「ALOにですか?分かりました。それじゃあどこからログインすればいいかな、
そうだ、お二人ともまだ時間があるようなら、ソレイユに来ませんか?
あそこなら予備のアミュスフィアもありますし、安全面でも問題ないと思いますよ」
そんな八幡の軽い一言で、四人はソレイユへと向かう事となった。
「八幡、あそこ」
「姉さんが入り口に立ってるな」
八幡は当然の事ながら、事前に陽乃に連絡を入れていた。
その為陽乃が出迎えに出てきたのであろう。
「晶さん、春雄さん、ソレイユへようこそ!」
「陽乃さん、わざわざ出迎えしてくれなくても良かったのに、
ちょっと部屋の一部を借りるだけなんだし」
「そんな薄情な事は出来ませんって。ささ、中へどうぞ」
「それじゃあお邪魔するわ」
「むふぅ」
「それじゃあ八幡、私は次世代技術研究部に戻るから」
「おう、付き合ってもらって悪かったな」
ここで理央が抜け、八幡達三人はVRルームへと向かった。
その途中で八幡は、何かの用事で来ていたのだろう、制服のままの優里奈と遭遇した。
「あれ、優里奈じゃないか、どうしてここに?」
「あっ、八幡さん!ちょっと勉強で分からないところがあって、
紅莉栖さんに聞きにきてたんです」
「おおそうか、さすがは優里奈だ、えらいぞ」
「えへへ」
八幡は優里奈の頭を撫で、優里奈は嬉しそうに目を細めた。
「あっ、そうだ、春雄さん、晶さん、これがさっき言ってたうちの優里奈です」
「櫛稲田優里奈です、初めまして」
優里奈はその八幡の言葉を聞き、すかさずそう挨拶をした。
さすが出来る娘は行動の一つ一つが実に抜け目がない。
「おお、さっき言ってた娘さんかい?八幡君が育ててるっていう」
「はい、自慢の娘です」
八幡はニコニコとそう答えた。相変わらず優里奈には甘いようだ。
「優里奈、こちらは大野財閥の会長の大野晶さんと、会長補佐の大野春雄さんな」
「いつもうちの八幡さんがお世話になっております」
優里奈は『うちの』という部分を強調しながらそう言い、
陽乃はそんな優里奈を見てぼそりと呟いた。
「優里奈ちゃんも案外肉食系よねぇ」
そんな陽乃に突っ込もうとした八幡であったが、それは実行に移せなかった。
いきなり晶が八幡に蹴りを放ってきたのである。
「うおっ、危なっ」
八幡がそれを咄嗟に受け止めた為、晶は少し驚いた顔をした。
どうやら防がれるとは思っていなかったようだ。
晶は悔しそうな表情で胸を反らし、実際には見上げているのだが、
気持ちの上では八幡を見下ろすように下目遣いで腕を組んだ。
「晶さん、いきなり何を………」
「ああ八幡君、晶は、『会長?』って君に不満を表明してるみたいだよ」
「えっ?それが不満なんですか?それじゃあ他に何て説明すれば………」
「むぅ!」
その言い方に聞き覚えがあった八幡は、どうすればいいのか理解し、
優里奈にこう言い直した。
「訂正だ優里奈、こちらは大野晶さん、俺の母親っぽい感じのアレだ」
その言葉に晶は笑顔でうんうんと頷いた。どうやら正解だったらしい。
だがここで八幡は、不用意に余計な事を言おうとした。
「つまりお前にとってはおばあ………」
そのセリフの途中で晶が八幡に頭突きをしようとした。だがその前に優里奈がこう叫んだ。
「分かりました、お母さんですね!」
その瞬間に晶はピタリと動きを止め、満面の笑みで優里奈に近寄り、その頭を撫で始めた。
優里奈も甘えるように晶に寄り添い、二人はまるで本当の親子のように見えた。
「おお、やるもんだなぁ、優里奈ちゃんは」
「さすがは優里奈ちゃん、恐ろしい子………」
春雄と陽乃はそう呟き、八幡は嬉しそうな晶の表情を見て、
まあいいかとそれ以上何も言わなかった。この一件で優里奈は晶に気に入られ、
同時に八幡と同じ、晶の娘ポジションに納まる事となった。
それは晶の中では最悪でも八幡と兄妹、最良で八幡の嫁、という立場に立った事を意味する。
陽乃が恐ろしい子と表現するのも当然であった。
「この部屋を使って下さい、それじゃあ八幡君、あとはお願いね」
「ああ、全部終わったらまた連絡するわ」
「うん、宜しくね」
VRルームに案内した後、陽乃は社長室へと戻っていき、
