王様私だ、いきなりハズレを引いた!」

 

 そう言ったのはかおりであった。

 

「命令は………って、カードの枚数多すぎない?」

 

 王様になったかおりの前には百枚以上のカードが置かれていた。

 

「えっと、私とユウが暇な時に書き貯めておいたの。

いつかこれでみんなと一緒に八幡で遊べる日が来たらいいなって思って」

「今八幡でって言ったか!?」

 

 八幡はたまらずそう突っ込んだが当然スルーされる。

 

「う、うん、ボク達の夢だったんだ」

「そうなんだ、それじゃあ夢が叶ったね二人とも!」

「それじゃあ今日を記念日にして、毎年この日にみんなで集まろうよ!」

「賛成!」

 

 とてもいい場面のように見えて、内容的には実はそうでもない会話が交わされた後、

かおりは命令の札を山から一枚抜き取った。

 

「えっと、『相手に壁ドンして次のセリフを言わせる、

そのセリフは言う者だけに見せる事』か、まあ普通だね」

「明日奈、判定は?」

「もちろんセーフ!」

「はい、このゲームは成立よ!それじゃあ王様、相手の指定を」

「オッケー、でも八幡が誰かに言うんじゃ面白くないから逆で!

五番が七番に壁ドンしてセリフを言う事!」

 

 そして残りの六人は、自分が引いた割り箸をじっと見つめた。

 

「やった、五番、私!」

 

 そう言って満面の笑みで立ち上がったのは明日奈であった。

最初に引き当てた所はさすが正妻の貫禄と言うべきか。

 

「それじゃあ明日奈、セリフはこれね」

「オッケー、あっ、ふ~ん、そういう事、それじゃあここを少し変えてっと、

八幡君、そこの壁の前に立ってくれるかな」

「分かった」

 

 相手が明日奈という事もあり、八幡は素直にその言葉に従った。

そして八幡の顔の横にドン!と手を付き、明日奈はニヤリとしながらこう言った。

 

「おい八幡、細けえ事はいいからさっさと俺の婿になれ!

今夜はずっとベッドの中でかわいがってやるからな!」

 

 その言葉に八幡は思わず赤面し、その事に気付いて悔しそうな顔をした。

 

「きゃ~!」

「明日奈、男前!」

「エロそうでエロくないのがいい!」

「完全にプロポーズだね」

「ってか今のシーン、写真に撮ったわよ!赤面する八幡の様子がバッチリ写ってるわ!」

「何だと!?おいこらラン、その写真を今すぐ消せ!」

 

 だがランは当然八幡をスルーし、この場で一番の権力者である明日奈に言った。

 

「明日奈、後でこの写真はプレゼントするね」

「本当に?やった!」

 

 見事に明日奈の言質をとったランは、ドヤ顔で八幡に言った。

 

「で?」

「う………消さなくていい」

 

 初っ端から押されっぱなしの八幡であった。

 

「それじゃあ次行くわよ、みんな準備はいい?」

「「「「「「「王様だ~れだ!」」」」」」」

「ほら、八幡も!」

「……………だ~れだ」

 

 先ほどと同じ光景が繰り返され、次に王様を引いたのはランであった。

 

「くっ、不覚……」

「王様を引いて悔しがるってのはまあ斬新ではあるな」

 

 八幡はそう言いつつ、ランがおかしなカードを引かないように祈った。

 

「はい、それじゃあ命令はっと………

『相手の胸の中で、ごろごろニャ~ンと言いながら甘える』、明日奈、判定!」

「むむむ、う~ん、う~ん、まあいっか、セーフ!」

「はい成立!でも当たり前な命令はしないわ、七番が三番の胸の中で甘える事!」

「おいこらラン、てめえ!」

「猫はお黙りなさい、王様の命令は絶対よ、三番は誰?」

「やった、私だ!」

 

 そう言いながらガッツポーズをしたのはノリであった。

 

「はい兄貴、私の胸の中にどうぞ」

 

 ノリは満面の笑みを浮かべながらそう言い、

さすがの八幡もそれを拒否する事は出来なかった。

明日奈もノリとシウネーが普段からランとユウキを立て、

自分達は八幡絡みの色々な事を我慢しているのを知っていた為、

むしろノリを応援するような表情をしていた。

 

「う………」

「はいどうぞ!」

「………ご、ごろごろニャ~ン」

「きゃ~、かわいい!」

 

 ノリはそんな八幡の頭を抱きしめ、八幡は完全に硬直した。

ノリにとっては一生ものの思い出になった事であろう。

八幡にとっては一生ものの黒歴史である。

 

「はい次!」

「はいはい、王様私!」

 

 そう言って手を上げたのは明日奈であった。

他の者なら意気消沈するところだが、明日奈はこのゲームを心から楽しんでいるようだ。

 

「え~と、ああ、これは駄目だね、相手とキスをするだからアウト!

でもほっぺならセーフとします」

「お、おい明日奈………」

「さすが明日奈、太っ腹!」

「えっへん!」

 

 この命令を引いたのはシウネーであった。その事が分かった瞬間に明日奈は気を利かせ、

八幡とシウネー、二人がお互いのほっぺたにキスをするように仕向けた。

こうしてシウネーにも一生ものの思い出が出来たのである。

このゲームは全員がひと通り八幡と絡み終えるまで続けられる事となり、

ゲームが終了する頃にはさすがの八幡もぐったりする事になってしまったのであった。


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