1日目
月海原学園1年,部活には所属せず放課後は寄り道もせずそのまま家に帰る
それが僕,呉島光実だった
成績は,まぁ,上の方とだけ
学校は嫌いじゃない,それなりには楽しいから
だから今日もまた繰り返しの1日を始めるんだ
「おはようございます,呉島君」
校舎前でそう話かけてきたのは同じクラスで保健委員の間桐桜だった
「ああ,おはようございます,桜さん」
「今日も早いですね」
「んー…でも僕が早いなら,君だって同じだよ」
「ふふっ,そうでした」
彼女と話すのは嫌いではない
別に特別な関係という訳ではないけれどこの学校の中でいえば比較的良く話す方だろう
そういえば…とふと思う
いつもなら“相変わらずだねぇ,呉島は”などと話かけてくる人―桜さんの兄である間桐慎二―がいない
「桜さん,慎二先輩は…?」
「ああ…兄さんは…その…」
「…?」
「その…まだ寝てて」
なるほど,そういうことだったのか
「あの…もしかして兄さんに話が?」
「いえ,そういう訳ではなくて,ただいないな…と」
「そうなんですね,ふふ」
慎二先輩のことは決して嫌いではない
ただ…こう,桜さんと話している度に“妹は渡さん”とか“君は間桐の家に相応しくない”とか,正直に言えばとにかくうざい
何度も言うけれど僕と桜さんはそんな特別な関係ではないし,そうなる予定もない
だから僕は彼のことを“嫌いではないけどめんどくさい先輩”と認識してる
「じゃあ私は保健委員の仕事があるので一旦保健室に行ってきますね」
教室に着き荷物を置いたあたりで彼女はそう言った
「うん,いってらっしゃい」
そう返すと彼女は少しばかりはにかむように微笑み,そのまま教室を出ていった
「…さて,と」
確か今日は数学の小テストがあったはずだ
HRまでまだ時間はある
どうせ他のクラスメイトと話す事もないし,とカバンから教科書を取り出した
ーーー
ーー
ー
昼休み,いつもと変わらない弁当を食べているとふとグラウンドが騒がしい事に気付いた
教室にいる他のクラスメイトも何だとそちらを見,それに釣られるように僕も窓からグラウンドを覗き込んだ
そこで見たものは―
「…藤村先生?」
広いグラウンドを縦横無尽に駆け巡る藤村大河先生だった
担当は2年生だから余り良く知らない先生だけど,それでもその噂は入っていて
だからか彼女が元凶だと分かれば皆“なんだ,タイガーか”と各々の時間に戻っていき
僕もまた昼食を再開した
ーーー
ーー
ー
放課後
とある提出物の締切が今日までであることを思い出し,職員室へ向かっていた
そんな中
「あら,呉島君じゃない」
そう話し掛けてきたのは2年の遠坂凛先輩だった
「こんにちは,遠坂先輩」
「もしかして…職員室に用?」
「はい,葛木先生に」
「あー…何となく察したわ」
彼女が何をどう察したのかは分からないけど曖昧に答えていた
「それじゃぁ私はそろそろ行くわ,引き止めてごめんね」
「いえ,さようなら,遠坂先輩」
…さて,今度こそ葛木先生の所に行かなくては
これが僕,呉島光実の日常
確かにそうだったはずなのだ
次回あたりセイバーと契約させたい(真顔)