八幡達が中に入ると、そこには何とガブリエルがいた。
「あれ、どうしたんだ?ガブリエル」
「君達の護衛さ、今の僕でもこれくらいは出来るからね」
「そういう事か、それじゃあ悪いが宜しく頼むわ」
「私は皆さんのログインを見届けたら帰りますね」
「おう、優里奈ちゃん、これからも晶の事、宜しくな」
「はい春雄さん、こちらこそ今後とも宜しくお願いします」
そして三人はログインし、優里奈は晶がログインを終えるまで、
その手をしっかり握っていた。晶はとても喜んでいるようで、
八幡はそれを見て、やはりうちの娘は世界一だと、一人で頷いていた。
「さて、二層に移動か」
ハチマンがログインしたのはヴァルハラ・ガーデンであった。
そこにいたのはアサギである。
「あれ、ハチマンさん」
「お、アサギさんか」
「今日は一人?」
「いや、これから知り合いと待ち合わせかな、
最近知り合った人に、体術スキルの取り方を教える事になってな」
「あっ、それ、私も一緒にいっていい?」
「そういえばアサギさんはまだだったか、それじゃあ一緒に行くとしよう。
今日は時間とか大丈夫か?」
「うん、咲太とも特に約束とかしてないから大丈夫!」
アサギも今はすっかりハチマンと、友達感覚で話せるようになっていた。
そして二層でスプリンガーとラキアと合流し、
四人はそのまま二層のフィールドを進んでいった。
「アサギさん、こちらはスプリンガーさんとラキアさん、
昔姉さんとパーティーを組んでた大ベテランだ」
「初めまして、ヴァルハラで一番弱いタンクのアサギです、どうぞ宜しくお願いします」
「その自己紹介はどうなんだ?」
「ふふっ、だって事実だし」
「確かにそうだけどよ」
そんな二人を見て、スプリンガーがからかうようにハチマンに話しかけてきた。
「ハチマン君の知り合いって今のところ、
女の子しか紹介されてない気がするんだが気のせいか?」
「………た、たまたまです」
「たまたまねぇ」
「まあヴァルハラは女性プレイヤーの方が多いですしね」
「そ、そうそう、アサギさん、ナイスフォロー!」
ラキアがそんなハチマンを、半眼でじっと見つめてきた。
「ラ、ラキアさんは何と?」
「ああ、もっと男友達も作りなさいってさ」
「だからちゃんといますって、大丈夫ですから!」
そんなハチマン達を、アサギが訝しげな目で見つめていた。
ハチマンはその視線に気付き、アサギに説明が足りていなかったと反省した。
「悪いアサギさん、ラキアさんはかなりの無口でな、
スプリンガーさんに通訳してもらわないと、何を言いたいのかよく分からないんだよ」
「あ、ううん、違うの」
アサギはそう言って、考え込むような仕草をした。
「何か気になる事でも?」
「うん、お二人が私の知り合いに似てるなって、奥さんが無口なところとか」
「俺達が?」
「あ、はい」
その言葉にハチマンとスプリンガーは顔を見合わせた。
この二人のような組み合わせがそうそういるはずはないと思ったからだ。
「なぁアサギさん、ちなみにその二人の年齢は?」
「ええと、今年五十になるかならないかだったはず」
「その二人って、アーケードゲームが大好きだったりしないか?」
「あ、うん、確かにそうね」
「なるほど………」
どうやら三人は知り合いという事で間違いないようだ。
他に晶のように特徴があるキャラの人間がいるとは思えないからである。
「それじゃあ改めて紹介するとしますか、こちらは桜島麻衣さん、
そしてこちらは大野晶さんと大野春雄さんだ」
ハチマンのその言葉に三人は目を剥いた。
「えっ、それじゃあ本当に晶さんと春雄さんなんですか?」
「いやぁ驚いた、麻衣ちゃんだったのかい、世間は狭いな」
「むぅ」
ラキアもそう言って、嬉しそうにアサギの手を握った。
「三人はどこで知り合ったんですか?」
「こちらのお二人は、私が子供の頃から私のスポンサーについてくれてるの」
「そうそう、あき……ラキアが子役だったアサギちゃんを気に入ったみたいでな、
まめにチェックして、必ずスポンサーに立候補してたんだよ」
「うん、ラキアさんにはずっとかわいがってもらってるの」
「そうだったのか、本当に世間は狭いな」
