お食事中の方にはごめんなさい。
(……ん?)
あれ?いつの間にか眠ってたのか?
寝ぼけ眼を擦りながら身体を起こす。
真っ暗な部屋を付けっ放しのパソコン画面の光が照らしていた。
映っているのは最近始めたネトゲの画面だ。
街中で俺のアバターが腕組みをしながら突っ立っている。
長時間ほっておくと取る待機状態のポーズだ。
(確か……、メシ食った後ネトゲしてて……。そうか、そのまま寝落ちしちまったのか……)
寝起きの頭が少しずつはっきりしてきた。
久しぶりのゲーセンで疲れてたのかな?とりあえずログアウトするか。
ソロでやってるからここらへんは気楽だ(ボッチとか言うな!)。
時計を見ると夜中の2時だった。そんな長い時間眠っていたわけじゃないみたいだな。
「喉乾いた……」
台所で何か飲むか。確か冷蔵庫にサイダー(三本の矢のヤツね)があったな。
パソコンを落として席を立つ。
部屋を出て台所に向かった。
――俺が出て行った後、パソコンが勝手に起ち上がった事には気付かなかった――。
「ふ~……」
サイダーを飲んで一息つく。やっぱ日本人はコレだなっ!
家の中は静かだ。俺一人しか居ないのだから当たり前なんだが。
親父は4月から単身赴任。お袋はそれについて行った。
……もう高校生だからって息子を一人置いていくとか、親としてどうよ?
一人の方が気楽で~、とか言う奴は家事の苦労が全然わかってないに違いない!
……話が逸れた(って、誰と話してるんだ俺は?)。
サイダー飲んで人心地付いたし、どうすっかな?
このままもう一眠り、といきたいとこだけど完全に目が冴えちゃったんだよね。
風呂でも入るか、ネットサーフィンでもするか。
しばらくどう時間を潰すかを考えた。
「……部屋に戻るか」
何も決まらなかったのでとりあえず戻ることにした。
部屋と廊下の明かりを消して階段を登る(部屋は2階にある)。
部屋に入るとモニターが起ち上がっているのが目に入ってきた。
「ありゃ、消したと思ったのに……」
怪訝に思いつつ画面に目をやる。
デスクトップにウィンドウが一つ開いていた。
そこには円の中にでっかい星と妙なアルファベットが書かれたマークが浮かんでいた。
いわゆる魔法陣ってヤツか?なんでこんなモンが……
「んん?何か見覚えがあるような……?」
うーむ、思い出せん。ゲームだか何かで見た気がするんだが……。
近くでよく見てみるか……、と近づいた途端、
「なっ?」
魔法陣が、いや魔法陣だけじゃない、画面全体が光り始めた!
「ちょっ!何だ何だ!?新手のウィルスか!?」
勘弁してくれ。直すのも一苦労なんだぞ!
急いでシャットダウンさせようと電源ボタンに手を伸ばす。
「っ!?」
――嫌な予感がして手を引っ込めたのと、モニターから飛び出してきたナニかが手のあった場所に噛み付いたのはほとんど同時だった――。
「な、な、なっ!?」
驚きのあまり舌が上手く回らない。
混乱している間に、ソレはモニターから完全に這い出てきた。
節くれだった長い胴体。
掴まれたら肉ごと持っていかれそうな鋭い爪。
攻撃的に尖った牙。
一見して虫のようにも見える、不気味なバケモノだった。
その凶悪な外見に、思わずへたり込む。
ソイツはこっちに向かって近づいてきた。
「く、来るなっ!来るなー!!」
恥も外聞もなく叫ぶ。こんな時に気にしてられるか!
何とかして立ち上がろうとするが、足に力が入らない。
恐怖のあまり腰が抜けたらしい。こんな時にっ!
それでも逃げようと後退る。背中がドアに当たった。ココから外に逃げればっ!
気力を振り絞って立ち上がり、ドアノブを捻る。
「あ、開かない!?」
焦ってドアノブを回すが、ドアは開く気配を見せない。
何でだよ!鍵なんてかかってねえぞ!何で開かねえんだよ!
なら叩き壊そうとドアを殴りつける。
早く、早く!急がないとアイツが……っ!?
――足に何かが巻きついてきた――。
そのまま、身体を這い登ってくる。
「あ、あ、あ?」
そして、目の前にソレは現れた。
剥き出しの牙と凶悪な目をしたバケモノが……。
身体が動かない。まさしく蛇に睨まれたカエルのようだ。
ソイツはゆっくりと俺の顔に近づいてきた。
「や、やめ……」
思わず口を開く。その瞬間だった。
ソイツが俺の口の中に飛び込んできた。
「っっっっっ!!!!!?????」
恐怖と激痛と嫌悪感にパニックに陥る。
異物が喉を通り抜ける感触に身体が拒絶反応を起こす。
何とか吐き出そうと食道が痙攣を起こすのがわかった。
だがソイツはお構いなしとばかりに更に奥に向かって進んでいった。
――やがてソイツは完全に俺の体内に入り込んでしまった――。
「があああああああああああああああああああああっ!?」
次の瞬間、信じられないような激痛が全身を襲った。
思わず倒れこみ、苦しみもがく。
まるで身体の奥で何かが暴れまわっているような、
身体そのものを別の何かに作り変えられているような、
今まで体験したことのない痛みだった。
「が、が……」
あまりの痛みに精神が音を上げたのか、意識が遠くなってきた。
最後の瞬間俺の目に映ったのは、
モニターに映った、どこか見覚えのある満面の笑顔であった。
真3のあのシーン、痛そうですよね……