オレンジ、パイン、イチゴ、スイカ、レモンエナジー、ピーチエナジー、チェリーエナジー、カチドキ、極。
九条誠一は知っていた。
この眼前に立ち塞がる敵を何となく理解していた、斯く言う彼もそれに『近い』存在であるからだ。
この街の悲惨な状況に彼の中の一種のジレンマが呼び起こされた、それによりとても腹立たしく感じた。愛用のバイク《サクラハリケーン》で駆けるその街の光景が懐かしく思えてしまった。
ーーームカつく。
彼は激昂していたが、しかし頭の中ではとても冷静沈着であった。彼が最初に考えたのは敵の『解析』だった、彼が戦闘において最も重要だと考えているのは敵の『存在解明』だと思っている。九条が存在していた『世界』では多種多様な化物、即ち怪人と一日中戦っていたのが嫌な記憶だ。
しかし、運が良かった。と九条は安堵した
何しろ今戦っている敵は初めての相手だ、相手がどんな戦い方をしてくるか分かったものじゃない。だからそんな状況にも即座に対応できる《鎧武》の力が今回の週で引き当てたのは、幸運と言ってもいいだろう。
すると
「危ないッ!!」
盾を持った女が叫ぶ、知ってる後ろから襲おうとしてる奴のことだろ?すでに認識済みだ。九条の行動は早かった。左腰に装備されている《無双セイバー》を引き抜き、それを自身の脇を通るように後方に突き出す。硬い肉の感触、確実に当たった事を確認し、背後に居た長身の半裸の男を長椀の男の方に蹴り飛ばす。
ーーー決めるか
想定はできた、後はさっさと終わらせるだけだ。九条はオレンジの刀身の小刀《大橙丸》と《無双セイバー》を合体させ、《無双薙刀》に変化する。そしてベルトにロックオンさせていたオレンジロックシードをオープンした状態のまま取り外し、そのまま《無双ナギナタ》に取り付ける
《イチ、ジュウ、ヒャク、セン………》
電子音がカウントダウンを始めた、『大橙丸』にオレンジ色のエネルギーが注がれるのがわかる。男たちは本能的に何か危機を察したのか撤退をしょうとする。しかしそれを簡単に逃がすわけには行かない。
九条はナギナタの《無双セイバー》からオレンジのエネルギー体を吹き飛ばす。それに捕らえられた男たちはなんとか抜け出そうと足掻くがそれは無意味になる。
《オレンジチャージ!!》
「そりゃあッ!!輪切りにしてやるぜッ!!」
《大橙丸》にパワーが充填された、それと同時に九条は男たちの元に走り出した。そしてオレンジのエネルギー体ごと男たちを……
斬ッ!!斬ッ!!と切り伏せた。
次の瞬間、男たちは光の粒子と成り、空へと還っていった。
「…………さて、色々と話してもらおうか」
そう言って彼女らの方へと向き直った。
●●●⬛●●●
『………現在、カルデアは機能の八割を失っています。残されたスタッフだけでは出来る事が限られています。なので、こちらの判断で人材はレイシフトの修理、カルデアス、シバの現状維持に割いています』
ドクターロマニが虎視眈々に言う、それを真剣な表情でオルガマリー所長が聞きやる
『外部との通信が回復次第、補給を要請し、カルデア全体の立て直し………と言った所でしょうか』
「結構よ。わたしがそちらにいたとしても同じ方針にしたでしょう………………はぁ。ロマニ·アーキマン、納得いかないけど、私が戻るまでカルデアを任せます。私たちはこのままこの街…………特異点Fの調査を続けます」
『ウェ!?所長、そんな爆心地みたいな現場、怖くないんですか!?チキンの癖に!?』
「…………ほんっとうに、一言多いわね貴方。帰りたいのは山々だけどレイシフトの修理、時間がかかるんでしょ?それにこの街にいるのは低級の魔物と言うのは分かったし、デミ·サーヴァント化したマシュがいれば安全よ……………それに、ね」
