ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

888 / 1227
お待たせしました、今日から新章開幕です!
とりあえず最初なので、朝八時に投稿しておきます!


第八章 キャリバー・クロッシング編
第881話 セブンスヘヴンと七つの大罪


 あれから半月が経ち、今は十二月の初週である。

この日フカ次郎は、ハチマン相手に毎日の雪かきが大変だと愚痴をこぼしていた。

 

「………という訳で、腕とかおしりがもうパンパンなのよリーダー。

え?私のおしりに興味津々?試しに触って確かめてみたい?オーケーオーケーウェルカム!」

「黙れ変態、やっぱりそっちは大変なんだな」

「あ~あ、リーダーがこっちに来て、雪かきを手伝ってくれないかなぁ」

「もちろんそっちに行く機会があれば手伝うぞ、機会があればな」

「つまりその予定は無いと………」

「まあ香蓮に呼ばれでもしない限り、無いだろうな」

 

 ハチマンにそう言われたフカ次郎は、愕然とした顔をした。

 

「リ、リーダーはコヒーばっかり贔屓しすぎ!」

「ん、そうか?普通友達に呼ばれたら行くだろ?」

「リーダー、友達として誘います!是非北海道に来てくだちゃい!」

「やだ」

「むきいいいい!」

 

 などといつも通りの会話を繰り広げていた二人であったが、

フカ次郎はこんなたわいもない時間が大好きであった。

ハチマンは相変わらず自分に冷たいが、それでも偶然二人きりになるこういった時間に、

決して自分を邪魔者扱いしたりはしないからである。

 

「もう、好きな子はいじめたいだなんて、リーダーはかわいいなぁ」

「よし、俺は久々にスモーキング・リーフに顔を出すが、お前も来るか?」

 

 ハチマンに完全にスルーされたフカ次郎は、めげずにすぐに切り替えて返事をした。

 

「喜んでお供しまふ」

「そうか、それじゃあ行くぞフカ」

「うん!」

 

 そして時々こういった嬉しいイベントが起こる。

最近気付いたのだが、フカ次郎はハチマンに乱暴な口調で命令されるのが大好きであった。

どうやらフカ次郎の好みは、ぐいぐい自分を引っ張ってくれる男のようである。

 

「リーダー、スモーキング・リーフには何をしに?」

「ちょっとリョクに呼ばれてな、何か気になる事があるそうだ」

「リョクちゃんかぁ、リョクちゃんもリーダーに懐いてるけど、

あの六人の中じゃ、リナちゃんが異常なくらい一番リーダーに懐いてるよね、何で?」

「区別がつくからだろうな」

「区別?区別って何の事?」

「さあ、何の事だろうな」

「むむむむむ」

 

 どうやらリナには何か秘密があるらしいが、フカ次郎にそれを追及するつもりは無い。

もし必要ならハチマンは、絶対に説明してくれるからだ。

逆に言えば、説明が無いという事は、知らせる必要がないか、

自分が知るべき事ではないという事なのだ。そう思ったフカ次郎はすぐに頭を切り替え、

何か話のネタはないかと周囲をきょろきょろと見回した。

そしてフカ次郎は、少し離れた所に集まっている集団に目をつけた。

 

「ねぇリーダー、あそこに何か変な人達がいるよ」

「変?んん~?確かに何というか、禍々しい格好をした連中だよな」

「あれ、でもあの人達の持ってる武器、結構レア度高くない?」

「確かにそうだな、よく気付いたな、フカ」

「まあこれでも私ってばシルフ四天王だし?」

 

 久々にハチマンに褒められたフカ次郎は鼻高々にそう言った。

 

「しかしあいつらは何者だろうな、今度調べておくか」

「そうだね、情報は大事だもんね」

「いずれうちの前に立ち塞がってくるかもしれないからな」

「まあそうなったら蹴散らすだけだよね」

「でもまあまだ見ぬ強敵もいるだろうさ、

ランやユウキだって、少し前までは無名だった訳だしな」

「でもほら、今のセブンスヘヴンは全員身内だし、当分は安泰じゃない?」

「まあ確かにな」

 

