ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第933話 門の向こうの冒険

 ハチマンとリオン、それにアルゴは、集まってくる情報を整理し、

同時に仲間達の進軍のサポートを続けていた。

 

「ん、キリト達が接敵したらしい、なんか肘にヒラヒラしたのがついてるとか何とか。

今映像を送ってもらうわ」

 

 三人はその送られてきた映像を見て、う~んと唸った。

 

「これは………ディノニクスとかいう奴か?」

「確か資料にあったよね」

「いかにも特殊能力がありますみたいな見た目だなおイ」

「くそ、俺も直接見てみてえ………」

「というかハー坊、この位置なら肉眼で見えるんじゃないカ?」

「えっ、マジかよ、どれどれ………」

 

 単眼鏡で見ると、確かに遠くにディノニクスの姿と、それと戦うキリト達の姿が見えた。

 

「お、おお、あれか………」

「ハー坊は本当に恐竜とか大好きだよナ」

「何度でも言おう、恐竜が嫌いな男などこの世に存在しない!」

「どれどれ………」

 

 そう言いながらリオンも単眼鏡を取り出し、それを覗き込んだ。

 

「おうリオン、お前もじっくり堪能してくれ」

「私はそこまで好きって訳じゃないけどね」

 

 そう言いながらリオンはキリト達の方を観察し、ハッとした様子で顔を上げた。

 

「ハチマン、横!川の中に背びれが見える!」

「何だと?………あれか、確かに何かいやがる」

「あれってさっきのスピノサウルスじゃないの?」

「かもしれん、キリト………いや、ここはレコンだな、レコンに至急連絡だ」

「分かった、すぐに連絡するゾ」

 

 そしてアルゴがレコンに連絡を入れ、キリト達はすぐに動いた。

レコンが釣り役となり、ディノニクスを内陸に誘導し始めたのだ。

そしてキリト達はスピノサウルスと交戦を始め、

レコンは上手くディノニクスの攻撃をいなしながら、離れた所へと誘導していく。

 

「さすがレコンだな」

「大丈夫かネ?」

「リオン、近くにパーティはいるか?」

「えっと………うん、あの位置ならアスナ達が五分くらいで着けるはず」

「そうか、それじゃあすぐに連絡して、援軍に行けるように誘導してやってくれ」

「了解!」

「レコン、そのまま聞いてくれ、五分くらいでアスナ達がそこに着く、それまで耐えてくれ」

 

 同時にハチマンは、川の中の敵にも注意するように、

サトライザーとランにも連絡を入れた。

 

『オーケー、まだ敵の姿は見えないが、気をつけるよ』

『ハチマン、こちらは空を飛ぶ敵と交戦状態に入ったわ、

プテラノドンって奴だと思うけど、空にも注意するようにみんなに伝えて』

 

 そのランからの情報もすぐにフィードバックされ、

こんな感じでヴァルハラとS&Dの混成軍は、着実に渓谷地帯の調査を続けていった。

そんな中、リズベットから気になる報告が入った。

道の脇に巧妙に入り口が隠された浅い洞窟があり、

その中が薄っすらと光っているというのだ。

 

『ハチマン、これって多分、レア鉱床よ』

「確かにそれっぽいな、あと三十分もしたらナタクとスクナがログインしてくるから、

そっちに回ってもらう事にしよう」

『そうだね、お願い!』

 

 それからおよそ三十分後、ナタクとスクナからログインしたと報告があった為、

ハチマンはこちらに来るようにと指示を出した。

そして更にその三十分後、ハチマン達の前に、八人のプレイヤーが姿を現した。

 

「ハチマンさん、お待たせしました!」

「ハチマン、来たわよ」

「おう、待ってたぞ、って、うわっ、おいこら、危ないだろ!」

 

 その時プレイヤーの中で一番小柄な者がハチマンに飛びついてきた。

 

「ハチマン!恐竜って美味しいのな?」

「おいリナヨ、お前は何でも食おうとするんじゃねえって」

 

 そう言いながらハチマンはそのプレイヤー、リナの頭を撫でた。

南門の鍵の取得が二つに増えていたのはそういう事である。

イコマが単独で臨時のスコードロンを立ち上げ、

同時にスモーキング・リーフの六人が正式にギルドを立ち上げ、

そして出来たのが、シンプルに『探険部』と名付けられたこのナイツであった。

イコマがイコマとして動く事はなく、そのままそこにナタクとスクナが加わった形である。

鍵の取得に関しては、先日ヴァルハラの全面協力もあり、問題なく取得出来ていた。

S&Dは自力で取りたいと主張したが、探険部のメンバーはそこには拘っておらず、

お互いのリーダーの性格の差がここで出た格好である。

ちなみに探険部のリーダーは、本来はリョウが担うべきなのだろうが、

リョウがリョクに押しつけて逃げた為に、リョクがリーダーという事になっている。

まあ能力的にも、論理的思考が出来るリョクが適任であろう。

 

