馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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再会

「つぅか今お前何してるの?」

「学生」

「ふ~ん。転校でもしてたのか」

 

 実際はそうではなく出戻りみたいなものだが、そのことを言う必要はないので黙っておく。

 すると高人は注文した料理を食べながら「しかしこの学校も美人多いよな」と感慨深そうにつぶやく。

 

「つぅかお前一人か?」

「ん? ああ。もう一人連れはいるんだが、どうもこの人ごみの中ではぐれたらしくてな……」

「連絡は?」

「出来たらこうしてのんびりしてねぇよ」

「ふつう逆だろ」

 

 昔の様なテンポで会話をしていく俺達。連れが一人いるというのが気になるが、それは気にしていられない。

 ぶっちゃけもう食べ終わったから会計するだけなんだよなと思いながら席を立とうかと考えていたところ、外から歓声が聞こえた。

 

「終わったか」

「え、まだ時間あるだろ?」

「そっちじゃなくて、トーナメントの方だよ」

「あれ結構すごいよな。うちの学園でも導入しようとか言ってたけど」

「はっ。無理なこと言ってるんじゃねぇよ」

「即否定!? なんでそんなこと言えるんだよ」

「だってあんなクズみたいな奴らに再現なんてできないから」

「うわぁ……昔もそうだったけど、今も遠慮ないなお前」

「遠慮して利益が生じるなら遠慮する」

 

 なんかお前メリットばかり追いかけすぎじゃないのか…? と呟きながら俯いた高人を見た俺は、チャンスだと思い席を立って会計をして教室を出た。

 

 

 

 さて。特に何事もなく教室を出たが、暇だった。

 何もすることがない。強いて挙げるなら解析の続きをやるぐらいだが、あそこ電波入りにくいから何かあった時面倒なんだよなぁ。

 さてどうすっかな…と頭の後ろで手を合わせて歩きながら考えつつ歩いていると、ざわついた空気が一瞬で張りつめたものに変わり、先程まで混んでいた道が一直線で人が通るスペースになるという光景を目の当たりにし、その道を歩く人間に気付いた俺は、表情を消して逃げる様に階段を登ろうとしたが、「Aクラスはどちらへ行けばいい?」と低い声で訊かれたので、その足を止めて表情を消したまま無言で俺が来た方向を指さした。

 

「……」

 

 その人間は黙って階段を登り切り、俺が指差した方へと向かった。

 背を向けたその人間から発せられる雰囲気を感じながら、ざわめく周囲の奴らを無視して「……くだらねぇ」と小さく呟いて自分のクラスへ向かうことにした。

 

 

「……ん?」

 

 Fクラスへ向かう途中。やたらと列ができてるのを見てしまった俺は、ひょっとしてこれアウトじゃね? と思いながらそっと離れようと行動を起こそうとした時、チャイナ服を着た秀吉が「おお流か! せっかくの休みで悪いが手伝ってくれぬか!? お主がおらんとどうにもうまく回らんのじゃ!!」と慌てながらこちらに来た。

 

 それを見た俺は先程までの気持ちは消え、思わず笑いながら「だと思ったよ(・・・・・・)」と口にした。

 

 

 

 

 

「流! 悪い!!」

「いいよどうせ暇だったし」

 

 ささっと着替えてホールに来た俺は、雄二の謝罪を軽くいなして働く。

 ……とうか人来過ぎじゃね? 一体どうし……なるほど。

 秀吉のチャイナ服を思い出して現在島田さんと姫路さんも着ているのを見て納得。

 恐ろしい経済効果だと思いながら、右往左往している明久を小突いてホールの仕事を始めることにした。

 

 のだが。

 

 なーんか見知った奴らが座ってるなーと素通りしながら考えつつ料理を運んでいると、「こんなところにいたのか、流」と声をかけられた。

 俺は素通りして料理を運んでからその席へ戻り、顔を見る。

 

 そいつはサングラスをかけてスーツを着ていた。声からして男。

 一瞬脳内で検索し、該当した奴がいたが、どう考えてもここにいるのがおかしい奴だったので、小声で訊いた。

 

なんでお前が(・・・・・・)?」

「いちゃ悪いか?」

「いや……どこで知ったんだよ」

「隠してないんだから分かるだろ」

「おーい流! 戻って来い!!」

「というわけだ。話したいことがあるなら電話かなんかで頼む」

「ああ」

 

 そんな訳で会話も早々に切り上げることになったり。

 

「Hey!」

「悪いが後でな」

 

 陽気な外人と最初から言葉を交わさなかったり。

 

「あの、主任」

「元な、元。俺もうあそこ抜けてるから手伝う気ないぞ」

「そ、そんなぁ……」

 

 なんか少しいた場所の関係者を断ったり。

 

