五日まではせっかくですし、朝八時に投稿します!
「うおっ、危なっ!」
「キリト、大丈夫?」
「キリトさん!」
「ギリギリだったけど大丈夫だ、ほら、闘牛士みたいだろ?」
「でもダメージは全然与えられていないみたいだけど」
「こいつ妙に硬いんだよ!でもまあそろそろ本気を出してみるさ!」
そう言ってキリトはすれ違いざまに敵目掛けて全力で剣を叩きつけた。
「うおおおお!」
さすがに最強ランクの職人武器である彗王丸は、
敵の硬い皮膚にも負けず、その表面を数センチほど切り裂いた。
「ざっとこんなもんだな!これを繰り返していけば、まあそのうち肉まで届くだろ!」
「キリト、気をつけてね!」
「おう、まあ直線的な攻撃しかしてこないから楽勝だって」
「調子に乗ってる………」
「ちょっと危なそうだね………」
「大丈夫、私も支援するわ!」
「ごめんリーファ、頼める?」
「うん、任せて!私のイェンホウならいけると思うから!」
そう言ってリーファはその手に持つ剣、イェンホウを構え、突撃していった。
この中で敵の装甲とも言える皮膚にまともに刃が通るのは、この二人の武器だけである。
逆にこれがT-REXのような肉食竜だったら楽だったのだろうが、
この敵はどうやら攻撃能力が低い分、防御力が高いようなのだ。
「このままいけば、もう少しでいけそうだな」
「皮膚さえ貫ければ、他の人の攻撃もきっと通るよね」
「それにしてもちょっと硬すぎだよなぁ」
「うん………」
「まあ敵が一匹で良かったよ」
「あっ、それはそうかも!」
二人はその後も回避しながらカウンターぎみの攻撃を繰り返し、
遂に敵を流血させるまで、その皮膚をえぐった。
「よし、こんなもんか!レコン!」
だがその呼びかけに答えはない、というかそもそもレコンの姿が見えない。
だがキリトは気にした様子もなく、壁を背にして敵の正面に立ち、
ギリギリまで踏みとどまると、敵が目の前に迫った瞬間に横に飛んだ。
ドカン!
パキケファロサウルスはそのまま壁に頭をめり込ませ、一瞬その動きを止めた。
その横にいきなりレコンが姿を現したかと思うと、
何か手を動かし、すぐに離脱していく。
パキケファロサウルスはその場で暴れ、めり込んだ頭を壁から抜くと、
今度はレコン目掛けて突進しようと一歩前に出た。
その瞬間にキリト達が傷つけた部分が爆発した。
「レコン、ナイス!」
レコンは敵の傷に短剣を刺し、そこに手榴弾をブラ下げておいたのである。
敵の皮膚が完全な状態だったら、この攻撃も三発ほどは耐えられる強度があるのだが、
手榴弾をピンポイントで同じ場所を狙って爆発させるのは不可能だし、
やはりこうするのが一番確実なのである。
ブービートラップで足元に三連発、というのは不可能ではないが、
今回は遭遇戦だった為、そんな準備をする余裕は無かったのだ。
「よっしゃ、ゼクシード、後は任せた!」
「オーケーオーケー、ユッコ、ハルカ、あの穴を目掛けて攻撃だ!」
「了解!」
「あれくらい大きければ、私達の腕でも当たるよ!」
キリトとリーファが傷つけた小さな傷は、レコンによって今や大きく広がっていた。
パキケファロサウルスはそれでも怯まずに突進を繰り返したが、
ただ硬いだけで、直線的な攻撃しか出来ない敵などヴァルハラには物の数ではない。
キリトとリーファは次の部位に傷をつける事を試みており、
たまに攻撃をくらってしまう事もあったが、
それはヒーラーとして動いているシリカ、というかピナがすぐに癒した。
そしてレコンがその傷を広げ、ゼクシード達がそこに銃弾を叩き込んでいく。
さすがに動きが鈍った敵に対し、ここまで攻撃の機会を伺っていたリズベットが、
敵の傷目掛けて採掘用のつるはしを思いっきり叩きつけた。
「これでもくらいなさい!」
リズベットも鍛治師としてかなりSTRにステータスを振っており、更にそのつるはしは、
硬い岩盤を砕けるくらい無駄に性能の高い、ヴァルハラの支給品である。