 この二週間で変わったものがもう一つある。

それはセブンスヘヴンというシステムの導入であった。

これはプレイヤーの能力をシステムが計算してその上位七名に贈られる称号であり、

現在その七人は、完全に身内だけで固められていた。

 

 序列一位、ソレイユ

 序列二位、キリト

 序列三位、ハチマン

 序列四位、ユウキ

 序列五位、アスナ

 序列六位、ユキノ

 序列七位、ラン

 

 今の順位はこんな感じである。

スリーピング・ナイツは少なくとも一般にはヴァルハラの下部組織と思われている為、

今は完全にヴァルハラ一強状態なのである。

ちなみにこのランキング、二十位までの名前が公開されている。

実績が少ないのに八位がサトライザーなのはさすがと言えよう。

そして九位にやっとユージーンの名前が上がり、

十位にシノン、十一位にリーファ、十二位にクライン、十三位にエギルの名前が上がる。

正直シノンがここまで上にくるとはハチマンは思っていなかった。

リーファはリアルでの実績から考えると妥当なのかもしれない。

そしてクラインとエギルは、SAO時代の補正があるからであろう。

リズベットとシリカの名前が無いのもまあ妥当と言える。

いくら貯金があると言っても、二人は攻略組では無かったからである。

十四位はまさかのリョウである。さすが戦闘狂だけの事はある。

そして十五位はこれまたまさかのセラフィムである。

タンクは通常戦闘力評価は低めになるはずなのだが、これは驚異的な順位であった。

その次、十六位にはルシパーという知らないプレイヤーの名前が上がっていた。

十七位は懐かしのビービーで、十八位にフカ次郎が入る。

十九位はこれまた無名のサッタンというプレイヤーで、

そして二十位にはサクヤの名前が上がっていた。アリシャがさぞ悔しがっている事だろう。

ユミーやイロハの名前が無いのは、最近ログイン回数が減っていたからなのだろう。

クックロビンも同様であり、真面目に修行していたフカ次郎が一歩前に出たイメージである。

 

「うわ、リーダー、さっきの変な人達がじっとこっちを見てるよ」

「そんなのいつもの事だろ、ほっとけほっとけ」

「で、でもこっちに近づいてくるよ!」

「面倒だな………まあ敵と決まった訳じゃない、適当に相手をしておくか」

 

 ハチマンはそう言って腕組みし、相手の出方を待った。

そんなハチマンを見て、相手も足を止めた。

 

「あんたがヴァルハラのハチマンか?」

「相手に名を尋ねる時は、まず自己紹介って子供の頃に親から教わらなかったのか?」

「俺に親はいねえ、いるとすれば天の神様だ、

もっとも俺は堕天しちまったから、とっくに勘当されちまってると思うけどな」

 

 その言葉にハチマンとフカ次郎は顔を見合わせた。

 

「おいおい、何か香ばしい奴が来たぞ」

「ロールプレイにも程があるよね」

「まあいいか、少しだけ付き合ってやろう」

 

 ハチマンはそう言うと、その男に向かって言った。

 

「ふ~ん、そうか。それじゃあ天の神様に許してもらえるように、

精々善行を積んで、天界に復帰出来る陽に頑張ってくれ、

陰ながらお前の活躍をお祈りしておくわ」

「ハッ、俺は天界に未練なぞ無い!」

「え~?いいじゃないかよ天界、なぁフカ?」

「え、そこで私に振る!?え~っと、て、天界には美女が沢山いるから、

普通に考えて堕天するメリットってあんまり無いと思うんだけど、

お兄さんってもしかしてモテない人?」

「うわ、お前、それは煽りすぎだろ……」

 

 ハチマンの言う通り、相手は怒りで顔を赤くし、激しくフカ次郎に抗議してきた。

 

