「うわああああああああああああっ!!」
「きゃああああああああああああっ!?」
く、来るなっ!来るなって、あれ……??
目の前に迫るバケモノの顔が唐突に掻き消え、見慣れた天井が目に映った。
バケモノの姿を探すが、どこにも見当たらない。
呼吸は荒く、心臓もやかましいくらいに激しく鼓動している。
暫く横になったまま、呼吸が整うのを待つ。
……段々と落ち着いてきたので、恐る恐る上半身を起こした。
起きたのはベッドの上だ。
部屋に異常はない。あれだけ暴れたのにも関わらず、その跡すら無かった。
窓に目をやるとカーテンの隙間から光が漏れていた。鳥の鳴き声も聞こえてくる。
……バケモノの姿は影も形も無かった。
いつもと何も変わらない朝の光景だ。
……そう、目の前に立っている女の子も含めて。
「お、脅かさないでよ、宗司……」
茶色がかった髪を肩口まで伸ばし、ファッションモデルばりのスレンダーなスタイルをした綺麗な顔の女の子だ。
いかにもびっくりしたという風に胸に手を当てている。
彼女の名前は
「……お早う、桜?」
とりあえず朝の挨拶をする。挨拶は大事よ!
「お早う、じゃないわよ。うなされてたから起こそうと思ったら、急に大声出すんだもん。ビックリしちゃった」
どうやら俺の叫び声に驚いたらしい。
「あー、ワリィ」
「……いいけど、どうしたの?悪い夢でも見た?」
そう言うと探るように顔を覗き込んできた。
小さい頃から見慣れている顔だが、間近で見るとやっぱりドキッとする。
……改めてみると、やっぱ美人だよな、コイツ。
その上成績優秀、スポーツ万能。
それらを鼻にかけることのない優しい性格ときた。
学校の連中がアイドル扱いするのも分かるわ。
……実は音痴なのは本人の名誉のためにも内緒だ。
こんな完璧(一歩手前)超人が俺の幼馴染だというから世の中分からない。
お陰で学校の男連中のヤッカミが激しいこと激しいこと。
いくら俺と桜はただの幼馴染だと主張しても聞く耳持ちやしない。
こないだだって……。
「宗司?」
桜の声に我にかえる。
いかん、つい考え事に熱中してしまった。
「スマン、何でもない」
「そう?それならいいんだけど」
……あんまりグダグダやってたら遅刻しちまうな。
そろそろ着替えるか。
「朝ごはん出来てるから、早く来なさいよ」
そう言うと部屋を出て行った。
一人暮らしになってから食事作ってもらうようになったけど、学校の連中にバレたら半殺しだよな……。
益体のない事を考えつつ、制服に着替える。
ふと、もう一度部屋を見渡した。
やっぱりいつも通りの俺の部屋だ。
バケモノが這いずりまわった跡も、俺が暴れた跡も無い。
床に倒れていたはずなのに、起きたらベッドにいたのも妙な話だ。
そこまで思い至って、あのバケモノがどうなったかを思い出した。
シャツをめくって自分の身体を確かめる。
……昨日までと何ら変わりない、貧弱ではないが筋骨隆々でもない、至って普通の身体がそこにあった。
「夢、だったのか……?」
普通に考えればそうだ。
パソコンのモニターから変なバケモノが出て来て、俺の身体に入り込んだ。
アニメや映画じゃあるまいし、現実でそんな事起きるわけがない。
だが……、
「それにしちゃヤケにリアルだったんだよなぁ……」
今でもハッキリ思い出せる。
バケモノに喉を犯される苦しみ。
身体がバラバラになりそうな痛み。
どれもが夢とは思えない、リアルな感覚だった。
「けど、なんともないってことはやっぱり夢だったって事、だよな?」
半ば自分に言い聞かせるように結論付け、部屋を出た。
朝飯を食べ終わり、桜と一緒に家を出る。
今日も太陽は絶好調。朝だというのにご苦労なことだ。
「おじさん達はもう出たのか?」
「うん、私がこっちに来る前に出た」
桜の両親は今日から長期の旅行に出かけるらしい。
世界一周旅行だか何だかって言ってたな(ホントか冗談かは知らんが)。
「しっかし、年頃の娘を残して行くか、フツー?」
「あははは……」
俺のボヤきに苦笑で返す桜。
親父達も大概だが、おじさん達も相当なもんだよな。
おばさんなんか、
いくら幼馴染だからって、娘と同い年の男に言っていいことじゃないだろ……。
「いいよ。たまには夫婦水入らずで過ごさせてあげたかったし」
「……そういう問題かぁ?」
などと喋りながら桜と一緒に登校した。
いつもと何も変わらない、平和な一日の始まり。
――この時は、まだそう思っていた――。
3話まで書いたのに、まだ日常パートだよorz
血沸き肉踊る大冒険&バトルを期待してる人
他作品とのクロスオーバーを心待ちにしてる人
大変申し訳無い