所長が横目で彼を見やる、彼はバイクに寄っかかってこちらを見ていた。
「………ねぇ、アンタ名前なんて言うのよ?」
「……………九条、誠一。」
「と、言うことでこの九条誠一も協力するからなにも問題ないわ」
所長が誠一なる青年を指を指し、ロマンに告げる。ロマンは一瞬呆気に取られたが、すぐさま驚きの表情に変える。
『しょ、所長!?なにを考えているですか、彼は現地の一般人ですよね!?魔術の魔の字を知らない子を戦力としていれるのですか!?』
「それに関しては問題ないわ、彼は魔術を一切使わずサーヴァント二体相手に圧倒し撃退したわ。戦力としては申し分ないはずよ」
『………彼、実はサーヴァントなんじゃないんですか?生身の状態でしかもサーヴァント二体を倒したなんて、並の魔術師には真似できませんよ』
「…………俺はその《サーヴァント》って奴じゃないし、死んだ覚えもない、それに《偉業》を成したことも無いしな」
「…………にしては、身の丈の合わない《力》を使うわね?」
疑いの眼差しを向ける所長に、知るかといって誠一は身体の凝りをほぐすように背伸びをする。
「………ということで、藤丸立香、マシュ·キリエライト、九条誠一ら三名を特異点探索員と任命します。………あとのことは任せたわよ、ロマン。」
『あ、はいわかりました。ご健闘を願います……』
その言葉をあとにロマンの声は途切れた、訝しげそうにため息を付き所長は誠一を睨みつけた。
「………………。取り敢えず、今のところはあなたは力を貸してくれる『協力者』として扱うけど、その後は……………覚悟はしときなさいよ」
「………………肝に銘じとくよ、所長さん。」
険悪な空気があたりを凍りつかせた様に感じた、少しの間睨み合っていた二人に仲裁の仕様のない私達は何がなんだかよくわからなかった。そんな私達の事を察したのか所長さんがこちらに来るように手招きする。
「あの、なんでしょうか所長……」
「いいから、黙って聞いて二人共。」
真剣な声音で囁く様に耳元で話し始めた、少し混乱したがすぐさま私は聞き入り込んだ。チラチラと誠一の様子を観ている、誠一は辺りを見渡しているようだ。
「…………イイ、二人共。アイツはあんまり信用しないで」
「え、どうしてですか所長。彼は先輩の命の恩人ですよ」
「………よく考えて、マシュ。カルデアが人為的な破壊工作によって、現在の機能の八割が停止されていること、そして未だにその犯人は分からない、そこに現れたアイツ。なにが何でも出来すぎよ。」
「で、でもあの人が犯人だと決めつけるはおかしいですよ。それ以前にあの人は、九条さんはカルデアにいなかったじゃないですか、それだったらどうやって九条さんが爆弾なんて仕掛けられるんですか!?」
「…………アイツが使っていた魔道具?みたいな物を使った時、空間が裂けて鎧が現れたわよね?」
そういえば、なんか《オレンジ!!》とか言って頭上から鉄のミカンが出てきた。とてもシュールで少し呆気に取られたけど
「それが、どうしたのですか?」
「それが問題なのよ、アイツは一切魔力を使わず、空間移動の力を使った。それはつまりカルデアでも察知できないような未知の異能。それを使えば誰にも気づかれず破壊工作をすることはできるの……」
未知の存在、それだけで誰かを疑うのだろうか。憤りが拳に集まる、たとえ彼がカルデアを襲った張本人だとしても私はどうしても、彼のひたむきな瞳の奥に燃える熱い思いが嘘だと思えない。
「おい、そろそら行くぞ。奴さんがぞろぞろとこっちに向かってきている」
彼が指差す方向には先程の二倍はある大量の竜牙兵だった、流石にあの量は捌ききれないそう私達は判断し、その場から走り逃げ去った。私は、後ろから着いて来る彼を見やって何かを安心させようとした。
次回、協同
運命は廻り始めた………