……主人公以外が
『女神転生』
通称メガテン。
和製RPGの代表格であるDQやFFと同様、ファミコン時代から続くロングランシリーズだ。
王道的ファンタジーのDQ・FFに対し、ある伝奇SF小説を元にしていたコレは独自の路線を展開、現代を舞台にしたオカルトと科学の入り混じるダークなストーリーに当時のユーザーは衝撃を受けた。
ユーザーを更に惹きつけたのが「悪魔」たちの存在だった。
「悪魔」と言ってもコウモリの翼に山羊の頭のアレではない。いや
メガテンでいう「悪魔」とは、古今東西あらゆる神話・伝承・物語に登場する神や妖精、神獣や魔龍といった幻想の存在のことだ。
メガテンには敵として登場する「悪魔」達を交渉で仲「魔」にするという、独特のシステムが採用されていた。
加えて名だたる絵師たちによって従来のイメージを払拭された「悪魔」達の斬新なデザインもまた、ユーザーの関心を集めた。
ダークなストーリーと「悪魔」。
この二つによって『女神転生』は、誕生以来数十年に渡り支持を受け続ける傑作シリーズとなったのである。
「何だよコレ……?どうなってるんだよ!?」
……そして今、俺達の目の前で「悪魔」……ガキが生徒達を襲っていた。
その事実が俺を大いに混乱させた。
「に、逃げろ!逃げるんだ!!」
「痛ぇ……。痛ぇよぉ……」
「み、みんな落ち着いて!校舎の中は安全だから!」
グラウンドから校舎へと逃げこむ者、「悪魔」に傷を負わされ泣き叫ぶ者、何とかして皆を落ち着かせようとする者、混沌とした状況に俺の混乱が更に深まる。
――ド ク ン――
「う、ああ?」
汗が止まらない。頭の中は真っ白だ。
何をどうすればいいのか、全く分からなかった。
――なぜ?なぜこんなことが?やつらはどこからきた?あれはほんものなのか?――。
空回りする思考に意識を持って行かれそうになった、その時、
「っ!?」
耳に飛び込んできた音にふと我に返った。
顔を上げ音の源を探る。
グラウンドの真ん中……、四匹のガキがいる辺りに……、髪の短い女の子が!それにあれは!
「この!」
「ッ!」
ガキの身体が吹き飛ばされ、その身体が激しく地面に叩きつけられる。
それを成した者……透明な羽を持つ妖精の少女は標的が動かないのを見て、後ろにかばっていた少女に叫んだ。
「早く逃げて!」
「ひゃっ、ひゃい!」
怯えていた少女はその声で正気に戻ったのか、リボンを揺らしながら校舎へと駆けていった。
少女が逃げていったのを確かめ、妖精の少女は改めて目の前のガキ達に向き直る。
「あの子も逃げたし、あとは……!」
「キキキッ」
「グゲゲゲッ」
残るガキに視線を向ける妖精の少女。
こっちは一人だが問題ない。遠くから狙えば楽勝で勝てる。
背中の羽をはためかせ距離を取ろうとした少女だったが、ふと目の前の光景に疑問を覚える。
二匹しかいない?さっきまで四匹いた。一匹は仕留めた。残りは三匹のハズ。
……もう一匹はどこへ?
「ひゃあああああああああっ!」
「ケーッケッケッ!」
「っ!さっきの子っ!」
後ろから聞こえてきた悲鳴に反射的に振り向く。
……それが失策だったと気付いたのは、背中に焼けるような痛みを感じた瞬間だった。
「っ!しまっ……た……」
背中にガキの爪を受け、地面に落ちる妖精の少女。
一方、逃げた少女も一匹のガキに追い詰められていた。
「来ないでぇ……。あっちに行ってよぉ……」
「キ、キ、キ」
奇声を上げて迫るガキの姿に、恐怖のあまり後退る少女。
「よせ!危ない!」
「離してよ!急がないと妹が!」
「だ、ダメです!危険です!」
「はーなーしーてー!」
少女の姉と友人が助けに行こうとして、周りに止められていた。
「キッ!」
「きゃあっ!」
ラベンダーを思わせる綺麗な髪が一筋、振り下ろされる爪に持っていかれる。
「あ、あ、あ」
観念したのかへたり込む少女。
ガキは値踏みするかのように目の前の獲物を見下ろした。
「だ……」
妖精の少女は意識を失ったのか、起き上がる様子はない。
「誰か……」
姉も友人も周りの制止を振りきれない。
「誰か……、お願い……」
もう少女を助けられる者は、誰もいない。
「お願いだから……」
目の前の獲物を仕留めるべく、ガキがゆっくりと腕を振りかざす。
「助けて…!」
呆然と見上げる少女の瑠璃色の瞳に、振り下ろされるガキの爪が映った。
「イヤァァァァァァァァっ!」
――その時だった――。
「だあらっしゃああああああああああああっ!」
「ギヒィッ!」
少女の頭にガキの爪が届く寸前、目の前からその姿が消えた。
呆気にとられる少女に声が掛かる。
「おい!大丈夫か!」
「へ?」
その声に不思議な暖かさを感じ、見上げていた顔を元に戻す。
その瞳に映ったのは、
左手に細長い包みを持った、見知らぬ少年の背中であった。
次回、ヒーロー見参!?
今度こそ主人公が戦います
いや、マジで