ハチマンくんとアスナさん   作:大和昭

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第985話 ジョジョの一喜一憂

「さ~て、今日は楽しい楽しいラスボス戦の日だ、

今日の為に仕事も終わらせて休みもとったし、のんびりと見物させてもらうとしようか」

 

 ジョジョはこの日、ハチマン達の黄龍戦を見物する為にわざわざ休みをとっていた。

ポットを用意してコーヒーを入れたジョジョは、そのままソファーに腰を下ろし、

のんびりとそれを飲みながら、現地に繋がる映像をモニターに映した。

 

「まだ三十分あるけど………」

 

 少し早いかなと思いつつ、まあ待つのも楽しみだ、などと考えながら、

ジョジョはモニターを注視した。

折りしも画面の中では、丁度ハチマン達が転移してくる所であり、

ジョジョはナイスタイミング、と手を叩いて喜んだ。

 

「はっはぁ、我ながら神がかってるね」

 

 ジョジョはそう思いつつ、ヴァルハラのメンバー達をじっくり観察した。

 

「見た事が無いタンクがいるなぁ、まあでもさすがはヴァルハラだね、

ここにきてきっちりタンクを増やしてきたのか、

この前ハチマンに電話をもらった時は驚いたけどなぁ」

 

 先日ジョジョはハチマンから連絡をもらい、

今のALOが凄まじくタンク不足でバランスが悪い状態だという事を聞かされ、

ひどく驚いたのであった。

 

「初期のプレイヤー達は、何故タンク装備が存在するのか考えなかったのかな?

まあ当初は対人戦ばかりで、戦闘はどうとでもなっちゃったせいなんだろうけど、

ゲームってのはそれほど甘くはないんだよね、

それとも先見性が無いってのが日本人の特徴なのかな?」

 

 さりげなくひどい事を言いながら、ジョジョはコーヒーを口に運んだ。

 

「まあハチマンみたいな人もいるけど、そういう人は淘汰されちゃうんだろうなぁ、

他人がそうだから自分も、みたいな考えはやっぱり駄目だね」

 

 ジョジョはそう呟きながら、画面に目を戻した。

そこには丁度、七つの大罪の手によって魔砲が準備されており、

ジョジョはそれを見て、慌てて近くにあった資料を漁り出した。

 

「あれは………マホウとかいう武器だよね、

確か命中率が悪い代わりに威力が高いとか何とか」

 

 そう言いながらジョジョは、ソレイユから提供されたALOの資料の中から、

魔砲について書かれた物を取り出した。

 

「ふむふむ、命中率は………低いな、で、チャージまでの時間は………、

ワオ、これならまあ脅威にはならないか、

ふ~む、何々、『いずれスコープも出回るだろうが、そうすると威力が落ちる』だって?

へぇ、面白い事を考えるもんだ」

 

 どうやらそういう事らしい。ジョジョはそれで魔砲への興味を失ったようで、

再び画面に目を戻した。と、画面からプレイヤー達の会話が聞こえてくる。

 

『おい、誰だあれ』

『どこかのギルドのタンクなんじゃないか?』

『いや、でもあの装備はヴァルハラのタンクの装備だろ?』

『あれ、本当だ、って事は新人?』

 

「え?新人?マジで?それにしては強そうに見えるけどな………」

 

(さっき()()()()()()()()()()()()()と一緒に行動してた時も、

同格くらいには思えたんだけどな)

 

 ジョジョくらいになると、当然ハチマン達の出自についても調査済である。

調べた当初はかなり驚いたものであったが、GGOでの活躍を見ると、

別に驚くほどの事でもないように思えてしまうから不思議だ。

そんな情報収集力に秀でたジョジョでも、さすがにここに、

SAOの四天王が全員揃っていようなどとは夢にも思わなかった。

まあ茅場晶彦はもう死んでいるのだから当たり前である。

むしろ知っていたとすれば、それはもはや神と呼ぶに相応しいレベルなのだろうが、

ジョジョは気持ちいいほど人間らしい人間であった。

仮にクライン達の会話を聞いていたら、ジョジョならば真実に近付けたかもしれないが、

その声は画面からは聞こえてこなかったようだ。

 

『まあでもサブタンクだろ?メインは姫騎士か戦女神のどっちかだろ』

 

「僕としては、姫騎士イージスを推すけど、ハチマンはどう判断したかな」

 

 ジョジョがセラフィムを推す理由は極めてシンプルだ。

銃士X~マスケティア・イクスのファンだからである。

 

『一番槍は、予定通り七つの大罪の魔砲に任せようと思う。

それが一番安全な魔砲の使い方だからな、任せたぞ、ルシパー』

 

「え、そっち?もう、ハチマンってば、じらしてくれるなぁ。

しかしあれを最初に使うのか、アタルモハッケ、って奴だっけ?」

 

 ジョジョはその場にいる一般プレイヤー達と同じ感想を抱きつつ、

魔砲の準備をしている女性プレイヤーに目をやった。

 

「あれ、この子がそのまま撃つのか、ふ~ん、

女の子が大砲を撃つのって、思ったより絵になるなぁ」

 

 その女の子は何故か慌てた後にハチマンの方をチラチラ見ていたが、

ジョジョはそれに関しては、相変わらずハチマンはモテるのかな、と思っただけであった。

 

「お、そろそろ始まるみたいだね、って、なぁっ!?」

 

 ジョジョは先頭に立っているのがホーリーだった為、驚いた。

 

「え、彼がメインなんだ、やっぱり凄い人?」

 