「ハチマン、とりあえず戦う?」

「お前が戦う敵は恐竜って奴だ、ちゃんと予習してきたか?リョウ」

「映像だけなら見たかなぁ」

「説明文も読めっつの」

「そこはリョクに丸投げだわねぇ」

「はぁ、相変わらずだなお前は、リョク、お前が頼りだ、頼むぞ」

「面倒だけどハチマンの頼みなら仕方ないじゃん、ついでに素材もごっそりじゃんね」

「おう、とりあえず地図情報は貼り付けたメモごとリツに渡しておくからな、

リツ、ちょっとこっちに来てくれ」

「はいにゃ」

 

 そしてリツに地図データを渡し終えた後、ハチマンはリンとリクを呼んで説明をした。

 

「いいかお前ら、川の中や空からも敵が襲来するのが確認されてる、

リンは川の中、リクは空に気を配ってくれよ」

「おう、任せろって」

「分かった、川だな」

 

 そして探険部はリズベットが見つけた洞窟目掛けて出発していった。

 

「さて、これで良しっと。

おいリオン、そろそろ適当な所で休憩するようにみんなに伝えてやってくれ」

「あ、確かにいい時間だね、分かった、伝えるね」

 

 リオンはハチマンの言葉を各チームに伝え、

同時に軽食を取り出してハチマンとアルゴに差し出してきた。

 

「二人とも、はい、これ」

「おお、サンキューなリオっち、リオっちを嫁にもらう男は幸せだなぁ、なぁ?ハー坊」

「ん?ああ、そうだな、こいつは美人だしスタイルもいいし優しいし稼ぎもいいし、

専業主夫をさせてもらうには最高の物件だよな」

 

 相変わらず過剰なハチマンのリップサービスである。

だが最後の一言にはやや実感がこもっていたのは間違いない。

 

「そ、それは褒めすぎでしょ」

「いやいや、そんな事はない、要するにお前をスカウトした俺がえらいって事だからな」

 

 ハチマンは気分が高揚しているのだろうか、

珍しく子供のようにそう自慢げに鼻を鳴らし、それを見たリオンはクスクスと笑った。

 

「そうだね、えらいえらい」

「か~っ、甘酸っぺえ!オレっちも混ぜロ!」

 

 そう言いながらアルゴはハチマンの膝に頭を乗せた。

 

「休憩中は大人しくしてろっての」

「これくらいたまにはいいじゃねえかよ、

オレっちがハー坊に甘やかしてもらう機会は中々無いんだからナ!」

「はぁ、まあこれくらいなら別にいいけどな」

「ほれハー坊、あ~んしてくれよ、あ~ン!」

「調子に乗んな!」

 

 そう言いながらもハチマンは、リオンにもらった軽食をちぎってアルゴの口に放り込んだ。

 

「ン」

 

 アルゴは満足げにそう言い、寝転んだまま製作中の地図を開いた。

 

「しっかしこの渓谷は恐ろしく気合いが入った作りになってやがるナ」

「だね、ちょっと広すぎな気もする」

「それだけザスカーがALOの客を取り込むのに一生懸命って事だろ」

「でもこれで、ALOのプレイヤーがGGOもやってみたいって思うかな?」

「ん、確かにそう言われると………」

「その辺りも何かしら考えてるとは思うんだけどナ」

 

 そして探索が再開され、その後も順調に情報が集まっていった。

各所から素材の情報も集まってきて、

探険部は忙しそうにあちらこちらへと移動を繰り返している。

そんな中、キリト、アスナ、サトライザーから次々と連絡が入った。

 

『ハチマン、ここが限界だ、これ以上は進めそうもないな』

『ハチマン君、多分これ以上は行けなさそう』

『ハチマン、この壁は超えられそうにない、ここまでだね』

 

 確かに自動生成されるマップの上でも、それ以上道は存在しないように見え、

ハチマンは三チームに待機の指示を出した。

 

「そうなると、ランランの進んでる方が当たりカ?」

「この渓谷は枝分かれして扇状になってるから、何ともだが………」

「でもまあ素材的には気になる場所が沢山あったよね」

「だな、探険部には調査を続行してもらおう」

 