「ふざけるな!天界に美女なんていねえ!」

 

 その言葉に二人はキョトンとした。

 

「あ、反応するとこそこ?これは予想外」

「だな………どう返す?」

「ふふん、とっくに考えてあるよ、リーダー」

「じゃあお前に任せるわ、ケツは俺が持ってやる」

 

 その瞬間にフカ次郎は、慌てて自分のおしりをパンパンと叩いた。

 

「えっ?やっぱり私のおしりに興味津々?」

「うぜえ、早くしろ」

「がってん承知の助」

 

 フカ次郎は即座に態度を切り替え、相手の前に仁王立ちした。

この辺りの切り替えの早さはもはや定番である。

 

「おいお前、ALOの公式PVは見てないのか?

次のバージョンアップで出てくる女神様達は、美人じゃないって言うのか?」

「おお………」

 

 ハチマンはそのフカ次郎の機転に素直に感心した。

その言葉には反論出来なかったらしく、相手の男は言葉に詰まっているように見えた。

 

「やるじゃないかフカ」

「ふふん、まだ続きがあるからね。やいお前、無知なお前にもう一つ教えておいてやる。

ヴァルハラってのは北欧神話の主神の宮殿の名前だ。つまり天界イコールヴァルハラだ。

そして自慢じゃないが、ヴァルハラには美女が多い!

代表的なのは絶対暴君、絶対零度、バーサクヒーラー、姫騎士イージス、ロジカルウィッチ、

それにこの私だ!なぁみんな、ヴァルハラには美女が多いよな!」

「おい、ツヴァイヘンダーシルフの奴、自分で言いきりやがったぞ!」

「だが認めるぞ!あんた達は最高だ!」

「ヴァルハラ、最強!」

「というか相手の男は何者だよ!」

「新人がイキってんじゃねえぞ!」

 

 そのフカ次郎の言葉を受け、周りにいた者達は大いに盛り上がり、

相手は何か言おうとしたものの、周りの雰囲気に押されて反論のタイミングを失っていた。

そしてハチマンは、こいつにもファンがいたのかと驚き、フカ次郎を生暖かい目で見つめた。

 

「リ、リーダー、私をそんな欲情した目で見つめるなんて、もっと見て、私を見て!」

「黙れ変態、それよりもあいつが何か言おうとしているぞ、あっちに集中しろ」

「がってん承知の助!」

 

 フカ次郎は、本日二度目のがってんをし、そのまま相手に向かって言った。

 

「何か言いたいようだな、この私が聞いてやる」

 

 そう言われ、若干余裕を取り戻す事が出来たようで、その男はフカ次郎に向けて断言した。

 

「お前は別に美人じゃねえ」

「な、何だとぉ!やるかこの野郎!」

 

 フカ次郎はその言葉に激高した。だが相手は顔色を変えずにこう言い放った。

 

「お前じゃ俺には勝てねえ、ランキングは俺の方が上だからな!」

「ランキング………?」

 

 フカ次郎は首を傾げながら、

セブンスヘヴンランキングで自分よりも上にいるプレイヤーは誰だろうかと考え、

すぐに該当する人物にたどり着いた。

何故なら自分より上位で、自分が知らないプレイヤーは一人しかいないからである。

 

「お前、まさかルシパーって奴か?」

「な、何故分かった!」

 

 その答えを聞いた瞬間に、その場にいた全員がこいつはアホだと感じたが、

それはまごうことなき事実であった。

ルシパーは確かに腕はたつが、その名の通り、ちょっとパーな男なのである。

 

「いかにも俺はルシパー、ギルド『七つの大罪』のリーダーだ!」

「七つの大罪?じゃあお前は『傲慢』か?」

「いかにも、俺は『傲慢』担当のルシパー様だ!」

「ほうほう、まあ定番だもんな、七つの大罪」

「いずれ俺の六人の仲間と、その配下の悪魔達が、お前の前に立ちはだかるであろう」

「って何で予言者風なんだよ、あっ、おい、満足した表情で帰ろうとするんじゃねえよ!」

「まだ俺に何か用事が?」

「そもそも話しかけてきたのはお前だろうが!」

「ああそうか、ちょっと挨拶しておこうと思っただけだ、

もう用は済んだからさっさと立ち去ってくれていいぞ」

「こ、この野郎………」

 

 珍しくハチマンが相手のペースに巻き込まれていた。

さすがは『傲慢』を名乗るだけの事はあり、ルシパーは実に傲慢な男であった(?)