 そして戦闘が開始され、魔砲の砲撃が上向きに放たれたのを見て、

プレイヤー達は外れると思ったようだが、

黄龍の挙動を知るジョジョは、当たると確信して一人喝采していた。

 

「おほっ、彼女はラッキーガールだね」

 

 その直後に黄龍が飛び上がり、ジョジョの予想通り攻撃が命中した。

 

「え、結構削れたな、思ったよりも攻撃力があるなぁ、あの大砲」

 

 その直後に空中に『黄龍』の文字が現れ、ジョジョは拍手喝采した。

 

「はっは、上出来上出来」

 

 そして黄龍が動き出し、ジョジョはホーリーが剣と盾を装備する瞬間を見た。

 

「ワオ、ああいうのは羨ましいね、銃じゃ中々ああいうギミックは作れないからなぁ………、

ん、待てよ、光学系なら別に導入しても構わないのかな?」

 

 ジョジョは、検討してみようと考えつつ、

黄龍がホーリーに突撃していく姿を見ながらこう呟いた。

 

「さ~て、『挨拶代わりの最初の一撃』は強力だよ、新人の彼に受けられるかな?」

 

 その言葉から察するに、どうやら戦闘開始の一撃は攻撃力を高めに設定してあるようだ。

もっともその事は、アサギやカゲムネにはまだ無理だったが、

ホーリー自身とセラフィム、ユイユイは、敵が突撃してくる姿から直感的に理解していた。

それ故にこの攻撃をホーリーがあっさり受け止めた時、

二人は感嘆の言葉を漏らしたのであった。

 

「おお、凄いな彼、アイゼンも使わないであれを止めちゃうんだ、

でもまあここからが本番だよ、行け、僕の子供達!」

 

 このジョジョ、ノリノリである。だがその顔は、直後に驚愕に染まった。

 

「マジかよ、この三連撃も止めるの?完全に想定外だって表情をしてたんだけどなぁ、

やっぱりハチマンの集めた仲間達が凄いって事なのかねぇ」

 

 などと驚いていたジョジョであるが、直後に豹変した。

 

「きたきた、姫騎士イージス!と、ピンクのかわいこちゃん!」

 

 この時点でジョジョはまだ、ユイユイの二つ名を知らない。

 

『どうやらこの敵は、天竜というようだね、ちなみに黄龍とは竜の漢字が違うようだ』

『ジョジョの奴、龍と竜の違いを理解して使い分けてる訳じゃなさそうだな………』

 

 その直後にそんなホーリーとハチマンの声が聞こえてきた為、ジョジョは首を傾げた。

 

「今僕の名前を呼んだ?って事は僕に言ってるんだよね?

う~ん?漢字の違いってよく分からないなぁ、今度ハチマンに教えてもらおう」

 

 ちなみにジョジョに聞こえるのは、ハチマンを音声取得のターゲットにしている為、

ハチマンの言った言葉とハチマンに聞こえる言葉だけである。

 

『全軍、攻撃開始だ!』

 

 そしてハチマンが放った大音声から沸きあがった大歓声に、

ジョジョも気分が高揚するのを感じた。

 

「むむむ、み・な・ぎ・っ・て、きたああああああああ!」

 

 ジョジョは、ハチマンの持つカリスマ性を実感しつつ、その高揚感に身を任せた。

だが戦闘が進むに連れて、ジョジョは次第に落ち込んでいった。

 

「ずるいよハチマン、タンクの彼、上手すぎだって………それにヒーラーの子もさ………」

 

 ジョジョが見ているのはもちろんホーリーとユキノである。

ホーリーの防御はまさに鉄壁であり、多少ダメージを負う事はあっても、

それはより痛い攻撃を防いだ結果であり、

それもユキノが常に数ドット残しで威力を調整したヒールで癒していた。

 

「何だいあの子、ユキノだっけ?精密機械か何か?」

 

 ユキノに対する反応は、どうやら万国共通らしい。

大体のプレイヤーが、ユキノを見ると同じような感想を抱くのだ。

 

「しかも遠隔攻撃ユニットばかり集められたせいで、

天竜の近接範囲攻撃が一発も決まらないじゃないかよ………」

 

 ジョジョは、これは崩れないと察したのか、天竜を見るのをやめて、地竜に焦点を当てた。

 

「こっちも同じか………これは今後への課題だなぁ」

 

 地竜戦は天竜戦より更にひどい状況であった。

プレイヤーにほとんど被害を与える事なく、あっさりと沈んでしまったのだ。

 

「うぅ………頼むよ人竜」

 

 だがこちらも状況は大して変わりなかった。

唯一救いだったのは、ソードスキルのオンパレードだった為に、

見た目が派手で、ジョジョを楽しませてくれた事であった。

ジョジョが、おっ、と思ったのは、一番最後である。

 

「あれは………確かハチマンのステディの四天王、アスナ、だったっけ?」

 

 そのアスナの凄まじい突撃を見て、ジョジョは感嘆した。

 

「ワ~オ、ハチマンの好みはああいう勇ましい子なのかな」

 

 今ジョジョの頭の中に浮かんでいるアスナのイメージは、

がたいのいい筋肉質な女性であった。アスナにとってはとんだ風評被害である。

 

「あ~あ、これじゃあ天竜もすぐ沈むか………」

 

 そしてジョジョの見ている前で、三頭の竜は沈み、すぐに合体が始まった。

戦闘はいよいよ中盤から終盤戦へと入る。

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