それですっかり打ち解けた四人は野を超え山を超え洞窟を超え、
やっと体術スキルNPCの居場所へとたどり着いた。
「いやぁ、結構大変だなおい」
「アインクラッドのフィールドでも飛べるようになれば、また違うんでしょうけどね」
「そうだそうだ、何でここは飛べないんだ?」
「ショートカットする事で不具合が生じないかのチェックに時間がかかってるみたいです、
でもまあ多分年末のバージョンアップの時に飛べるようになるはずですよ」
「おお、それは楽しみだな」
「はい、空から見たアインクラッドがどうなってるのか興味があります」
そしてスキル取得の為の岩割りが開始された。
三人はNPCに話しかけてヒゲを生やし、お互いの姿に笑いながら、最初に記念撮影をした。
そして岩に立ち向かった三人であったが、結果は予想通りであった。
「くそっ、そこそこ硬いな」
「これ、結構きついですね………」
そんな二人を横目に、ラキアがあっさりと岩を破壊する。
「おお、さすがはラキアさんですね」
「むふぅ」
ラキアは得意げに鼻を鳴らし、スプリンガーは悔しそうに岩に拳を叩き込み続けた。
その横でアサギもマイペースで岩を殴っている。
だが二人もそれなりに高レベルである為、
多少時間はかかったが、二人も無事に岩の破壊に成功した。
「さて、無事に取得出来たみたいだし、帰りますか」
「おお、結構あっさりだったな」
「良かった、失敗したら、ヒゲのせいで恥ずかしい思いをしないといけないところだったわ」
まだ誰も知らない事だったが、この時点で実はとんでもない事が起こっていた。
セブンスヘヴンランキングの内部での変動である。
ただ体術スキルを獲得しただけにも関わらず、
実はこの時点でラキアは十七位まで上がっていた。ルシパーのすぐ下である。
そしてその代わりにサクヤが圏外に落ちる結果となっているのだが、
この事実は次のセブンスヘヴンランキングの更新日まで誰も知る事は出来ない。
そんな事になっていると知らないハチマンは、帰り道で暢気にこう提案していた。
「そうだ、せっかくだし、
このまま街でトレンブル・ショートケーキでも食べていきませんか?」
「え、何だいそれ」
「とっても美味しいケーキです、ラキアさんも好きですよね?」
「むふっ」
「ですよね、それじゃあ案内しますね」
ハチマンは別にラキアが何と言ってるか理解してそう言った訳ではない。
ただラキアの満面の笑顔を見てそう判断しただけである。
だがそれは確かに正解であり、店に着いてケーキが運ばれてきて、
それを口にしたラキアは、とても満足そうにこんな声を出した。
「もが~」
「………ラキアのその癖、本当に直らないよな」
どうやらラキアは物を食べる時、いつもそんな声を上げてしまうらしい。
「ふんっ」
「痛ってぇ、足を踏むなっての!」
「むが~!」
そのまま四人はお喋りしながらケーキの味を楽しみ、
十分に堪能した後、それぞれログアウトする事となった。
「ふう、今日はお疲れ様でした」
「いやぁ、色々あったなぁ今日は」
「お二人とも、またです」
「またね、アサギちゃん」
「はい!」
ログアウトした後、晶と春雄は迎えが来るとの事で、
そのまま八幡に見送られて去っていった。
その車を運転しているのはどうやら専属の運転手らしく、
中学の時からずっと晶の運転手をしていた『爺や』という人の息子さんらしい。
そしてその場に残った八幡は、自宅に帰るかマンションに泊まるか迷っていたが、
そんな八幡にガブリエルが声をかけた。
「そうだ八幡、せっかくだから僕の寮の部屋に泊まっていかないかい?」
「お、いいのか?」
「ああ、最初に招くのは、やはり友人である君がいいんじゃないかと思ってね」
「そうか、それじゃあちょっと姉さんと話した後にそっちに向かうわ」
「ああ、待ってるよ」
そして八幡は社長室に出向き、
勇人の事を陽乃と話し合った後にガブリエルの部屋に向かった。
これが八幡にとって、今日最後のイベントとなる。
もう分岐しちゃってて参考になるかは分かりませんが、一応俺ガイル14巻を先に読んでおきたいので、明日の投稿はお休みさせて下さいすみません!