 なんか半数以上が俺の知り合いで、しかもそいつらきちっと料理頼んで金払って帰るのでわざわざ何しに来たんだと言いたくなる感じだったが、まぁ三百人売り切った要因の一つだろう。

 

 ……そういや今更だけど三百人て多いな。昨日来てもせいぜい二百いったかどうかだったはず……。

 

 感覚麻痺したみたいだコレは。そんなことを思いながら、学園祭が終了する二時間前にすべて売り切ってしまったクラスメイト達は、

 

「もう……無理」

『同感……』

 

 客がいないことを良いことに畳の上に寝転がっていた。

 俺はというと、寝転がるまでにはいかなくても疲れていたので欠伸をしつつ伸びをする。

 そして入口近くでまとめていたオーダー表を手に取り、島田さんに渡す。

 

「これが今日の売り上げ」

「……ウチが計算するの?」

「昨日は計算したから、最終的な合計は実行委員にやってもらおうと思って。島田さん、数学得意でしょ?」

「まぁそうだけど」

「じゃ、ちょっとふらふらと疲れを取りに行ってくるわ」

 

 そう言って島田さんに押し付けて、俺はそのまま教室を出た。

 

 どうせ全員倒れたままだろうから。

 

 と思っていた時期が俺にもありました。

 

「待てよ流」

「……雄二。お前のどこにそんな体力があるんだ?」

「……とりあえずお前が俺の事を見下してるのは分かった。が、今はどうだっていい」

 

 そう言いながら隣に並ぶ雄二。

 横一列に並びながら歩く俺達は傍から見たら親友に見えるんだろうなと思いながら歩いていると、「お前、中学一年から何があった? 普通に客としていたからみんな気付かなかったみたいだが、あのメンツは異常だぞ」と訊いてきた。

 よく見てるなと感心しつつ、「チャイナ服きせたのは雄二の指示?」と聞き返す。

 

「ああ。三百なんて普通にやってたら売れないからな。それに、明久も『愛してる』なんて言ってたから」

「だったら着るよなぁ、あの二人」

「秀吉は渋々だったけどな」

 

 そう言って沈黙しながらも歩き続けていると、「って、話を逸らすな」と言われた。

 

「あれ?」

「あれ? じゃねぇ。俺の質問に答えろよ」

「んー、無事進級して、退学して、大学行って、卒業して、さすらう様に転職して、勘当されて、ここに納まった」

「あー、気のせいか? 退学してから大学行ったと聞こえた気がしたんだが……」

「ま、色々あったんだよ」

「色々がおかしい! 前からそうだが、お前本当に壮絶だな!!」

「よくそんなテンションで突っ込めるな。俺は感心する」

「……誰の、せいだと……!!」

 

 今にも殴りかかろうとしてくる雄二を見て笑っていた俺だったが、目の前にできている人だかりに気付き足を止める。

 雄二もそれに気付いたようで、すぐさま冷静になって「なんだ一体?」と首を傾げる。

 嫌な予感がした俺は目を閉じて耳を澄ませると、ざわめく声の中でこんな言葉聞こえた。

 

「――謝れよ」

「――――ふざけないでください」

「俺達が――て、逃げたんだろ? 落ちこぼれ共」

「―れが、―――達から――――?」

 

 反論しているのは女。人数は二人。そして声から察するに留美と由美。

 言いがかりかなんかをつけている声の方は男で、『落ちこぼれ』という単語を使って蔑む奴らは――あの学園しかない。

 高人がいたんだから当然だよなと思った俺は、ゆっくりと目を開けて視線を鋭くし、雄二に言った。

 

「悪い。俺ちょっと先の方へ行ってくる」

「……俺も行かせろよ」

 

 一瞬断るかと思ったが、場合によってはこいつもいた方がいいかと思い、頷く。

 そして人ごみをかき分けて中心へ出た俺達は、目撃してしまった。

 

 霧島が倒れ、それをかばうように留美と由美が立っており、彼女達の視線の先に下卑た笑いを浮かべる白い制服を着た奴らを。

 瞬時に状況を理解した雄二が駆け寄ろうとしたが俺は止める。

 

「やめとけ雄二」

「なんでだよ」

「お前一人じゃどうにもならない」

「だからって……」

 

 やっぱり助けに入りたいか。そりゃそうだよな。

 雄二の気持ちを考えた俺は、肩を叩いて「心配するな。俺も今無性に腹が立っている」と笑って言う。

 それを聞いた雄二は驚いた顔をして……すぐさまいつもの笑い顔で言った。

 

「お前でも腹立つんだな」

「当たり前だっての」

 

 そう言って俺達は笑い、一番留美達に近い男に近づき、笑顔で、思いっきり、

 

「っ、ねぇ!」

「りゃ!!」

「ブッ!!」

 

 怒りを込めて殴った。




本日二話目になりますので。
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