馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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明日とか言いましたがすいません。


学園長説明す

 誘拐事件はすぐさま解決し、公にならないよう色々と手を回した結果一息ついたころには全員が息を飲んでいたという珍事を目の当たりにした。

 まぁ明久や姫路さんや島田さん、秀吉に康太は分かるとして、どうして雄二や霧島、留美に由美は驚いているのだろうか。

 

 そんな疑問が顔に出ていたのか、雄二がため息をついて答えた。

 

「そりゃお前、警察官に電話したと思ったら今度はマスコミの連中に電話してさらに警視総監だろ? お前本当に何やってたんだよ?」

「別に? このぐらい普通だろ。なぁ?」

「留美でも警視総監ぐらいですね」

「私も、ですね」

「……流の交友関係は異常」

「バカなっ!?」

「お前が驚くのか!?」

 

 そんなことをやりながら歩いていたが、ふとおいてきた人たちを思い出したので、「悪い。俺さっさと教室戻るから!!」と言って返事を待たずに走った。

 

 あの二人から逃げたかったというのもある。

 

 

 

 で、李里香さん達の会計も終わり。

 誘拐された人達(Aクラスの奴らは制服に着替え)と俺、明久、雄二、康太、ついでに来た薫はFクラスである人物を待っていた。

 

「ねぇ雄二。一体誰を待ってるのさ?」

「ババア」

「いや、仮にも学園の長なんだからそれはどうなの?」

「その前にババア=学園長と言う式に首を傾げぬか」

「(コクコク)」

 

 一番年老いてるの学園の中じゃ学園長だけだから分かりやすいんだけどな。四人の会話を聞いてそう思ったが言わず、俺はさりげなく横に来ていた留美に視線を向けず呟いた。

 

「失せろ」

「まぁお兄様! 照れ隠しなさらないでください! 留美の事を助けに来て下さったのに!!」

「アレは今後の学園の存続のために仕方なくだ。あれ位なら二人で簡単に終わらせて戻って来れただろうに」

「まだそんなことをおっしゃられているんですか? 留美はあの時の現状を正しく把握して大人しくしていたのです」

「何がだ。どうせ俺が助けに来てくれるシチュエーションを逃したくなかっただけだろ」

「それはもちろんありましたわ。ですが、留美はこれを引き起こした犯人の証拠を持っているんですよ?」

 

 そう言って俺の前に来てウィンクする留美。が、そんな情報はもはや不要。分かりきったことの上、考えうる限りの可能性を悉く外してくれないでいたので証拠は出揃っている。

 それを言うのは酷だろうと考えた俺は、「それはすごいな」と本気で驚いた演技(・・・・・・・・)をする。

 それを信じた留美は機嫌をよくして「ですから、お兄様が助けてくれるまでおとなしくしていたのです。そうすれば財閥の名を出さずにすんなりと行き、そのまま学園生活へ戻れますから」と締めたのを聞いて、俺は今度こそ本気で驚いた。

 

「お前、少しは変わったな」

「留美はいつまでもあの頃のままではありませんよ。お兄様の気持ち以外は」

 

 そう言って優しく微笑む留美。俺だけに見せたその表情はどこか昔と重なり、笑顔だけは変わらないってかと思った。

 そのまま見詰め合っていると急に留美の顔が真っ赤になり、「で、では留美は先に失礼させていただきます! 普段通りに帰らないといらぬ詮索を受けそうなので」と早口で言ってからダッシュで教室を出た。

 その行動を見た由美も思い出したように「翔子さん。明日お話良いですか?」と断ってから教室を出る。

 

 財閥も大変だと留美の行動の意味を知りながらも黙っていると、不意にカッターナイフが飛んできたので指二本で止める。

 

「ぶっそうだな康太」

「……リア充滅殺」

「その通りだ流! 君みたいなハーレム野郎、僕は絶対に許さない!!」

「だったら明久もそうだろ?」

「そんな訳あるか!」

「……自分で言って悲しくないのか?」

「か、悲しくなんてない!!」

「やれやれ。相変わらず騒々しいクソガキどもだね」

「やっと来やがったかババア」

「ババア言うんじゃないよ坂本。あんたが呼び出したんだろうに」

 

 そう言いながら教室に入ってきたのはババア。真新しくなった教室を見渡しながら「スゴイさね、まったく」と呟く。

 それは俺以外聞いてなかったようで、他の奴らは雄二の方を向いてどういう事か聞いていた。

 

「んで? あたしになんか用かい?」

「ああ。あんたがちゃんとしなかったせいで誘拐まで起きやがった。その文句を言いにな」

『!?』

 

