馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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清涼祭終了

 ある程度まで流れに身を任せてから自分の教室へ戻るために抜け出して教室の前へ。

 あいつら元気になったかと思いながら扉を開けて中に入ると、そこには誰もいなかった。

 

「……?」

 

 首を傾げて周囲を見渡す。

 片付け自体は終わっている。教室の配置も元通りだ。

 

 こりゃさっさと帰ったのかー? なんて思いながら徐に携帯電話を取り出して確認すると、明久から『公園で打ち上げやるから来てね』というメールが来ていた。

 なるほどねー。そりゃだれもいないわけだ。

 こうなったら俺もさっさと帰ろうかねと思いながら教室を出ようと扉を開けたら、携帯電話が鳴った。

 

「もしもし?」

『あ、流!? ちょっと喧嘩沙汰になったっていう話は置いといてさ、ちょっと大変なことになったんだ!!』

「ん?」

 

 もう終わりだというのに大変なことなんてあったのか?

 

『どうやら学園長室に盗聴器が仕掛けられていたらしく、僕達の交渉の事がばれちゃったみたいなんだ!!』

「……マジ?」

『そう! だから雄二にもそのことを知らせたいんだけど、どこにいるか知ってる!?』

「保健室のはず。そこにいなかったら今頃――」

『明久。お前なんでこんなところにいる?』

『あ、雄二! 大変なことになったんだ!!』

 

 どうやら雄二と合流出来たようなので俺は黙って通話を切る。

 そして現状を整理しながら俺も探すの手伝おうかな…と柄にもなく考えた。

 

 

 

 そんな訳でたどり着いたのは屋上。そこには案の定先輩たちがいた。

 俺は音もなく扉を閉めてから静かに座り、準備をしている先輩たちを観察する。

 

 ……やっぱり自衛隊にでも入隊してもらおうかな。その方が性根を叩きなおすのに一番楽そうだ。

 いやいっそのこと紛争地域にでも置いて行ったらどうだろうか。勝手に死んでくれる上に身元の確認すらされずにそのままだろうから、誰もが忘れるだろう。

 

 そんな自分の手を汚さないでこの二人の処分をどうするかメールを打ちながら考えていると、坊主の方が俺に気付いた。

 

「テメェ! なんでここに!!」

「暇潰し」

「だったらさっさと帰れよ!!」

「別に個人の自由なんだからどこで暇をつぶそうが関係ないだろ? ……それに」

「あ?」

 

 携帯電話を閉じてポケットに入れた俺は、立ち上がって移動してから続けた。

 

「悪事千里を走る。その言葉を知らないほど馬鹿じゃないよな、先輩方」

「「見つけたぞ常夏コンビ!!」」

 

 ドバァン! と勢いよく開け放たれた扉(憐れにも壊れた)から、そんな叫び声とともに雄二と明久と明久の召喚獣が登場した。

 

 ……壊れた扉代、売り上げから引くしかないな……。

 

 机といす以上も夢じゃないと思った矢先にこれなので、次何か壊れたら弁償代の額によって何も買えなくなるという悲惨な結果になりそうだ。

 

 さて、どうなるかなと思っていると、雄二がいきなり「残念だったな常夏コンビ」と言い出した。

 

「あ? どういう意味だ坂本?」

「言葉通りの意味だよ。俺達も教頭も……すべて踊らされていたんだよ。そこにいる流の手のひらの上でな」

「え?」

「「あ?」」

 

 一斉に俺の方へ向く視線。

 隠しても無駄だなと思った俺は、頭を掻きながらネタ晴らしをすることにした。

 

「そう。雄二の言う通り。あんた達が盗聴器の内容を放送器具で流すことは分かっていた。それだけじゃない。教頭がやっていた悪事を知り、それを逆手にとって学園のイメージ回復を図ろうと計画した際の邪魔が入る可能性すら予測していた。だから俺は昨日一日中働いて妨害工作をしようとクラスに入ってくる奴を見極めて追い出した。つまり、俺が学園のイメージ回復と同時に教頭を捕まえる手順を踏む際の障害――先輩達みたいな奴――の存在がどう動くかなんて予想できていたんだよ」

 

 ぶっちゃけ読みやすいし予測した行動とほぼ寸分たがわず行動したようだからありがたいね。

 そう付け足して俺は締めると、常夏コンビは事の意味を理解したのか勝手に後ずさり、放送器具とぶつかってこけた。

 明久は理解していないようで首を傾げていたが、説明する気はないので雄二を見て嫌味を言ってみる。

 

「まさか気づかれると思わなかったよ」

「あれだけ意味深なら大抵の奴は気付くだろ。あの時何の反応を示さなかったお前なら」

「えーっと、つまりどういう事?」

「説明は後だ。今はこの二人を拘束するぞ」

「え、うん」

 

 常夏コンビを視線を俺に合わせたまま動こうとしない。それに気付いた俺は視線をその二人へ向けて口を動かす。

 

 ざ・ま・ぁ・み・ろ

 

 口を動かしただけで声を出していないが正しく伝わったようで、二人はがっくりと肩を落とした。

 

 

 

