馬鹿と気が合うお調子者   作:末吉

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プール掃除の原因

 始まりは突然だった。

 

『豊橋。暇か?』

「西村先生。どうしたんすか?」

『いや……悪いが至急学校に来てくれないか?』

 

 今の時間は夜。テレビを見て爆笑しながら明日の弁当何作ろうかなと考えていたら備え付けの電話が鳴ったので出たところ、そんなことを言われた。

 一体何かあったのかなーと思いながら「分かりました」と言って、学校へ向かうことにした。

 

 

 

「すまないな、豊橋」

「いや、別にいいですけど……この二人なんでこんな時間にこうなっているんですか?」

「「こいつが悪い」」

「どっちもどっちだろうが……」

 

 頭が痛いのか目頭を押さえる西村先生。まぁ確かにそうなるだろうなと思いつつ、正座している明久と雄二をもう一度見て考える。

 

 …………。

 

「ひょっとしてプールかなんかに無断で入ったのか?」

「なんでわかったの!?」

「いや……お前達が夜学校に侵入するのって教科書取りにってわけじゃないからよ。それなら他に何があるかなと考えたらプールしかなかった」

「その通りだ……この馬鹿ども勝手にプールに入っていたんだまったく」

「明久がガス代を払ってないのが悪いんだ」

「雄二がコーラをゼロカロリーにしたのが悪かったんだ」

「「……」」

 

 どっちもどっちだがガス代払ってない明久の方が悪い気がするんだが……。

 生活費をどれだけ使っているんだよお前…と頭を抱えたくなる。

 西村先生も同じように感じたようで、「まったくお前は本当に…」と呟いている。

 

 こいつら本当にどうしようもねぇなと考えてから仕切りなおすようにため息をついた俺は、西村先生に質問した。

 

「どうすればいいんですか?」

「こいつらには今週末プール掃除をやらせる。無論、今この場で反省文を書かせてな」

「この鬼教師!」

「そうだぞ鉄人!」

「まずお前らがプールに入らなければこうならなかったことに気付こうぜ」

「「……」」

 

 何も言えなくなったらしい二人を見た俺は、西村先生と一緒に反省文の採点をすることになった。

 

 

 

「あーねむ……」

「珍しいの、流が欠伸をするなど」

「意外としてるんだけどな……康太が何故か俺の写真撮った中に入ってるぐらいには」

「……なぜ分かった」

 

 翌日。

 主に明久のせいで若干寝不足になった俺が欠伸をしていると秀吉が話しかけてきたので、ついでに康太にも話題を振る。

 そしたらカメラを片手に現れたので、案の定撮ってやがったなとため息をつきつつ種明かしをした。

 

「俺はカメラや盗聴器に敏感なの。仕掛ける理由が大概欲まみれの奴だからさ、それを阻止するためにね」

「まぁ確かにそうじゃが……どうしてお主はムッツリーニが撮った中に入ってると思うんじゃ?」

「朝早く来て暇だったからそこら中にある盗聴器集めて型番調べて購入者調べた。で、面倒だけど全部元に戻して知らないふりしてた。カメラの方はムッツリーニ商会なんてものが在るっていう噂で試に薫に行かせたら俺の写真があったとか言ってたから」

「……あの時か」

 

 学祭が終わって学校に来たある日。そんなものがあるという実証のために薫に協力を頼んで行ってもらったところ、盗撮レベルで需要のある写真が大量に売られているらしい。

 さすがに留美や由美はとってなかったらしいが(撮っていたら間違いなく人生が破滅する)、俺や薫のはあったらしい。

 

 ところで。なぜこうも転校組と交流があるのかというと、完全に振りきれなかったから。

 …もうね。いくら俺が化け物とか言われても振り切るのは無理だって。振り切ったら最後この魔境に染められて人格変わるとか考えたら尚更無理だって。

 

 だから最低限付き合うことにしたんだが……留美が暴走することが度々あるのでくそ面倒。

 

「ほんと、やるなら許可取れよな。そして俺にも一枚かませろ」

「やめさせる話じゃなかったのか!?」

「……対価は?」

「最新高性能カメラと絶対にばれない場所の提供」

「……乗った!」

「もう流が何を考えとるのか分からんわい……」

 

 呆れたような秀吉を尻目に俺達は握手を交わす。

 本音を言うと止めさせた方がいいのだろうが、こんな無法地帯の学校でそれをやめさせても意味がない気がしたので混ざることにした。

 

 いや楽しそうだし。

 

 と、ここで秀吉が卓袱台に顔をうつ伏せてピクリとも動かない明久を発見した。

 

「一体どうしたんじゃ、明久よ」

「……」

 

 昨日の事のせいか言葉も発しない明久。それを見かねた俺は、コンビニで買ってきたおにぎりを明久の卓袱台に乗せて「食えよ」と言っておく。

 

「……あ、ありが、とう」

 

 か細い声でおにぎりをつかみながら礼を言った明久は、そのままのそのそと外装をはがしてゆっくり食べ始める。

 その姿を見た秀吉は「一体何があったんじゃ?」と訊ねるが、明久は答えない。

 その代り、雄二が説明した。

 

「こいつのせいで今週末プール掃除しなくちゃいけなくなった」

「元はといえば雄二のせいじゃないか!」

「どっちもどっちだろお前ら……しかもそのせいでお前らの監視に俺が行くことになったしよ」

「そうなのか?」

「聞いてなかったのかよ雄二。何しでかすか分からないからその監視で俺が行くことになったの」

「え、僕聞いてないけど」

「お前は反省文頻りに書いてたからな。当たり前だ」

「でも面倒だなープール掃除」

 

 元気が戻って来た明久がそんな文句を言うと、雄二が「そういえばプール使っていいとか言ってたな」と呟く。

 

「野郎三人でプール自由とか言われてもな、実際」

「なら女子を連れていけばいいだろ」

「秀吉来るよね?」

「その流れで真っ先にわしの名を呼ぶでない明久!!」

「……シャッターチャンス」

 

 何故か先に集まったのは男子。いや、順当な結果か。

 霧島は勝手に雄二についてくるから一人は確定として……どうすっかな。

 

「姫路に島田も呼ぶか」

「え、悪いよあの二人に手伝ってもらうなんて」

「呼びましたか?」

「呼んだ?」

 

 耳がいいのかすぐさま来た二人。その二人に対し、雄二が言った。

 

「今週末秀吉含めた俺達五人でプールを使わせてもらうんだが、どうだ?」

「「行きます」」

 

 即答。

 雄二の奴扱い方分かってるなーと思いながらも良く分かってない明久をスルーしていると西村先生が来たので、俺達は自然と自分達の席に着いた。

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