馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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留美達が来店してきました。


知り合い来店

「お兄様! 決まりましたわ!!」

「――と言っておるのに行かぬのか?」

「面倒」

「……そこまで言い切ると清々しく感じるのはなぜじゃろうな?」

 

 今は留美たちの席に近寄らない範囲で活動している俺。正直鬱陶しいことこの上ないが、近くにいるというのに何をそんなに叫んで指名するのだろうと考えるが投げ捨てる。

 

 留美たちを除けば客の回転率は変わらず。正直あの三人のところへ自動的にいく男子がいるというのに無視するという暴挙のせいであっちが止まっているだけ。

 その矛先が俺に向かってくるんだからやめてほしいよな……!!

 

「流よ! お主何を折ろうとしておるんじゃ!?」

「なにって……ただのペンだろ」

「それは万年筆じゃ! ミシミシいっとるぞ!!」

「おっと」

 

 秀吉に言われ我に返った俺は見るも無残な形になりかけている万年筆をポケットに入れて新しいペン――今度はボールペンをどこからともなく取り出す。

 

「結構気に入ってたんだけどなーあれ」

「……どうでもいいが、早く行ってくれぬか?」

「まぁ逝ってくるか。しゃぁない。さっさと帰ってもらおう」

 

 これ以上あいつらに居座られるのも俺の精神状態に悪いので、ここは秀吉の意見に従おう。

 そう思った俺は、周りが近づいてない席に向かい「ご注文は?」と営業スマイルで訊ねる。

 

「お兄様で!」

「そんなものは扱っておりません」

「私達飲茶でいいですよ、流様」

「飲茶三つでお願いね、お兄ちゃん」

「かしこまりました」

「ああ待ってくださいお兄様! せめて、そのお姿を撮らせ……」

 

 最後まで聞く前に、俺は厨房へ逃げた。

 

 

 

「とりあえず飲茶三つ」

「あいよ!」

 

 威勢のいい声で反応してくる須川に俺は注文書を渡し、ホールに戻るかどうか悩む。

 戻ったら留美たちの相手をしなければいけないのが面倒。だが戻らなかったら会計ができる奴がいない。

 俺ってこういう星の下に生まれたのかね…とげんなりしながら大人しくホールへ戻ると、明久がメイド服を着て戻ってきていた。客は気付いておらず、むしろまだ女子がいたのかという認識のようだ。

 

 ただ、秀吉と留美たちは首を傾げていた。

 

 とりあえず雄二も働いていたので、俺は素早く移動して質問した。

 

「雄二」

「うおっ! なんだ流か……どうした?」

「早くね? 一体どうして明久があんな恰好を?」

 

 そう矢継ぎ早に質問すると、雄二は頬を掻きながら答えた。

 

「あのまま昼食べるかって話になってAクラスに行く羽目になってな。したらあの常夏コンビあることない事言いふらして自滅してたから復讐した時の服装。三回戦は相手が食中毒で棄権」

「……ああそう」

 

 何言われるかたまったもんじゃないなと思いながら俺は雄二から離れ、接客することにした。

 

 

「お会計お願いします、流様」

「少々お待ちください」

 

 四回戦で雄二達が消えたのと同時に席を立つ由美がそんなことを言ってきたので、俺はレジと化している入口へ行き、伝票の値段を電卓で合計する。暗算でも出来るが、客に文句を言われたくないので使っている。

 つぅか由美と留美も参加してるんだっけ確か…と対戦表を思い浮かべながら「千五百円になります」と目を合わせずに告げる。

 

「カード」

あの学校(・・・・)の文化祭じゃねぇんだから使えるわけねぇだろ」

「あ、じゃぁ僕が出しておくよ」

 

 薫がそう言って財布を取り出して千五百円を出す。

 お釣りを出さないというのはこう繁盛している時ありがたいなと思いつつ「ありがとうございました」と頭を下げて見送ったつもりだったが、すぐさま頭を上げてみるとまだそこにいた。

 しかも、一人興奮している(バカ)が。

 

「お、お兄様が私に頭を下げて!! ああ、なんて嬉しい事なのでしょう!」

 

 営業スマイルはすぐさま脱ぎ捨てた。

 

「お前ら不戦敗になっていいのか?」

「……あ。留美、行きましょう?」

「えへへへへへ……お兄様の給仕服姿……へへへへ」

「あ、由美さん。僕が押していきます」

「すみません、薫君」

 

 流れるような連携でトリップ状態の留美を教室の外へ運び出す二人。

 それを俺は見送ることもせず、次の客の対応をしていた。

 

 

 

 それから少しして。

 

「いらっしゃいま――」

「十四名だけどよ、大丈夫か?」

「少々お待ちください」

 

 聞き覚えのある声に遂に来たかと思っていると、秀吉がこちらに来て耳打ちしてきた。

 

「十四名だそうじゃが……この状況では無理じゃろ。待ってもらうかの?」

 

 未だ満席で次々と注文が来るお蔭で明日の在庫までなくなっているという状況。このままいくと今日一日の売り上げで机といすが買える計算になる。

 さすがに予想外だ…と思いながら、「その連中なら俺の知り合いだから事情を説明すれば大丈夫だ。適当に時間を潰して頃合いを見てくるだろ」と言っておく。

 

「そうなのか?」

「ああ。俺の名前を出してもらって構わないぜ」

「ふむ分かった。その通りにするかの」

 

 そう言って秀吉が戻ったのでそちらの方を見ると、案の定どちらかというと屈強という言葉が似合う男達が入り口をふさいでいた。

 この人達は昨日俺が電話で頼み込んだ人たち――つまり、建築関係。

 とはいってもこの人達、正規の工期でできない建築物関係しかやらないし値段が若干高いので知られていない集団。

 なんで俺が知っているのかというと、まぁ何度も仕事を頼んだり手伝ったりしたからだな。もちろん会社を経営する前だ。

 

「そうか。なら仕方ねぇ。お前ら、ちょっと時間つぶしに行くぞ」

『ヘイ!』

 

 そう言ってぞろぞろと消えていったようだ。どんな説明をしたか知らないが、悪いなと罪悪感を覚えてしまう。

 

 その数分後、今度は李里香さんを中心に会社の重役の人たちが来たのを俺は目撃した。

 俺が行こうと思ったら、横溝がダッシュで彼女達の目の前に行って「な、何名様ですか!?」と緊張した声で張り上げる。

 仕方がないので他のテーブルの注文を取りながらまぁ無理もねぇかと思っていると、「気にしなくていいわよ。満席のようだから」と言って戻ってしまった。

 

 名残惜しそうな横溝の姿が見なくても目に浮かぶが、それとこれとは別なので、俺は入り口に突っ立っているそいつを厨房に引っ張って放り投げた。

 その後FFF団の格好をした奴ら(シフト空いてる奴だと思われる)が横溝を回収し、どこかへ行ってしまった。

 

 あー戦力が一人減ったなーと思いながらため息をついた俺は、なぜかボロボロの明久が手伝っていることを気にせずホールで働き続けることにした。




ではまたお会いしましょう。
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