 驚く面々の中で驚いていないババアは「……なんだって?」と耳を疑っていた。

 

「だから、あんたがしっかりとやらなかったおかげで妨害工作が誘拐にまで発展したんだよ」

「ねぇ雄二。どういう事?」

「そうじゃ。ちゃんと説明せい」

「一体どういう事ですか坂本君?」

「そうよ。アキの頭に分かるように説明しなさいよ」

「さらっとけなさないでよ!」

 

 明久の抗議を無視し、雄二は説明した。

 

「姫路たちには何も言わなかったが、俺と明久はこのトーナメントに教室の改修を条件に参加した。優勝賞品のペアチケットを回収するという目標でな」

「……それであそこまで必死だったの?」

「ああ。だから色々と手を回したが、その最初の参加する時に俺は提案したよな? 教科はこちらが指定すると」

「…そんなこともあったねぇ」

「でも、それがどうしたのさ雄二?」

「バカ久少しは考えろ」

「なんだと!」

 

 そう言って雄二に明久がつかみかかろうとしたところ、霧島と姫路さん、それに薫が同時に声を上げた。

 

「「「あ」」」

「分かったの、瑞樹?」

「分かったのか、薫?」

「はい」

「つまり雄二さんの提案を学園長が応じた場合、他の協力者――つまり、雄二さんと明久さん以外のペアに同じことを頼んでいる可能性が消えるんです」

「……その可能性が消えると、雄二達にどうしても勝ってもらわなければならないということになる」

「そう考えるとペアチケットなんてものの回収に俺達を使う必要性がない。となると考えられる可能性は一つ」

 

 そう言って人差し指を突き立て数字の1を作ってから答えを言った。

 

「俺達に回収してほしかったのは副賞の腕輪、と言うことになる」

「……なるほど」

「で、どうなんだババア?」

 

 明久が神妙に頷いているのを尻目に雄二が訊ねると、ババアは観念したようにつぶやいた。

 

「……流石は腐っても神童。衰えちゃいないようだね」

「ってことは当たってるんだな?」

 

 確認すると、ババアは頭を下げて「すまなかったね」と言ってきた。

 驚く俺以外の奴ら。それに対し、ババアは淡々と進めていった。

 

「重大な欠陥を抱えたまま発表しなければいけないことをネタにこの学園を潰そうとしてる奴がいてね、そいつに渡さないためにあんた達に託してみたんだ。…だけど、まさかそこまであからさまにやるとはねぇ」

「予想位できなかったのかよ」

「窮鼠猫を噛むとはこの事かねぇ。まさかここまで馬鹿だったとはあたしも思わなかったんだよ」

 

 ちなみに。ババアのいう事は半分ウソである。

 誘拐騒ぎまで起こる可能性をババアは考慮していないだけで、そもそも欠陥のない腕輪だから弱みの部分なんてない。

 誘拐と言うシナリオは予想できた中だが、ババアには言ってないので本人にとっては驚くことだというのは分かっている。

 

 演技上手いな婆さんなんて思いながら傍観していると、「意地でも常夏コンビは勝とうとする。が、俺達は絶対に負けないさ」と雄二が締めた。

 

 

 

 

 で、全員が帰った中。

 

 俺は雄二に呼び止められていた。

 

「そういや流。今日の売り上げは?」

「机といすが買えるぞ。明日の分も底を尽きてるけど」

「そうか。須川たちには言ったのか?」

「メールで教えた……って、こんなこと聞きたいわけじゃないだろ?」

 

 そう言うと、「分かってるじゃねぇか」とあいつが言ってから、鋭い視線を向けて声を低くして聞いてきた。

 

どこまでお前のシナリオだ(・・・・・・・・・・・・)?」

「シナリオって……人聞きが悪いな」

「別に悪くねぇだろうが。お前なら俺達を焚き付けてからここまで計算通りに動かせることぐらい簡単だろ?」

「いやいやいや。俺は人を思い通りに動かせるなんてできないよ。人の感情ほど難しいものはないって」

「どうだか。お前は俺達が勝つまでのビジョン位浮かんでるんだろ?」

「さぁね」

 

 そこまで考えてはいないし、そもそも勝てるかどうかなんてあまりにも未知数。

 だから俺は、「一つだけ言うならば、俺はお前達を信じているってことだ」とだけ言った。

 

「……その言葉は嘘じゃなさそうだろうな」

「ひどくね!? お前俺の言葉勘繰り過ぎ!」

「お前の度の超えた才能と、それを扱う能力を知っていると、どんな言葉でもあまり信用できないからな」

「尚更ひどい!」

 

 そんなことを言い合いながら、俺達は教室を出た。

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