そこに彼の仲間なのだろう、六人のプレイヤーが慌ててルシパーに駆け寄ってきた。

 

「おいルシパー、俺以外の奴と仲良くしてんじゃねえよ、やきもち焼くぞコラ!」

「まったくだ、いつも勝手な行動ばかりとるんじゃねえ!キレんぞ!」

「それが俺だ、いい加減に理解しろ、エヴィアタン、それにサッタン」

「たんって愛称を付けて呼ぶのは俺だけにしろ!羨ましいんだよコラ!」

「俺もお前もそれがフルネームなんだから仕方ないだろ、キレんぞ!」

「まあまあエヴィアタン、サッタン、

そういう会話は聞いてるだけでだるいからそのくらいで……」

「ベルフェノールの言う通りだよ、とりあえず君達は、

精神的苦痛に対する罰金を俺に払うべき」

「金だなんだってうるせえよマモーン、

いいからさっさとみんなで飯でも食いに行こうぜ、渇くんだよ……」

「ベゼルバブーンの言う通りだ、罰金として俺に飯を奢れ」

「みんな落ち着きなさいよ、お客さんの前でしょう?あらいい男、あなたがハチマンさん?

ごめんなさいね、うちの連中ったらいつもこうなのよ、ところで今晩どう?」

「アスモゼウス、敵にまで媚を売ってんじゃねえよ、

そろそろ姉御との約束の時間だ、いいからお前ら、さっさと俺についてこい!」

「「「「「へ~い」」」」」

「あら残念、ハチマンさん、いずれまた、ね?」

 

 そして七人は、そのまま風のように去っていき、ハチマンとフカ次郎はポカンとした。

 

「リーダー、何あの人達………」

「随分キャラが濃い奴らだったな………」

「あんまり関わりたくないね………」

「だが俺達の事を敵と言ってたからな、いずれやり合う事になるかもな」

「え~,やだなぁ……でも私よりも強いっぽいし、いつか叩きのめしてやるよ、うん!」

「そうだな、その意気だ」

 

 ハチマンはそう言ってフカ次郎の頭にぽんと手を置き、フカ次郎はやる気満々で頷いた。

 

「ところでリーダー、七つの大罪って何?」

「よくファンタジーでネタにされる、人間を罪に導く可能性がある七つの罪の事だな。

傲慢のルシファー、憤怒のサタン、嫉妬のレヴィアタン、怠惰のベルフェゴール、

強欲のマモン、色欲のアスモデウス、暴食のベルゼバブ、みたいに悪魔と紐づけられてるな」

「あ~、何か聞いた事あるかも!さっすがリーダー、そういうのに詳しいよね!

でもプレイヤーの名前、微妙に違わなかった?」

「だな、今のうちにメモっとくか。え~と、ルシパーに………」

「エヴィアタンとサッタン!」

「後はベルフェノールとベゼルバブーンとマモーンとアスモゼウスか、

下手に元ネタに寄せてある分、微妙に覚えづらいな」

「まあ毎回メモを見て確認すればいいっしょ」

「だな、後でみんなに関わるとうざいリストとして配っておくか」

「うん、それがいいね」

 

(それにしても『姉御』ねぇ、他にもまだ何かいやがるって事か)

 

 ハチマンはそう考えつつ、本来の目的通りにスモーキング・リーフへと向かう事にした。




アスモゼウスの本名を、人物紹介に追加しておきました!山花出海(いずみ)です!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。