皮膚ならともかく向き出しになった敵の肉を貫く事など造作も無い。
ちなみに他の傷には、キリトとリーファ、それにレコンが剣を突き刺していた。
この辺りは得に言葉を交わすまでもなく、アイコンタクトだけで連携をとる事が出来る。
パキケファロサウルスはその攻撃で断末魔の声を上げ、光となって消えた。
「ふう、お疲れ!」
「こういう敵が相手だと、シノンがいれば楽だったかもしれないね」
「このパーティ向きの相手じゃなかったのは確かだよな」
「とりあえずハチマンに連絡しておくか、みんな、ドロップアイテムの確認も頼む」
そしてキリトがハチマンと話している間、他の者達はアイテム欄を確認し、
『パークの鍵』というカードキーが手に入っている事を確認した。
「うわ、パークって………」
「いかにもって感じよね」
「うわ、私の所に『トロフィー・パキケファロサウルス』ってのがあるわよ」
「へぇ、どんなアイテムですか?」
「今出してみるわ」
そして一同の前に、巨大なパキケファロサウルスの生首が現れた。
首の部分は円状の金属がはめこまれており、どうやら調度品だと思われた。
「うわ、これはまずいわ」
「え?何がですか?」
「ほら見て、あのキリトの顔」
「あ………」
「確かにまずいですね………」
見るとキリトが目をキラキラさせながらこちらを眺めているのが見えた。
ついでにその事をハチマンに伝えているのか、キリトの表情から、
通信機の向こうでハチマンも興奮している姿が手に取るように分かった。
「これって絶対にコレクターズアイテムだと思うのよ」
「ですね………」
「全種類コンプするって絶対言い出すわよ、あいつら」
「絶対言いますよね」
「まあいいんじゃない?進んでいくうちにかなり集まるだろうし」
「はぁ、まあ仕方ないから付き合ってあげましょっか」
メンバー達はそう言いながらため息をついた。
ちなみにゼクシードとレコンも内心では全部集めたいと思っていたのだが、
それを表に出すような事はしなかった。
そして通信を終えたキリトがこちらに来て、興奮した様子でそのトロフィーを撫で回した。
「おお………」
「キリト、落ち着きなさい。で、ハチマンは何だって?」
「このまま進んでくれだそうだ、他のチームも敵と遭遇してるから、気をつけてくれってさ」
「あ、やっぱり他もなんだ」
「ちなみにアスナ達はもう二体目らしい、あそこにはソレイユさんがいるからな」
「それは負けてられないわね、みんな、ちょっと休んだら行きましょう!」
「だな!」
「とりあえず休んだ後、僕が先行しますね」
「おう、頼むな」
「任せて下さい!」
こうしてキリト達はパキケファロサウルスの討伐を終え、休憩に入った。
「アスナ、前方の様子がおかしいわ」
「えっ、何が?」
「地面が動いてるような気がしない?」
「………ん~?そう言われると確かにそうかも」
「照明弾でも飛ばしてみる?」
「そうだね、ここはそんなに暗くはないけど、決して明るい訳でもないもんね」
一方こちらは少し前のアスナチームである。
アスナチームは支流が流れ込んでいる洞窟に侵入していたのだが、
シノンが前方がおかしいと言い出し、
シャーリーの提案を受け、照明弾を撃ってみる事になった所であった。
「撃つね」
そして照明弾が撃ち込まれ、前方が明るく照らし出された。
「うわ、何か動いた!」
「ちょっ………あ、あれって小さな恐竜?」
「そういえばそんなのが資料に書いてあった気がするよ、なんて名前だっけ?」
「う~ん………」
アスナチームには男性プレイヤーがいない為、咄嗟にはその名前が出てこない。
「ちょっと資料を見てみますね」
「コマチちゃん、お願い!」
「ええとあれは………ああ、コンピーですね、コンプソグナトゥス、小型の肉食恐竜です」
「あ、あれが全部そうなの!?」
「うわ、多すぎじゃない?」
「気持ち悪い………」