 だがその直後にランから連絡が入った。

 

『ハチマン、こっちは行き止まりよ』

「マジかよ、そこでちょっと待機しててくれ」

『分かったわ』

 

 ハチマンはそう指示を出し、アルゴとリオンと三人で、地図とにらめっこを始めた。

 

「う~む………」

「さすがにそう簡単にはいかないみたいだナ」

「どこかに横道でもあるのかな?」

「それなら誰かが気付くと思うんだがなぁ」

 

 マップで見ると、間もなくキリトチームと探険部が合流しようとしていた。

 

『ハチマン、ちょっといいか?』

「お?キリト、どうした?またリョウに、ちょっと戦う?とか言われて困ってんのか?」

「確かに言われたけど、別に困ってはないよ!」

 

 その時キリトから連絡が入った。どうやらリナが何か言っているらしい。

 

「ほう?リナが?」

『ああ、ここのマップは見てるだろ?ここって川が分岐してるよな?

で、リナが、あっちの川の方から食べ物の気配がするのな!って言い出してな』

「リナの食べ物?まさか鉱石か?あっちって事は岸から遠い方………これか」

 

 ハチマンはその部分のマップを拡大し、じっと見つめた。

それを横から覗き込んだリオンが、何かに気付いたようにマップの一点を指差した。

 

「ハチマン、この点は何?」

「おいリオン、近い、近いから、どれどれ………ん、確かに何か表示されてるな」

 

 それはマップを拡大しないと分からない程小さな点であった。

 

「おいキリト、そこから北に五十メートルくらいいった所の川の中に何かないか?

マップ上に点があるんだが」

『待ってくれ、今移動する』

 

 そしてすぐにキリトから次の連絡が来た。

 

『この辺りか、でもここには何も………あっ、おいリナ!って、えええええ?』

「どうした?」

『いや、リナがいきなり川に飛び込んだかと思ったら、()()()()()()()んだよ!』

「マジか、足場でもあるのか?」

『そうみたいだ、ちょっとリナの後を追ってみる』

「分かった、気をつけてな」

 

 そしてしばらくしてキリトから再び連絡が入った。

 

『分かったぞハチマン、足場を超えて奥の方に分岐する川、これ、凄く浅いみたいだ、

川の中を歩いて奥に行けるぞ!』

「分かった、敵に気をつけながら探索を続行してくれ」

『了解、探険部はどうする?』

「リナが食べ物って言ってたのは多分鉱脈か何かだと思うから、好きにさせてやってくれ」

『分かった、リナ様々だな』

 

 ハチマンは腕組みをし、アスナ、サトライザー、ランにすぐ指示を飛ばした。

 

「行き止まり付近の川の中に、おそらく立てる岩がある、

川が分岐してる場所の周辺にあるはずだから、調査してみてくれ」

 

 こうして次々と奥へと進むルートが見つかり、四チームはその奥を目指して進み始めた。

 

「ふう、どうやらいけそうだな」

「中々捻った構造になってるみたいだね」

「まあ道を進んでるだけで奥に行けました、じゃ簡単すぎるからナ」

「確かにな」

 

 それからしばらくした後、

一番最初に分岐に踏み込んだキリトチームのシリカから連絡が入った。

キリトからではなくシリカからという時点で、ハチマンは嫌な予感がした。

 

「シリカ、どうした?」

『ハチマンさん、今敵と交戦中です!』

「どんな敵なんだ?」

『私は知らないんですが、キリトさんが、

パッキーが肉食とか聞いてないよ!って突っ込んでます』

「戦闘中に突っ込みとかさすがは突っ込み王だな、パッキー?パキケファロサウルスか?

確かに数年前に、肉食というか雑食だった可能性は指摘されてたような………」

 

 ハチマンはぶつぶつとそう呟いた、さすがは恐竜大好きっ子である。

ちなみにハチマンは以前軽井沢に行った帰りに、

長野市にある恐竜公園に寄った程の筋金入りである。

 

「頭が装甲みたいになってる奴だよな?そっちだけで大丈夫か?」

『分かりませんが、やってみます!』

「危なそうだったらすぐに連絡してくれ、リョク達を向かわせる」

『分かりました!』

 

 これまでも接敵はしていたが、ここまで余裕の無さそうな連絡が来るのは初めてだった。

ここから敵の攻撃が、激しさを増していく事になる。




今年一年お読み頂きありがとうございました、よいお年を!
そして来年もまた宜しくお願いします!
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