「あーようやくすっきりした」

「えーっと。僕まだ理解できてないんだけど、どういう事?」

「この学園祭で俺達のクラスを対象とした嫌がらせや、俺達がトーナメントに出場して優勝することすら、流が計算に入れていたってことだ」

「ふ~ん」

「よし。目を瞑って歯を食いしばれ」

「なんで!?」

 

 西村先生を呼んで常夏コンビを連行してもらった俺達は扉を弁償するための請求書をババアに書いてもらい、校庭を歩いている。

 俺は請求書の額を見ながら「取り付け代を考えると更に上乗せされるんだろうな」とため息をついてつぶやく。

 それを聞いた明久は争うのをやめ、「備品を買うのに足りるかな?」と心配そうにつぶやく。

 

「せいぜい十万ちょいだろ。そのぐらいなら昨日の売上使ってもまだある」

「え、そうなの?」

「卓袱台や座布団の新品は余裕で買えるな」

「! やったぁ!!」

 

 嬉しそうにはしゃぐ明人を見た雄二は、俺に耳打ちして聞いてきた。

 

「(なんで机やいすが買えるって言わないんだ)」

「(モチベーションの問題。さすがにそこまでやったら試召戦争どうだっていいってなるだろ?)」

「(いやまぁ確かにそうなんだが……)」

 

 Aクラスを倒すモチベーションとなるのは不満。その不満をある程度残したままじゃないと、三か月後に復活する試召戦争をやる権利では勝てない。

 どうせなら校舎も戻そうかなと思ったが、流石にそれは可哀想なのでやめようと考えた。

 

 と、ここで俺は思い出した。

 

「そういや明久」

「何? 流」

「打ち上げやる公園ってどこだ?」

「……あ」

「あ。って。お前やっぱり忘れてたのか?」

「やっぱりってどういう事だ雄二!」

「まぁしゃぁねぇ。秀吉に電話して場所訊くか」

 

 明久って普段と真剣になった時のギャップがすごいよなと思いながら、ふと大学在学中に仲の良かった超絶ブラコンの女性を思い出した。

 

 

 

 秀吉が言った公園に到着した俺達。

 すると、すでにFクラスの奴らは始めていた。

 

「もう始まってるぜ」

「まぁ俺達色々あったからな」

「うん。そうだね」

「……待ってた、雄二」

「おーそうか………」

 

 ギギギ…とブリキの切れたような感じで雄二は首を動かして背後を見る。

 すると、コップを二つ持った霧島が立っていた。

 

 ダッ! (雄二が脇目もふらずに走り出す音)

 ガッ!! (霧島がその瞬間に雄二のかかとを踏み、雄二が顔面から勢いよく倒れ込む音)

 

「おお見事」

「見事、じゃないだろ! なんでお前がここにいる翔子!!」

 

 俺が感心していると雄二は勢いよく顔を上げて霧島に訊ねる。

 霧島は、若干人に分かる程度に表情を曇らせて「……心配、だった」と口にした。

 

「明久を襲うんじゃないかと」

「俺が襲うと思ってたのか!?」

「ちょっと待って霧島さん! 僕は普通に女子が好きだからね!?」

 

 この学校別な意味で大丈夫だろうか……そんなことを今更ながらに思いながら、とりあえず島田さんを探す。

 

 と、島田さんがこっちに来てくれた。

 

「お疲れ豊橋。……アキと坂本は?」

「霧島の誤解を必死に解こうとしてる」

「? まぁ来たのならいいわ」

「あ、それでさ」

「何?」

「ちょっと急ぎがあって扉壊しちまってさ。その修理代を売り上げから引くことになった」

「ハァ!? 何よそれ!」

 

 まぁ当然だよなと思いながら、俺は請求書を見せて島田さんに聞く。

 

「このぐらい引かれたらどこまで買えたっけか」

 

 コップを二つ持ちながら請求書を見た島田さんは少し目を閉じてから「そうね……精々机といすが限界じゃないかしら?」と答えてくれた。

 良かった。そのぐらいなら。そう思った俺は「なら大丈夫だな? 元の卓袱台と座布団より上なんだから」と確認する。

 

 言われて気付いたらしい島田さんは「そうね」と言ってから「まぁ仕方ないわね」とため息をついた。

 

 まぁ壊した理由と人間は言わないでおくか。そう思った俺は、島田さんに「ほら明久の方へ行けよ」と言って離れることにした。

 

「これで解決したのかの」

「秀吉」

 

 持ってきたらしいジュースを飲みながら公園でバカ騒ぎをしている奴らを静かに見ていると、秀吉が来てそんなことを訊いてきた。

 

 「一応な」と俺が答えると、「なら、また明日もこんな風に過ごせるんじゃの」と隣に座った秀吉は言う。

 こんな風、ね……。教頭の人事は確定したから平和になるとは思うが、今度は俺の厄介事が回ってきそうだからこんな風に過ごせるかどうかは不透明になりそうだ。

 

 最悪この学校を去らないといけないかもな……と遠い目をしながら明久たちのバカ騒ぎを見つめていた。

 

 

 

 その日の夜。

 

 俺は今日来たやつらの電話の対応に追われ、ふざけた用件で電話してきた奴らを怒鳴ってすぐ切った。

 

 あー疲れた。マジやってらんねぇ。

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