次の日。
あの妹が来て「学校に行きますよ」と言われたので早めに学校に来た俺は、そのまま学園長室へ向かった。
「邪魔することに何の気負いもない」
「だったらいうんじゃないよクソガキ」
そう言ってタブレットを眺めてふんぞり返っているのはこの学校の長でありシステムを偶然開発した
「偶然は余計だよまったく」
「逆算でシステム解明してるくせに何言ってやがる。しかも
「ふん。あんたの化け物ぶりはよく耳にするからね。しかも丁度独り身になったのなら使うしかないじゃないか」
そう言うとババアはタブレットを机に置いて「で、始業時間一時間前に来た理由ってのはなんだい?」と興味がなさそうに質問してきた。
「俺を勘当した家の妹他二名がここに転校して来るそうだが」
「そうなのかい」
それだけでどういう意味なのかを知った俺は、思いっきり、盛大にため息をついてから言った。
「経営を教頭に任すなよ。バカじゃねぇの?」
「うるさいさね。あたしは根っからの科学者なんだよ」
「やーいやーい人の見る目がない憐れな科学者」
「……あんた無害そうな顔して実は毒舌だね。そりゃ親にも勘当されるさね」
「はん。毒舌だけだったら勘当されるわけないだろ」
そう言いながら俺はポケットからあるスイッチを取り出し、押す。
「何さねそれは」
「あ? 俺特製妨害電波。範囲はこの建物全部だな」
「…いつの間に作ったんだい?」
「この学校に盗聴器とかいろいろあり過ぎるからな。普通に生活するのに必要だと思って作ったんだよ」
「で、
何かを確信した様子で訊ねてくるババア。
なんでそう言うのだけ鋭いんだよと思いながら、俺はそのスイッチをあちこちに向けながら歩き回る。
すると、植木鉢の方でスイッチから音が鳴った。
「見っけ」
「なるほど。盗聴器を見つけられるのかい」
「そうそう。これをとりあえず売り物にしようかと思案中」
「……金がどんだけ欲しいんだい」
ため息をつきながらそんなことを言ってきたので、俺は盗聴器を取り出して潰し「別に。金なんていくらでも増やせるからそこまで欲しいなんて思ってない。ただ、対抗できるまでの力を得るのに手っ取り早い金が必要なだけだ」と答えた。
「鈴鹿財閥にかい?」
「いや、ケンカ売ってくる奴全部」
「そらまたなんとも規模のデカい話さね」
絶対話を信じてないのが分かる口調だったので俺はそれ以上語らず、「なぁ。俺はいつから手伝うことになるんだ?」と質問する。
「今から頼めるかい? ちっと腕輪がギリギリになりそうだからね……」
「あ、そう。了解。良かったらプログラム見せて」
「いいさね別に。あんたは盗まないだろ?」
「盗む? なんでだよ。俺はゲーム作るだけだぜ?」
「そうかい。ならさっさと開発室へ行ってきな! 鍵は持ってるだろ?」
「オッケー」
やったこれで今日はずっと籠っていられる。
そう思っていたら、
「授業が始まったらちゃんと行きなよ」
……ま、当たり前だな。
そんなこんなで俺が普通に授業が出たのは、三校時目からだった(ババアが来た時だった)。
「ういっす」
「なんだ流。明久以上に遅刻とは」
「珍しいか?」
「そうだな。以前だったら考えられないな」
教室に入ったら雄二が段ボールの机に教科書を並べて声をかけてきた。
俺は自分の席に座って教科書を広げず、腕を伸ばしてから見慣れた光景に呟く。
「……また血が流れてるな」
「ああ…また血が流れてる」
「ギブギブギブ!! や、ややややめてよ美波!!」
「(ブシャァァァァァ!)」
「だ、大丈夫ですか土屋君!」
「なんというか、お主は本当に馬鹿じゃのぉ」
Fクラスはバカの集まりと言われている。
それは本当だ。ここまで馬鹿な奴らはいない。
本当に……本当に……。
「よくこんな学校に転校して来ようと思ったな」
「まったくだ。この学校に転校しようと思ったやつの気が知れない。しかも、鈴鹿財閥の娘とか」
どうやら本当に転校してきたらしい。
昨日久し振りに会ってバカになってるなと感じた俺はまぁ順応するんじゃないかと思いながら「他にお前が知ってる奴らいた?」と訊くと、「いや。後の二人は名前を聞いてもピンとこなかったな。翔子は知ってるようだったが…」と答えてくれた。