前方には、何体いるのか見当もつかない程の敵が蠢いていた。
その大きさは一メートルくらいであったが、
さすがにそこまで大きいと、その殲滅は
「姉さん、いける?」
「そうね、洞窟の直径からして威力はあんまり出せないけど、まあそれなりに?」
「私とシャーリーも一緒に撃てば、保険くらいにはなるんじゃない?」
「そうだね、このくらいの距離なら弾は相手の首くらいの高さを通るだろうしね」
そう、今日この場にいるのはALOのシノンではなくGGOのシノンなのである。
その手には誇らしげにヘカートIIが掲げられており、
そしてシャーリーの手には、シャナから借りたМ82が握られているのである。
「それじゃあやってみましょうか、どのくらいの数なのが奥が見えないし、
とりあえず飛距離重視で呪文を改変するわ」
「はぁ、姉さんはやっぱり凄いなぁ、呪文をいじるのは、私はまだ咄嗟には無理だもん」
「そのうち出来るようになるわよ、まあ頑張って」
そしてソレイユは魔法の詠唱を始め、シノンとシャーリーは魔法の発動に備え、
いつでも引き金が引けるように、静かにその時を待ち続けた。
だがいつまでたっても魔法は発動せず、ソレイユは今も詠唱を続けている。
「ちょ、ちょっと、長くない?」
「お義姉ちゃん、コマチ、ちょっとやな予感がするんだけど………」
「ま、まだ早口じゃないだけマシかもだけどね………」
そう言いながらアスナとコマチはセラフィムの後ろに隠れた。
レンとフカ次郎もそれに習い、そして三分後、ソレイユの魔法が発動した。
かなり太い紫の光が、一直線に前方に走っていく。
その瞬間にシノンとシャーリーが可能な限りの早さで連続で狙撃を行い、
二発、三発と前方に弾が飛んでいく。
「えっと………敵は来ないみたいだね」
「アスナ、どうする?」
「う~ん、ちょっと偵察を出してみようか」
「それじゃあ私とコマチちゃんが二人で見てくるよ!」
「そうだね、お義姉ちゃん、コマチがレンちゃんと一緒に偵察に行ってきます!」
「ごめんね、お願いね」
そのまま二人は前方へと駆け出していった。
しばらく後に、何発か銃声が聞こえたが、それも長くは続かなかった。
「どうやら敵がいたみたいね、数は少なそうだけど」
「どうなったのかな?」
「ほとんど全滅したって事なんじゃないかな」
「それにしては戻ってこないね」
「レンの奴、どこまで行ったんだ?」
「あ、マップを見れば分かるかも」
アスナはそう言ってマップを開き、他の者もマップを開いた。
そこにはコマチとレンを示す光点が表示されており、
位置はここから大体一キロほど先であった。
「うわ、この短時間にここまで進んだんだ」
「やっぱり足が速いわね」
「あ、戻り始めた?」
「え、ちょっと、妙にスピードが速くない?」
「一体どれだけ速く走ってるの!?」
その瞬間にアスナにコマチから通信が入った。
「お義姉ちゃん、セラさんに盾を構えててもらって!アイゼンも使って!」
次の瞬間にアスナはセラフィムに向かって叫んだ。
「セラ、アイゼン全開でイージスの準備!」
直後にレンとコマチがこちらに飛び込んできた。
二人はごろごろと地面を転がり、すぐに立ち上がって同時に叫んだ。
「「敵襲!」」
そしてその少し後、前方に敵の姿が現れた。その頭には立派な角が二本生えており、
こちらに向かって凄まじい速度で走ってきているのが見えた。
「メジャーな奴来た、トリケラトプスだ!」
「あれ、でもあれって草食恐竜なんじゃなかった!?」
「う、うん、どうやらソレイユ姉さんの攻撃が当たっちゃったみたいで………」
コマチのその言葉を聞いたソレイユは、テヘペロ状態で言った。
「えっ、本当に?ごめん、ちょっとやりすぎちゃった、てへっ」
直後にセラフィムが大音声を上げた。
「アイゼン倒立、イージス全開!魔導斥力!」
光を放ちながらそう叫ぶセラフィムの盾に、
トリケラトプスが凄まじい勢いでぶつかったのであった。