馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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Aクラスへ挑む話
プロローグという名の紹介


「相変わらず長い坂だぜ~……何か面白いことねぇかなぁ」

 

 そう呟きながら坂道を登っていく俺。

 今の季節は春。坂の両脇の桜が満開になり、風で何枚か飛び散っているのを見ると癒されるが、向かっている先は宴会場ではなく、通っている学園。

 

 あぁ、面白いことねぇかなぁ。

 

 まぁ例えばだけど誰かが遅刻して絶望してる姿とか、ラブレターもらったと思われたら追っかけられてたりとか。

 

 ……さすがにそれはなさそうだなぁ。来るのは二度目だけど。

 

 

「こうなったら帰り道スケボーで下ろうかな? ……やばい。想像しただけで面白そうだ」

 

 だったら帰ってスケボーもってこねぇとなぁ、と思いながら歩き続ける。

 

 ……さっきから誰だお前と思っている誰か。しゃぁないから今ここで自己紹介してやる。

 

 

 我こそは文月学園二年にして転校生の豊橋流であ~~る!!

 

 

 ……このネタ知ってる奴いるのだろうか。

 まぁそれは置いといて。

 

 

 改めて言うけど俺の名前は豊橋流。今年度から文月学園っていう、ちょいと変わった学校へ転校してきた、経歴こそおかしいがいたって普通の高校二年生だ。

 転校してきた理由ってのは……流そうぜ! 流だけにな!!

 

 …………コホン。ともかく、ちょっとした事情でこちらに来た転校生ってこと。

 

 で俺が通うことになった文月学園。ちょいと変わったといったが、ここで説明しておこ……

 

「あ、着いちまった」

「学校に着くのが嫌だったのか、豊橋?」

「そうじゃないっすよ、先生。ただ説明し足りなかっただけっす」

「誰にだ?」

「秘密っすよー」

「……」

 

 何故か頭に手を当てている筋肉隆々で下手すると体育教師と間違われそうな生活指導の先生――西村宗一先生。

 一体どうしたんだろうな?

 

「まぁいい。行け」

「俺、クラス割もらってませんよ」

 

 そんな風に思っていると、ため息をついてから追い払うかのように西村先生が言ってきたので反論した結果。

 

「テストサボタージュした人間が良くいえるな」

 

 苛立たしそうにそう返ってきた。

 俺はあくまで笑顔で言った。

 

「だからあの時は謝ったじゃないですかー。まだ根に持ってるんですか?」

「持ってないと言ったらウソになるが……言っておく。いかなる理由があろうともテストを受けなかったものは零点……つまり、最底辺のFクラス行きだ」

「へ?」

 

 最底辺? Fクラス? ていうかチャンスって一度きり?

 俺は少し冷や汗をかきながら言った。

 

「い、いやだなー、先生。俺に“れっきとした理由”があって学校に来れなかっただけですよ? 再テストあるんだろうなぁと思いながら待っていた人間ですよ?」

「諦めろ。これも規則だ」

 

 そう言って封筒を渡してきた先生。

 先生の言葉が嘘だと信じて恐る恐る開けてみるとそこには。

 

 

『豊橋流  Fクラス』

 

 紛う事無き俺の名前と、厭味ったらしくきれいな字で書かれてるクラス名があった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「最悪だ……まさか本番一回だけだったのか……」

 

 肩を落としながら、生徒手帳に書かれている場所へ向かう俺。

 旧校舎の一番奥だとよ……どう見ても木造だぜ? 下手したら壊れるじゃ済まないんじゃねぇか?

 そんな未来について考えながらも気落ちしつつ歩いている俺。

 

 と、そこで甘いにおいがしたのでそのにおいのもとへ行ってみると、

 

「おいおい。なんつぅ豪華な設備だよ。豪華すぎて逆に落ち着かなくなっちまうわ」

 

 床は赤いカーペット、机はパソコンつき。さらにドリンクサーバーやらお菓子屋らが置いてあるのを見て思わず声に出してしまった。

 

 ってか、このクラス一体なんだ……ってAクラス!?

 おいおいおいおい馬鹿じゃねぇかここの学園長! いくら成績優遇だからってここまでするか!?

 

 ……はぁ。あん時もそうだったから、そうだと割り切るしかないか……。

 そう思って教室を眺めるのを切り上げ、自分の教室へ向かおうと足の向きを変え歩き出そうとしたら……

 

「うわぁ……Aクラスってこんなに豪華なんだぁ」

 

 後ろでそんな声が聞こえたので反射的に振り返ると。

 

 窓越しで眺めて羨ましそうにそんな感想を漏らす、印象的には悪くないのにどことなく残念な感じがする奴がいた。

 不思議な奴だなぁと思いながら、俺はカバンを肩の方にかけて教室へ向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「なぜだろう。悪意の塊、魔窟、昔の牢獄って言葉しっくりときそうな感じがする……」

 

 Fクラスに着いた俺は、その凄惨たる現状を見て、泣けてきた。

 はぁ。ぶっちゃけやる気が失せるんだが……そうも言ってられないか。

 

 

 もとより自分のミス。そう考えていくしかない。

 そんなことを思いながら、俺は今にも壊れそうな引き戸を開けた。

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