となると該当する奴は一気に絞られたなと思いながら開始のベルが鳴ったので、俺は片肘をついて授業を受けることにした。
三校時目が終わり。
「そういや転校生のクラスどうなってるか分かってるのか?」
あまり動こうとしていない雄二に転校生の分布を聞いてみると、答えたのは土屋だった。
「……二人はAクラス。一人はBクラス」
「ふーん。調べるの早くね?」
「……戦力調査は兵法の基礎」
「その割にお前鼻血出してる気がするんだが……」
「これは風邪」
「なんとなくムッツリーニの意味が分かったからさっさと鼻血を止めろ」
よくこんなので生きていられるなと逆に感心していると、急にクラスが静まった。
それを感じて俺も自分の席から視線を送ると、案の定見知った奴がそこに立っていた。
白髪のロングで艶やかな色合い。
胸は人並みであり、体型もそれほど細いわけではないがどこか蠱惑的。
顔立ちはどこか人形を思い起こさせるが笑顔が絶えず、また顔立ちが整っているので笑顔にやられる大人の男も少なくない。
そんな彼女が教室の入り口に立ってこの部屋を見渡していた。
ああ残り二人のうちの一人はこいつか。確信した俺はもう一人についてのあたりをつけていると、もう一つの扉から「ここにとんでもなく頭のいい人がいるって噂なんだけど……」と聞き慣れた声が聞こえたので、もう一人が確定。
それらを総合して何とも厄介な奴らだなぁと思った俺は、見つかるより早く移動しようと窓ガラスに手を掛けたところ――見つかった。
「流さん……」
普段騒がしいのだが女が来ると(特に美形)途端に静まる我がFクラス。そのせいで俺の名前が教室中に聞こえる。
それが分かった瞬間、俺はすぐさま飛び降りた。
『待ちやがれ!!』
瞬時に反応するのがFクラス。他人の幸運(女生徒に声をかけられるなど)を許せない彼らにとって、もはや名前が挙がったのは
ここからの対応が素早いのになんでテストだといい点取れないんだろうかと着地した俺は思いながら、先回りされる前になんとか研究室へ向かうことにした。
「あっぶね~」
「授業はどうしたんさね」
「追われてたからフケた」
「……流石バカ達だねぇ」
感心しているのかわからない口調でそんな感想を漏らしながら、ババアはパソコンの画面から目を離さない。
俺は息を整えながら質問した。
「どうよその腕輪。かなり不具合を無くした筈なんだが」
「そうさね。あたしが悩んでいた不具合が一気に消し飛んだ。そのおかげでこうして次の段階へ行けているんだけど……あんたは余程好かれているみたいだねぇ」
「好かれてる? この俺が? 『監視するため』の間違いだろ」
「まぁあんたの化け物ぶりじゃそう判断するのも仕方ないと言えるけど……人間それだけじゃないよ」
何かを知ったように作業をしながら俺に説教を垂れるババア。
それに対し、俺は「たいして進まない作業をやって締め切りが刻一刻と迫ってる人間に説得力はあるのか?」と質問する。
「うっ、うるさいさね。これから本気で取り組もうと思ってたところさ」
「発表当日までやるってか? ババアも案外バカだな」
「年寄りにバカとはなんだい、バカとは。それと、あたしは学園長だよ」
「俺には関係ないね。年寄りだろうがなんだろうが、研究や製作をしている時点で『当事者』なんだよ。当事者がバカなスケジュールでやってるんだから言ってもいいだろ」
「……ふん」
返す言葉がないのか鼻で笑うババア。それを聞いた俺は開いてるもう一つの腕輪の方へ行き、パソコンを起動させる。
「やるのかい?」
「あたぼうよ。なんで元婚約者に自称舎弟と元妹がいる場所に戻らないといけないんだ」
「……ってことは、三人とも恐ろしい程に有名人じゃないか。あんた、どうやって躱すんだい」
「何とか躱すしかねぇだろ。俺はもう、完全に袂を分かったんだから」
「ま、無理だろうがね」
「哀しいこと言うなババア!」
そんなこんなで、この日一日中俺は研究室に籠っていた。
帰宅したのは午後八時。そこから会社から送られてきた書類を読んで意見を書き、深夜一時になって俺は終わったので、寝た。
明日からどうやってやり過ごそうか……。
こちらの作品は短くなりそうです。